IS~Under Dog~   作:アセルヤバイジャン

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ハイスピード学園バトルラブコメというジャンルである事を思い出し、ラブコメ要素を入れてみる


第十六話

 

 

 

 

 

 

 

 

アナハイムでの校外研修は過酷を極めた。

 

初日の歓迎や簡単な施設紹介、機体見学などは序の口ですら無かった。

 

先ず整備班志望の生徒。

 

彼女たちは朝からプロの整備士達に混ざって、アナハイムの基本的な機体、ジェガンや可変機であるリゼルを教材にひたすら整備と修理の勉強。

 

「いいかい、学園に戻ったらアンタ達があの子達の機体を整備するんだよ!確り覚えな!」

 

「「「「「はいっ」」」」」

 

モーラと呼ばれる女傑整備班長の指導に、気合の返事を返す生徒達。

 

彼女達は元々スタークジェガンの整備を受け持っていた、その為、今後も叢真の機体を整備するのは自分達でないといけないという使命感があった。

 

その為、猛烈な熱意で整備の勉強をして、知識をその頭と身体に叩き込んでいた。

 

そして操縦者志望の生徒達。

 

彼女達は、長門教諭と陸奥教諭という、IS操縦者ファンからすれば血涙を流す程に羨ましい人物からの指導をみっちり受けていた。

 

何せ二人共、織斑千冬には知名度は劣るが、どちらも代表経験者にして7人のヴァルキリー、ビックセブンに名前を連ねる猛者なのだ。

 

ファンへのアピールを苦手にしている織斑千冬と違い、その辺りを心得ている陸奥教諭の方が男性ファンが多いとすら言われている。

 

なお長門教諭は、軍人然とした態度なのにいちいち趣味や趣向が可愛いと女性人気が高い。

 

「どうした!神通の指導を受けたお前達がその程度の筈がないだろう!」

 

「っ、はいっ!」

 

「なろぉ、まだまだぁっ!」

 

「もう一本お願いしますっ!」

 

アナハイムから借り受けたエコーズジェガンを操る長門教諭に、同じようにジェガンを借りた陽炎や江風、野分が果敢に挑みかかる。

 

その後ろでは、陸奥教諭が射撃武装の訓練を行っていた。

 

「粒子兵器の試射は学園じゃあんまり出来ないから、皆今の内に確り癖を覚えるのよ」

 

「はい…!」

 

「むっちゃんが求める精度、滅茶苦茶高いんだけど…」

 

「しかもこれを動いてる時にだろ?俺自信ねぇよ…」

 

陸奥の言葉に時雨が答え、用意された的をビームライフルで狙撃していく。

 

順番待ちの長波が、提示された命中目標の数値に冷や汗を流し、嵐が肩を落としながら呟く。

 

生徒の長所と短所を見極める訓練を行い、その結果午後から更なる集中訓練を課すとの事。

 

厳しい訓練と指導だが、誰一人止めると言い出さない。

 

その理由は、彼女達とは別のアリーナでクーと模擬訓練を繰り返す叢真の姿。

 

各所に設置されたモニターで叢真の訓練状態を生放送する事で、3組生徒達の気合を入れさせるという陸奥教諭の考え。

 

それは大成功であり、挫けそうになったり弱気になった時に、汗だくになっても訓練を辞めようとしない叢真の姿が支えになるらしい。

 

一部の生徒は訓練そっちのけでお宝シーンとか叫びながらスケッチ始めて指導員に怒られているが。

 

午後からの訓練は、成績が良い生徒は叢真と一緒に訓練出来るというご褒美…ご褒美?ご褒美なのだろう、実際盛り上がったし、兎に角そういう予定が組まれている。

 

操縦者組は叢真と訓練するのは自分だとばかりに気合を入れてるし、整備組は直接お世話が出来ると気合を入れている。

 

面白いことに、操縦者組は叢真と遊び隊や守り隊が中心で、整備組はお世話し隊が中心になっている。

 

こういう所も性格的な物が出るのだろう。

 

例外として、時雨や不知火が所属隊とは反対の訓練を受けていたりする。

 

時雨はお世話し隊なのだが、自他共に認める射撃の腕が評価されている。

 

逆に不知火は守り隊なのだが、丁寧で正確な整備で整備班から所属を熱望される生徒だ。

 

