仮面ライダー NEXTジェネレーションズ   作:大島海峡

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第一話:僕の時間はなぜ進んだのか(5)

 警報鳴り響き、赤いランプが点滅する中で、二体の黒いライダーが対峙する。

 相手の面越しに映り込む異形の姿となった自身を、エイジは、

「……ドライブ……」

 と呼称する。

 

「やむをえまい。渡さんというのであれば、少々、痛い目を見てもらうぞ」

 しがわれ声で幽鬼(ゴースト)は言った。

 

 その手には、どこから呼び出したものか、大剣が握られていた。それを大きく振りかぶってきたので、エイジはとっさに身構えた。

 だが、彼の危機を察してか、彼の装着した装甲のタイヤから、似たようなカラーリングの武器が形となって右手に転送される。

 

 銃とガントレットと短剣が融合したような武器。カラーリングは、自身の今の姿に合わせられている。

 とっさに逆手でつかんでしまったので、そのまま剣にグリップ部分をぶつけて受け止める。

 

 受け流した初太刀が、床の鉄板を切り裂いた。

 前のめりになった相手の胸の紋章めがけて、今度はエイジのほうから一斬を見舞った。

 

「ぐっ!?」

 

 火花を飛び散らせたゴーストに追い打ちをかけるも、それは防がれた。

 反撃を食らい、エイジは間合いをとって後退した。

 

 それからは、剣撃による応酬がつづいた。

 基本的なスペックはこちらが上のようだったが、相手にはおのれの装備に対する慣れと、ある程度の戦闘経験を感じさせた。

 子どもの頃、父や叔父とたわむれついでに習っていた格闘術とはモノが違う。

 それらの要素を差し引きすれば、手数でもパワーでも、五分と五分の戦いだった。

 

 だがお互いに共通して言えることは、こんな障害物だらけの狭い場所では、十分に力を出せないということ。

 やがてこの場に駆けつけるであろう誰かに、自身の姿をさらしたくないということ。

 

 その結論には、ほぼ同時にたどり着いたらしい。

 刃をまじえて競っていたが、反発する磁力のように、お互いに退く。

 

 ドライブは、イグニッションキーをひねる。

 ゴーストは、剣の付け根の目玉に、ドライバーの目玉を読み取らせる。

 

〈ダイカイガン、ガンガンミナー! オメガブレイク!〉

〈NEXT!〉

 

 ゴーストの背の空間に、目玉の紋章が大きく浮かび上がる。

 ドライブの握る刃に、電光がほとばしる。

 

 それぞれのエネルギーをそれぞれの刃に、局所的に集中させた必殺の一撃を繰り出す。交錯し、お互いを相殺しながら閃光を飛散させた。

 

 その光が収まった後に残されたのは、

「……消えた……」

 とつぶやくエイジと、散乱した機材やガジェットのみだった。

 

 その時、背後から女性の悲鳴が聞こえてきた。

「ダ、ダークドライブ!?」

 と声を張り上げた白衣の彼女の顔が見覚えがあるものだったので、エイジの対応はワンテンポ遅れることになった。

 その間に、彼女は床に散らばっていた銃型のガジェットの銃口を向けた。

 

 エイジはあわてて両手を挙げた。

 

「ちょっ、待ってよ!? 僕だよ僕!」

 

 腕からシフトカーを引き抜き、変身を解く。

 だが、彼女にとっても見知った顔が露わとなっても、彼女は警戒心は薄れない。

 

 やがてそのまま見つめ合っていたが、ややあって、

 

「ひょっとして……()()()()の、エイジ君?」

 

 奇妙な問い方をする年上の女性に、泊英志は重々しくうなずき、逆に質問を返したのだった。

 

 

 

「りんなさんこそ、どうしてここに?」


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