宮永咲が結婚したいと頑張るお話   作:通天閣スパイス

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息抜きその3。気の向いた時に更新します。

※『宮永世代』→『魔王世代』に修正。

※某掲示板ネタ注意












プロローグ

【速報】原村選手、結婚

 

 

 

1 名前:名無し:20XX/05/12(土)ID:hgy4PGr9

 

本日正午、プロ麻雀選手の原村和選手が、先日入籍していたことを自身のブログ上にて発表した。相手は大学の同級生で、職業は弁護士。大学時代からの数年の交際を経ての結婚とのこと。

原村選手が所属する横浜ロードスターズは、この発表に対し、公式ホームページ上で祝福を表明。ファンからも大量の祝福するメッセージが届いている。

 

なおこれにより、魔王世代のプロ麻雀選手で結婚していないのは、恵比寿の宮永咲選手だけとなった。

 

 

 

ソースはヤッホー

 

 

2 名前:名無し:20XX/05/12(土)ID:Tdn0a2K1d

 

のどっちが結婚とかワロタwwwwwワロタ…………

 

 

魔王様は残当

 

 

3 名前:名無し:20XX/05/12(土)ID:mrt1dbwB4

 

・麻雀日本代表

・国内タイトル常連

・高収入

・誰もが知ってるスター選手

・顔はかわいい

 

 

これだけ要素が揃ってて結婚できない魔王様に草不可避

 

 

4 名前:名無し:20XX/05/12(土)ID:Y04mnrXa3

 

おお、もう……

 

 

5 名前:名無し:20XX/05/12(土)ID:rygRfj2dj

 

魔王世代って今27か。まだ魔王様もワンチャンあるし(震え声)

 

 

6 名前:名無し:20XX/05/12(土)ID:Fjy7hRbh3

 

>>5

小鍛治プロの悲劇を繰り返してはいけない(いましめ)

 

 

7 名前:名無し:20XX/05/12(土)ID:jahtH3kHW

 

これは婚活やろなぁ……

 

 

8 名前:名無し:20XX/05/12(土)ID:quhar36Jt

 

麻雀が強い人間は結婚できない

 

 

 

ソースは魔王

 

 

9 名前:名無し:20XX/05/12(土)ID:bbsj4GW69

 

>>8

あわあわとかは結婚してるんですがそれは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とあるマンションの、一室。一人で暮らすには寂しさすら感じる、1LDKの中々に広いその部屋のリビングで、私は一人パソコンと向かい合っていた。

 傍らにはお茶とお菓子を置いて、時折それらを口へと運ぶ。しかし視線はパソコンから外れることなく、画面に映る文章を上から下に読み込んでいった。

 

 画面に映っているサイトは、日本国内で最大手の某有名掲示板。その中でも麻雀に関する話題を取り扱う、ネタや噂からニュースまで、様々な情報が集まる場所。

 正直に言って、あまり上品な場所ではない。文学好きを今でも自称している私としては、嫌いだというわけではないが、あまり好きになれる類いの場所ではなかった。

 なのに私が今これを見ているのは、今日に驚愕のニュースを耳にしたからであり。その情報の詳細を確かめんと、手当たり次第に情報を集めまくったせいである。

 

 そのニュースについて扱った――と見せかけて、いつの間にか内容が“私”を弄る方向に変わっていったスレッドを流し読みしながら、一つ溜め息を吐いて。

 

 

 

「……はぁ。のどちゃんも結婚、かぁ」

 

 

 

 私――宮永咲は昔からの知り合いが次々結婚していく状況に、思わず遠い目をしていた。

 

 

 私は今年で28。世間一般で言う『アラサー』の時期に、既に片足どころか半身を突っ込んでしまっている。

 最近は晩婚化が進んでいるとはいえ、女性として華があるかないかの基準の一つとして、未だに三十路というのは大きなボーダーラインとなっている。二十代と三十代では男性の食指の動きは全然違うのだと、中高と同級生だった初恋の男性が以前語っていたのを覚えていた。

 

 私の知り合いの殆どは皆、その境界を越える前に無事お相手を見つけていた。

 竹井先輩は五年前に外国で結婚したらしいし、まこ先輩は六年前にお見合い結婚。優希は四年前に彼氏を見つけて、去年の末に結婚。そして、今日――正確には数日前だが――私の親友でもあるのどちゃんが、結婚した。

 さらに言えば、清澄のメンバーだけではない。私が高校時代にインターハイで戦った人達で、少なくとも私のようにプロの世界に足を踏み入れた人間は、殆どが既婚である。

 瀬条さんとか、大星さんとか、高鴨さんとか。皆可愛くて、性格も決して悪くはない人達ばかりだから当たり前と言えば当たり前だが、男の方が放っておきはしない。彼女達の多くが結婚して、中には既に子をもうけている人もいる。

 

 私だって、結婚はしたい。好きな人と一緒になって、子供を産んで、幸せな家庭を築きたい。

 いくら麻雀が強くても、仕事の面で充実していても、プライベートが寂しいものではやはり物足りない。特に同僚達が家庭の話で盛り上がっているのを横目で見ると、なんとも自分が惨めに感じられるのだ。

