仮面ライダー NEXTジェネレーションズ   作:大島海峡

12 / 150
第二話:Gは止まらない/黄金狂時代(3)

 泊家の夕食は、久々に三人そろっての食事となった。

 というのも刑事として今も最前線で戦う父が、時間どおりに食事をとることが難しいからだ。

 

 エイジ自身にしても大学の付き合い……とりわけ最近は仮面ライダーとしての活動も加わり、帰りが遅くなることが多かった。

 

 母の作ってくれた食事を慢性的に口に運びながら、父は今追っているらしいヤマの資料を端末で漁っていた。

 一年前、ある友人が行方不明になったらしく、捜索願とは別に彼個人もお願いされているらしい。

 

 霧子がわざとらしく咳払いした。

 父は妻の不機嫌に気づいてあわてて端末を切ったが、その拍子にテーブルの下に落としてしまって、拾いなおした。

 

 そのまた瞬間にテーブルの角に頭をぶつけ、食卓全体がおおきく揺れた。

「って!」

 と痛がる父に、母は露骨にため息をつき、その息子は彼に見えないように笑った。

 

 微妙な距離感には違いないが、それでもたしかに感じる、ありふれた幸福の姿だった。

 

「そう言えばエイジ」

 

 と、机から顔を出した父は端末をスーツのポケットにしまい込んで言った。

「現さんから聞いたんだけど、お前今日現場に来たんだってな」

「ん? うん、まぁ通りがかりで」

「そうか」

 

 父は詮索しなかった。代わりに、

 

「最近、帰りが遅いみたいだが。いったい何やってるんだ?」

 

 などと、まるでホームドラマのようなセリフをそれとなく、と言った感じでさし挟んでくる。

 

「べつに。友達の付き合いとか」

「この間はドライブだったか?」

「そう、ドライブ」

「車は?」

「えっ」

「車はどうしてる? お前、持ってないだろ」

 

 まるで取り調べみたいだ。そう一笑に付そうとしたが、父の表情を見たエイジはその笑みを引きつらせた。

 父は……刑事、泊進ノ介の眼光は、するどく対象を観察していた。

 

(これがあるから、うかつなことが言えないんだ)

 

 ふだんは呑気者でおっちょこちょいで気取り屋の父だが、一度でも不審な点を見つけると、彼いわく『ギアが入る』。

 一転して鋭い頭の冴えや観察力、情報整理能力を発揮して真実へとたどりつくのだ。

 

 今でこそダークドライブのことは秘密だが、もちろん事態に収拾がついて実績を重ねていったあと、きちんと報告するつもりでいる。

(だけど、今はだめだ)

 全容をつかむどころか、事態はより複雑に、より大きくなっている。そんな予感がある。

 ただでさえ難事件を抱えている父にその責任を押し付けたり、母に心配をかけたくない。

 

「レンタカー。借りたんだよ。あとは友達のとか……じゃあ今度さ、父さんの、一台貸してよ」

「やだね! お前みたいなひよっこに、誰が貸すかっ」

 

(子どもか)

 と、相も変わらぬ車への執着に、エイジと霧子は呆れた。

 だが、そこを刺激することでお茶を濁すことには成功した。

 

 それにレンタカーうんぬんは、言い方を変えただけでウソではない。

 ネクストドライブシステムは、『父の』友人であるりんな、ロイミュード108……元をたどれば擬態された本来の持ち主からの借り物だ。

 八対二と割合で虚実をまぜること。それがウソを信じさせるコツだ。

 

(確かに今は借り物の力だけど、いずれは乗りこなしてみせるさ)

 何度となく誓ってきた決意。だがそのたびに、エイジの頭にふと疑問がよぎる。

 

 

 

(ダークドライブの元の装着者って……いったい誰なんだ?)


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。