段々原作組アンチの空気が入ってくるので、そういうのが嫌いな方はご注意下さい。
操縦訓練から3日、叢真が練習に使用していたジェガンD型は現在整備室にその身を鎮座させていた。
「よーし、先ずは装甲と電装系を解体するよー!ついて来い未来の整備科志望!」
「「「「おー!!」」」」
作業着に着替えた明石が、腕まくりしながら同じく作業着に着替えた3組生徒を引き連れてジェガンの装甲を外し始める。
IS学園に入学したからと言って、全員がパイロット志望ではない。
整備科という学科が存在し、ISの整備も授業に組み込まれている通り、整備士や研究者の育成にも力を入れているのがIS学園なのだ。
明石に続いて作業を行っている生徒達は、そんな整備士志望の生徒達。
一クラスに大体30人の生徒が居るとして、その半数はメカニック志望、更に半数は研究者志望の生徒と言える割合だ。
学年が進むと、自身の適正などを考え、整備科へ転向したり逆にパイロット志望へ切り替えたりもするが。
「追加装備するミサイルポッドはオプション装備だからシステムは登録するだけで平気です、ただ使用火器選択の優先度を設定してあげないと雨宮さんが困るから本人が使い易い優先度に設定してあげて下さい。パージシステムはオプション側に入っているのでそれをインストールしてあげて…」
こちらは大淀率いるシステム班、発注した追加武装が届いたのでそれを搭載する為のシステム構築を行っている。
明石はメカニック志望、大淀はシステムエンジニア志望で、既にアナハイムへの内定が決まっている才女だ。
それ故に神通が二人を勧誘し、二人も将来に役立つと思って喜んで協力してくれている。
「それじゃ、秋雲が追加で手に入れてくれた情報も踏まえて作戦会議よ」
「頑張ってきたよー!」
整備室の一角を借りきって、神通と陽炎の選抜生を筆頭に戦術会議を始める面々。
参加者は先の二人に叢真、そして改良班にもシステム班にも入れなかった面子である。
別に彼女達が無能という訳ではない、彼女達は陽炎と同じパイロット志望と、それなりに戦闘経験がある生徒という理由からだ。
「嵐も経験あるのか」
「あぁ、俺は実家が実戦武術の家系でな。こんな口調もそのせいさ」
赤髪の男前でイケメンな女子の言葉に、凄そうな家だなと感心する叢真。
武術・武道経験者も集めたのは対オルコットへの有効な戦術案を出して貰う為だ。
「三日間とは言え、ミッチリ叢真に機動制御は教えたから、多少の無茶も平気だよ。武器もジェガンの標準装備であるビームサーベルだから難しい技術は要らないわ」
ジェガンを始めとしたアナハイム製ISの特徴は、粒子兵器を量産・搭載している点だろう。
各国がレーザーやレールガンと言った特殊兵装を開発するのに躍起になっている中、一足早く粒子兵器を完成・量産させたからこそ、アナハイムは世界的企業として君臨している。
とは言え、粒子兵器は地上では減衰する為、実弾兵器も併用運用している。
ジェガンは標準装備として銃身を切り詰めた取り回しのいいビーム・ライフルとビームサーベルを装備している。
威力はお墨付きだが、難点としてエネルギー消費が激しいという点がある。
ライフルの方はエネルギーマガジンで賄えるが、サーベルは本体から直接供給するので、連続使用を続けると本体エネルギーが減ってしまう弊害がある。
まぁ、その辺りは特殊兵装を運用する全てのISで同じことが起きるので置いておく。
先のビームサーベルだが、これは粒子エネルギーによる溶断が攻撃方法だ。
故に、当てれば良い、難しい技術は要らない。
無論、技術があれば更に効率的に攻撃出来るのは言うまでもない。
「問題は相手の射撃技術か…」
「オルコットって性格がアレだけど狙撃の腕はたけーんだろ?近づく前にやられちまうぜ?」
