IS~Under Dog~   作:アセルヤバイジャン

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原作組アンチと言うより1組アンチになるんですかね、1組女子sage3組女子ageが酷いですのでご注意下さい


第五話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合会場は悲痛な沈黙で包まれていた。

 

オルコットの咄嗟に呼び出したショートブレードに貫かれた叢真は地面へ落下し、クレーターの中で半壊の機体を晒している。

 

勝利した筈のオルコットには喜びはなく、むしろ自分が勝った事に驚きを見せている。

 

それ位の接戦だった。

 

代表候補生相手に、これだけの健闘を見せたのだ、十分に誇っていい。

 

だから3組生徒は、懸命に戦った叢真を讃えようと、誰とは言わずに両手を上げて手を叩こうとして――

 

 

 

「なぁんだ、この程度かぁ…」

 

「良いところまで行ったのにねぇ、詰めが甘いって言うかなんて言うか」

 

 

 

そんな、水を差す言葉に誰もが動きを止めた。

 

誰が、叢真の戦いを貶すような事を、そう思いながら視線を向ければ。

 

そこには、本来叢真を応援しないといけない立場の1組の生徒の姿。

 

誰もが、消化不良とでも言いたげな顔で、好き勝手な事を言っている。

 

叢真の頑張りを認めているような言葉も出ているが、全体的に負けた事を野次る言葉ばかり。

 

「ッ!、お前らぁ!!」

 

「嵐!ダメ!!」

 

3組の生徒の一人が拳を握り立ち上がるが、陽炎が慌てて止める。

 

「なんで止めるんだよ!?あいつら、叢真の努力を笑ってんだぞ!?」

 

激昂する嵐と呼ばれたボーイッシュな生徒、その怒りは最もだ。

 

叢真の努力を、彼の頑張りを、他人ごととして批評する生徒達。

 

共に努力してきた自分達を笑われる以上に、怒りが込み上げてくる。

 

それは、叢真の頑張りを、努力を、間近で見てきたから。

 

たった一週間、だが濃厚なその時間を共に過ごした3組の生徒は、誰もが勝手な事を言う1組生徒へと怒りを覚えた。

 

「ここで私達が争っても……叢真は、絶対喜ばないよ…」

 

短い間だが叢真の性格、人となりは知れた。

 

彼はここで争っても喜ばない、だから陽炎は必死で止めた。

 

「そうだね、彼女達を相手にするより、僕達にはすることがあるもの」

 

「そーちゃん!」

 

三つ編みの少女、時雨が嵐の肩を押え、夕立と呼ばれた少女がアリーナの中へ呼びかける。

 

見れば、叢真が半壊したジェガンで立ち上がり、自分のピットへと戻り始めていた。

 

「皆、行こう」

 

陽炎の言葉に誰も異論は唱えず、3組生徒は足早に観戦席から通路への出口へと足を向けた。

 

その様子を、不思議そうに見送る1組生徒であった。

 

 

 

 

 

 

 

「……………」

 

ピットへと戻り、ジェガンを待機状態へと戻した叢真は、無言で佇んでいた。

 

作戦は成功だった、素人の自分にはこれ以上無い位に、教えられた事を出しきった戦いだった。

 

ただ最後に、相手すら予想してない動きが、致命傷になった。

 

勝負は時の運、誰もが逃れられない事はある。

 

だが。それでも。

 

 

 

――ダンッ!!――

 

 

 

「畜生…ちくしょう…ッ」

 

ピットの硬い壁を殴り、胸元のドッグタグを握り締める叢真。

 

瞳には涙が滲み、口からは悔しさに塗れた言葉が漏れる。

 

当たり前だ、悔しいに決まっている。

 

あれだけ応援して貰って、手助けして貰って、後押しして貰って。

 

それなのに、自分は負けた。

 

勝利する事が難しいのは誰もが分かる事だ、相手は代表候補生、自分は素人。

 

これで勝てないからと笑うのは、よほど常識がない連中だけだろう。

 

そう、彼が所属するクラスの脳天気な生徒のように…。

 

『雨宮、怪我はないか』

 

そこへ、織斑千冬が通信を繋いできた。

 

「……ありません」

 

『そうか、ではISは修理の為に整備室へ預け着替えて戻っていいぞ』

 

それだけ言って、織斑千冬は通信を切った。

 

