ベルが流派東方不敗継承者なのは間違っているだろうか? 作:友(ユウ)
突然【ヘスティア・ファミリア】のホームへやってきたアイズ(不敗)。
突然デートに誘われ、ベル(不敗)は済し崩しに連れ出されたのだが………………
二人は現在、オラリオの街を並んで歩いていた。
ただ並んで歩いているのではなく、ベル(不敗)の右手とアイズ(不敗)の左手はしっかりと握られている。
もちろん、ただ手を繋いでいるだけではなく、指同士を絡め合う所謂恋人繋ぎだ。
時折見つめ合いながら頬を染める二人は初心なカップルと一目でわかる。
「………………私、こうやってオラリオの街をベルと歩いてみたかったんだ…………」
アイズ(不敗)がそう呟く。
「僕達の世界じゃオラリオは壊滅しちゃって復興中ですからね」
ベル(不敗)もそう返す。
二人の言う通り、向こうの世界ではデビルガンダムの破壊活動によってオラリオの殆どの家屋が破壊され、壊滅的被害を受けたので二人が恋人同士になってからこうしてオラリオの街でデートするのはこれが初めてなのだ。
「せっかくですから、今日は楽しみましょう!」
ベル(不敗)が笑みを浮かべながらそう言うと、
「…………うん!」
アイズ(不敗)は満面の笑みを浮かべてベル(不敗)の腕に抱き着いた。
そのまま歩いていく二人。
そんな二人を物陰からコッソリと見ている人影があった。
「むぐぐ…………あっちのヴァレン某め…………あっちのベル君とあんなに楽しそうに………!」
ギリギリと歯を食いしばりながら恨めしそうな眼で見ているのはこちらの世界のヘスティア。
「神様…………悪趣味ですよ…………」
そんなヘスティアを何とか宥めようとするベル。
「そう言うベル様こそ気になって仕方ないんじゃないですか?」
「うっ………………」
リリの言葉にギクリとベルの体が震える。
別の世界とは言え自分と同一の存在が、憧れであるアイズとデートをしている。
気にならないわけが無かった。
因みに道を挟んで反対側の物陰では、
「ああ~~~…………! 向こうのアイズたんがよりにもよってドチビんトコの眷属と~~~~~~~!」
これまた恨めしそうな眼で射殺さんばかりに睨んでいるロキの姿。
「何でアイズがあんな兎野郎と…………!」
同じように睨んでいるベート。
「わ~! 向こうのアイズってば幸せそう~♪」
ニコニコと面白そうなものを見るような顔で二人を見ているティオナ。
「…………………………………」
そして無言だが複雑そうな表情をしてその光景を見ているアイズの姿があった。
因みにそんな彼女達の事はとっくに気付いているベル(不敗)とアイズ(不敗)であったが、邪魔されない限りは放置するという方向で行くという事を予め決めていた。
街を歩いていると、多くの露店が店を出している市場に差し掛かり、多くの人々が往来している。
そんな中を、腕を組みながら歩いていく二人。
時折露店に顔を出しては品物を楽しそうに眺めている。
それを何度か繰り返していると、
「やあやあ! 他に挑戦者はおらんかね!? この鉱石を割ることが出来たら賞金十万ヴァリスだよ! 挑戦料は一回五千ヴァリス! さあ、我こそはと思う者は是非!」
そんな声が聞こえてきた。
二人がそちらを見ると、黒っぽい鉱石の塊の前で呼び込みを行っている男が居た。
ふと気になった二人がその様子を眺めていると、一人の屈強そうな大柄の男が進み出た。
「はっ! こんなちんけな塊なんざ俺のパワーで粉々にしてやるよ!」
男はムキっと力こぶを作りながら自信を持ってそう言う。
なお、その男の筋肉を見たベル(不敗)の感想は、
(無駄に筋肉膨らませてるなぁ…………もっと無駄なく鍛え上げないとスピードが殺されちゃうから本末転倒なんだけど…………)
等と思っていた。
その男は鉱石の近くに立てかけられていたハンマーを手に持つと、思い切り振り上げ、
「うおりゃぁああああああああああああああっ!!」
気合を入れて振り下ろした。
ハンマーが鉱石に叩きつけられた瞬間、ガイィィィィィィィィィンとけたたましい音が鳴り響くが、鉱石は砕ける事無くそこに鎮座していた。
「はい、残念!」
店の男は笑みを浮かべながらそう言う。
「バッ、馬鹿な! 俺はLv.4だぞ!? 力だけならLv.5にも匹敵すると自負できる! それでも砕けないなんてあり得るか!?」