嵐が呟いた言葉に、ロングヘアーの何とも気の強そうな、八重歯がチャーミングな女子が続ける。
オルコットの性格がアレなのは既に3組の共通認識のようだ。
まぁ、流石に日本まで来てその国を盛大にこき下ろしてるんだからアレ扱いは当たり前か。
しかも国の代表候補生なのに。
選抜生であり代表を目指す陽炎からすれば「なにそのダイナミック代表辞退」と言わせるような事である。
「救いと言うか、付け入る隙なのが自慢の射撃と固有武装を同時に使えないという点かねー」
伝手から情報を仕入れてきた秋雲が、メモ帳をペラペラを捲りながら指摘する。
彼女が仕入れた情報では、オルコットはその自慢の狙撃と、固有武装であり機体と同じ名前のBT兵器の運用が今現在出来てないらしいという嬉しい情報だった。
「遠隔兵器と狙撃の同時対処はしなくて済むのはありがたいわね、それが可能になると恐らくブルーティアーズは対多戦闘で優位になれる性能でしょうし」
遠隔兵器で牽制と追い込み、迎撃を行い、威力の高い狙撃で仕留める。
つまり、本来複数の機体で連携を行う戦法を一体で可能となる機体という事だ。
とは言えそれは、使えればの話。
「やはり、当初の予定通りに…」
「ですね。遠隔兵器を先ず潰そう」
神通と陽炎の結論に異論を挟む生徒は無く、そのまま戦術会議は進んでいく。
そんな光景をふと眺めながら、静かに拳を握る叢真。
ますます負けられない、ここまで協力してもらい、応援してもらい、そして背中を押して貰ったのだから。
「……雨宮」
「っ…佐世波(させぼ)…?」
そんな叢真の様子を察したのか、そっと隣に座っていた佐世波と呼ばれた三つ編みの生徒が、強く握った右手を両手でそっと解きほぐした。
「大丈夫だよ、雨宮は一人じゃない。僕達が居るんだから」
だから一人で背負う必要はないと、彼女の瞳は言っていた。
「あー、時雨が抜け駆けしてるっぽい!」
「っ、ち、違うよ、これはその…!」
と、反対側に座っていた例の特徴的な口調の生徒が叢真の膝の上に身体を投げ出しながら、佐世波が握った叢真の右手を掲げた。
指摘されて真っ赤になった三つ編み僕っ娘に、他の生徒がニヤニヤしながら詰め寄り、会議は一時中断するが、叢真は学園に来て初めて、本当に初めて、笑った。
「そーちゃん、元気出たっぽい?」
「あぁ…元気1000倍だ」
膝の上の少女の頭をぽふぽふと軽く撫でると、ぽいぽい!と楽しげな声。
あぁ、本当に俺は…仲間に恵まれた―――
その幸せが、痛みに変わる日が、着実に近づいている事に、気付いている者は居なかった。
月曜日、クラス代表決定戦当日。
単なるクラス代表を決める、言わば委員長選定からどうして一大イベントと化しているのか、誰も気にしないので平然と行われている。
複数あるアリーナの1つを借りきってのこの模擬戦、叢真は事前に予定として織斑とオルコットが戦い、勝った方と戦う事が決定していた。
順当にオルコットが勝ち上がるのを想定し、イメージトレーニングに集中する叢真。
機体は昨日までに明石を始めとした改修班が確り仕上げてくれた。
システム関連も大淀のお墨付き、叢真の操作感覚に合わせて組んでくれた。
後は結果を出すだけ、ピットの待機場所に設置された椅子に座り、深呼吸と共に相手の動きをイメージする。
事前にオルコットと織斑の試合は公平にする為に見ないように織斑千冬に言い含められているので、モニターはオフにしてある。
「いよいよだね…準備は出来てる?」
「…あぁ、後は全力を出し切るだけだ」
叢真の様子を見ながら、静かに声をかけたのは陽炎、3組生徒である彼女がここに居る理由は、コーチとして特別に関わる事が許されたから。
3組全員で担任に直談判して、特別に試合を観戦する事が許されたとの事。
