――ガンマイザー、というシステムのことはジャベルあたりから聞いておろう。
あれは、元はワシがグレートアイへのアクセスを限定するために開発したものであった。
だが、奴らのシステムは暴走し、グレートアイを掌握して眼魔の世界どころかこの世界へも危害を加え始めた。
タケルたちの活躍によってガンマイザーは破壊され、解放されたグレートアイは外宇宙へと旅立っていきおった。そして、人間世界は眼魔やガンマイザーの脅威から解放された。
が、
眼魔としての
その環境下で生き残る手段をめぐり多くの者が争い、傷つき、倒れていった。
……あの時ほど、自らの負債と力不足を恨んだことはあるまい。
と同時に、あの時ほどグレートアイの存在を渇望した時もなかったのだ。
グレートアイ自体は無垢で、純然たるエネルギー体じゃ。それが歪められたのはガンマイザーの暴走の結果にほかならぬ。
幸いにして眼魔世界の騒動は収束をむかえたが、いつダントンのごとき者が現れ、同じことがあるとも限らぬ。
備えとしてなんとかグレートアイを呼び戻せないかを、今までずっと思案してきた。
そして、ひとつの方法に思い至った。
かつてワシとその同志、天空寺
その英雄の選定としての条件は、「才よりも努力によって偉業を成した人物」というものじゃった。
これは、不可能や理不尽を前にしても怖じることなく障害を突破できる強靭な精神力や意志力を求めてのことだった。
が、その条件に適合しても選出から漏れた英雄がおった。
それが、ギルガメッシュよ。
ヤツの魂は、あまりに強烈な個でありすぎた。
ゴーストドライバーを用いたとて、その魂に主が自我を喰われ正気を失うおそれがあった。ゆえに眼魂ごとヤツを封印した。
それを思い出したのよ。
たしかに扱いは非常に難しい。だが、王、術者、剣士、武人、神……様々な属性を持ちながら、未踏の領域へ挑む冒険者でもあるギルガメッシュならば、ガンマイザーの除かれたグレートアイへのコンタクトが可能なのではないか、とな。
ガンマイザーのように管理や制限をするのではない。ただ、願いを届けるためのメッセンジャー。その役目として、ギルガメッシュの精神エネルギーを使おうと思った。
ワシはタケルたちには内緒で研究を重ねた。相談すれば反対されるのは目に見えておったしな。
問題は、それを容れる肉体じゃった。
イダルマが現れたのは、そんな折のことじゃ。
奴はどこで聞きつけてきたのか、はたまた完全に偶然であったのか。似たような計画をもって寺を訪れ、ギルガメッシュの器を用立てられると言ってきおった。
目的さえわからぬような、本来なら忌避すべき異質な技術に、惜しむことのない投資と援助をしてくれる組織があるとな。
イダルマめは明らかに急いておった。
その組織とやらに余程せっつかれておったのか。自分を見捨てたイゴールがあちらの世界で許され活躍していることへの対抗意識だったのか。そこまでは聞かなんだ。
……そして、急いておったのはワシも同じであった。
すでにその時点で、老いたワシの命はもう長くはなかった。世に災いをもたらし、恨みと嘆きを振りまいたまま、なんの役にも立てず死ぬのが恐ろしかった。
ならばせめて、この命を燃やす覚悟で最後の賭けに出よう、と思った。思ってしまったのだ。
果たして奴らは用意してくれた。
コアが破壊されて打ち捨てられていたものを、奴らが回収し、修復した。
あやつらいわく、それは一種類にして二種類のロイミュードの複合体であり、かつて次元を飛び越えた経験を持っているのだという。
まぁその辺りは門外漢ゆえよくは知らぬが、実際にギルガメッシュの魂を容れるには、最適であった。
当然、ギルガメッシュの暴走をおそれたワシはいくつもの策をめぐらせた。
魂の分割化も、その一つよ。
かつてのガンマイザーや英雄眼魂を模倣し、ワシはそれを十の眼魂にまで分割した。
もし反逆されたとして対応可能なレベルにまで弱体化させるためにな。
質は本体のそれとは劣るが、その分のボディも、用意されておった。
なんでもメガヘクス、なる異星人がサイバロイドボディを複製したものであったらしい。
……が、そんなワシの思惑を超えて、ギルガメッシュの魂は強すぎた。
ヤツらは、肉体を持たぬその時点から組織やイダルマを抱き込んでおったようじゃ。肉体を手に入れるや奴らを結託してワシを殺めた。
もちろん、その万一にもワシは備えておった。
イチかバチかではあったが、精神のバックアップをダークゴーストの眼魂に保管しておき、今日にいたるまでの準備を整えてきた。
ヤツらに対抗しうるすべを探し、いつか討ち果たす時を目指して……!