試合はあくまで織斑とオルコットの試合がメインなので、オルコットと戦い、敗北した叢真は織斑と戦う事はない。

 

なので好意的に見れば、一人に成りたいだろう叢真を気遣ったと思えるかもしれない。

 

だが、傍から見れば、これから始まる弟の試合を優先したと見られても…仕方ない。

 

「………負けた奴に価値は無い…か」

 

教師として、普通なら何か言葉を投げかけてるものだろう。

 

だが叢真には何も無い、故に叢真はもう担任に何かを期待するのは止めた。

 

元から期待してないのだが。

 

ピット脇の更衣室で着替える間も、叢真の表情は暗い。

 

アリーナから聞こえる戦闘音と歓声、それらをBGMに、淡々と着替え、ドッグタグを手にピットを出る。

 

アリーナ内の通路にはモニターが設置され、観戦席へ入れない生徒も見れるように配慮されている。

 

その付けっぱなしのモニターの前を通るときに、織斑の声が響いた。

 

『その攻撃は、さっき見たぜ!!』

 

「――ッ!?」

 

その声に反射的に顔を上げれば、映像ではオルコットが放ったミサイル型のティアーズを切り払い、オルコットへ迫る織斑の姿。

 

ファーストシフトを叢真の試合中に終えた彼専用のIS、白式が持つエネルギーブレードが、オルコットのブルーティアーズを切り裂き。

 

ただの一撃で、オルコットの負けが決まった。

 

見た目まだエネルギーがありそうだったティアーズを一撃で、どんな仕掛けか、誰もがそこを気にするだろう勝負。

 

だが叢真が気にしたのはそこではない。

 

織斑は先ほど叫んだ、“その攻撃は、さっき見た”と。

 

何時見たのか、ミサイル型は2機しかない、つまり今使ったなら先に見る機会は無い。

 

つまり―――

 

「俺は……俺は、噛ませ犬だって事か…ッ、織斑千冬ぅぅぅ…!」

 

腹の底からこみ上げる怒りを混ぜた言葉、握り締めたドッグタグが掌に食い込んで痛みを伝える。

 

公平の為に試合は見れない筈、だが織斑は自分とオルコットの試合を見ていた。

 

それは、つまり。

 

機体が届かないからと先に戦わせられたのも、織斑(おとうと)への応援という事。

 

フラフラと後ろへ後退り、通路の壁に背中を預け、ずるずると崩れ落ちる。

 

惨めだった。

 

1組では織斑の引き立て役、戦いでは噛ませ犬。

 

情けなくて、悲しくて。

 

叢真は、床に右手を叩きつけた。

 

 

 

 

実際は、織斑と一緒にピットに居た篠ノ之箒が、自分が見る為だと詭弁を使って試合を見ていたのだ。

 

無論、織斑千冬からは一夏に見せるなと言われていたが、そこは恋する乙女、詭弁と自己弁護で「見えてしまったのだから仕方がない」と、織斑に試合を見せ。

 

結果、織斑はオルコットの切り札や戦法を知った上で、最初から万全の状態の機体で勝利した。

 

オルコットに油断は無かったが、連戦である事と白式の性能、そして武器によって敗北した。

 

だが、そんな事叢真は知らない、知れる訳が無いし知ったとして許せる事ではない。

 

結果は変わらないのだ、叢真が、織斑の噛ませ犬にされたという事実は。

 

 

 

 

「…そ、叢真…?」

 

ピットから続く通路に繋がるホールで叢真を待っていた3組生徒だが、待っても叢真が出てこない事で不安を覚え迎えに来ていた。

 

そんな彼女達が見たのは、蹲り、頭を抱える叢真の姿。

 

「……陽炎…」

 

先頭に居た陽炎の言葉に反応し、顔を上げる叢真。

 

セットされたオールバックの髪型は、試合と彼女達が来るまでに頭を掻き回したからか乱れ、何時もの威圧感のある姿と違う、幼気な叢真の姿があった。

 

瞳は赤く、瞼も腫れている。

 

泣いていた事は誰もが分かった。

 

だから誰もが声をかけられなかった、落ち込んでいるとは思っていたが、まさかここまで思いつめていたとは。

 

そしてそれだけ、今回の試合に気合を入れいていたという事に。

 

「済まなかった…散々手伝って貰ってあの様だ…」

 

「そ、そんな事無いよ!むしろ上出来だよ!?」

 