必ずしもその辺りが一致する訳じゃない辺り、人間の個性という物が見え隠れする。

 

さて、そんな激しい訓練を乗り越え、お昼時。

 

アナハイム第三研究所自慢の食堂には、ビュッフェスタイルで色々な国の料理が味わえ、これだけでもアナハイム側に来て良かったと感激する生徒が出る位だ。

 

夕食はアナハイム研究所の敷地内に建てられたフードタウン(飲食店が多数出店しているエリア)で好きな物が食べられる。

 

叢真大好きな3組だが、食事と甘いものは別腹なのだろう、とても感動している姿が見受けられた。

 

「いやはや、若い力というのは凄いものだね、思わず年を感じてしまうよ」

 

「アルベルトさん…」

 

食事が終わり、一息付いた叢真の元にアルベルトがやってくる。

 

先程まで叢真の周りには夕雲や海風達が居て入れ替わり立ち替わりでお世話をしようとしてきて大変だった。

 

それがあるから彼女達がデザートを取りに行くまで待ってからやってきたのだろう。

 

「どうだね、二次移行してからのドーベンウルフ…いや、シルヴァ・バレトの具合は」

 

「最高ですね、今まで以上に身体に馴染みます…なんだか、スタークジェガンに乗っていた頃を思い出す位に」

 

「それは結構。企業代表就任発表は、君が学園に戻る時と同時期に行う事になった。それまでに、シルヴァ・バレトを乗りこなせてるように、頼むよ」

 

「勿論です」

 

「アルベルト様…」

 

そこへ、ガエルがやってきて何やらアルベルトに耳打ちする。

 

「何…?福音が…?」

 

「は。状況次第では救援を乞うとの事です…」

 

「ふん、校外実習中の生徒達に対処させるとは…また悪戯兎が飛び回っているのか」

 

ガエルの報告にやれやれと肩を竦め、デザートのプリンを口に運ぶアルベルト。

 

「何か…あったんですか?」

 

「ハワイ沖でテスト中だったアメリカとイスラエルで共同開発していた機体が、突然暴走したそうだ。現在海上を高速で移動中、現在の進路のままだと、IS学園の校外実習地を掠める予想が出ている」

 

「暴走……校外実習の傍を…」

 

「既にIS委員会およびIS学園の方で何かしらの対策を行っているらしい、まぁ我々の出番は無いだろう」

 

IS学園の校外実習地を目指してるなら尚の事だと肩を竦めるアルベルト、どうやらある程度何が原因か予測が付いているらしい。

 

「もしも、万が一だが、ここを目指してきたら…君にも出動がかかる。が、ここにはヴァルキリーが2名も居る、安心して良い」

 

しかもビックセブン筆頭である長門教諭が居るのだ、確かに安心だと納得する叢真。

 

「この事は内密にな。それより君は、この後の腹具合を心配した方がいいな」

 

「え」

 

アルベルトが苦笑して顎で示した先には、デザートを山盛りにした夕雲達が、ニッコリと笑って立っていた。

 

叢真には、この後自分があ~ん地獄に落ちる光景が幻視出来た。

 

それは、お約束という名の未来視であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午後の訓練、叢真は筋トレの真っ最中だった。

 

あの後結局夕雲達が満足するまであ~ん攻撃を受け続け、必要カロリーをオーバーしてしまったからだ。

 

神通お手製のカロリー表通りにする為に、ひたすら身体を動かす叢真。

 

「なぁ、秋雲、楽しい、のか、それ…!」

 

「楽しいって言うか、幸せ?」

 

「秋雲の趣味は良く分からないから、気にしない方が良いですよ叢真さま~」

 

腕立てをする叢真を真横から観察しながらスケッチする秋雲。

 

学園外での貴重な姿を絵に収める為だけに、午前の整備士試験をパスしてきたのだから恐ろしい。

 

そしてそんな叢真の背中に座るのは、同じく試験をパスした巻雲。

 

整備服でも甘え袖な彼女だが、恐ろしい事に整備士としての腕前は高いらしい。

 

そんな彼女は見た目通りに身体も幼いので良い重さらしく、重しとして叢真の背中に乗っている。

 

数ヶ月前なら絶対無理だった人を載せての腕立て伏せが出来る自分に、内心少し感動する叢真。

 

