柿本の武器はヨーヨーだが、見た目に惑わされてはいけない。いや、この武器を使う柿本の技術も左右されているのだろうが、遠距離の攻撃と言う事もあり、遥はなかなか近付けずにいた。
__近付けねぇんじゃあ攻撃のしようがねぇ!一般人もいるから下手に動けねぇし……
遥は苦戦を強いられていた。
死角に逃げ込み、敵の攻撃をしのごうとした時、誰かとぶつかってしまう。
「いってぇーてめぇどこ見て歩いてんだよ!」
「すまねぇな。こっちも色々事情があってよ」
遥はぶつかった相手に謝ろうと顔を見ると、自分と同じ銀髪に緑の瞳をした少年だった。
「アンタ、まさか……」
その時、ヨーヨーから飛び出す針が二人を襲いかかった。遥は少年を押しのけ、代わりに自分が針を受けてしまった。
少年は、遥の下に駆け寄る。
「おい!」
少年の呼び掛けに、遥は目をゆっくりと開ける。
針を受けた所から出血していた。
「毒、塗られてたみてぇだ……アンタ、逃げろ。あいつの狙いは、わた、しだ……」
毒の所為で息が上がっていた。
少年にそう告げると、気を失った。
*****
遥が目を覚ましたのは学校の保健室だった。
「何で、アンタみたいな奴が学校のセンセーやってんだ?Drシャマル」
「そりゃ、こっちの台詞だぜ。遥」
シャマルが遥の事を呼ぶとふっとそっぽを向いた。
「銀髪に緑の瞳。アイツも日本に来てたのか」
「ボンゴレボーズの守護者とやらに選ばれたみてぇだぜ」
「そうか……」
守護者。それは裏の組織マフィアに伝わるものだ。ボスを守護する六人の人物の事を指すのだが、イタリアの最大手マフィアのボンゴレとなれば別だ。かなりの手だれでなければ選ばれないのだ。
遥は何故か悲しそうな顔をした。
「まぁ、仕方ねぇよな。三歳くらいだったか?お袋さんが事故にあったの」
「ああ。母さんは自分の余命を知ってたからアイツに本当の事を隠してたのに……」
「お前はどうやって助かったんだ?」
「ある人が助けてくれた。今はその人の家に世話になってる」
遥は幼い頃に母親と事故に遭っていた。不幸な事故だ。
遥の母はピアニストだった。だが、病気がちで残された時間もそう多くはなかった。そんな母親にアプローチをかけてくる一人の男性が居た。その男性は裏の人間で子供もいた。つまり不倫だったが、裏の世界じゃあ愛人の一つや二つ編では無かった。そして、一人の赤子を身ごもった。その赤子は女の子だった。その翌年にもう一人、男の子産まれてきたのだ。二人とも母親譲りの銀髪だった。だが、自分の残りわずかな命では二人の側には居られないと言い、二人を男性の下へ置いていこうとした。そんな時、一年早く産まれてきた姉が彼女の事を離さなかった。
「覚えてはいない。それどころかアイツは“もう一人の姉”が居ることすら知らないんだからな」
そう言うと、遥はベットから抜けだし、部屋を出ようとした。それをシャマルは止めようとはしなかった。
「餓鬼達が向かったのは黒曜ランドってとこだ」
「分かった」
「……ビアンキが心配してたぜ」
「……」
遥は無言のまま部屋を出た。
いらない事を言ってしまったかと思いながらシャマルは誰もいなくなったベットを見つめた。
この話は未来編に出そうかと思いましたが、シャマルが登場の事でしたので、予定変更しました。