挑戦者の男は驚愕しながらそう叫ぶ。
「申し立ては受け付けません。さて、次の方…………!」
店の男は次の挑戦者を招く。
ベル(不敗)達は暫く見ていたが鉱石は一向に砕ける様子を見せない。
それを見てアイズ(不敗)は目を細めた。
「あれ………多分【
そう呟く。
「やっぱりそう思いますか……………普通ならあんな鉱石に【
ベル(不敗)も同じことを思っていたのかそう呟く。
その間にも次々と挑戦者が集まり、お金を支払っていく。
お金を数えながら満足そうに笑みを浮かべるその男を見るベル(不敗)。
やがて挑戦者に名乗り出る者が誰も居なくなり、
「さあ! もう挑戦者は居ませんか!? 誰でもよろしいですよ!」
男はそう言うが先程から見ている者達は目を逸らすばかりで誰も名乗りを上げようとはしない。
「おやぁ? もう誰も居らっしゃらないご様子……………仕方ありませんな。この催しは………………」
ここまでと言おうとした瞬間、
「はい」
1つの手が上がった。
その人物は言わずもがなベル(不敗)であった。
前に進み出るベル(不敗)。
そんなベル(不敗)を眺めていた男は、
(ククッ! あれだけ屈強な男たちが根を上げたのにまだ挑戦するなんて馬鹿な奴…………! そうだ、折角だから金をふんだくるついでに場の盛り上げ役に一役買ってもらうか!)
「おおっと! ここで名乗りを上げるとは勇気ある少年だ! そんな少年の心意気を評して大チャンスだ! 挑戦料を五万ヴァリス支払えば賞金が何と十倍の百万ヴァリスだ! さあどうする少年!? 挑戦するか!?」
その男の言葉に、
「では、折角ですから挑戦させてもらいましょう」
特に取り乱したりもせずに平然と答え、挑戦料を支払う。
男は内心ほくそ笑んだ。
(そいつには【
男は絶対に壊されないことが分かっているからこそここまでの余裕を持っている。
そのままベル(不敗)を眺め続けていると、ベル(不敗)はハンマーを手に取らず、鉱石の前に立った。
「お、おい少年!? ハンマーは!?」
「要りません。この拳一つで十分です」
男の言葉にベル(不敗)はきっぱりと断る。
「馬鹿な真似は止めろ! 下手すれば二度と使い物に成らなくなるぞ!?」
「そんな事になってもあなたには責任を問うつもりは無いのでお気になさらず」
ベル(不敗)はしれっとそう言うと両手を腰溜めに構えた。
「すぅぅぅぅぅぅぅ………………はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………………!」
ベル(不敗)は呼吸を整えながら精神を集中させる。
すると、ベルの体から金色のオーラが立ち昇り、全身を包んだ。
「「「「「「!?」」」」」」」
観客達はその光景に目を見開いて驚いている。
「……………………」
しかし、アイズ(不敗)だけは気負うことなく平然と眺めていた。
するとベルは拳を振り被り、
「はぁあああああああああああっ!!!」
気合を入れて拳を振り下ろした。
その瞬間、ドゴォォォォォォォォォォンと爆発音のような音を立てて辺りが砂煙に包まれる。
「「「「「「「「「「どわぁあああああああああああああっ!?」」」」」」」」」」
観客達は突然巻き起こった砂煙に悲鳴を上げる。
ゲホゲホと咳き込みながら砂煙が晴れるのを待ち、一同がその大本を目にした。
「「「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」」」
その瞬間絶句する一同。
そこにはベル(不敗)が立っていた。
だが、その足元には半径2mほどのクレーターと粉々になった鉱石の破片が散らばっていた。
「…………………少し力を入れ過ぎてしまいましたね!」
てへっと、やりすぎちゃったと言わんばかりに苦笑するベル(不敗)。
「なななな………………」
店の男は腰を抜かしたように座り込んでいた。
ベル(不敗)はクレーターから出てその男の前に歩み寄ると、
「これで宜しいんですよね?」
鉱石の欠片を指差しながらそう言った。
すると、
「あ…………う……………そ、そんな筈はない! あの鉱石には【
男は混乱し過ぎて余計な事まで口を滑らせてしまった事に気付いた。