「そうだぜ!?本番でアンバック決めたり、あと一歩まで行ったんだしよ!俺はスゲーってずっと手に汗握ってたんだぜ!?」

 

「だいたい、代表候補生といきなり戦わせようって事の方が問題じゃない、何考えてんのよ織斑先生も学園も!」

 

陽炎や嵐達が叢真を励ますが、彼の表情は優れない。

 

何があったのか、彼の落ち込みようは異常だった。

 

自分達が知らない何か事情があったのかと不安に思う程に。

 

「……ありがとう、その言葉だけでも嬉しい…」

 

左手で顔を隠し、礼を述べる叢真。

 

彼女達の言葉が上辺だけではない、本当の言葉だと分かるからこそ、叢真は辛かった。

 

一人気合を入れ、陽炎達を巻き込んだ自分の戦いは。

 

織斑一夏の為の、踏み台だったと知って。

 

申し訳無さで一杯だった、彼女達を、こんなに優しくて素敵な乙女達を、自分の仕組まれた戦いに巻き込んで。

 

「すまない…顔を洗ってくる…」

 

「そ、そーちゃん…」

 

何時もなら叢真にお構い無しに人懐こい子犬のように突撃する夕立も、叢真の姿に見送るしか出来ず。

 

「……雨宮…」

 

時雨は一人、彼の掌から零れ落ちる赤い雫に、心を痛めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは、1年1組代表は織斑一夏君に決定です!あ、一繋がりでいい感じですね~」

 

脳天気にそう告げる山田先生の言葉に、誰もが肯定の声を上げる。

 

織斑本人だけが、そう言えばクラス代表を決める戦いだったと今更思い出し、クラス代表という立場になった事に頭を悩ませていた。

 

試合の次の日、叢真は相変わらずの仏頂面のまま教室に入り、淡々としていた。

 

その様子は付き合いの短い人間からはいつも通りに見えるだろう。

 

だが親しい相手からは、見るからに気落ちしていると分かる、そんな様子だった。

 

「代表候補生に勝利した男子が代表!これ以上無いインパクトよねー」

 

「折角男子が居るんだから押さない手はないわよね!」

 

最も、織斑の代表決定で湧くクラスに、叢真の様子を伺う生徒は皆無なので関係ないだろう。

 

この上ないアウェー感、気が弱い男子なら不登校すらあり得る空気。

 

叢真は痛感した。

 

このクラスは、鳥籠だと。

 

「叢真ー、お前も助けてくれよー」

 

「……必要なら手を貸す」

 

助けを求める織斑の言葉に、短く答えて視線を外へ向ける。

 

織斑本人にその認識はないのだろう。

 

だが、ここは。

 

このクラスは。

 

織斑一夏と織斑千冬の為の、鳥籠なのだ――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜の学生寮の食堂、そこには1組の生徒と数名の2組の生徒が集まり、織斑のクラス代表就任を祝って細やかなパーティーを開いていた。

 

戸惑う織斑を囲み、飲めや歌えやで盛り上がる生徒達。

 

そこには、まるで当然だと言わんばかりに、叢真の存在は無かった。

 

誰も気にして居ない、いや、気にした生徒も周りの空気に飲まれて忘れる。

 

まるで、噛ませの負け犬には用は無いとばかりに。

 

「チッ、気に食わないな…」

 

「全くね」

 

食堂の入り口から中を伺うのは、3組の嵐と長波と言う少女。

 

3組のイケメン担当と姉御担当とか言われている武闘派の二人だ。

 

「あいつら、まるで最初から雨宮は存在してないって面して騒いでるな…」

 

「千冬様命の千冬教なんだろう。血縁の弟以外は興味ないんだろうよ」

 

吐き捨てる長波と、肩を竦める嵐。

 

二人がここに居る理由は、別に1組を貶す為ではない。

 

そんな1組で辛い思いをしているだろう友人を助けに来たのだが、その姿が無かったのだ。

 

「あんな連中はどうでもいい、叢真を探すぞ。俺達が側に居てやればいいんだ」

 

「まったく、この長波様の手を煩わせて。しょうがない奴だなー雨宮は」

 

やたらイケメンな発言をする嵐が踵を返し、その後にやれやれと愚痴りながら付いて行く長波。

 

二人が探す叢真は、専用に借りた整備室の中にあった。

 

「………」

 