なお神通が居ると彼女が乗ってくるので今より更にハードになる。

 

彼女が重いとかではなく、一番身体に負荷がかかる場所に正確に体重を掛けてくるからだ。

 

「いいよーいいよ~、滴る汗と鋭い眼光、横顔が絵になるよ~叢真っちは~」

 

ガリガリとスケッチブックに叢真の姿を書き写す秋雲。

 

既に何枚も絵を書いているのに、その勢いは衰え知らずだ。

 

「そう言えば叢真さん、私達は3泊4日の予定だけれど叢真さんは何時学園に戻るのぉ?」

 

「ぐッ、日曜日に、記者会見をして、月曜日には、戻る予定、だそうだ…!」

 

至近距離から耳に吐息をかけながら問い掛ける夕雲に、別の意味で顔を赤くしながら答える叢真。

 

3組生徒は一日長い校外実習として、土曜日を返上して実習に励む。

 

普通の校外実習に行った生徒達は金曜日に帰ってきて土日休んで学園となる。

 

「良かった、来週からも一緒に居られるのね…」

 

「夕雲、頼む、吐息が、擽った、力が、抜け…グフッ」

 

「68回で終了です~」

 

夕雲の甘い吐息攻撃に力が抜けて崩れ落ちる叢真。

 

巻雲のカウント数で考えると、むしろよくそれだけ出来た物だ。

 

「うふふ、さぁ筋トレはそこまでにして、整備実習に行きましょう?」

 

午後からは叢真も機体整備を教わる予定だったが、カロリー消費の為に筋トレタイムを設けて貰った。

 

だがそれも腕立て失敗で強制終了、自分達のテリトリーに叢真を引きずり込む夕雲恐るべしである。

 

叢真の午後の予定は、午前中の模擬戦で消耗した機体の修理と整備、終わり次第の模擬戦闘。

 

企業代表になるからには、ある程度自分で機体を修理出来ないといけないらしい。

 

国家代表達も、ある程度なら修理や改造が出来る。

 

中には一人で機体を完成させたと噂される国家代表も居るが、まぁ実際は主導でとか組み上げたとかが本当の所だろう。

 

パーツ単位での作成とかシステム周りとか、一人でやってたら何時終わるか分かった物ではない。

 

「そう言えば、4組の代表は結局機体は完成するんだろうか…」

 

整備室がまだ共有だった頃、何度か姿を見たことがある4組代表。

 

あちらもこちらも自分の事に精一杯で、会話らしい会話なんて交わした事がないが。

 

ただ、織斑に負けてから何度か視線を感じた事はあった。

 

憐憫や同情に近い視線だったので気にせずに居たが。

 

「叢真さん、そこのケーブル取って貰えるかしらぁ」

 

「ん、どれだ」

 

「そこぉ、そこのよぉそこそこぉ…♪」

 

「艶めかしい声出さないでくれないか…!」

 

確実にワザとだろう夕雲の悪戯に頬を染めながら仏頂面でケーブルを渡す叢真。

 

整備班には夕雲を筆頭にやたら性的なアプローチや肉体的な接触が多い子が居て対処に困る。

 

「叢真、何をそがぁにあこぉなっとるんじゃ?」

 

背後からむにゅんと柔らかいお山が襲いかかり、ビキリと硬直する叢真。

 

「んー?どうしたんか、そがぁに硬くなって♪」

 

分かってて叢真の背中に、クラストップ5に入るたわわを押し付けるのは浦風。

 

広島弁が可愛らしい彼女だが、彼女も肉体的、性的接触が多いので叢真を困らせる一人だ。

 

「ちょっと、浦風!ダメよ、叢真さんが困ってるじゃない…!」

 

と、相方の浜風に引き剥がされて残念そうな浦風、やはり確信犯だった模様。

 

整備班と一緒だと接触的な意味で落ち着かない、逆に操縦者班は視覚的な意味で落ち着かない。

 

叢真とてお年頃の男子である、ホモくさい織斑と違ってちゃんと反応してしまうのだ。

 

3組にハニトラが居たら危ない所だった、まぁ本人が真面目君なので一夜の過ちとかは許さないタイプだから大丈夫だとは思うが。

 

「うひー、武装が多いからメンテが大変だこりゃー」

 

鉛筆をドライバーに、スケッチブックをスパナに持ち替えて武装のメンテをする秋雲。

 

