警報鳴り響き、赤いランプが点滅する中で、二体の黒いライダーが対峙する。
相手の面越しに映り込む異形の姿となった自身を、エイジは、
「……ドライブ……」
と呼称する。
「やむをえまい。渡さんというのであれば、少々、痛い目を見てもらうぞ」
しがわれ声で
その手には、どこから呼び出したものか、大剣が握られていた。それを大きく振りかぶってきたので、エイジはとっさに身構えた。
だが、彼の危機を察してか、彼の装着した装甲のタイヤから、似たようなカラーリングの武器が形となって右手に転送される。
銃とガントレットと短剣が融合したような武器。カラーリングは、自身の今の姿に合わせられている。
とっさに逆手でつかんでしまったので、そのまま剣にグリップ部分をぶつけて受け止める。
受け流した初太刀が、床の鉄板を切り裂いた。
前のめりになった相手の胸の紋章めがけて、今度はエイジのほうから一斬を見舞った。
「ぐっ!?」
火花を飛び散らせたゴーストに追い打ちをかけるも、それは防がれた。
反撃を食らい、エイジは間合いをとって後退した。
それからは、剣撃による応酬がつづいた。
基本的なスペックはこちらが上のようだったが、相手にはおのれの装備に対する慣れと、ある程度の戦闘経験を感じさせた。
子どもの頃、父や叔父とたわむれついでに習っていた格闘術とはモノが違う。
それらの要素を差し引きすれば、手数でもパワーでも、五分と五分の戦いだった。
だがお互いに共通して言えることは、こんな障害物だらけの狭い場所では、十分に力を出せないということ。
やがてこの場に駆けつけるであろう誰かに、自身の姿をさらしたくないということ。
その結論には、ほぼ同時にたどり着いたらしい。
刃をまじえて競っていたが、反発する磁力のように、お互いに退く。
ドライブは、イグニッションキーをひねる。
ゴーストは、剣の付け根の目玉に、ドライバーの目玉を読み取らせる。
〈ダイカイガン、ガンガンミナー! オメガブレイク!〉
〈NEXT!〉
ゴーストの背の空間に、目玉の紋章が大きく浮かび上がる。
ドライブの握る刃に、電光がほとばしる。
それぞれのエネルギーをそれぞれの刃に、局所的に集中させた必殺の一撃を繰り出す。交錯し、お互いを相殺しながら閃光を飛散させた。
その光が収まった後に残されたのは、
「……消えた……」
とつぶやくエイジと、散乱した機材やガジェットのみだった。
その時、背後から女性の悲鳴が聞こえてきた。
「ダ、ダークドライブ!?」
と声を張り上げた白衣の彼女の顔が見覚えがあるものだったので、エイジの対応はワンテンポ遅れることになった。
その間に、彼女は床に散らばっていた銃型のガジェットの銃口を向けた。
エイジはあわてて両手を挙げた。
「ちょっ、待ってよ!? 僕だよ僕!」
腕からシフトカーを引き抜き、変身を解く。
だが、彼女にとっても見知った顔が露わとなっても、彼女は警戒心は薄れない。
やがてそのまま見つめ合っていたが、ややあって、
「ひょっとして……
奇妙な問い方をする年上の女性に、泊英志は重々しくうなずき、逆に質問を返したのだった。
「りんなさんこそ、どうしてここに?」