IS~Under Dog~   作:アセルヤバイジャン

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いくら応援したいからってアレはないわーと思ったアニメ回


どうでもいいけどジェガンのシールドは地味に好き


第六話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3組生徒が叢真を労い、彼の悔しさと無念を少し癒やした次の日。

 

叢真は夕立や時雨、陽炎、秋雲らと共に寮から学園へと足を運んでいた。

 

「ふむふむ、それじゃ叢真っちの次の目標は公式戦での勝利と」

 

「あぁ…クラス代表戦は出れない以上、生徒全員に参加権利がある試合には全て出ようと思ってる」

 

メモ片手にインタビューをする秋雲と、真面目に答える叢真。

 

実は秋雲は新聞部の伝手から情報を貰う代わりに叢真の専属記者としての役目を与えられており、こうして色々と聞き出している。

 

オタク気質な彼女だが、嘘や誇張は絶対に伝えないと公言しているし、叢真も信頼している。

 

昨日の事で吹っ切れたのか、叢真の表情にも言葉にも少し明るさが戻っていた。

 

とは言え歩く仏頂面、素人目にはその判断は難しい。

 

「そーちゃん今日はご機嫌っぽい?」

 

「そう…だな。皆のおかげで…な」

 

歩く叢真の周りをクルクル周りながら首を傾げる夕立に苦笑して頭を優しく撫でる。

 

傍から見ると飼い主と飼い犬である、これには陽炎達も苦笑するしかない。

 

「叢真の機嫌が分かるのは夕立くらいよね…」

 

「だねぇ」

 

「え?僕も分かるよ?」

 

「「えっ」」

 

「え?」

 

苦笑した陽炎の言葉に同意する秋雲だったが、時雨も分かると自己申告。

 

思わずハモって唖然とする二人、それに対して何かおかしい?と首を傾げる時雨。

 

「?、どうかしたか?」

 

「ぽいー?」

 

「あ、うぅん、なんでもないよ」

 

先を歩く二人の言葉に、足早に追いかける時雨。

 

「……あの子も犬っぽい所あるわね」

 

「忠犬とやんちゃ犬って感じだねぇ」

 

二人は尻尾が生えている時雨と夕立の姿を幻視しつつ、顔を見合わせて叢真達を追い掛けた。

 

四人と別れて自分のクラスへ足を運ぶと、何やら教室内が騒がしい。

 

「鈴…?お前、鈴か!?」

 

「そうよ、中国代表候補生、鳳 鈴音。久しぶりね、一夏!」

 

教室の入口で、一人の生徒が仁王立ちしていた。

 

どうやら織斑の知り合いらしく、驚いた顔をした織斑と生徒、そしてそれを興味深げに見守る1組生徒という構図が出来上がっている。

 

叢真はまた織斑の関係者か、と嘆息。

 

教室の後ろから静かに入り、机にさっさと座ってしまう。

 

織斑の交友関係にも色恋沙汰にも興味はない叢真は、そのまま今日の授業の準備を始め。

 

「さっさと教室に戻れ」

 

「は、はい…。一夏!また後でね!」

 

SHRの時間なので既にやってきていた織斑千冬に叱られた少女が織斑に向けて言葉を残して去っていった。

 

一波乱ありそうな雰囲気ではあるが、叢真は自分の事が忙しいので基本関わらないスタンスを決め。

 

何やら異様な雰囲気を醸し出している篠ノ之とオルコットを視界に入れない様に努力するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほー、アレが中国の代表候補生ねぇ…チンチクリンだな」

 

「本人の前で言うなよ長波、あの手の人間はチビ・まな板・ミニマムとか禁句だぞ」

 

「詳しいね嵐…」

 

昼休み、織斑に一緒に食おうと誘われるが、両側に陣取る篠ノ之・オルコットが「邪魔するな!」と睨んできたので悪いが先約があると退避。

 

なんで誘われる側の俺が邪険にされなければならないと常識が足りない乙女二人に嘆息しつつ、丁度学食へ行こうとしていた3組のイケメン組と遭遇、一緒する事になった。

 

学食でそれぞれ好きなモノを頼み、席を確保すると、何やら反対側の座席で織斑を中心に3人の女子生徒が姦しい。

 

篠ノ之、オルコットに加えて朝も襲来していた鳳が何やらギスギスした空気で食事をしており、それに気付いた長波達が野次馬よろしく眺めているのが現状だった。

 

