IS~Under Dog~   作:アセルヤバイジャン

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AAのモッピーは好きですが、主人公を蹴り殺しかねないヒロインはちょっと…(アニメ感


第七話

 

 

 

 

 

 

夕暮れの保健室、その一角のベッドの上で、呆然とした雰囲気で天井を見上げている叢真の姿があった。

 

昼間の襲撃の後、叢真はアリーナの医務室へ運ばれ検査を受けた後、学園校舎側の保健室へと移された。

 

怪我は打ち身や打撲、軽度の火傷程度だが、叢真の気持ちが沈んでいるのは怪我が理由ではない。

 

先程まで室内に居た、担任教師からの無慈悲な一言が原因だった。

 

『無謀とは言え良く篠ノ之と教師を守った。だが機体が大破した事実は戦績に記載しなければならない』

 

言葉にすればそれだけだが、叢真は理不尽を感じてならなかった。

 

戦績に機体大破と記載される、つまりは叢真は今回試合で戦ってもいないのに機体を大破させた者として記録されてしまう。

 

襲撃事件について緘口令が敷かれ、上部組織であるIS委員会以外には伝わらない様に隠される。

 

だが叢真の機体が大破した事実は隠しようがない、その為、本来なら生徒と教諭を庇った英雄である叢真は。

 

出場すらしてない試合の最中に機体を大破させた間抜けという記録が残ってしまう結果になった。

 

あまりにも、あまりにも理不尽な扱い。

 

だが叢真は担任である織斑 千冬に文句を言う事は無かった。

 

言っても無駄だと理解しているから。

 

弟のための噛ませ犬、当て馬として自分を利用している担任に、何を期待しろと言うのか。

 

織斑 千冬本人にその気が無かったとしても、叢真はそう思っている、そう思い込むだけの下地が出来ていた。

 

せめてもの慰めは、陸奥教諭が来て無茶を叱ると共に、手を取ってありがとうと感謝と労いの言葉をくれた事か。

 

担任よりも、別のクラスの副担任の方が教師らしい仕事をしていると、内心吐き捨てる叢真。

 

その陸奥教諭が連れてきた篠ノ之 箒の存在が無ければ、ここまでやさぐれる事は無かっただろう。

 

教師である自分より前に謝る相手が居るだろうと、謝罪の為に陸奥教諭が連れてきた篠ノ之は、憮然とした顔で、何故自分が謝罪しなければいけないのかという態度が滲み出ていた。

 

そしてあろうことか、自分を庇って救ってくれた叢真に対して「余計な事を」「助けてくれなど頼んでいない」「一夏の応援の邪魔を」「いざとなれば一夏が助けてくれた」など、信じられない言葉を発した。

 

これには陸奥教諭も絶句し、叢真も我慢の限界になり、色々と言い返してしまった。

 

『命がけの戦いをしている最中に余計な事をしたのはどっちだ、お前のせいで余計な被害が出て、下手をすれば陸奥先生が犠牲になっていたんだぞ!』

 

正論アンド正論な叢真の言葉だが、憤慨した篠ノ之に届く筈もなく。

 

彼女は陸奥教諭の静止も振り切ってそのまま出ていった。

 

普通なら厳罰処分も当たり前の事をやった篠ノ之だが、処罰は反省文のみ。

 

篠ノ之 束の妹、その立場故の軽い罰。

 

何度も謝罪する陸奥教諭が可哀想になってくる叢真、本来ならきちんと処罰したいのだろう、だが担任である織斑 千冬と学園上部の意向には他のクラスの副担任である彼女は逆らえない。

 

「どうして…」

 

どうして、自分ばかり理不尽な目に合い、そんな自分に味方してくれる人は被害を受けるのか。

 

まるで自分が疫病神になった気分になってきて、叢真はそっと布団に潜り込んだ。

 

自分に理不尽な世界から身を隠す様に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事件から数日、学園は平穏を取り戻し、中止になった試合から今度は別の話題へと移り変わっていた。

 

そしてその話題を独占したのは、またも転入生の話題である。

 

「今日から皆さんと一緒に勉強をする、シャルル・デュノアくんと、ラウラ・ボーデヴィッヒさんです!」

 

副担任である山田教諭の言葉と共に、金髪の貴公子が柔和な笑顔を浮かべ、銀髪の少女は逆に表情を崩さない。

 

三人目の男性操縦者に沸き立つ教室だが、叢真は訝しげな表情を珍しく浮かべていた。

 

