Solitude Art Online   作:自由気ままな人

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設定を編集したのでよかったら見て下さい。

ここからオリジナルのスキルが出て来ます。
描写はしていますが詳しいデータは設定集にて。
短剣のスキルが2つしかなくて驚きました。

展開が遅いですがあまり早くキャラを出しても不自然なので長い目で見て下さい。


第7話

 ……………朝、か。

 今日もいい天気だ。SAOの中の天気は一定なのだろうか。

 昨日は……やめよう、朝から憂鬱になることはない。

 生きてた中で憂鬱といえば……高校だな。

 

 あの時からか、周りの話についていけなくなったのは。

 教室ではイヤホン使えないから寝るか袖に忍ばせていた。

 そして毎日毎日本や携帯で文字を追っていたっけ……。

 携帯ではSSまとめサイトが便利だった。片っ端から読んでいった。

 見るに堪えない駄文があった。俺にも書けそうなストーリーがあった。一握りの天才にしか書けない良文があった。

 それらを読んでいくと次第に先の展開が読めるようになって来た。ヒロインが告白したら主人公が聞いていなかったりというのはお約束だ。

 

 主人公の体験を何度も何度も追体験して行ったらいつの間にか動じることが無くなっていた。

 記憶に新しいのは授業中に教科書に隠して携帯で小説読んでるのがバレで怒鳴られたことだっけな。

 「ああ、またか。五月蠅いなぁ。」

 感じた事がこれである。

 反論することはできた。

 「授業が退屈なんですよ。」

 と。

 

 これで論破できるかは別としてだが(多分出来ないしやらない)。

 だからだろう、デスゲームに動じなかったのは。

 死ぬのは怖い、と思う。だけどまだ俺は生き切っていない。

 病人ならまだしも俺は健常者だ。生き切ったと言うのは明日すら生きられるか分からない人への侮辱だ。

 SAOを買ったのは新しい世界をこの目で見たかったから。

 一人なら誰にも縛られる事はない。自分の好きな時に、好きな場所へ行ける。

 この世界は綺麗だ。デスゲームでも、そうでなくても……な。

 だから俺は独りで100層まで攻略して全ての層の景色を見に行こう、と思った。

 景色を見て感動した事が無いから。

 

 そういえば両親は心配をしているのだろうか。大学生になってから思い出す機会が減ったな。

 うちの家族はマイペースだけど息子が目覚めないってなったら……それでもいつも通りに生活してそうだ。

 元気にやってることを願うばかり。

 俺もこっちで元気にやってるよ。

 先の事は分からないけどね。

 

 

 物思いはこれくらいにしておこう。さて、今日は何をしようかな。

 

 

 

 

 

 「レンジ、剣も手に入れたしそろそろ先に進まないか?」

 アハトがそう提案してきた。

 「ああ、ちょうど俺もそう思っていたところだ。情報は更新されているのかな……と?」

 「えーっと……ないみたいだ。死者数の記事も変わってない。」

 辺りを見回すも雑誌や新聞の類はない。

 「残念だ。」

 俺はそう言って立ち上がる。さて、行きますか。

 

 

 

 俺達は道を歩いていた。見通しがいいのもあってか敵モブの数は1~2体ほどであり、安定して進むことができていた。

 その時俺はふと思った。武器を2つ持ったらどうなるのだろうか、と。

 確かドロップした短剣があったはず。装備は……できるな。右手に片手剣、左手に短剣がきちんと持てている。右手を斬りましたとならないように短剣は逆手に持った

 俺は念のため、

 「ちょっと二刀流を試してみる、ピンチの時はフォローを頼む。」

 「分かった。」

 俺はそう言って敵モブの出現を待つ。

 

 

 (……出て来たか。)

 5分ほどして俺の目の前に1体の敵モブが現れた。コボルドである。

 「アハト、イエローになったら助けてくれ。」

 俺はそう言ってコボルドに斬り掛かった。

 右手の剣を振り下ろして間を入れず左手を振るが虚しく宙を切る。

 片手剣と短剣でその長さはかなり違う。

 俺はそれを理解していなかったのだ。

 だが、怯んでくれたため反撃は来なかった。

 (やっぱり扱いが難しいか……次はスキルを試す。)

 コボルドが突っ込んでくるのをサイドステップで避け、バーチカルの構えを取る。

 しかしソードスキルが発動しない。

 (失敗したか?)

 稀にこういうことがあったため慣れていた俺はワンテンポ遅れて振り切った。威力はさっきと同じ。ソードスキルが発動していない証左だ。

 (もう一回。)

 体当たりして来たのを避けて構えを取るものもスキルは発動しない。

 (2つ武器を持っているとスキルが不発になる設定なのか?)