無論、興味が無い叢真は本日のA定食に舌鼓を打っている。

 

「生姜焼きは絶品だが、出汁巻き玉子は機械だな…」

 

「え、そんなの分かんの?」

 

「俺には手作りと機械の違いが分からないんだけど…」

 

綺麗に焼かれた出汁巻き玉子、手作りにも思えるし機械と言われればそんな気もする。

 

「母親が小料理屋をやっていてな。出汁巻き玉子にはうるさいんだ、俺は」

 

「叢真が自慢気に言うなんて、相当好きなんだな玉子…」

 

どこかドヤ顔の叢真に、苦笑する嵐。

 

長波は何処を見れば判断出来るんだと玉子焼きを持ち上げて首を捻っている。

 

「お、織斑争奪戦は篠ノ之オルコット連合が勝ったみたいだな」

 

嵐の言葉に視線を向ければ、確かに鳳がラーメン丼ぶりを片付けながら立ち去っていた。

 

何か捨て台詞を残している様にも見えるが、叢真は興味を失い出汁巻き玉子を頬張る。

 

やはり母が作った出汁巻き玉子が自分には一番だなと内心思いながら。

 

「そう言えばジェガンの修理はまだかかるのか?」

 

「電装系の修理は終わってるが、武装の予備が無いそうだ。クラス対抗戦も俺には関係ないから入荷待ちになるな」

 

「破損したスラスターも数日中には直るし、そしたら模擬戦しようよ。アタシ達も訓練機借りてさ」

 

明石に告げられた修理状態を思い出しながら嵐の問い掛けに答えると、長波が拳を握りながら楽しそうに提案してきた。

 

元々武闘派な彼女は、どうも叢真の戦いを見て血が滾っているらしい。

 

「それは良いが、そんな簡単に訓練機を借りられるのか?今は特に貸出しが厳しいと聞いたが」

 

新学期という事もあり、2年生や3年生のパイロット志望がこぞって貸出しを申請しているらしい。

 

1年生では早々借りられないというのは毎年の事だとか。

 

「あー、そこはほら、むっちゃんに頼めばなんとか…」

 

「陸奥先生でも限度があるだろう…」

 

叢真の指摘に顔を顰めて、副担任に頼もうと提案する長波。

 

だが流石に副担任でもISの貸出し申請をどうこう出来る権利は無いだろうと嵐の指摘にちぇーっと口を尖らせて椅子の背凭れに身体を投げ出す。

 

クラストップ5に入る胸部装甲がどうだ!とばかりに突出されるが、嵐は華麗にスルー。

 

叢真ははしたないぞと視線を伏せる。

 

女子校状態の為か、何かと無防備な生徒が多いだけに、叢真の視線操作能力は格段に上がっていた。

 

無論、回避方向に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鳳が2組へ転入してきてから数日、どうやら一悶着あったらしく、織斑が叢真の元へ困った顔でやってきた事があった。

 

「昔の約束を覚えてたのにいきなりキレられたんだけど何でだと思う?俺悪くないよな?」

 

と、叢真が思わず真顔になる織斑の言葉。

 

状況を詳しく聞いた際の叢真の言葉は「月の無い夜に背中を刺されて死ね」であった。

 

「なんでだよ!?」と叫ぶ織斑だが、流石にその覚え違いは鳳が可哀想で叢真も同情から「お前が100%悪い」と告げた。

 

そりゃ毎日自分の得意料理を食べてくれなんて、古いとはいえ告白以外に何だと言うのか。

 

流石の仏頂面マシーン叢真だって分かる、むしろ分からない織斑の思考回路がおかしい。

 

3組生徒に聞いたが満場一致で織斑が悪いとなり、この件に関しては誰も織斑の味方は居ないのだった。

 

さて、そんなトラブルを抱えたままクラス対抗戦が始まった。

 

織斑は相変わらず鳳とは仲直りが出来てない様子で、まぁ自分の何が悪いのか分かってないのだから進展がある訳も無く。

 

その余りにもの女心への鈍感無知っぷりに、あいつホモなんじゃと叢真が疑惑を深め。

 

3組生徒の「織斑一夏ホモ疑惑が強くなったんですが…叢真さん大丈夫ですか?」という言葉に、無意識に尻を押えてしまう叢真の姿があったりした。

 

「一回戦からいきなり織斑と中国か、試合前からなんか殺気立ってんなー」

 

「叢真はどっちが勝つと思う?俺は2組だけど」

 

