赤き龍の帝王、それが赤龍帝である、ドライグの二つ名だ。
この世に二匹の天龍あり。
赤龍帝、ドライグ。
白龍皇、アルビオン。
相対する能力、倍加と半減。
故に争い、故に封印されし二天龍。
のはずなのに。
(なんで私のところに増えるかなぁー?)
兄である一誠に宿っているはずのドライグは、何故か私に。勿論、赤龍帝の篭手もだ。
しかも、敵対関係?になりそうな人間と対峙しているために赤龍帝の篭手は、展開されている。危なくない?
これ悪魔に見つかったら即座に眷属にされるような気が……気の所為?
しかも、ドライグ。
私の方に宿っている方が言うには兄の方にも同じ力が宿っているという。
まじで?
性格の相性的には兄の方がいいらしいが。
才能は、私の方にあるらしい。
とりあえずは目の前の槍持をどうにかしたい。
しかも少し脅すために力を込めたのに笑ってるよ!
すごく、怖いんですが。
『おい、相棒、あまり出しすぎると悪魔どもに気づかれるぞ』
まじかい。
「私にもう、関わるな」
ドライグにならった転移の魔術で家の近くに逃げる。
「ほんと、どうしてこうなったのかな」
しかも英雄なる運命をその手に…はほとんどプリヤのクラスカードに取ってつけたような能力を増やしたもの。
『あきらめるんだな、相棒、ドラゴンを宿す限り平和なんぞありえん』
嫌な事実だねぇ。
はあぁとため息をつき家に帰る。
-へぇ、あんたが俺の大将か―
とんでもない声が聞こえたような気がした。
★
夜、誰もが寝ている時間に起きる。
「…今日も行くか」
龍と英雄、その二つを宿しているせいか血がたぎる。
体の奥から力がわく、
血が騒ぐ。
気持ちが踊りだす。
すでに体が温まっているが暴れたくなる気持ちを抑えて部屋の窓を開ける。
腰から赤い龍の羽を生やしそれへと飛ぶ。
もちろん窓は閉めた。
軽く血管が浮き上がる。
夜のはずなのに昼のように見える。
ああ、楽しい。
腕で、足で、羽で、頭で。体すべてを使い夜の風を切る。
今この瞬間だけは、兵頭命ではなくただの転生者として、楽しいなぁ。
だけど、この瞬間、この時間いまはぐれ悪魔が命をむさぼっていると思うと怖くなる。
自分は戦えるのか?
相手を殺せるのか?
敵に立ち向かえるのか?
頭の中にぐるぐると思い浮かぶ。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
―ああ、悪魔かー
―ドクンっ!―
心臓が大きくはねる、視界が白に染まっていく。
これは…ダメ・・な・・奴・・だ。頼・・む・よドラ・・イ・・グ
『ああ、任せろ』
★
「また、飲まれたのか」
気が付くとベットの上だった。
『ドラゴンに大英霊の戦気だ。お前がどれだけ強くても精神だけは英雄とは比べられないさ、それが百以上。飲まれて当たり前だ』
ドラゴン、赤龍帝であるドライグの戦いたいという戦闘意欲、それに数多くの英雄たちの悪を滅ぼすという気持ち、さらに戦闘意欲…一般人の私の精神はいつも飲まれてしまう。
一度、性欲にすら飲まれてしまった。
『あれは、いろんな意味でひどい事件だったな』
多分、フェルグスだろう。
くそう、あのケルト戦士め。
呼び出せるようになったら男としての象徴をつぶしてやる。
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