ベル(不敗)はその言葉を耳にすると、
「あくどい商売も程々にしてくださいね。あ、参加料だけは返してもらいますので」
そう言ってベル(不敗)は男が腰を抜かした時に地面にばら撒いてしまったお金から先程支払った五万ヴァリスを拾う。
そしてその男に背を向けた。
「お待たせしましたアイズ。行きましょう」
「うんっ」
ベル(不敗)はアイズ(不敗)と共に、その男に興味が無くなったかのように立ち去った。
「…………………ふう」
男は助かったと言わんばかりに息を大きく吐いたが、その男の前にずらりと屈強な男たちが並ぶ。
それは、先ほどまで男に騙されて挑戦していた男達だった。
「おいコラ。舐めた真似してくれたじゃねえか…………!」
指をボキボキと鳴らしながら男を見下ろす挑戦者たち。
「覚悟はできてんだろうな?」
「ひ…………ひ……………ひぁああああああああああああああああああっ!!!」
男の悲鳴がその場に響いた。
そんな男の悲鳴が聞こえていないかのようにデートを続ける二人。
昼食の代わりに露店で売っていたじゃが丸くんを買って食べていた。
因みにアイズ(不敗)の食べている味は、相変わらず小豆クリーム味である。
アイズ(不敗)がじゃが丸くんを半分ほど食べた時、
「…………ベル」
「はい?」
唐突に名を呼ばれ、ベル(不敗)がそちらを向くと、
「あ~ん…………」
アイズ(不敗)が頬を染めながら自分の持っていたじゃが丸くんを差し出してきた。
「うぇあっ!? ア、アイズ!?」
突然の事にベル(不敗)は変な声を上げてしまう。
「その…………ティオナにこういう事をすればベルは喜ぶって聞いたの…………」
顔を赤くしたままそう言うアイズ(不敗)。
「……………………駄目?」
アイズ(不敗)が少し寂しそうにそう呟くと、
「駄目じゃないです!」
ベル(不敗)は強くそう言った。
アイズ(不敗)はホッとしたように笑みを浮かべ、
「じゃあ…………あ~ん」
再びベル(不敗)にじゃが丸くんを差し出した。
「あ、あ~ん…………」
ベル(不敗)は恥ずかしさから少し躊躇しながらもそのじゃが丸くんに噛り付いた。
モグモグと咀嚼しながらアイズ(不敗)の顔を見ると、嬉しそうに頬を染めながら笑みを浮かべていた。
「………………!」
ベル(不敗)はゴクンと口の中の物を呑み込んだ後、意を決して行動した。
「ア、アイズ………!」
アイズ(不敗)の名を呼ぶベル(不敗)。
「…………うん?」
アイズ(不敗)が不思議そうに応えると、
「あ、あ~ん……………!」
今度はベル(不敗)からじゃが丸くんを差し出した。
アイズ(不敗)は一瞬パチクリと驚いた顔をしたが、すぐに嬉しそうな顔をして、
「あ~ん」
躊躇無くそのじゃが丸くんに口を付けた。
咀嚼した後にそれを呑み込むと、
「おいしい…………!」
頬を染めて満面の笑みでそう言う。
ベル(不敗)もその笑顔に釣られて笑みを浮かべた。
その後も街を回り、日が傾いてきた頃。
噴水のある広場のベンチで二人は休憩を取っていた。
すると、コテンとアイズ(不敗)の頭がベル(不敗)の肩に乗ってきた。
「アイズ?」
ベル(不敗)が気になって様子を伺うと、アイズ(不敗)は安心しきった表情で寝息を立てていた。
その寝顔を見てベル(不敗)は小さく笑みを浮かべるとアイズ(不敗)の頭に頬を寄せる様に寄り添い、目を瞑る。
それは、周りの人間にもピンク色の空間が目に見えるかのような光景だった。
因みにその光景を見ていた周りの者達は、リア充爆発しろと思う者が約半数。
ラブラブオーラに当てられて胸焼けを起こす者が半数だった。
尚、ここまでになって何故二人を尾行していた者達(特にロキとベート)が乱入してこなかったのかと言えば、
「人の恋路の邪魔なんて情けねえことしてんじゃねえ!」
ベート(不敗)によって強制的に沈黙させられていたからであった。
はい外伝十一話です。
ベルとアイズのデートをお送りいたしました。
そして2人の邪魔をしようとする人たちは、
あと、通算UAが200万を突破してました。
ホントありがとうございます!
ダンまちの原作の中では2位です。
多分今回の更新で1位に行けるはず…………!
もう少しで終わりそうな感じですけど、最後まで応援よろしくお願いします。