「いや、その前に、どうして俺はこっちに居るんだ」

 

クラス対抗戦、観戦席に座る3組一同。

 

その中心に極自然に座らされて居る叢真の姿があった。

 

別にクラス毎の座席順ではないのだが、手渡された座席券が見事に3組で固められた場所だった。

 

「あぁん?あんな薄情者共の中で見る必要ないだろ」

 

「クラス行事じゃないんだ、叢真が何処で観戦していようと文句を言われる筋合いはないって事さ」

 

どうもクラス代表決定戦での1組の態度が余程気に食わないのか、長波と嵐は露骨に叢真をクラスから引き剥がそうとしている。

 

そしてそれは3組全員が同じ気持らしく、誰も止める者が居ない。

 

長波達にここまで思ってもらえる事に喜べば良いのか、そんな事までさせてしまって申し訳ないと思えば良いのか、頭が上がらないと内心感謝する叢真。

 

今回自分の出番はないのだから、織斑の成長と鳳の実力をじっくりと見て糧にしようとアリーナへと目を向ける。

 

アリーナの中には既に織斑と鳳の姿。

 

何やら言い合っているが、痴話喧嘩は他所でやれと心が1つになる面々。

 

きっとピットで待機している3組代表の陽炎も観戦しながら同じことを思っているだろう。

 

やがて試合開始の掛け声と共に鳳が武器を構えて飛び出し、織斑のブレードと激しい火花を散らす。

 

「近接格闘型か…」

 

「パワータイプだね、大型の武器を苦もなく振り回せる位の」

 

「結構強いっぽい!」

 

叢真が呟くと、後ろの座席に座っていた時雨と夕立が肩の辺りから顔を出してきた。

 

傍から見ると美少女を侍らせている様に見えるが叢真にはその気はない、むしろ小型犬がじゃれついて来ている気分である。

 

打ち合っていた鳳と織斑、間合いを取ろうと織斑が離れようとした瞬間、鳳の機体から何かが放たれて織斑と白式を貫いた。

 

「なんだ、今の…」

 

「見えたけど見えない!」

 

思わず身を乗り出す叢真と、肩に捕まっていたので釣られて前にズルリと出てしまう夕立。

 

「衝撃砲って奴か…」

 

「知ってんのか雷電!?」

 

「誰が雷電だよ。空間に圧力をかけて砲身を形成し、その際に発生した余波を砲弾にして打ち出す不可視の砲撃。貫通力は無いが見えない事と何処でも形成出来るという点、そして何より燃費が良い特殊兵装だっけな」

 

嵐の悪ノリにツッコミながら、スラスラと説明をしてくれる長波。

 

流石の3組姐御枠、解説役までこなす辺りキャラが立っている。

 

「空間の歪みを感知出来れば予測は出来るが…放たれた砲弾は予測出来んな」

 

「あ、また撃ったっぽい?」

 

どう攻略したものかと思案する叢真の横で、夕立が指摘すると。

 

白式の側で衝撃が炸裂した。

 

思わず真顔で夕立を見る周りの面々。

 

「ぽい?」

 

「……あれか、野生の勘か」

 

「だな…」

 

「馬鹿に出来んな、勘…」

 

ISのハイパーセンサーですら大気の流れの変化からしか感知出来ない衝撃砲を、IS無しで察する夕立の勘。

 

真に恐ろしきは人の感覚ということか。

 

「一撃当てれば勝ちの織斑と見えない砲弾の鳳、どっちが勝つか分からなくなってきたね」

 

時雨が固唾を飲んだその時、織斑と鳳が動いた。

 

互いに必殺の一撃を決めようと距離を詰め――

 

 

 

「ッ!?」

 

 

 

叢真が真上から来る嫌な予感を感じて見上げたのと同時に、アリーナのシールドバリアに穴が空き、織斑と鳳の丁度中心で爆煙が上がった。

 

騒然となるアリーナ内。

 

爆煙が風に流れて晴れると、そこには異質な姿の機械の姿。

 

「な、なんだありゃ…」

 

「IS…なのか」

 

長波が目を細め、嵐が身構える。

 

アリーナの中へ突如侵入した正体不明の機体。

 

ただ分かっている事は1つ、あれが招かれざる客であり。

 

「皆、慌てずに避難しろ…」

 

静かに3組の生徒へ告げる叢真。

 

実際にISを纏って戦った叢真だから分かる、アレはISのシールドバリア―と同じ強度のバリアを破って入ってきた。

 