1組の生徒達は、反対側の観戦席に3組生徒が居る事に不思議がっているが、彼女達が叢真に何もしないから3組が後押ししているのだ、観戦する事を拒否する事は出来ないだろう。
神通や明石、大淀は流石に学年が違うので観戦は出来ないが、授業が終わり次第駆けつけると約束してくれた。
「初島さんや3組の皆、それに先輩達…色々と便宜を計ってくれた3組の先生達…これだけ後押しして貰ったんだ、簡単には負けられないさ」
「……陽炎、でいいよ」
「ん?」
「ほ、ほら、コーチなんだし他人行儀もアレじゃない?それに私も叢真って呼ぶからさ」
照れた様子で頬を掻きながら、はにかむ陽炎に叢真は少しの笑顔を見せ、頷く叢真。
学園に来るまで、周りが女子だらけで友人や気心が知れた仲間が出来るか不安だった叢真だが、それはもう消えていた。
『雨宮居るな、試合の準備をしろ』
「え…もう終わったんですか?」
と、そんな二人の空気を切り裂くように開いた通信ウィンドウ。
そこに写っていた織斑千冬は、相変わらずの問答無用で叢真に試合準備を始めろと告げた。
会話している間にオルコットと織斑の試合が終わったのかと思ったが、アリーナからは一切の戦闘音は聞こえなかった。
『織斑の機体が届くのが遅れているのでな。アリーナの使用時間もある、お前が先にオルコットと戦え』
「は…」
一瞬呆然とする叢真と陽炎、確かに効率を考えれば理に適っているが、そもそも今回の件はオルコットと織斑の喧嘩である。
叢真は戦う必要がそもそも無いのだが、選出されたのだから戦えと無慈悲な通告。
『5分後に試合を始める、オルコットは既に待っているぞ』
「ちょ、織斑先生!?」
陽炎が呼び止めるが相手はさっさと通信を切ってしまう。
「あぁもう、織斑との戦闘で少しは消耗や慢心をしてくれれば儲け物だったのにぃ!」
地団駄を踏む陽炎の肩をそっと押え、大丈夫だと告げる叢真。
「早いか遅いかの差だ、元々俺を戦わせようとしてるのは分かってたしな…」
そもそもおかしな話だ、悪ノリで推薦されて断るのは駄目とか意味が分からない。
邪推すれば、この機に織斑と叢真を戦わせ実力を図ろうと考えた学園の差金とも考えられる。
「叢真…気をつけてね。私も観戦席に行くから」
「あぁ、皆によろしくな」
現在ピットは前述の公平な試合の為にアリーナ内部を観戦出来ないように規制されている。
その為に急いで観戦席へ走る陽炎を見送り、叢真は首元に下がったドッグタグを握り締める。
それこそが、3組と先輩達の手を借りて生まれ変わったジェガンの待機状態。
「…行こう、ジェガン」
静かに告げた言葉に応える様に、ドッグタグが光り…叢真の身体を装甲が包む。
本来のペールグリーンの装甲は塗り替えられ、濃い緑へ。
そしてその上からグレーの追加装甲と増設されたスラスターが装着される。
両肩には巨大な3連装ミサイルポッド、バイザー付きヘッドギア、そして口元を隠す増設されたマスク。
クリアブルーのバイザーの奥で、叢真の瞳がピットの外を睨む。
「雨宮 叢真、ジェガン改めスタークジェガン、出るぞ!」
射出装置からアリーナへと身を投げ出す叢真と愛機、スタークジェガン。
アリーナの空中には、既に青い装甲のIS…オルコットのブルーティアーズが待ち構えていた。
「あら、貴方が先ですの?」
意外、という顔を浮かべるオルコット、どうやら通達が行っていないらしい。
「機体が届いてないから繰り上げで俺だそうだ。目当ての相手じゃなくて悪いな」
「構いませんわ、貴方もあの大口を叩いた織斑さんも、倒す相手ですもの」
叢真の皮肉混じりの言葉にも、余裕を持って見下した視線を向けてくるオルコット。
どちらが先であろうと自分の勝利は揺るがない、そう全身で表している彼女。
ならば目にもの見せてやると、叢真は右手に巨大な灰色の筒を呼び出す。