 

 数年前までは、私も精神的な余裕があった。

 中高と一緒で昔から仲のいい男性がいて、初恋の人であるその人と親しい友達付き合いを続けていて。友人以上恋人未満の関係だったその人とは、相手もまだ結婚していなかったこともあり、休みの時にたまに会ったりしていた。

 私は学生時代からの淡い恋愛感情を彼に抱いていて、断言はできないが、きっと彼の方も私を好んではいただろう。付き合っていたわけではないし、自身の感情を相手に伝えたわけでもないが、彼といずれは結婚するのだ、と心のどこかで信じていた。

 

 でも、数年前。いつものように喫茶店で待ち合わせた彼は、恥ずかしそうに、口を開いて――――

 

 

 

 

 

 

 

51 名前:名無し:20XX/05/12(土)ID:quHa1jduf

 

そういや、魔王世代の清澄に男が一人いなかったっけ?

 

あいつに魔王を任せよう(提案)

 

 

52 名前:名無し:20XX/05/12(土)ID:jayd1Hs8j

 

>>51

え? そんなのいたっけ?

 

 

53 名前:名無し:20XX/05/12(土)ID:rzhsbb3Gj

 

>>52

プロにはなってないけど、一人いるよ。高三の時にIHの個人でベスト32入ってる

 

ソースは当時のウィクま

 

 

54 名前:名無し:20XX/05/12(土)ID:cdjY3jTlo

 

>>51

なお結婚してる模様

 

 

55 名前:名無し:20XX/05/12(土)ID:yGj3jshwn

 

>>54

ファッ!?

 

 

56 名前:名無し:20XX/05/12(土)ID:cdjY3jTlo

 

そいつたまにアマチュアの大会とかに出てて、俺も前見かけたことあるんだけど、そんときに奥さん連れてた。奥さん変装っぽい服装してたけど、それでも分かるくらいに綺麗な人だった。

 

 

 

ていうか奥さん須賀プロだった

 

 

57 名前:名無し:20XX/05/12(土)ID:mahyd6Jfr

 

>>56

おいwwwwwwwwwwwwww

 

 

58 名前:名無し:20XX/05/12(土)ID:sGniF0ntw

 

>>56

ちょっwwwwwww

 

 

59 名前:名無し:20XX/05/12(土)ID:tGjd2Nhyj

 

>>56

ファッ!?(驚愕)

 

 

60 名前:名無し:20XX/05/12(土)ID:lvsjH9hRc

 

須賀プロの旦那かよwwwwwww

 

 

61 名前:名無し:20XX/05/12(土)ID:v7JbajdTc

 

今北産業

 

 

62 名前:名無し:20XX/05/12(土)ID:xanzGhT1k

 

>>61

・のどっち結婚

・魔王嫁き遅れる

・須賀プロ大勝利

 

 

63 名前:名無し:20XX/05/12(土)ID:zhdfjDbhR

 

前の日本シリーズで、須賀プロって魔王にゴッ倒されてたよな

 

あっ……(察し)

 

 

64 名前:名無し:20XX/05/12(土)ID:ygeJ2hdW1

 

嫉妬(物理)

 

 

65 名前:名無し:20XX/05/12(土)ID:fzhr5Fbsi

 

>>63

その時の須賀プロのスコア、−88とか訳のわかんないことになってたんですけど……

 

 

 

 

 

 

 

「――――ふふふ」

 

 

 

 とあるプロの選手と結婚することになったと、嬉しそうに報告する彼の姿を、今思い出して。私の心を遠慮なく抉ってくる文が並ぶスレッドを眺めつつ、私は顔に黒い笑みを浮かべていた。

 

 そう、そうだ。あの泥棒猫が、勝手に私から彼をかっさらっていったのだ。

 私が知らない間に彼と会って、親睦を深めていたらしいあの女性がいなければ、彼の側には今も私が居たはずで。きっと今頃は私もリア充の仲間入りをして、彼と仲睦まじく暮らしていたに違いない。勝ち組になる権利は、確かに私の方にあったはずである。

 別に、彼女に深い憎しみ――漫画やドラマのような、ヒステリックなもの――があるわけではないが。それでも少々の隔意は、どうしても持ってしまっている。

 

 何せ、十年以上暖めた恋心だった。私の彼への想いは誰にも負けないと、そんな自負もあった。私は本当に、結婚願望だとかそういうのを抜きにしても、彼のことが大好きだったのだ。

 失恋した時には本気で泣いて、落ち込んで。チームの皆や友人達が慰めてくれてなんとか立ち直れたけれど、正直今も引きずってしまっている。

 その後の日本シリーズで彼女と対戦し、彼女を本気で相手してからは少し気も晴れたが。それでも彼に――須賀京太郎という男に未だに未練があるのは、確かだった。

 

 

 

「京ちゃんが、あの人に靡かなかったらなぁ……。いや、私の気持ちをもっと早く伝えてればよかったのかな。そうすれば、私がお嫁さんだったのかなぁ」

 

 

 

