仮面ライダー NEXTジェネレーションズ   作:大島海峡

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第三話:疾走の絆(18)

「……なるほど」

 

 棒を肩にかついでその変身を見守っていたギルガメッシュは、不敵に笑った。

 

宇宙(そら)の宝物庫から御大層なものを持ち出してきたな、面白いッ」

 

 彼はそう言うやシャフトをその真紅の装甲へと叩きつけた。

 だが、それを肩口に直撃したとして、春奈は身じろぎひとつしなかった。

 ボウガンの持ち手とは逆の手が鉄棒を掴み、腕ごとギリギリとねじ上げる。

 

 抵抗しようとするギルガメッシュを拘束したまま、右手のボウガンの引き金が絞られた。

 

 光の矢が至近から、黄金の装甲へと叩き込まれる。

 もんどり打つギルガメッシュが起き上がるよりも先に、連射が彼を撃ち抜いた。

 

 火花を散らして倒れた彼をさらなる追撃が吹き飛ばして、その前方からトリプルAが直進する。

 

〈ZERO! MAXIMUMDRIVE!〉

 

 メモリを叩くようにして差し替えて、ギルガメッシュはシャフトを突き出した。

 だが、唸り声をあげて、その頭上から自動車が彼めがけて突っ込んできた。

 シャフトはそれを防ぎとめていなすのに用いられた。

 その車から頭から飛び出てきた黒い影が、青い刃を閃かせて身を落としざまに斬りつける。

 

 空中で姿勢を整え、低く身をかがめて着地した仮面の戦士、ダークドライブの頭上を、紅の強弓が通過して、直線にギルガメッシュを射抜いた。

 そして二人の新世代ライダーは、隣同士に並び立った。

 

「お待たせ。って、姿変わってる」

「待ってない」

「待ってなくとも一緒に戦うよ。君が誰かの助けを必要としないほど強いのは知ってるけど、そんなことは関係なく、僕は自分なりにこの事件と向き合うって決めたから……!」

 

 そう言うや、ダークドライブへと姿を変えているエイジは、ブレイドガンナーを逆手に握りなおした。

 彼の背後に落下したネクストライドロンが、黒豹のように跳ねてギルガメッシュに飛びかかる。

 それを棒一本でいなしたギルガメッシュから一度離れたそれは、レーザー砲のようなもので彼を狙い撃つ。

 

 愛車と呼吸を合わせるかのように、エイジは逆手の刃で体当たり気味にギルガメッシュへと肉薄した。

 彼と武器で競り合いながら、スロットへ差し込んだままのゼロメモリを起動させようとする。

 だが次の瞬間、エイジの身体が脇へと飛んだ。追い打ちをかけようとする黄金の騎士を、真紅の矢は狙いをしぼって放たれる。

 

 それを妨げようとすれば、今度はエイジとトライドロンが挟み込むような陣形で両側の側背からつるべ打ちに、トライドロンからの熱線やブレイドガンナーからの射撃が浴びせられる。

 

「ずいぶんと、仲良しになったもんだな」

 

 反攻の隙を作れずに押されながら、ギルガメッシュは言った。

 もちろんこれは、素直な称賛ではなく、多分に揶揄が込められていた。両人の動きに協調も同調もない。

 

 春奈はエイジもろともに撃つようなためらいのなさで射撃をやめないし、そういう火の粉を振り払うべく、エイジは背後を常に気にかけているようだった。

 

「助けは求めていない。が、多少は利用させてもらおう」

 

 その春奈が、エイジに一度攻めをゆだねた。

 自身は弩を手の中で立体パズルのような手つきで組み替えていく。

 明らかに放置していたらまずい代物が出来つつあることは肌で感じ取っているが、それを止めるすべは防御にかかりきりのギルガメッシュにはない。

 

〈ARROW ACCEL!〉

 

 という音声とともに出来上がったのは、彼女の半身ほどもある巨大な弓だった。

 銃身だった部分はグリップに変形していた。そこにあるスロットに、自分のベルトの中央から引き抜いたメモリを装填する。

 

〈ACCEL! MAXIMUMDRIVE!〉

 

 つがえたノッキングポイントの中心に、熱と光が集中していく。

 それを背で感じ取ったのは、今まで肉弾戦を挑んできていたダークドライブが、大きく飛んでその場を離れた。

 

 春奈の指が弦から離れた。

 『A』というイニシャルを模した三角形の矢が、風を巻き込みながらギルガメッシュを穿った。

 

 大地をえぐり、木々をなぎはらいながら、彼に食らいついたままの矢は天空へと持ち上がっていく。

 そして、爆炎が空を覆いつくした。

 

 

 

 メモリとドライバー、そして黄金の眼魂をつかんだ翼竜のガジェットが、よろめきながら飛び立っていく。

 それを追うこともできたが、エイジたちにとってはまずはイーディスを安否を確かめることの方が先だった。

 

「二分五十四秒。それが絶望までのタイムだ」

 

 戦闘にかかったであろう時間をみじかく呟く彼女の身体から、装甲が消えてなくなる。

 というよりも、上から力任せに引っ張られていくかのような、そんな不自然なエフェクトだった。

 

 手にしたアクセルメモリは表示されたディスプレイが明滅をくりかえし、やがてそのイニシャルが消えた。

 それをのぞき込むエイジに、春奈は問われるよりも先に答えた。

 

「トリプルAの稼働時間は三分が限界だ。それに、変身のたびにクールダウンと調整も必要になる。……T3でも、ダークドライブには負けないがな」

 

 それだけ言い置いて、さっさと自分は先へと進む。

 

「…………だからなんで余計な一言を加えるかなぁ。ま、もう慣れたけどさ」

 

 エイジのぼやきは、すでに遠くを行く彼女には届かない。

 苦みのある表情を押し殺して、エイジもまた変身を解いて春奈を追った。


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