ラブライブ! コネクション!!   作:いろとき まに

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活動日誌20 あいは ・ たいようじゃない? 1 『まきりんぱな』

「それじゃあ……そろそろ帰ろっか?」

「そう? 玄関まで送るわ……」

 

 しばらくリビングでお茶を飲みながら雑談をしていた私達は、立ち上がった花陽さんの言葉で、みんな一斉に立ち上がりお暇することにした。

 その言葉を受けて真姫さんも立ち上がって微笑みながら、見送ってくれることを伝える。

 とりあえず目的は済ませた訳だし、あんまり長居するのは良くないからね?

 真姫さんも予定があって早く帰宅したんだろうし――

 

「……そう言えばさ? 真姫ちゃん、今日用事があったんじゃないの?」

「――え? 別にないけど?」

「だってHR終わったら……先帰るわね? って言いに来てから帰ったでしょ……」

「いや、実際に先に帰ったじゃないのよ。……あれは、ほら? 花陽はアルパカの世話をしてから、日誌を書きに部室へ行くと思っていたから、私は待たずに先に帰るって伝えただけよ?」

「あっ、そう言うこと?」

「……凛には何も言っていなかったニャ」

「――あんた、その時花陽の隣にいたじゃないの! ……と言うより、凛にも声かけたけど何かブツブツ言っていて、聞いていない感じだったわよ?」

「……あー! そう言われてみれば、そうだったニャ! 忘れると大変だから……真姫ちゃんの生徒手帳、真姫ちゃんの生徒手帳……にこちゃんとの2ショット――イタッ!」

「――それは忘れなさいよっ!」

「いったいニャー! ぅぅぅぅぅ……って、忘れずに呟いていたニャ……」

「あはははは……その時にソッと渡しておけば叩かれずに済んだのにね?」

 

 帰り支度をしてソファーから立ち上がった時、花陽さんが唐突に真姫さんに訊ねていた。

 その言葉に「何を言っているのかわからない」って言いたそうな表情で聞き返す真姫さん。

 花陽さんが疑問に思って言葉を繋げると、真姫さんは正論と、考えていたことを「当たり前でしょ?」と言いたげな表情で話していた。まぁ、実際にそうだった訳で。

 その言葉に納得する花陽さん。だけどそんな話を隣で聞いていた凛さんは、突然悲しそうな表情をして、自分には声をかけてもらえなかったと呟く。

 だけど真姫さんが花陽さんに声をかけた時、隣にいたんだって。ただ、声をかけても反応がなかったみたい。 

 そんな真姫さんの言葉で、その時のことを思い出そうとしていた凛さんは――

 ハッとした表情で思い出すと、忘れないように『生徒手帳』って呟いてたことを伝える。

 あー、うん。実際に2日間渡しそびれていたんだし、さすがに凛さんもマズイって思っていたのかな? なんてね。

 ただ、またもや余計な一言を口走り、真姫さんから再び水平チョップをもらっていた。

 それを見ていた花陽さんは苦笑いを浮かべて正論を返していたのだった。

 

 そう、真姫さんの写真は花陽さんが作ったもの。

 まぁ、作っているって教えてもらっただけだから『頼まれて作った』のか『自主的に作った』のかは知らないんだけど。なんてね。

 だから実際に、この場にいるのが花陽さんだけなら――真姫さんはここまで慌てていないのかも知れない。

 だって花陽さんは知っているんだから。

 だから3人だけの時に渡していれば、凛さんは真姫さんに、怒りながら追いかけられることも叩かれることもなかったのかも。

 だけどこの場には、私達が一緒に居合わせている。それで私達にまで知られたくなくて、恥ずかしいから、真姫さんはあそこまで慌てていたのだとも思う。なんてね。

 

 とは言え、その場で生徒手帳を渡していれば、花陽さん達が真姫さんの家にお邪魔する理由はなくなる訳で。

 そうなれば必然的に、私達が真姫さんの家にお邪魔することもなかった訳なんだ。

 真姫さんの家にお邪魔できたって言う貴重な時間も、今日詞を見てもらうこともなかったんだって感じていた。

 これもきっと偶然の生み出した奇跡の欠片――そんな気がする。

 だから、結果的には凛さんが生徒手帳を教室で渡さなくて良かったのかな? って、そんなことを思いながら微笑みを浮かべて花陽さん達を眺めていたのだった。

 

♪♪♪

 

 そんな感じで真姫さんに見送られて、真姫さんの家をあとにした私達。

 とりあえず目的は真姫さんの家だったから、もう花陽さん達と一緒にいても大丈夫な大義名分はなくなった。

 ――いや、誰もそんなことは思っていないんだけどね。

 なので、私達1年生は全員で目配せをして踵を変えそうとしていたんだけど――

 

「……そうだ! せっかくだから、お母さんにお饅頭を買っていってあげようかな?」

「――凛もお土産買って行くニャ!」

「あっ、亜里沙もスラ――い、いえ……お饅頭買って帰ります」

「……いや、亜里沙のそれは、お饅頭じゃないよ?」

「……もぉ、雪穂ぉ……揚げもち取らないで!」

「いや、せめて足を取らせてよ……って、涼風も来る?」

「お邪魔じゃなければ……」

「ぜーんぜんっ! あっ、でもぉ……決してお姉ちゃんの部屋は覗かないでね?」

「――する訳ないでしょ! ……取り次いでもらえるなら嬉しいけど」

「要は見たいってことね? ……どうだったかなぁ? まぁ、大丈夫だとは思うけど――って、花陽さん?」

「……やっぱり根に持って――」

「――いませんから!」

「――んからっ!」

「……いや、凛さん、それ意味わかりませんから」

「ニャンニャンニャ-ン」

「……と、とにかく! 根には持っていませんし……お姉ちゃんの部屋を見て、夢と幻想を打ち砕かれても……決して、お姉ちゃんをキライにならないでね? ってことを言いたいだけです!」 