「バズーカですの…そんな物に当たるほど私は優しくなくてよ?」
「銃すら持ったこともない素人がそもそも何を持っても当たるかよ」
一応神通のレクチャーで射撃も練習したが、短い間では付け焼き刃にしかならない。
その事は狙撃を得意とするオルコットも、習った叢真も重々承知している。
「まぁ貴方は巻き込まれただけですから、ここで私に素直に負けを認めたら許して差し上げますわよ?」
「許すも何も俺はお前に何もしちゃいないだろ。むしろ巻き込んだ事を謝罪しろ、常識無いのか」
「うぐっ…」
偉そうに最後通告を告げるオルコットだが、叢真の白い視線と至極真っ当な言葉に返答に詰まる。
一応、自分が非常識な事をしているという認識はある模様。
「生意気な…ならば、お別れですわ!」
構えられる巨大な狙撃銃…それに対して叢真は射線からズレるように加速を始める。
『試合開始!』
空気を読んだのか、全体のオペレーターを担当している山田先生の言葉と共にブザーが鳴り響く。
「さぁ、無様に舞いなさい!」
「ちぃッ!」
放たれるレーザー、事前情報の通り、かなりの制度で狙ってくる。
下手に動けば即急所を撃ち抜かれる、それを肌で感じて大げさな程に飛び回る叢真。
「ちょこまかと…量産機程度で!」
「問題だらけの試作機が何を!」
世の中を占めるのは量産機である、家電でも生活用品でも。
「私のティアーズに問題などありませんわ!」
「っと!ならご自慢の武装を使ってみせろ、問題が無いならな!」
言うまでもなく挑発である、普通なら乗らずにこのまま狙撃で追い詰めれば確実に勝てるだろう、叢真の牽制のバルカンや破れかぶれのバズーカは大きく外れて爆発を残すのみ。
「ならば踊りなさい、私のブルーティアーズで!」
オルコットのISのスカートアーマーから放たれる4機の自立機動兵器。
遠隔兵器を操っている間、オルコットは狙撃をしてこない。
その情報は正しく正解であり、オルコットの動きが止まる。
―――かかったッ!!―――
飛び回る4機のブルーティアーズの射撃から逃れながら、温存していたバズーカの最後の一発を放つ。
「どこを狙って…――なっ!?」
見当違いな方向に放たれた弾頭は、それまでの弾頭と違い途中で外殻がパージされ、中身の細かな散弾が前方にバラ撒かれる。
「散弾!?」
「全弾持っていけッ!!」
最初のバズーカにセットされていた弾頭は通常の物、最後の一発だけ散弾をセットして油断を誘い。
続けて両肩の3連装ミサイルが順次発射され、空中で炸裂、散弾を撒き散らす。
「くぅっ!で、ですがこの程度で…!」
広範囲に渡って炸裂した散弾が機体を襲うが、シールドバリアと装甲によりダメージとしては微々たる物。
だが。
「本体は無事でも――小型のティアーズには致命傷だろうが!」
バズーカを投げ捨て、更にシステムウィンドウから武装のパージを選択。
ポッドがパージされ、身軽になった状態でスラスターを全力で吹かして突撃する叢真。
彼の言う通り、小型のティアーズ4機は散弾を受けて破損、2機が破壊され残り2機も動きが悪い。
「最初からこれが狙いで…!」
オルコットが手にするレーザーライフルからの射撃、それを両手に増設された装甲で防ぎながら距離を詰める。
そして装甲内に装備されたビームサーベルが飛び出し、右手に握る。
「おぉぉぉぉぉ!!」
「そんな見え見えの攻撃で!」
真っ直ぐな突撃、当然オルコットは避けようと身体を動かす。
「だろう――な!」
が、それは叢真も分かっている。
狙ったのはオルコットではない。
オルコットの最大の武器、そのもの。
「くっ、スターライトを!?」
避けた際に無防備になった右手の長物、それをビーム刃で溶断、先端が切られたレーザーライフルはもう使えない。
何せ銃口が溶けているのだから。
「ですがまだ、ティアーズは残ってますわ!」