彼女が言う通り、固定武装の数は現在世界一。

 

拡張領域の予備のビームライフルやジェガンのシールドなどを合わせると膨大な数になる。

 

デュノアのラファール・リヴァイヴカスタムⅡも、拡張領域をさらに追加して武装を追加装備を20個に増やしているが、あちらは後づけの追加装備である。

 

シルヴァ・バレトの方は固定武装、つまり拡張領域が空いていれば更に武装を追加可能になる。

 

とは言え、その豊富な固定武装の弾丸とエネルギーの為に拡張領域を使用しているので、予備のライフルとシールド程度しか追加出来ないのだが。

 

「こんな巨体なのに、あれだけ俊敏に動けるのはこの姿勢制御バーニアのお陰ですか…」

 

「AMBACすごい綺麗に出来るけぇのぉ」

 

各部に装備された17個ものバーニアが、空中での俊敏で正確な姿勢制御を可能とする。

 

さらに背中の巨大なバックパックのスラスターにより、瞬時加速すら可能と言うのだから恐ろしい性能である。

 

その分、操縦者には精密な操作を要求されるが。

 

「シルバーのお顔、なんだかジェガンみたいですねぇ」

 

頭部のセンサーモジュールであるバイザーを点検しながら呟く巻雲、彼女が言う通りそのバイザーもマスクパーツもジェガンの物に酷似している。

 

本来のドーベンウルフの頭部は、もっとこう、厳つい悪役顔みたいな形をしていた。

 

これはジオニック社のデザインによく見られる物で、センサーがモノアイになっていたりする物が多い。

 

ドーベンウルフのセンサーもモノアイモジュールだったのだが、二次移行でバイザータイプに変化していた。

 

「ジェガンのコアを使っているから、そのデータを参照して二次移行したそうです。つまり叢真の為にコアが自力で作り出したのですね」

 

「はー、なるほど、愛やねぇ…」

 

不知火の言葉に黒潮がしみじみと呟く。

 

確かに、ジェガンのコアとの絆が無ければこうまで早く二次移行はしなかっただろう。

 

「ほーら、お喋りばっかりしてないで、さっさと組み上げちまうよ!」

 

「「「「「はーい!」」」」」

 

指導員であるモーラの言葉に、元気に返事して仕事に集中する整備班達。

 

そんな仲間達の献身を感じながら、叢真も愛機の整備に集中するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、叢真は割り当てられた自室で天井を見上げていた。

 

今現在、暴走した銀の福音への対処作戦が進行しているらしく、アルベルトや長門教諭達大人組は研究所にある中央管制室で事態の推移を見守っている。

 

叢真も立ち会おうとしたが、君には君に仕事があると断られた。

 

悪戯兎の児戯に、君まで関わる必要がないと呟いたアルベルトの言葉に首を傾げる叢真だったが。

 

もしも、今現在対応しているIS学園の部隊が失敗したら…そんな不安と、別の理由のダブルパンチで眠れない叢真。

 

『叢真…起きてる?』

 

と、ベッド脇のインターホンから、陽炎の声が聞こえてきた。

 

「あぁ、どうした?」

 

『ちょっと開けて欲しいな…』

 

なんだかいつもの元気ハツラツとした彼女には珍しいしおらしい声に首を傾げつつ、扉を開けると。

 

「お邪魔するね…」

 

パジャマ姿の陽炎が、枕で顔の下半分を隠しながら入ってくる。

 

髪を降ろしているからか、普段のハツラツなイメージとは違う、年頃の女の子らしさがあった。

 

「どうした、こんな時間に…」

 

「うん…ちょっとね」

 

そう言って叢真の隣、ベッドの脇に腰を下ろす陽炎。

 

部屋の中が薄暗くて分からないが、陽炎の頬は赤く染まっていた。

 

「なんて言うかさ…私って、叢真の役に立ててるのかなって思って」

 

「陽炎…?」

 

「コーチを引き受けたのは私だけど、本格的な指導は神通先輩任せで、私がした事なんて基礎とか基本を教えただけだし…今じゃ叢真の方がAMBACの成功率も高いし…」

 

少し悲しげに見えるのは、叢真のコーチでありながら指導者として役に立てていないのでは、と言う不安からなのだろう。

 