二人目である自分が見つかった時ですらお祭り騒ぎだったのに、そんなニュースや発表も無い三人目、しかも中性的と言うより女性寄りの愛らしさのある顔に、華奢な肉体。

 

男装していると言われた方がしっくりくる見た目に、叢真は懐疑的だった。

 

そして銀髪の少女だが、そちらは名前を言ったと思ったら織斑の方へ歩いていき、突然の平手打ち。

 

「貴様が教官の弟など、断じて認めない!」と宣言して教室を静まり返らせた。

 

この事に関しては、「また織斑関連か」と叢真は関わる事を避ける事にした。

 

ただでさえ織斑の噛ませ犬という嫌な立場に立たされているのだ、これ以上関わりたくないと思うのは誰もが同じだろう。

 

そしてホームルームも終わり、二組との模擬戦闘訓練の為に着替えてグラウンドへ急ぐ面々。

 

三人目らしいデュノアを世話してやれと織斑教諭に言われ、快諾する織斑と曖昧に頷く叢真。

 

言動がホモ臭い織斑の事だから甲斐甲斐しく世話を焼くだろうという叢真の考えだが、実際その通りで。

 

デュノアの手を取って走り出していた。

 

「急ぐからって手を繋ぐ必要無いだろう…」

 

それにデュノアも頬を染めていたのを間違いなく見た叢真。

 

もし男装ならきな臭いし、本当に男子なら…クラスの腐女子が燃え上がってしまう、否、もう燃え上がっていた。

 

そんな腐海オーラから逃げる様に、叢真も更衣室を別ルートで目指した。

 

「なんだよ叢真、途中で居なくなったと思ったら先に着いてるなんて」

 

「お前達が仲良く先に行ったんだろう」

 

「な、仲良くだなんて…」

 

何故そこで照れるのかデュノア、隠す気無いのか、それとも同性愛側なのか。

 

ますます関わるのが怖くなった叢真は、二人から少し離れて着替える。

 

チラリと警戒して盗み見ると、デュノアは制服の下に既にISスーツを着ていたらしく手早く着替えている。

 

それを織斑に見られて、早いなだの裸だから引っかかるよなだの話して赤面するデュノアと気づかない織斑。

 

「なー、ポジションも気になるよな叢真」

 

「あぁそうだな」

 

股間のポジションとか女子には分からない話題らしく、ポジション…?と小さく疑問を浮かべている。

 

その上、オーダーメイドのスーツがフランスのデュノア製と分かり、名前の通り社長の子供である事も判明。

 

この段階で、叢真は嫌な想像が出来た。

 

フランスのデュノア社と言えばラファール・リヴァイブで有名なIS企業であり、政府にも口利きが出来る大企業だ。

 

最近では第三世代機の開発遅れなどが噂されているが、それでもIS関連企業の世界シェア三位に入る会社。

 

政府に働きかけて、自分の子供をIS学園に入学させるのは造作もないのだろう。

 

「となると…企業スパイ…?」

 

もしもデュノアが女性であった場合、男装して入学した目的は男性操縦者、つまり織斑と自分、そのデータか身柄と想像出来る。

 

一応織斑にも注意を…と思った叢真だが、よく考えたら担任があの織斑 千冬である。

 

下手をするとまた生贄にされかねないと悟り、叢真はそっと距離を取った。

 

度重なる理不尽で、三組以外に不信感が付いて回る様になってしまった様だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅん、あれが3人目…ねぇ」

 

「秋雲さんレーダーが反応する…?しない…?本当にアレ男子?」

 

「あら、秋雲さんが反応しないだなんて…本当に男装かもしれないわね」

 

屋上の一角、幾つかのグループが屋上で食事している中、三組の生徒と叢真も織斑達から死角になる場所から様子を伺っていた。

 

本日一緒なのは、高校一年生とは思えない色気を醸し出している夕雲と、スケッチブック片手になんとか妄想を駆り立てようとしている秋雲、お弁当に夢中なこちらは高校生とは思えない幼さの巻雲、そして叢真のコップにお茶を注いでくれる風雲という少女。

 

学食へ行こうとした叢真を四人で拉致し、一組の転入生について詳しく聞かせてとお強請りされてしまった。

 

元より学園生徒で唯一信用している三組生徒だ、叢真は己が感じている疑惑も合わせて説明した。

 

「確かにカッコイイけど…女って言われると確かにって思うね」

 

「むふぅ~、夕雲姉さんのお弁当おいひぃ~、叢真さまぁ、ほらこれ美味しいですよぉー」

 

苦笑している風雲と、お弁当に夢中な巻雲、甘え袖なのに器用に夕雲の作ってきたというお弁当をあーんさせてくる。

 