 結局スキル発動を諦め、短剣でコボルドの首を刺して倒した。

 

 「スキル失敗してたが大丈夫か?」

 「ああ、大丈夫だ。」

 俺はそう返し、歩き始めた。

 (とにかく実験だ。)

 俺はこう考え、左手に短剣を持ったり持たなかったりして先に進んだ。

 その結果、右手なら右手、左手なら左手の武器攻撃力に応じたダメージが出るという事と二刀流中はソードスキルを一切発動出来ない。

 この現象を俺は武器を2つ持っているためシステムが認証してくれないものと考えた。 

 片手剣だけの時は通常通り発動したためである。

 後単純に扱いが難しい。

 副産物としてはガードする時素手より武器で攻撃を受け止めるとダメージ減少率が高い。

 片手武器を両手で持って攻撃すると1.2倍ほど攻撃力が上がる。

 こうするくらいなら両手剣を使った方がいいのは明らかだが。

 殴ったり蹴ったりしても一応ダメージは通る(ダメージ量は通常攻撃の1/3程だった)といった情報が得られ、アハトと共有した。

 

 

 

 次の村が見え、空が何物にも染まらない色になりそうな頃に俺達は足止めをされていた。

 「あとちょっと……なんだが。」

 コボルドの親玉、コボルドリーダーが現れたのだ。

 「戦うしかない。行くぞ。」

 逃げたら真っ暗になってますます不利になる。

 「お供に2体コボルドがいるな。レンジ、気を付けろ。」

 多対多は……まず数を減らすのがセオリーだったな。

 武器の適正から見ると俺がリーダーを、アハトが取り巻きを相手にした方がよさそうだ。

 「分かった。アハトは取り巻き。俺はリーダー。」

 取り巻きと言った瞬間アハトは飛び出して取り巻きに一撃ずつ与え、リーダーと分断した。

 簡潔に指示を出してコボルドリーダーと向かい合う。

 リーダーと名乗るだけに体は大きく、棍棒を持っている。

 その大きさはお供が1mほどでリーダーが1.4mといったところか。

 そして棍棒を持っている以上攻撃力が高い。だから防御重視で立ち回る。

 考えていたらリーダーが棍棒を振り被って来た。

 (考え事はここまでと言う事か)

 横に振り被られるとこちらとしては厳しい。

 後ろにしか避けられないからだ。

 「くっ……。」

 俺は後ろに飛んで棍棒を避け、スラントを発動させて斜めに斬り下ろす。

 (よし、まずは一発。)

 当たったが、リーダーは怯まずに左手で殴って来た。

 ソードスキル後の硬直に差されたため全く動くことができず、俺はよろけてしまった。

 (クリーンヒットか……割と痛い。)

 自分のゲージを見ると回復していないのもあってイエローに近いグリーンと言ったところ。

 早目に回復し、ソードスキルは控えないとあっという間にやられてしまうな、これは。

 そもそも今は倒すことが目的ではない。アハトの方にリーダーが行かないようにすることだ。

 俺は追撃を避けるためバックステップを踏み、すかさず突撃する。

 リスクはあるが俺が相手をしているリーダーのヘイトがアハトに向かう可能性があるためだ。

 こんなところでアハトを死なせる訳にはいかない。

 攻撃させるだけでもダメだ。

 殴ったリーダーはまだ態勢を整え切れておらずチャンスだと思った俺はホリゾンタルを発動させてリーダーの胴を薙ぐ。

 体勢を立て直したリーダーは棍棒を俺にの頭に叩き込もうとしてくる。

 振り被る様を見て俺は棍棒を持っていない左腕の方向に飛んだ。

 側面に回り込めれば即座に反撃されることはないだろう。すかさずホリゾンタル・アークを発動し、左始動の斬撃と返しの斬撃がリーダーに当たる。

 リーダーが大きく怯んだ、チャンスだ。

 そう思った俺はスラント・アークの構えを取る。

 構えを取った俺の剣は右上から左下に一閃、左下から再び右上にまた一閃した。

 だがリーダーは倒れない。HPを見ると1割以下だったがまだ残っていた。

 「俺に任せろ!!」

 アハトがちょうど終わってこのタイミングで来たらしい。スピードエッジを発動させて3m程の距離を一瞬で詰め、リーダーを撃破することが出来た。

 「ありがとう。」

 俺はそう告げるとアハトは、

 「ど、どういたしししゅて……。」

 と2日ぶりに噛んでいた。感謝されるのに慣れていないのだろうか。

 「先に進むぞ、疲れた。」

 「………。」

 「どうした?」

 アハトが黙ったまま動かない。

 「……美味しいどこ取りをしたみたいでさ、どう言ったらいいか分からなかった。」

 「俺は気にしていない。だから今後気を付ければいい。」

 事実俺は助かった。トドメを譲るのはリスクがある。最後の方は安定していたが最初はダメージを貰ってしまったのもあったため俺はこう考えていたのだ。

 「……ありがとう。」

 声は小さかったが確かに聞こえた。だが俺は

 「止まってると置いてくぞ。」

 と聞こえていないように返すのだった。

 ……小さい声は聞いていないフリをした方がいい。これは俺の持論だ。

 


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