 スレッドを追いながら、ブツブツと愚痴を一人ごちてゆく。

 

 京ちゃんと結婚していれば、私は間違いなく勝ち組だ。仕事の麻雀は上手くいっていて、家庭では一途に愛した男性と幸せな気分を味わって。それが勝ち組でなければ、いったい何が勝ったと言うのだろう。

 京ちゃんの人柄は、中高から仲良くしていた経験からよくよく理解している。性欲に多少正直なところはあったが、本当は優しく誠実で、当たり前のように人に気を使える人間だ。顔も良かったし、今思えば、結婚相手とするならかなりの優良物件である。

 逃した魚は大きいと昔から言うが、その言葉を私ほど身に沁みている人間は、そう多くはいるまい。……私と同じように婚期を逃しかけている女性は、除いて。

 

 ああ、いっそ、昔に戻れたりしないだろうか。

 高校時代とか、子供の頃とか、ほんの数年前でもいい。昔に戻れたら絶対に彼にちゃんとアタックして、今度こそ幸せになってみせる。

 そうしたらきっと、二度目の人生はこうも惨めな思いをせずに済むはずで。

 

 

 

 

 

 

 

152 名前:名無し:20XX/05/12(土)ID:jfbY7jd4W

 

試合が終わった後の、帰りの電車内

今日の試合はいつも通り、魔王の活躍により恵比寿の圧勝だった

電車のあちこちで見かけるカップル、時々耳に入ってくる幸せそうな家庭の話

周囲をリア充達に囲まれている中、昨年の三冠王宮永咲は静かに泣いていた

世間の女性達が得ている家庭、伴侶、彼氏、そして高校時代にいた男友達のような存在……

それを今の彼女が得ることは不可能に近かった

「どうしたらいいんだろう……」宮永は悔し涙を流し続けた

どれくらい経ったろうか、宮永ははっと目覚めた

どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、電車に揺られる感覚が現実に引き戻した

「はぁ、帰って牌譜を確認しないとなぁ」宮永は苦笑しながら呟いた

立ち上がって伸びをした時、宮永はふと気づいた

 

「あれ……? 私、セーラー服を着てる……?」

視線を下に落とした宮永が目にしたのは、自身が通っていた高校の制服だった

自分の肌は明らかに若返っていて、身長も少し縮んでいた

どういうことか分からずに呆然とする宮永の背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた

「宮永さん、駅に着いたわよ、早く行きましょう」声の方に振り返った宮永は目を疑った

「ぶ……部長?」  「どうしました、居眠りでもしてたんですか?」

「は……原村さん?」  「インターハイの会場はこの駅だぜ、間違えるなよ」

「須賀くん……」 宮永は半分パニックになりながら携帯を取り出した

200X年 X月X日

暫時、唖然としていた宮永だったが、全てを理解した時、もはや彼女の心には雲ひとつなかった

「まだ間に合う……間に合うんだ!」

部活仲間の手を取り、電車から生き生きと飛び出す宮永、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった……

 

翌日、電車内で冷たくなっている宮永が発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った

 

 

153 名前:名無し:20XX/05/12(土)ID:ojaTT6qwb

 

>>152

ベイスターズは関係ないだろ! いい加減にしろ!

 

 

154 名前:名無し:20XX/05/12(土)ID:z6jdIhxdn

 

>>152

麻雀の方の横浜は強いだろ! いい加減にしろ!

 

 

155 名前:名無し:20XX/05/12(土)ID:pjYba8qzT

 

ベイスターズの優勝と魔王の結婚が同程度の可能性だという風潮    一理ない

 

 

156 名前:名無し:20XX/05/12(土)ID:qJrDjav50

 

>>155

まあ最近のベイスならワンチャンあるしな

 

 

157 名前:名無し:20XX/05/12(土)ID:pphaQBj1q

 

魔王の暗黒時代は阪神のそれを上回る、はっきりわかんだね

 

 

 

 

 

 

 

 このように私の婚期を色々と弄られることも、きっとないはずだ。私の女性としてのプライドが傷つけられることも、知り合いの結婚式の招待状が届いて色々と惨めな気分になったりすることも、おそらくないはずである。

 

 ああ、昔に戻りたい。人生をやり直して、女性としての幸せを掴みたい。

 いっそ麻雀のプロにはなれなくてもいいから、お嫁さんになりたい。結婚して、子供を産んで、私の子供にママと呼ばれたい。

 デロリアンも持ってないし、知り合いに青い猫型ロボットもいないし、電子レンジでゲル状のバナナとか作ったりもしてないけど。どうにかして、過去に戻れたりしないだろうか。

 

 画面の掲示板を見つめつつ、私は冗談半分、本気半分にそんなことを考えて――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――えっ?」

 

 

 

 次の瞬間、周囲の景色は一変していた。

 

 

 

 

 




Q.須賀プロ?

A.結婚して名字が変わっています。つまりそういうこと。

Q.咲ちゃんはかわいいだろ! いい加減にしろ!

A.咲ちゃんカワイイヤッター!

Q.京太郎は誰と結婚したというのか

A.(レジェンドじゃ)いかんのか?

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