「様は止めてくれないか…あ、あーん…」

 

「えへへ~、でも叢真さまは巻雲の王子様ですからー」

 

何がどうなって王子様なんて似合わない立場にエントリーしたのか、三組で一番幼い見た目の少女から様呼びされるという恥辱プレイに悶ながらも口を開く叢真。

 

「お、巻雲ナイスゥ!(本音」

 

そしてその様子をスケッチする秋雲、情報通な立ち位置に居るが、本来は腐女子サイドが立ち位置らしい。

 

「秋雲、頼むから織斑と絡めるのだけは止めてくれ…冗談抜きで」

 

夕雲特製ミニハンバーグを咀嚼し、げんなりした雰囲気でBLは止めてくれと懇願する叢真。

 

既に一組生徒の腐女子会に犠牲になっているので、これ以上広がるのだけは防ぎたい模様。

 

「フランスデュノア社の御曹司で代表候補生…?今まで隠していたにしてもおかしいわよねぇ」

 

「代表候補生ならそれなりの露出あるもんねぇ、それが一切無いのに突然こんな半端な時期に送ってくるなんて…」

 

怪しさしかないと結論付ける夕雲と風雲。

 

「やっぱりそう思うか」

 

「えぇ、言われて見れば仕草とか動きが女性っぽいわあの子…」

 

「夕雲姉さんがそう言うなら、巻雲もそうとしか見えませんー」

 

同年代から姉さんと言われるだけあって、夕雲という少女はある種のカリスマがあるのだろう。

 

そんな夕雲が女性と判断したなら、もう女性にしか見えないとおにぎりを食べながら頷く巻雲。

 

「そういやもう一人の方は?なんか織斑にビンタかましたってんで噂になってるけど」

 

「あぁ、あっちはどうも本物の軍人らしくてな、命令で来たのか知らんが兎に角不服な態度で馴れ合おうとしてないな」

 

授業での実習でも、ボーデヴィッヒは専用機持ちなのに特に指示も何もせず、結局近くに居た叢真がフォローする羽目になった。

 

織斑 千冬を教官と呼ぶ事から、何かしらの因縁があって織斑を攻撃した事は想像出来る。

 

「因縁絡みとハニトラ疑惑ねぇ…一組って騒動が絶えませんなぁ」

 

「あー!秋雲、それ巻雲のプチトマトですよっ!」

 

「もう食べちゃったもーん!」

 

「むきーっ!」

 

「あらあら」

 

「あーもう、すぐ喧嘩するー」

 

ケラケラと笑いながらヒョイぱくとトマトを食べると、それを狙っていた巻雲が怒り出し、甘え袖をぱたぱた。

 

どうやら秋雲がからかって巻雲が怒るという流れが出来ているらしく、夕雲は苦笑し、風雲は頭を抱える。

 

そんな、何気ない光景が、日常が、今の叢真には癒やしだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

土曜日の自由時間、叢真は整備室で懸命にジェガンの修理を行っていた。

 

「すみません先輩、貴重な自由時間を…」

 

「なんのなんの、むしろ自由時間にISを弄れるんだから感謝したい位よ」

 

「明石さん、この装甲はどうすりゃぁええか?」

 

「あ、そこは先に内部弄るから置いといてー」

 

作業着を来て整備を続ける叢真と、その指導をする明石、そして三組有志の整備班。

 

広島弁の子に指示してから、額の汗を拭うと組み上がったジェガンのフレームを見る。

 

「それにしても、流石はアナハイの機体よね。コアさえ無事なら短期間で修理可能なんだから」

 

アナハイム・エレクトロニクスが製造管理しているジェガンを始めとしたISは、どれも共通の規格であるユニバーサル規格を採用しており、傘下の企業やサード企業にもこれを徹底させている。

 

その為、部品やパーツの互換性が高く、パーツも大量に確保されている。

 

装甲や末端部の部品はこの前発注した際に予備を注文してあった為、たった数日で形に出来ていた。

 

「後は細かい調整して武装を搭載したら元通りのスタークジェガンよ!」

 

「しかし、良いんでしょうか。学園保有の機体をこんな好き勝手改造して…」

 

「あらあら、それも通達されてないのね」

 

疑問を零した叢真の背後でする声に、ビクリと驚いて後ろを見ると、悪戯っぽい笑みを浮かべた陸奥教諭が立っていた。

 

「せ、先生…いつの間に…」

 

気配もせずに背後に居た事に驚く叢真と明石。

 

