仮面ライダー NEXTジェネレーションズ   作:大島海峡

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あけましておめでとうございます。
本年で終わるよう努めてまいりますので、よろしくお願いします。


最終話:父よ、あなたはだれに今を託すのか(5)

 戦場に単騎、白銀のオーバーロードは屹立していた。

 その周囲一帯をインベスが十重二十重に取り囲んでいた。

 彼の視界の視界において、その不気味な外皮を持つ怪物のいない場所はない。

 

 ただ、彼らの爪や牙が、その白銀の鎧に触れることはなかった。

〈影松!〉

〈無双セイバー!〉

 彼の呼び出した十文字槍と刀が、銀光を描いて彼らを叩き落としていた。

 

「オゥラァッ!」

 

 雄たけびとともに振り回すその軌道は嵐を巻き起こし、実寸よりもずっと伸びて地を駆けるシカや滑空してくるコウモリのインベスなどを撃破していく。

 

 その姿はまさに、一騎当千の戦神といった様相だった。

 

 爆炎の中をくぐり抜け、泰然とギルガメッシュのコピーはソニックアローを片手に歩いてくる。

 宮殿の宝塔のごとき兜の奥で、ギラリとその眼が野心と怨嗟の光を見せる。おそらくそれは、戦極ドライバーに取り付けられた『鍵』へと向けられたものだろう。

 

「知恵の実……それを手にしながら、人類に革新をもたらさないとは、『上帝(オーバーロード)』の名折れもいいところだ」

「こんなものがなくたって、人は前へと進んでいける」

 

 無双セイバーを肩にかつぎながら、みずからの力の源たるそれを、‎紘汰は否定し、あるいは受け入れて、自身も前進する。

 

 彼らの間に、インベスの群れがなだれ込んだ。

 様々な形態を持つそれらを、武器を替え、手段を変えながら蹴散らして、その群れを鎧武は割っていく。

 

「言い換えれば、その果実があろうとも人は誘惑に克ち、その力を良い未来のために使えたはずだ。だがお前はそんな奴らに何度裏切られた? どれだけさんざんな目に遭わされてきた? だから果実を持ち去り、果ての星で隠棲したんだろう。それこそ、お前が人間の可能性を信じていなかった証拠だ」

 

 挑発のようにそうつぶやき、ギルガメッシュは矢で牽制しながら自身は後退を始めた。

 群れの中に影となって埋もれていく彼を追うべく、鎧武は遮る者すべてを斬り伏せていく。

 

 ふいに、その群れが開けた。

 遠い隔たりの先に、ギルガメッシュがいた。

 

 ただし、一体ではない。

 ゲネシスドライバーを持つ彼らは、怪人と劣らぬ数百と言う数で、整列していた

 そしてその『弓隊』は、ソニックアローをそれぞれ天へと向かってつがえていた。

 

「っ!」

 それを防がんと手を伸ばそうとした鎧武を、強化されたシカインベスの巨体が取り囲んだ。

 単純な力比べであれば、たとえそれが屈強な怪力を持っていたとしても負けはしない。だが、動きは制限された。

 

〈デーツエナジー!〉

 

 引き絞られたエネルギーは、斉射とともに矢の形となって割れた空を覆い包んだ。落ち行く異星の下で、弧を描き、インベスをも巻き込みながら、鎧武のいた地表を滅却していく。

 

「だからお前は禁断の果実を地球に置いておきたくなかった。野心を抱えた人々に、種火を残したくなかった。そうだろう」

 

 その火力と範囲は、たとえオーバーロードといえども跡形もなく消し飛ぶ。

 

 その、はずだった。

 

 

 

 

〈ミックス! ジンバーチェリー!〉

 

 

 えぐれた大地からもうもうと立ち込める黒煙を切り裂いて、紅桃色の閃光が突き出てきた。

 三日月の前立てを頭に輝かせ、陣羽織を負った青いスーツとなった鎧武は、足を止めず高速に蛇行しながら、その軌道にいるインベスやギルガメッシュを撫で切っていく。

 

「たしかに、禁断の果実を多くの人間が求めた。中には誰かを利用して、善意を踏みにじった奴もいた。そのために、たくさんの被害を出したヤツだっている……!」

 

 矢を撃ち、走り、あるいは上下両端のアークリムで敵を押し返し、ギルガメッシュの弓隊に迫る。

 中央のスロットに、別のロックシード……かつて涙を流して討った戦友から譲り受けた、バナナロックシードをセットした。

 

「けど今ならわかる! あの戦いは誰だって、自分の信念のため、信じた夢のため、今の自分を変えたくて戦ってきたんだっ!」

 

〈バナナチャージ!〉

 

 射放った光矢は、黄色い檻となって最前列で撃ち返そうとしていたギルガメッシュを覆い包んだ。

 条件さえ整えば下級程度のオーバーロードの動きさえ封じるその拘束に、弦を手にしたままにギルガメッシュの一体は捕らわれた。

 

「俺はそれを、笑わないし、笑わせない!」

 高らかな宣言とともに、鎧武はきりもみしながら高く飛び上がった。カッティングブレードを一度上下させた。

 

〈オレンジスカッシュ! ジンバーチェリースカッシュ!〉

 

 オレンジの切り身のようなサークルが、彼らの間に形成される。

 クラッカーのような、あるいは赤い榴弾のごとき二個のエナジーボールを伴って、鎧武の脚は突き出される。

 

「セイハーッッ!!」

 

 サークルをくぐるたびに、スピードと力と光が増していき、やがて全身で押し込むようにしてギルガメッシュへとキックを叩きこんだ。

 

 爪先からくるぶしにかけて包み込んでいた真っ赤なふたつのエネルギーは互いにぶつかり合うかのように大きく左右に揺れて衝突し、やがて大規模な爆発を引き起こした。

 

「……しゃあッ! 次はどいつだ!」

 燃える炎を背に受けて、腰を落とす。

 創世の弓をかついだ鎧武は自身のステージの中、無数の敵へと相対した。


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