つまり、観戦席も安全ではないという事実。

 

『ひ、非常事態発生!生徒は速やかに屋外へ退避して下さい!繰り返します!』

 

慌てた教員の避難指示、ざわついていた観戦席の生徒達は浮足立ちながらも指示に従い避難を開始する。

 

侵入した不明機はどうやら織斑と鳳を狙っているらしく観戦席には手出しをしてこない。

 

だが、織斑達に放った高出力のビームは、容易くシールバリアーを破って来るだろう。

 

アリーナ内部に残された二人はどうやら立ち向かうつもりらしく、最初は言い争っていたが今は共闘の姿勢を示している。

 

「………」

 

「おい、叢真!アタシ達も行くぞ!」

 

胸元のドッグタグを握り締め、アリーナを睨む叢真。

 

そんな彼の腕を長波が引っ張り、出口へと連れて行く。

 

「って、おいなんで立ち止まってるんだよ!?」

 

「好きで止まってるんじゃないわよ!」

 

「扉がロックされてて開かないよー!」

 

長波の言葉にそちらを見れば、屋外へ続く大型の扉の前に殺到する生徒達の姿。

 

どうやら扉がロックされているらしく、生徒達が解除や突破を試みているが、流石は最新の施設の扉、女の子数人の体当たりでどうなる物ではない。

 

「っ、退け!」

 

「お、おい叢真!?」

 

パニック寸前の女子生徒達、主に扉に殺到している1組の生徒を掻き分けて扉の前に辿り着くと、一度深呼吸をして両手を前に突き出す。

 

「部分展開…!」

 

イメージするのは両手を守る重厚な装甲、そのイメージのままに具現化する緑と灰色の装甲。

 

まだ装備は完全ではないが基本的な装備は修理が終わったジェガンの両手だけを展開し、扉に手を伸ばす。

 

「ぐッ、おぉぉぉぉぉ…!!」

 

左右に開く二枚の扉の隙間に無理矢理指を差し入れ、軋みを上げる扉を構わず左右に押し開いていく。

 

途中で身体を差し入れ、そのまま両手が開ききるまで扉を押し広げると、部分展開を解除してその場から素早く退く。

 

「急げ、何時粒子砲が観戦席に飛んでくるか分からないぞ!」

 

「あ、ありがとう雨宮君!」

 

口々にお礼を口にしながら、通路へと逃げていく生徒達。

 

観戦席からの出入口の扉にロックがかかっていた事実を考え、ただの襲撃じゃないと感じる叢真。

 

自分達が居た客席の生徒が全員退避した事を確認し、嵐達に教師の指示を仰いでくると言って別行動を取る。

 

アリーナでは織斑達の戦闘が続いているのか振動と音が響いている。

 

教師達の居る中央制御室を目指す叢真だったが、途中で見覚えのある生徒とすれ違い、慌てて立ち止まる。

 

「今のは…篠ノ之?」

 

方向からして制御室から飛び出してきたらしいが、どうにも様子がおかしかった。

 

本来なら担任に指示を仰ぐのが先なのだが、叢真は湧き上がる嫌な予感…最初にシールドバリアが破られた時のあの感覚を感じて、踵を返して篠ノ之が走り去った方向へ走りだした。

 

篠ノ之を追い掛けている内に、何となく彼女が目指している場所を特定する叢真。

 

「この先は、放送室…?何を考えてる、篠ノ之…!」

 

アリーナに迫り出した形で作られた、所謂解説や実況を行う人が使う施設。

 

今は避難指示を出している教師が居る筈だが、篠ノ之はそこを一目散に目指していた。

 

「繰り返します、生徒は教員の誘導に従って屋外へ出て下さい。教員は避難マニュアルに従って生徒の安全を最優先に迅速な避難指示を……って、貴女何をしているの!?」

 

放送室に残り、アリーナ内の避難誘導を行っていた3組の副担任である陸奥教諭が物音に振り向けば、扉を開けて篠ノ之が放送室へ入ってきていた。

 

「ここも危険よ、早く避難しなさい!」

 

「退いてくれ、私の邪魔をするなっ!!」

 

この緊急時に何をトチ狂っているのか、篠ノ之は押し留めようとする陸奥教諭を突き飛ばし、放送機器へと走る。

 

「きゃっ!」

 

突き飛ばされた陸奥教諭は、そのまま放送室の棚に身体をぶつけ、一瞬意識が飛んでしまう。

 