「雨宮くんもまだまだね、はいこれ。一組の副担任から預かってきたわ」

 

陸奥教諭から差し出されたのは、大量の書類。

 

「なんですかこれ…」

 

「学園のジェガンの無期限貸与の書類よ。これで実質的にこのジェガンが雨宮くん専用機になるって訳」

 

「「「おぉー!」」」

 

陸奥教諭の言葉に、集まってきた整備班が歓声を上げる。

 

自分達が組み上げて仕上げたISを、叢真の専用機に出来る。

 

嬉しさで抱き合う生徒も出る中、相棒のジェガンが自分の専用機になる事に喜びを噛みしめる叢真。

 

「……ありがとうございます、先生」

 

「お礼は、書類にサインしてからでね?この通りたくさんあるから」

 

流石IS関連、どっさりとどう見ても100枚以上ある。

 

「後はやっておくから、叢真くんはサインしちゃいなさい」

 

「はい…後お願いします先輩…」

 

ちょっとゲンナリしつつ、でも相棒が本当の相棒になるんだからと気合を入れて用意されたテーブルへ向かう叢真。

 

「よし、それじゃこっちも頑張りましょうか!」

 

「うちらに任しときぃ!」

 

「ガンガン組み上げるでぇ!

 

広島弁に関西弁、方言が多い整備班だが、お陰で雰囲気が明るくて良い。

 

やる気もあるので、教える明石としても楽しい時間である。

 

やがて怒涛のサイン攻めが終わり、右手を揉み解しながら叢真が戻ってくる。

 

さぁ自分も整備に…と思ったらクイクイと袖を引っ張られる。

 

「ん…?神通先輩…?」

 

「叢真さん、そろそろ訓練の時間ですよ…」

 

おずおずと、しかしはっきりと訓練の時間だと告げる神通。

 

「え、いやしかし、機体がまだ…」

 

「予備機であるA2型を借りて来ました、射撃訓練なら十分に行えます。さぁ、行きましょう」

 

奥ゆかしい態度なのに、事訓練になると鬼になると有名なのが神通先輩である。

 

問答無用で連れて行こうとするので助けを求める様に明石達を見るが、全員が目を逸して手を振っていた。

 

鬼教官神通が怖いのは叢真だけではない様で。

 

華奢な身体の何処にそんな力ががあるのか、叢真を引きずる様に歩く神通。

 

「せ、先輩、歩きます、自分で歩きますから…!」

 

「あっ…わ、私ったらつい…ごめんなさいっ」

 

叢真の言葉で、自分がかなり強引な事をしている事に気付いたのか、顔を真赤にしてペコペコ謝る。

 

「いえ、気にしてませんから…」

 

「あははー、神通ちゃん訓練になると性格変わっちゃうからね~」

 

「な、那珂ちゃん…っ」

 

そこへひょっこり現れたのは、シニヨンヘアーと笑顔が可愛らしい2年の先輩だった。

 

「お知り合いですか先輩」

 

「え、えぇ、私と同じ代表候補生で…」

 

「はーい、IS日本代表候補生のアイドルー、那珂ちゃんだよー☆」

 

「アイドル…?……えぇと、那珂先輩?ですか」

 

「ノンノンノン、名前は愛情を込めて、な・か・ちゃ・ん☆リピートアフタミー?」

 

「な、那珂ちゃん…先輩」

 

「もー、真面目だぞそーちゃん!」

 

「ちょっと那珂ちゃん、いきなり馴れ馴れしいわよ…!」

 

グイグイグイグイ来る先輩に、戸惑うしかない叢真。

 

だが相手の那珂ちゃんは構うことなくグイグイ押してくる。

 

流石に神通が止めるが、それでも名前を呼ぶ時は那珂ちゃんが厳命されてしまった。

 

「そーちゃんの訓練するんでしょ?那珂ちゃんも見てあげる、キャハ☆」

 

代表候補生なのだから神通同様有能な筈なのだが…どうにもキャラが濃い。

 

いきなり3組の愛称であるそーちゃん呼びだし。

 

濃すぎて色々心配になるが、代表候補生の一人であるだけの事はあるらしく、アリーナに到着するとその一端が垣間見えた。

 

「射撃武器の特性を理解することが先ず大切だよー☆はい、那珂ちゃんの言う通りに撃ってみてねー!」

 

キャラは濃いしノリは軽いが、その指導は確かな物だった。

 

射撃武装で大切な特性と特徴を実地で教え、その特性から戦闘時の戦略の組み立て方まで確りフォローしてくれる。

 