カチャカチャと、機体を弄る音だけが響く薄暗い整備室。

 

灯りに照らされているのは、整備台へと固定されたジェガン。

 

その足元で、叢真は破損したパーツを解体しながら、1つ1つ磨いて綺麗にしていた。

 

機体は明石が学園に掛けあって彼女主導で直してくれている。

 

そんなジェガンを、叢真は労うように磨いていた。

 

「…すまないな、俺なんかがパイロットで…」

 

お前を勝たせてやれなくて…。

 

そんな言葉を飲み込み、黙々とパーツを磨き、組み立てていく。

 

全体的な修理は出来ないが、破損した装甲をバラして交換する位は出来る、明石達に教えて貰ったから。

 

試合に負けて、応援に駆けつけてくれた神通達に頭を下げ、ジェガンを整備室へ戻した。

 

秋雲が録画した試合を見た神通は上出来だと褒めてくれた、大淀もこればかりは運が悪かったと慰めてくれた。

 

明石だけは無茶をしてと怒っていたが、叢真を励ましてくれた。

 

その言葉を貰う度に、叢真の心は痛みを訴えた。

 

言い様のない悔しさ。

 

何度自分を弁護しても、その悔しさは消えない。

 

「…ここに居たんだね」

 

薄暗い整備室に、優しい声が響いた。

 

振り返れば、そこには優しい微笑みを浮かべた時雨が立っていた。

 

「佐世波…」

 

「探したよ。1組のパーティーには…出れないか」

 

そっと叢真の側にしゃがむ時雨、その言葉に叢真は瞳を細める。

 

「誘われはしたが…行っても周りを不快にさせるだけだろうからな」

 

一応、1組の数名が誘ってはくれたが、気が向いたら来て良いよというレベルの物だった。

 

一人だけ来てよ来てよと熱心に誘ってくれたが、織斑一夏の為のパーティーに出て明るく振る舞える自信は今の叢真には無い。

 

甘え袖ののほほんとしたクラスメイトには悪いが、叢真は顔を出すこと無くここでジェガンを労っていた。

 

「…雨宮は十分頑張ったよ。僕ならきっとあそこまでやれない」

 

叢真に寄り添いながら優しく言葉をかけてくれる時雨。

 

それは叢真も分かっている事だ。

 

「…頑張ったんだ。たった一週間しか時間が無くて、それでも必死で」

 

「うん」

 

「陽炎や先輩に教えを請いて、3組の皆にも協力して貰って…」

 

「うん…」

 

「皆で作戦を考えて、その通りに動けるように何度も練習をして…ッ」

 

「うん。うん…」

 

「ズブのド素人が、たった一週間で代表候補生…プロの卵に勝負挑んで…ッ、それで追い詰めて…!」

 

「うん……」

 

「傍から見れば金星だろ…最後の偶然さえ無ければ勝てていたんだ…ッ、十分凄い事だろ、胸張っても非難される謂れは無い筈だろ…ッ!」

 

「そうだね…そうだよね…」

 

「胸を張って、「次は勝つよ」って言えば、言えれば、それで…それで…!」

 

 

 

――ガンッ!!――

 

 

 

叢真の声と時雨の相槌だけが響いていた室内に、鈍い打撃音が響いた。

 

 

「なのに…なのに…悔しさが…ッ、腹の底から沸き上がる悔しさが…!消えてくれないんだよ…ッ!!」

 

手にしていたジェガンのヘルメット、バイザーが砕け、マスクも割れたそれに、叢真は頭突きをしていた。

 

そしてそのまま、ヘルメットに顔を押し付けたまま、蹲る。

 

震える身体と、掠れた声。

 

悔しさで溢れる叢真の姿が、そこにあった。

 

恐らく、きっと、叢真は初めて、本当の悔しさを覚えた。

 

自分が負けた事、誰かの期待に応えられなかった事。

 

それらが合わさった、初めての大きな敗北に、叢真は人生最大の悔しさを滲ませていた。

 

「……雨宮…うぅん、叢真…」

 

そんな叢真に、そっと背中から優しく抱きしめ、頭を撫でる時雨。

 

180近い大柄な叢真が、今は小柄な子供に思えた彼女は、言葉はかけず、優しく、優しく叢真の頭を撫でた。

 

今の叢真に言葉をかけても慰めにはならないから。

 

だからただ、そっと寄り添って、人の温もりを与えて。

 