斬り付けながら通り過ぎた叢真の無防備な背中を狙うティアーズ、だがオルコットはおろか、観戦している織斑千冬や山田先生すら予想もしない動きで叢真は避けた。
「――ッ、ここだ!」
スラスターを吹かしながら、両手と両足を振り回し…一回転すると共に体勢を真逆に、オルコットの方を向いた状態に一瞬で動かした。
体勢を変えたジェガンの傍らを、予測射撃のレーザーが虚しく通り過ぎて行く。
「む、あれは…」
「そんな、あの技術は!」
オペレーター室の織斑千冬と山田先生が目を見開き。
「いよぉしっ!完璧じゃねぇか!」
「今までで一番の出来だわ!」
観戦席で嵐と陽炎が手を取り合って喜ぶ。
叢真が見せた姿勢制御に、それを知る生徒達は目を見開いて驚いた。
「あ、AMBACですって…!?」
驚きに目を見張るオルコット、AMBAC(アンバック)能動的質量移動による自動姿勢制御、PICでの姿勢制御ではなく、4肢を高速で動かす事で発生する反作用を利用した姿勢制御技術。
推進剤を使わずに高速で体勢を変える事が出来る上に姿勢制御での隙がなくなる高等技術。
それを、ISに乗って僅か一週間の男子が使って見せた事に、驚きを隠せないオルコット達。
必死に叢真が練習をしていた事を知っている3組生徒だけが、その成功に喜び手を取り合った。
「その首、貰ったぁぁッ!」
「くっ、でもお生憎様…ブルーティアーズは6機あってよ!」
慣性をそのままに再突撃してくる叢真を敢えて避けず、残ったスカートアーマーからミサイルタイプのティアーズを飛ばして来る。
直撃すれば致命傷だが、叢真はそれすらも覚悟の上で推力を上げ。
「南無三!」
咄嗟に出た言葉と共に左手を迫るミサイルへ向け、手首を下げる。
増設された腕の装甲内部から放たれるのは2個のグレネード。
それがミサイルと衝突し、叢真を巻き込んだ大爆発を巻き起こす。
ざわめく1組、悲鳴をあげつつも祈る3組。
「少々ヒヤリとさせられましたが、所詮はこの程度…終わりですわね」
少々と言いながら盛大に流れた冷や汗を拭うオルコット。
「まだよ…まだ叢真は終わってない!」
そんなオルコットの言葉に応えたのか不明だが、陽炎が叫ぶ。
「ぐ――ガアアアアアアア!!」
爆煙の中から追加装甲が半壊し、胴体も中身を晒し、バイザーも砕けながらもその手にビームサーベルを持って飛び出してくる叢真のジェガン。
他のISに比べて装甲での防御が可能なアナハイム製だから出来る無茶、シールドエネルギーもギリギリだがまだ残っている。
「なーー!?」
咄嗟の事で動けないオルコット、出力を上げたことで唸りを上げるビームサーベル。
「これでッ!!」
振り下ろされる必殺の一撃、確実にオルコット本人を捉えた一撃。
シールド防御は生身の部分を守る際に一番エネルギーを使う、それが強力な一撃であり、かつ致命傷になる場所なら絶対防御も誘発してエネルギーを削りきれる。
故に誰もが叢真の勝利を確信した。
オルコットすら負けを感じた。
だが――
「い、インターセプタぁぁぁ!!!」
「――なッ…!?」
我武者羅に突き出された右手と、その先に具現化したショートブレード。
名前を呼んで呼び出した事から本当に苦手なのだろう、その刃が。
叢真の、破壊された装甲の隙間から露出した胸を――心臓部を刺し貫いた。
「そ…そんな…!」
陽炎の悲鳴にも近い声が零れ落ち、ジェガンの絶対防御が発動。
エネルギー切れを起こした為に安全装置が働き、オルコットに当たる寸前にサーベルの粒子の刃は虚空へと消え。
『そこまで!勝者、セシリア・オルコット!』
試合終了のアナウンスが響き、叢真のジェガンは健闘虚しく地へと落ちていった。
これが、叢真の初試合の結末だった―――
この作品ではアナハイムが粒子兵器を実用化しております。