最初は弟子である叢真を取られて不満そうな神通だったが、那珂ちゃんの指導に何も言わないと言う事は、その指導が正しいという証拠でもある。

 

「そうそう☆そーちゃん筋が良いね、神通ちゃんと陽炎ちゃんの基礎訓練が生きてるのかなっ?」

 

機体が動かせなくてもイメージトレーニングや基礎体力作りなどでコーチをしてくれる陽炎と、実地訓練で鍛えてくれる神通。

 

その二人の教えのお陰で、叢真の操縦テクニックは那珂ちゃんでも満足する物に仕上がっているらしい。

 

「およ?なんか騒がしいねー?」

 

「あれは…ドイツのレーゲン型…」

 

アリーナの反対側が騒がしいので視線を向ければ、ボーデヴィッヒがレーゲン型と言われる専用機を纏い、アリーナへ現れていた。

 

その行き先には、先程から訓練していた織斑達。

 

また騒動かと思いつつ、ジェガンA2型のセンサーを向ける。

 

どうやらボーデヴィッヒが織斑に喧嘩を打っている様だが、織斑がそれを受けない様子。

 

まぁ流石に許可を取ってない戦闘行為を始めるほど織斑も喧嘩っ早くない様子。

 

だが、それに焦れたボーデヴィッヒが先に手を出した。

 

レーゲン型に搭載された大型レールカノンが火を吹き、織斑に当たるかと思われたがそれはデュノアが防いでいた。

 

「止めた方が良さそうですね…」

 

生身の生徒も多いアリーナ内での発砲、正気の沙汰ではないと飛び出そうとする叢真。

 

「待った☆もう神通ちゃんが行ってるよ♪」

 

「え…」

 

だが那珂ちゃんの言葉に立ち止まり、センサーに注視すると、睨み合うボーデヴィッヒと織斑達の間に浮かぶISが出現していた。

 

「そこまでです。アリーナ内での許可のない戦闘行為は禁止されています。ISを装備していない生徒も多いのに正気ですか貴方達」

 

ガチャリと、ボーデヴィッヒには右手のビームライフルを、織斑側にはシールドに装備されたビームキャノンを向けて牽制する神通。

 

突然現れた先輩の言葉とその言葉に込められた気迫に一瞬動けなくなる面々。

 

「くっ…日本の代表候補生か…ISをファッションか何かと勘違いしている奴らだけでは無いという事か…」

 

「そちらも、喧嘩を売られたからと言って売り返すのは止めなさい。無用な被害を出したいのですか?」

 

「す、すみません…」

 

鋭い視線を向けられて萎縮するデュノア、織斑は不服そうだが。

 

『そこの生徒!何をしている!?』

 

「こちら、2年の神通です。喧嘩を始めようとした一年生を止めた所です。はい、はい、ご心配をお掛けしました」

 

アリーナの管制室からの放送に、神通が通信を繋いで事情を説明。

 

「戦いたいならちゃんと場を整えてからにしなさい、良いですね?」

 

「ちっ…運が良いな、今日は引いてやる…」

 

織斑にそう言い放ち、ISを解除してアリーナから出ていくボーデヴィッヒ。

 

それを見送った神通は武装を解除すると、織斑達に管制している教師にちゃんと経緯を説明する様に言いつけて叢真の元へ戻ってくる。

 

「流石ですね、神通先輩…」

 

「そ、そんな…この位、代表候補生なら簡単ですよ…」

 

叢真に褒められて真っ赤になって否定する神通。

 

「神通ちゃんレベルの事が簡単ならあそこにいる代表候補生の子達だけで収まったと那珂ちゃん思うなー」

 

那珂ちゃんの言葉に同意な叢真。

 

明らかに一年の代表候補生とレベルが違い過ぎる。

 

ISを装備していた叢真達すら気づかない内にISを纏って接近し、プロ軍人であるボーデヴィッヒが気づかない内にロックオン。

 

神通が並の実力ではない事を痛感し、そんな神通に教えを請えている事に深く感謝した。

 

「さ、続きを始めましょう」

 

「はい」

 

だからこそ、血肉にする為に叢真は神通の地獄の特訓に向き合った。

 

その代償は、疲労困憊して死んだように眠る今夜の自分だった。

 

 

 

 




箒さんは陸奥先生には謝罪してますが、叢真相手には「自分の声援で盛り返した一夏が助けてくれた筈」とか乙女()な事考えてたので謝罪しませんでした。
そういう所があるキャラだなーとアニメとか見てて思ったもので。
不快に感じた方が居りましたら申し訳ないです。



そして神通先輩の指導マジ鬼指導

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