訳あり女子生徒   作:海野

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第十話 死んでも死にきれねぇ

 冬花の言った通り、三叉槍に傷つけられた者は骸の憑依の対象になる事が分かった。骸がビアンキに憑依し、獄寺を傷つけた事によって獄寺までもが骸の支配下になってしまったのだ。

 

「貴女にも傷をつけたはずなんですがねぇ。これはどういう事でしょうか?」

「私、こう見えて人に指図されるのが嫌いでね」

 

 冬花は強がって言うが、かなりつらそうだった。遥が支えておかなければ今にも倒れそうだ。

 

「六道骸、お前がさっき撃った弾は憑依弾、そうだろ?」

「クフフフ、貴女達は一般人に紛れ込んだ裏の人間ですね。そうでもなければ憑依弾の事を知っている訳が無い」

 

 憑依弾はその名の通り、他人の肉体にとりつき、自在に操る弾の事だ。昔、エストラ―ネオファミリーが開発した特殊弾だ。だが、あまりにも使用法が残酷だったため、マフィア界で禁弾とされ、弾も製造法も闇に葬られた。

 その憑依弾を開発したエストラ―ネオファミリーは何年か前に何者かによって放火され、跡形も無く灰になった。

 

「貴女達には興味がありますからね。ぜひ、契約をしたいのですが」

「操り人形にされるのはごめんだ」

「仕方が無いですね」

 

 骸は獄寺とビアンキ、遥と雲雀によって倒されたはずの柿本と城島に同時に憑依し、無防備なツナに襲いかかって来た。

 遥は前に立ちはだかった獄寺に刀を向ける。

 

「卑怯だな。流石幻術使いだ」

「貶していますね」

「いいや、褒めているさ」

「こんな状況でそんな事を言っている貴女は異常ですね」

「よく言われる。変人だって」

 

 遥は刃ではなく、峰の方に持ち替え、獄寺の首を狙って気絶させた。手刀でやるより効率がいい。

 裏の人間だとしても遥は無益な人殺しはしない。悪い奴だったら殺してもいいのか?それは違う。善と悪があろうとも人を殺したことには変わりはない。そう三日月に教えられてきたのだ。

 

「とても残念です。貴女が仲間を傷つけないようにしようとしている間にもボンゴレは危ない目にあっていますよ」

 

 城島に憑依した骸が遥を煽るようにして言う。遥はその事が何を指すのかすぐに理解し、ツナの下に向かおうとするが、城島がそれをゆるそうとはしない。

 その時、ツナの頭上から緑色に輝く光が辺りを照らした。光が収まると、ツナの下に落ちてきたのは毛糸の手袋だった。手袋の中には弾が入っていた。

 

「行かせない!」

 

 特殊弾と気付き、骸はそれをリボーンの手に渡る事を阻止しようとするが、遥が骸の行く手を拒んだため無事にリボーンは弾を銃に込め、ツナの額に向かって撃った。

 今までの死ぬ気弾は外部のリミッターを外したものだった。だが、この弾は違う。内面からリミッターを外す事によってツナの内に秘めたる“ある力”を呼び覚ます為の弾だったのだ。

 

「骸、お前を倒さなければ……死んでも死にきれねぇ」

 

 手袋が黒のグローブに変化し、ツナの額に橙色の炎が灯った。

 リボーンは遥の下に行き、ツナの戦いに手を出すなと言った。リボーンはツナの家庭教師だ。この戦いはツナの経験になる。そう踏んだのだろう。遥は刀を鞘に納めた。

 

「リボーン、お前は沢田に何を求めているんだ?」

「簡単だ。ボンゴレ十代目のなる事、それだけだぞ」

 

 “超直感”それはボンゴレの血統にだけある特性、見透かす力の事を指す。ツナは戦う内にその前触れが訪れていた。

 

「ツナは分かるが、一宮冬花。あいつの勘はただの勘じゃねぇな」

「私にも分からない。私は親の顔を知っているが、あいつは親の顔すら知らねぇんだからな」

 

 遥は目を細めた。

 六道骸が自分の本体に戻ると、自分の右目に手をあてた。

 

「僕が持つ戦闘能力の内、まだ見せていない第五の道、人間道。それは最も醜く、最も危険な能力ですからね」

 

 骸の右目の文字が五に変わると、骸の体全身からどす黒いオーラが溢れてくるのをツナ達は感じた。

 人間道の能力は危険というだけあった。超死ぬ気(ハイパー化)したツナが押されていたのだ。

 壁に叩きつけられたツナはゆっくりと起き上がり、頭部の死ぬ気の炎が燃え上がった。

 

「お前の力がこんなものなら拍子抜けだぜ」

 

 ツナのグローブに頭部の死ぬ気の炎と同じ色の炎が纏った。




 力尽きた。

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