 

 花陽さんが唐突にお土産を買って帰ると言い出した。その言葉に凛さんも笑顔で賛同していた。

 たぶん去年と同じ――真姫さんの家に行った帰り道。穂むらの前を通り過ぎようと思った時に、お土産を買って帰ろうと思って立ち寄ったら、店番をしていたお姉ちゃんと出会った。

 だから今年も同じように、真姫さんの家に行った帰りに穂むらに立ち寄って、お土産を買って帰ろうと思ったんだろうね。

 その言葉を受けて亜里沙も買って帰ると言おうとして言い間違えそうになっていた。

 だから私が訂正しようとしたら『ハラショー』な回答が返ってきたのだった。

 そんな亜里沙に呆れながら声をかけた私は隣を歩く涼風にも声をかけた。

 涼風は私の家に来たことなかったし、早めに呼びたいなって思っていたからね?

 まぁ、ついでみたいになっちゃったのは申し訳ないんだけど。私らしいってことで許してほしいかな。なんてね。

 すると涼風は遠慮がちに答えていた。たぶん私への遠慮じゃなくて、花陽さん達――あとは、お姉ちゃんへの遠慮だったのかな? 

 あっ! それがイヤだってことじゃなくて、そうだったら良いなって話。

 ほら? 親友が家に遊びに来るのに遠慮しているなんてイヤなんだもん。何となくね?

 とは言っても彼女の本心がわからないから、笑顔で遠慮しなくて良いことを伝えてあげた。

 一応私の家に招待しているんだから、私が答えたって良いよね?

 だけど少し思い出したように、お姉ちゃんの部屋を覗かないように釘をさしておいた。

 もちろん冗談なんだけど、お姉ちゃんの部屋は涼風にはまだ早いのかなって思うんだよ。

 ほら、憧れを抱いている訳だし、ね?

 なんて書いていると、相当お姉ちゃんの部屋が凄いように思われちゃうかな?

 そんなことはないんだけどね。綺麗に片付いてはいるんだよ。

 ただ、物に対する扱いが大らかなだけ! なんてね。

 

 そうそう、部屋と言えば――

 海外PRから帰ってきてから、お姉ちゃんの部屋には大事に扱われるものが増えていた。

 UTXの入学パンフレット。 μ's で撮った写真の数々。そして新たに増えた――

 窓際に立てかけられたケース。

 1度、何が入っているのかを聞いたことがあったんだけどね?

 すごく優しい微笑みを浮かべて何も答えてくれなかったから、それ以上聞かなかったんだ。

 きっと、聞いてはいけないんだと感じていたから。

 だけど合同ライブが終わって、あれは私達の入学式の数日前。

 ちょうど、お姉ちゃん達がローカルアイドルを始めるって決めた翌日だったんじゃないかな?

 朝食を済ませて自分の部屋でくつろいでいた私の耳に、お姉ちゃんの部屋から――

「なくなっているーーーーーーーーーー!?」

 って言う、大きな悲鳴が響いてきたのだった。

 ビックリして、私はお姉ちゃんの部屋へと向かった。

 そうしたら、部屋の外からでもわかるくらいに、慌てているのか、バタバタと部屋の中から物音がしていたのだった。

 なんか邪魔になりそうだったし、声をかけないで自分の部屋に戻ったんだけど。

 突然ピタリと音がしなくなって、気になっていたら――

 バタバタと足音を立てて「ちょ、ちょっと出かけてくるー」って、慌てた声でお母さんに声をかけて、どこかに出かけて行ったお姉ちゃん。

 どうしたんだろうって気になっていたら、数時間後に戻ってきた。

 そしてバタバタと足音を立てて自分の部屋に入ったと思ったら、また静かになったんだよ。

 だから、気になってお姉ちゃんの部屋を覗いたら――

 大事そうに、丁寧に、1本のマイクを拭いていたお姉ちゃんの姿が目に入った。

 とても幸せそうに、だけど決意のこもった瞳でマイクを眺めて拭いていたお姉ちゃん。

 拭き終わると立てかけてあったケースを開けて中にしまっていた。

 それで『マイクケース』なんだって理解したんだよ。

 もちろん、どう言う経緯でお姉ちゃんが持っているのかは知らないんだけどね?

 だけど、とても大事にしているんだと思えた。

 だって、その時のお姉ちゃん――なんだろう。決意って言うのかな?

 そんなことを感じるような真剣で、でも瞳を輝かせて、マイクを拭いていたから。

 だからお姉ちゃんにとって、そのマイクもパンフレットや写真のように――

 お姉ちゃんの目指す道を照らしているんだと思っているのだった。

 

 話を戻すね? 

 そんな風に涼風と話をしていたんだけど隣を歩いていた花陽さんが急に表情を曇らせたから訊ねたんだけど?

 また真姫さんの家に伺う前の話を蒸し返そうと――いや、していたのは私なんだけどね?

 悲しそうな顔をして「根に持っているんだよね?」って言いそうだったから私は慌てて否定をしていた。

 ――のに、凛さんが例のノリで繋いで言うもんだから呆れて声をかけたのだった。

 なのに凛さんは全然気にしていないようで、両手を猫の手にして、リズムを取って上下に振りながらこんなこと言うんだもん。

 呆気に取られそうになった自分を引き戻して、焦り気味に花陽さんへのフォローと涼風に真相を伝えたのだった。

 


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