「もう、コーチとか名乗らないほうが良いのかなって…」

 

「馬鹿を言うな」

 

震える陽炎の肩に手をやりながら力強く彼女の独白を遮る叢真。

 

「俺が今こうして居られるのも、全部陽炎のお陰だ。陽炎が神通先輩を紹介し、ジェガンを選んでくれた。だからアナハイムは俺のデータを知り、企業代表に選出してくれた」

 

アルベルトが教えてくれた事だ、何か一つでも欠けていたら、今頃叢真は研究所に監禁されていただろう。

 

「全ては陽炎のお陰だ、陽炎の教えてくれた事で無駄な事など何もない」

 

俺も今の強さも、陽炎の教えのお陰だと語る叢真の言葉と、肩に置かれた手の暖かさに涙を流す陽炎。

 

「叢真っ」

 

「っと、か、陽炎…?」

 

振り返りながら、叢真に抱きつく陽炎。

 

それを受け止めながら、内心どうすればと混乱するこういう経験に乏しい叢真。

 

「ごめん…アンタが無事だって分かってから、もう気持ちが緩んじゃって……抑えきれないのっ」

 

「んっ!?」

 

顔を真赤にしながらも、叢真の唇を奪う陽炎。

 

今まで気の置けない親友、あるいは悪友ポジションとして傍に居たが、叢真を失う恐怖から箍が外れたのだろう。

 

「ごめん、ごめんねいきなり…でも私、もう…もう…!」

 

「か、陽炎、待て!待ってくれ!」

 

押し倒そうとしてくる陽炎に、慌てて押し返す叢真。

 

「なんで!?私じゃ嫌?浜風とか浦風とか長波とか村雨とか夕雲みたいな胸がいいの!?」

 

的確にクラストップ5のたわわを持つ面子を列挙する陽炎、そんな彼女の装甲は平均より薄め。

 

「違う、そういうことじゃ無くてだな…!」

 

「じゃぁなんでダメなの!?私、例え身体だけの関係でも…!」

 

「ヒュー、陽炎ヤルゥ…♪」

 

「え……」

 

突然響いた口笛と声に、ビキリと固まる陽炎。

 

ギギギ…と錆びついた動きで視線を向ければ、自分の反対側、つまり叢真の向こう側から布団を被ってこちらを見るクーの姿。

 

「陽炎、大胆っぽい?」

 

更に、その奥には夕立。

 

「身体だけの関係でも良いだなんて、泣かせるねぇ陽炎」

 

「か、身体だけ…そういうのもあるのか…」

 

更に、部屋のソファーには長波と嵐の姿もある。

 

薄暗くて気づかなかったが、叢真の布団は大きく膨れているし、ソファーにも布団を被せてある。

 

つまり、全員最初からこの部屋に居たのだ。

 

「あ…あ…あ…っ」

 

途端に先程までの赤面とは異なる真っ赤になる陽炎。

 

それはそうだろう、一世一代の告白を仲間に聞かれていたのだから。

 

しかも相当恥ずかしい事を口にしている。

 

「な、な…なんでいるのよぉーっっ!?」

 

至極当然な疑問の叫びだった。

 

まぁ長波と嵐は親友としてという建前で、寝ている間に叢真が居なくなったら大変だから守りに来たと言ってソファーへ。

 

夕立とクーは先を争うようにやってきて勝手に布団に入ってきた。

 

叢真が福音の事以外で眠れなかった理由がこれだった。

 

本当なら全員が叢真の元に居たいのだろう、それだけ叢真を失うのが怖いのだろう。

 

だが流石に。

 

「全員出ていきなさーいっ!!」

 

陽炎の委員長としての面が顔を出し、全員を廊下に放り出した。

 

「おやすみっ!」

 

そして叢真に怒り半分恥ずかしさ半分の叫びを残して、部屋の扉を締めた。

 

一人残された叢真は、唖然としつつも唇を噛み締めた。

 

「すまない陽炎…皆、今はまだ…そういう気持ちにはなれないんだ…」

 

まだ企業代表就任すらなっていない。

 

だから、彼女達の気持ちにはまだ答えられない叢真であった。

 

 

 




すまない…作者の力量じゃこの程度のラブコメが限界だ…本当にすまない…(ジークさん感









これ以上だとR18になっちゃうからね!(ゲス顔

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