ここは並盛町。自然も多く、住宅街も多く、都会と田舎が半々と言ったとても過ごしやすい町だ。
そんな並盛町のある学校。並盛中学校では、ある話でもちきりだった。
「やっぱり、生徒会の一宮先輩って綺麗だよな」
休み時間、一人の女子を見つめながら話し合う男子生徒がいた。
その女子は、並盛中学校。略して並中では、とても人気のある人物だった。並中の生徒会の副会長を務め、頭がとても良く、容姿端麗だ。その女子の名を、一宮冬花と言った。
「冬花!」
冬花の名前を呼びながらそばに寄って来たのは、銀髪の女子生徒だった。
銀髪の女子生徒は、違う意味で有名であった。
「あの先輩って誰?」
「お前、知らないのか?九条先輩だよ。一年生の中では目つきが悪い先輩で、一宮先輩とよくいることで有名だぜ」
九条遥。銀髪の髪をしている事から外国人だろうか。スタイルは良いが、目つきが悪い所為で男子達からは避けられているのだ。
それと、彼女には近付きたくない理由がもう一つあった。
「九条遥。また君は校則違反をしているね」
黒い学ランを肩にかけ、手には金属製のトンファーを持った男が遥に向かって歩いて来ていた。
彼の名は、雲雀恭弥。並盛風紀委員長を務めている。そして並中……いや、並盛町で恐れられている存在だ。雲雀は、群れる。つまりある程度の人数で固まっていると、咬み殺すと言ってトンファーで襲いかかってくるのだ。その事から“雲雀恭弥の前では群れるな”と、並盛全体の教訓になったのは言うまで無いだろう。
「ええー!なんで、ピアス付けちゃいけないんだよー」
「遥。生徒手帳に書いてるよ。女子、男子それぞれの制服。または、髪留め以外の装身具は付けてはならないってね」
冬花は、生徒手帳に書かれてある事は全て頭の中に入っている。その事から遥からはよく型物と呼ばれる。
「それに、カーディガンのボタンは留める。リボンは着用する。君はいつになったらやるんだい?」
雲雀は、トンファーを構え、遥に近付いて行く。その様子に周りの生徒は顔を青くする。
すると雲雀はトンファーをしまい、口を開いた。
「もう休憩時間が終わるよ。そろそろ各自の教室に帰りな」
雲雀はそう言うと、帰って行った。
「今回もギリギリセーフだな!」
「セーフじゃない。ちゃんと校則守りなよ。そうしないと、生徒会副会長として、生徒指導を受けてもらいますからね」
「それは嫌だね。そんじゃあ、そろそろ教室戻るかな」
遥はそう言うと歩き出し、冬花は遥を追いかけるように小走りで着いて行った。