今回はクラリスです。ショッピングするのかどうかは作者の気分と、実力次第。
二部構成です。では前編を、どうぞ。
昨日は地獄だった。
この旅を始めてからは本当にいろんなことがあって、数え切れないほどの苦行は受けてきたつもりだ。かなり苦渋を舐めさせられたし、後悔だって無数にある。
ただ、昨日の星晶獣との戦いはベスト3には入るほどの過酷さだった。そう断言できるし、なんて言ったって数十人の協力者が口を揃えてもう二度とやりたくないと言うほどの相手だ。
本当に生きていてよかった。死者は出なかったものの、全員が満身創痍だったのだ。
と、いうわけで。
「昨日はありがとう。みんなのおかげで今もこうやって日常を送れてるよ」
一緒に闘ってくれた仲間や、それを支援してくれた人たちを集めて深く礼をする。数秒後、顔を上げて僕は再度口を開いた。
「今日は特にやることはないよ。それぞれ疲れを癒して、明日ここを出発しよう。
はい、解散。その声に答えるように喜び叫ぶ者、何も言わずどこかへ行く者などなど。結構な人数ではあるので多種多様な反応である。
さて、僕も昨日の疲れを癒すとしようかな。
報告書などにより睡眠時間をあまり取れていなかったし、とりあえず寝ようかと思い自室に足を向ける。
しかし、僕の腕を引っ張る誰かにより進むには至らなかった。
引っ張る、というより抱きついているらしい。今も左腕には服越しでもわかる女性的なふくらみによる柔らかな感触を感じている。
ちょっとドキッとしつつ、そんなことをお首にも出さないようにして僕は振り向いた。
「だんちょー待ってよ~!」
その正体はクラリスだった。僕は眠い頭を切り替えて足を進行方向とは逆に向き直す。
「昨日はお疲れ様。で、どうしたの、クラリス?」
「だんちょーもお疲れ様っ✩」
礼を言い合ったあと、クラリスは大したことではないんだけどね、と銘打って話し始めた。
「いやー、だんちょーこのあと暇かな、って思ってさ!」
「まあ、暇……といえば暇かな」
自室に戻っても寝るだけだし、特に決まってすることはないから多分暇なはず。
「あー、眠い……よね? やっぱやめやめっ! ごめんね、引き止めちゃって!」
普段は快活で元気が有り余っている元気っ子少女だが、どこか察しがいいというか、思いやりがあるというか……。
気を使わせちゃ悪い、とか思っているんだろう。全く、察しが良すぎるのも考えものだ。
「それじゃあ気になって眠れないよ」
「えっ!? ご、ごめ――」
「少し目も覚めてきたし、暇だなー」
「……だんちょー、わざとらしいよぉ」
……うるさい。自分なりに頑張った結果だ。すごくクラリスには笑われているけれども、まあ、後悔はない。
「ほら、何するの?」
「んーとね、これなんだけど……」
そうして説明されたことをまとめると、どうやらクラリスは出かけるので一緒に来て欲しい、ということのようだ。
いわゆるショッピングである。
「いや、それなら僕じゃなくて同じ女の子の方がいいんじゃないの?」
「そーなんだけどね? だんちょーとは年も同じだし、ここにはヒューマンの年齢の近い女の子って少ないじゃん?」
言われてみれば、確かにそうだった。
誰だってセンスというものがある。それは人それぞれ違うものを持っているが、それにも大体これっていうベースとなるものが存在する。
しかし、それは種族間の話であって、ヒューマンであるクラリスと別種族――エルーンはともかく、ドラフとハーヴィンは特に――はかなり違っていることが多い。
もちろんそれは服のセンスにも影響している。
「それに、だんちょーと一緒に行きたいし……」
何か言っていたが考え込んでいて聞き逃してしまった。大事なことだったらもう一度言ってくるだろうし、まあいいだろう。
「まあ、僕は構わないけど」
「え!? いいの!?」
「いいよ。てか誘ったのそっちでしょ」
「やったっ✩ だんちょーありがとー✩」
ピョンピョンと喜んでいる。まあ悪い気はしない。
クラリスとは長い付き合いだし、彼女の抱えているモノのことも少しは知っているから、こうやって喜んでいるところを見るのは僕もとても嬉しかった。
「じゃあ、ちょっと準備してくるからっ!」
そういってクラリスは駆けていった。
「走ると危ないよー」
「へーきへーきっ✩」
流石、団員中ナンバーワンの元気さを誇る少女なこと。
「さて、僕も準備しないとな」
振り回されることを覚悟していこう。僕は少し先のことを想像して、苦笑いを浮かべながらようやく自室へと向かうのだった。
二部構成になるとは思ってませんでした。
というかクラリスを書こうとは思ってなくて、最初はアンスリアって考えてたんだけどね。特に思いつかなくて唸りつつ流されるように書いてたらこうなってました。
私のクラリス愛が収まるところをしらない。
(なお、クリスマスVer欲しさに課金して金欠に陥った模様←クリクラ持ってません)