訳あり女子生徒   作:海野

1 / 19
プロローグ

 ここは並盛町。自然も多く、住宅街も多く、都会と田舎が半々と言ったとても過ごしやすい町だ。

 そんな並盛町のある学校。並盛中学校では、ある話でもちきりだった。

 

「やっぱり、生徒会の一宮先輩って綺麗だよな」

 

 休み時間、一人の女子を見つめながら話し合う男子生徒がいた。

 その女子は、並盛中学校。略して並中では、とても人気のある人物だった。並中の生徒会の副会長を務め、頭がとても良く、容姿端麗だ。その女子の名を、一宮冬花と言った。

 

「冬花!」

 

 冬花の名前を呼びながらそばに寄って来たのは、銀髪の女子生徒だった。

 銀髪の女子生徒は、違う意味で有名であった。

 

「あの先輩って誰?」

「お前、知らないのか?九条先輩だよ。一年生の中では目つきが悪い先輩で、一宮先輩とよくいることで有名だぜ」

 

 九条遥。銀髪の髪をしている事から外国人だろうか。スタイルは良いが、目つきが悪い所為で男子達からは避けられているのだ。

 それと、彼女には近付きたくない理由がもう一つあった。

 

「九条遥。また君は校則違反をしているね」

 

 黒い学ランを肩にかけ、手には金属製のトンファーを持った男が遥に向かって歩いて来ていた。

 彼の名は、雲雀恭弥。並盛風紀委員長を務めている。そして並中……いや、並盛町で恐れられている存在だ。雲雀は、群れる。つまりある程度の人数で固まっていると、咬み殺すと言ってトンファーで襲いかかってくるのだ。その事から“雲雀恭弥の前では群れるな”と、並盛全体の教訓になったのは言うまで無いだろう。

 

「ええー!なんで、ピアス付けちゃいけないんだよー」

「遥。生徒手帳に書いてるよ。女子、男子それぞれの制服。または、髪留め以外の装身具は付けてはならないってね」

 

 冬花は、生徒手帳に書かれてある事は全て頭の中に入っている。その事から遥からはよく型物と呼ばれる。

 

「それに、カーディガンのボタンは留める。リボンは着用する。君はいつになったらやるんだい?」

 

 雲雀は、トンファーを構え、遥に近付いて行く。その様子に周りの生徒は顔を青くする。

 すると雲雀はトンファーをしまい、口を開いた。

 

「もう休憩時間が終わるよ。そろそろ各自の教室に帰りな」

 

 雲雀はそう言うと、帰って行った。

 

「今回もギリギリセーフだな!」

「セーフじゃない。ちゃんと校則守りなよ。そうしないと、生徒会副会長として、生徒指導を受けてもらいますからね」

「それは嫌だね。そんじゃあ、そろそろ教室戻るかな」

 

 遥はそう言うと歩き出し、冬花は遥を追いかけるように小走りで着いて行った。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。