「先生!?」

 

開きっぱなしの扉から、陸奥教諭が突き飛ばされた瞬間を見た叢真が目を見開く。

 

慌てて駆け寄ろうとした叢真に、立て続けに信じられない出来事が振りかかる。

 

『一夏ぁ!!!!』

 

「なっ!?」

 

大音響で響く篠ノ之の声。

 

あろうことか、正体不明の機体が暴れているこの現状で、アリーナ内への放送を行うという暴挙。

 

『男なら…男ならその位の敵に勝てなくてなんとする!!』

 

「気でも狂ったか篠ノ之!?」

 

彼女からしたら激励のつもりだったのだろう、だが誰が見ても血迷った様にしか見えないその行動。

 

案の定、不明機は放送室の篠ノ之をターゲットにし、砲門を向けている。

 

織斑と鳳は間に合わない、何か準備をしているが砲撃を防ぐ事は叶わない。

 

「うぅ……はっ、し、篠ノ之さん何を!?」

 

意識が戻った陸奥教諭の声、このままでは篠ノ之は元より彼女も危ない。

 

その事を認識した瞬間、叢真はジェガンを瞬時に展開し、放送室に繋がる通路の窓を突き破って外へとその身を投げ出していた。

 

「箒逃げろぉぉぉぉ!!」

 

織斑の声と共に、不明機から放たれる強力なビーム。

 

シールドバリアを容易く貫くそれが直撃すれば、ISのない篠ノ之と睦美は間違いなく即死する。

 

「やらせるかぁッ!!」

 

その射線に、叢真のジェガンが両手に盾を構えて割り込んだ。

 

直撃するビーム、溶解していくジェガン用のシールド、追加装甲が溶け落ち、バイザーに亀裂が入る。

 

「ぐ…が…ッ、耐えろジェガン…!後ろには…先生が居るんだ…!」

 

正直自業自得な篠ノ之はどうでもいいのが叢真の本音だった。

 

だが、巻き込まれている陸奥教諭は、3組に助力を頼みに行った時から陰ながら見守ってくれた教師だった。

 

夜遅くまでアリーナを使っていたのを見逃してくれた、作戦を考える為に寮の女子の部屋へ引き摺り込まれた時も寮長の織斑千冬に黙っていてくれた。

 

無理しちゃダメよと、そっとたしなめてくれた。

 

AMBACを使えるようになった事を、我が事の様に喜んでくれた。

 

「糞が…!恨むぞ篠ノ之…ッ!!」

 

両手の盾が弾け飛び、機体が放送室へと叩きつけられる。

 

「ガハッ!?」

 

下半身の装甲は溶解し、絶対防御も発動したジェガンは放送室の陥没した正面に埋まったまま動けなくなる。

 

霞む意識の中でアリーナを見れば、不明機へ織斑が必殺の一撃を叩き込んでいた。

 

しかし機能停止には至らず、捕まってしまう織斑。

 

「…全く…不測の事態でも俺は噛ませかよ…!」

 

吐き捨てながら、残った力で右手を上げ…追加装甲の中に装備されたグレネードを放つ。

 

距離があり、かつ弾速の遅いグレネードだ、当然不明機に撃墜され――

 

「狙いは?」

 

「完璧ですわ!!」

 

動きが止まった不明機を、オルコットが撃ち貫いた。

 

織斑がオルコットへ問い掛けていた事から、どうやらアリーナのシールドバリアを織斑が破り、オルコットを入れたらしい。

 

「あぁ糞…また明石先輩に修理頼まないと…」

 

軋む機体の上半身を僅かに動かし、放送室の中を伺う。

 

篠ノ之は陸奥教諭が庇ったらしく、怪我は無さそうだが、陸奥教諭は彼方此方余波で怪我をしている。

 

「先生、無事ですか…」

 

「あ、雨宮君…!?大丈夫、今救護班を呼ぶから…!」

 

叢真の声に、篠ノ之を庇う姿勢から慌てて立ち上がり、半壊した放送室の窓へと駆け寄ってくる。

 

『叢真、無事か!?』

 

「無事だよ、無事だけど…少し寝る」

 

織斑からの通信に気怠げに答えながら、叢真は身体を横たえた。

 

耳元に聞こえる陸奥教諭の声を子守唄に、叢真の意識はそのまま沈んで行くのだった。

 

 




一組アンチはまだまだ序の口だ!(ぉ

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