一人じゃない、孤独じゃないと、叢真に伝えて。

 

「佐世波…」

 

「うん…」

 

「次は…次は勝つ…!」

 

「うん、見てるよ。皆と一緒に…」

 

「ぽい!」

 

 

 

――………ぽい?――

 

 

 

叢真と時雨が突然傍らで聞こえた声に、同時にクエスチョンマークを浮かべ。

 

同時に視線を横へ向けると。

 

「ぽい?」

 

もういい?もうじゃれていい?と言わんばかりに待っている夕立の姿。

 

「ゆ、夕立!?」

 

「いつの間に…!?」

 

慌てて叢真から離れる顔を赤くした時雨と、気配を感じさせなかった犬っ娘に驚愕する叢真。

 

「さっき位?それより皆そーちゃんを探してたっぽい!」

 

ステキなパーティーしましょ!しましょ!と叢真にじゃれる夕立。

 

まさに犬である。

 

「パーティーって…」

 

「叢真の健闘を祝うパーティーよ!」

 

バーン!と整備室の扉を開いて、陽炎達がぞろぞろと入ってくる。

 

その手にはお菓子やオードブル、飲み物が大量に。

 

「陽炎、それに皆…」

 

「全く、私達が心配して探しまわってたのにイチャイチャして」

 

「抜け駆けはいかんぞ、抜け駆けは」

 

「そ、そんなんじゃないよ!」

 

叢真の周りにやってくると、陽炎は呆れた顔をし、数名が時雨に抜け駆けだとからかう。

 

赤い顔で否定する時雨だが、あの雰囲気はどう見ても良い雰囲気な訳で。

 

「さ、ジェガンの頑張りも含めて、残念会よ。今だけはパーっと、ね!」

 

叢真の手を取り、立ち上がらせる陽炎。

 

彼が何か言う前に料理や飲み物をテーブルの上に並べ、整備室は一転パーティー会場へ。

 

「お、おいおい、整備室で飲食は…」

 

「明石先輩が許可取ってくれたわよ、後片付けちゃんとすれば平気平気」

 

「はいはーい、村雨特製の唐揚げですよー」

 

「お菓子も沢山ありますよ」

 

叢真が窘めようとするが、既に許可は取っている様子で、ツインテールの生徒が美味しそうなオードブルを並べ、三つ編みでおっとりとしたお姉さん系生徒がお菓子を並べる。

 

「お肉!お肉!夕立お肉食べたいっぽい!」

 

「ほら、叢真も手を洗って!皆食べられちゃうわよ!」

 

早速突撃した夕立と、叢真の背中を押す陽炎。

 

ワイワイと騒がしい3組生徒に囲まれて、叢真は笑った。

 

負けてから初めて、彼は笑った。

 

 

 

 

 

 

「あの様子なら大丈夫そうですね…良かった…」

 

「最初は不安でしたけど、ね」

 

「こういう時は勢いで流しちゃうのが一番なのよ」

 

そんな様子を入り口から見守るのは、神通と大淀、明石の3人。

 

「まぁ今回は目を瞑るが、あまり羽目を外さんようにな」

 

「分かってますよ、長門先生」

 

その3人の後ろには、苦笑を浮かべたスーツ姿の教師の姿。

 

3組担任の長門教諭、彼女は生徒達から強烈な勢いで許可を求められ、生徒思いな彼女はつい許可を出してしまった様子。

 

さらに生徒達と男子の片割れであり、教師間でも扱いがきな臭い叢真を心配して顔を出していた。

 

叢真の扱いは織斑千冬が責任を持つ、手出し口出し無用という通達が教師に出ている。

 

これを訝しんだ長門だが、学園からの正式な通達なら従うしかない。

 

故に表立って叢真に接触が出来ずに居たが、担任をするクラスが全体で関わっているので今後は軽く口出しは出来ると安堵を覚えていた。

 

「雨宮が1組で孤立してるという噂は教師陣にも届いている。なるべく気にかけてやってくれ」

 

「勿論です、真面目で可愛い弟子ですから…」

 

長門の言葉に力強く頷く神通だが、「弟子…?そこまで入れ込んでいるのか…?」と彼女の台詞が気になる長門先生であった。

 

 

 

 




でぇじょうぶだ、のほほんさんはフォローしてくれてる(なお届かない模様



感想ありがとうございます、暇つぶしになれば幸いです。

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