ベルが流派東方不敗継承者なのは間違っているだろうか? 作:友(ユウ)
一行が一日の探索を終わらせ、地上に戻ってきた。
正直、『闘技場』で稼いだドロップアイテムや魔石の量が多すぎてギルドの査定が追い付かず、後日改めて報酬を取りに来る事になった。
因みに持ち帰った方法であるが、ヴェルフ(不敗)を呼びに行ってローゼススクリーマーの結界をネット代わりにして、リリ(不敗)が担いで持ち帰ってきただけである。
ギルドの査定係の人が顔を青くしていたことは言うまでもない。
バベルから一行が出てくる。
因みにアイズ(不敗)はベル(不敗)の腕に抱き着いた状態であり、周りの男性冒険者から射殺すような視線の嵐を受けている。
まあ、その程度ベル(不敗)にとっては可愛いものだが。
すると、
「や~や~ベル君? 奇遇だね~!」
1人の男神が声を掛けてきた。
それは金髪に羽付き帽子を被った神、
「ヘルメス様!?」
ベルがいち早く反応した。
「ダンジョンの帰りかい…………? って、おや?」
ヘルメスが違和感に気付く。
ベルのパーティーにしては人数が多い。
いや、それだけなら【タケミカヅチ・ファミリア】や、他のファミリアから協力を得たという可能性もある。
だが、それよりも、
「ベル君が2人…………?」
ヘルメスにしては珍しく、ハトが豆鉄砲食らったような顔をしながら呟いた。
「あ、ヘルメス様。こっちは平行世界の僕達だそうです。ここにいるアイズさんとベートさんもそうです」
「平行世界……………ッ!?」
傍らにいたアスフィがその言葉を聞いて何かに気付いたように顔をひきつらせた。
「…………どうかしましたか? アスフィさん」
ベル(不敗)がその反応を見逃さずに問いかける。
「えっと…………その……………」
アスフィは何やら言い淀んでいたが、
「も、申し訳ありません!!」
突如としてベル(不敗)達に向かって頭を下げた。
「「「「「「?」」」」」」」
そんなアスフィを見て一同は同時に首を傾げた。
一同は場所を『豊穣の女主人』に移し、アスフィから話を聞いていた。
「何だ? するってぇと、アンタがその偶然できたマジックアイテムを処分しようとした時、ヘルメス様が横から掻っ攫ってそのアイテムを起動させた」
ヴェルフ(不敗)がそう言うと、
「その影響で私達がこちらの世界に飛ばされてしまったというわけですか」
リリ(不敗)が続けてそう言った。
「はい…………おそらく…………」
アスフィは肩身が狭そうに項垂れながら肯定する。
「あっはっは! アスフィ、そんな面白そうなアイテムなら何でもっと早く教えてくれなかったんだい!?」
ヘルメスは笑いながらアスフィに問いかけた。
「絶対にヘルメス様がロクでもないことに使おうとすることが目に見えていたからです!!」
アスフィは思わず叫んだ。
「………それで、僕達は元の世界に戻ることは出来るんですか?」
ベル(不敗)がそう尋ねると、アスフィは佇まいを直し、
「それならば安心してください。あのマジックアイテムの効果は一週間前後の筈です。効果が切れれば、自然に元の世界に送り返される筈です」
「それなら何もしなくても帰れるって事なんだな?」
スィーク(不敗)がそう確認する様に言うと、
「まず間違いないかと」
アスフィは頷く。
その言葉に向こうの世界の面々はホッと息を吐く。
すると、
「それよりもさっきから気になってたんだけど、どうしてそっちの世界の【剣姫】がベル君の腕に抱き着いてるんだい?」
ヘルメスが話題を変えるようにそう質問した。
この席に着いてからも、アイズ(不敗)はベル(不敗)の腕に抱き着いて、離れようとはしない。
「え~っと………それは…………」
ベル(不敗)は言い淀んでいたが、
「ベル様とアイズ様は正式な恋人同士ですからね。そういう関係になってからはアイズ様はいつもこんな感じです」
リリ(不敗)がそう説明する。
「ほうほう…………」
ヘルメスはニヤリと面白そうな笑みを浮かべると、
「聞いたかいベル君? どうやら向こうの君は、【剣姫】を見事射止めたらしいよ?」
隣にいたベルの方をバンバンと叩きながらこれみよがしに話を振る。
「え、えっと………その…………」
ベルは何やら言い淀んでいたが、ヘルメスはその様子を見て更にニヤリと笑うと、ヘルメスは再びベル(不敗)達の方を向き、
「もし差し支えなければどちらから告白したのか聞いても良いかな?」
「ッ!?」
ヘルメスの言葉にベルはピクリと反応する。
「ま、まぁ告白したのは……………僕からになりますけど…………」
ベル(不敗)が若干言いにくそうに明後日の方向を向きながらそう言う。
「おやぁ? どうしたんだい? 多少恥ずかしがることはあってもそこまで言いにくい事でもないだろう?」
ヘルメスがニヤニヤと問いかけると、
「それは仕方ありませんね。ベル様はオラリオの住人全てが聞いている前で堂々と、盛大に! 告白したのですから」
リリ(不敗)がストレートに暴露してしまった。
「リリ……言わないで…………!」
ベル(不敗)は恥ずかしくなって赤くなった顔を隠すように机に突っ伏す。
「因みにその告白の内容は…………?」
ヘルメスがニヤニヤしながら興味津々といった様子で更に質問する。
「ええ、それはもうベル様らしく単純明快。『あなたが好きだ! あなたが欲しい!』と、それはもう世界に響き渡るかのような大声で叫びましたよ」
「おお~!」
ヘルメスは感心したように面白そうな声を漏らす。
「それは正にベル様の二つ名、【
「リリ~~~~~!」
ベル(不敗)が机に突っ伏したまま恨めしそうな声を漏らした。
尚、アイズ(不敗)はベル(不敗)の隣でその時のことを思い出しているのか幸せそうな笑みを浮かべていた。
暫くして一行が【豊穣の女主人】から出てくると、
「いや~、面白い話を聞けて満足だよ!」
ヘルメスは満足そうな笑みを浮かべている。
「そうですか…………」
一方、ベル(不敗)は恥ずかしい過去を暴露され、気が沈んでいる。
精神的にかなりのダメージを受けたようだ。
ベル(不敗)が暫く項垂れていると、
「何を下を向いておるか!! ベルよ!!」
大声がその場に響いた。
往来の人々が何事かと辺りを見渡す。
「い、今の声は………まさか!?」
ベル(不敗)が顔をばっと上げ、即座に辺りを見渡す。
すると、屋根の上に佇む1人の人影を見つけた。
その人物も、ベル(不敗)と視線を交わすと、
「応えよベルゥゥゥゥゥゥッ!」
突然叫びながら屋根の上から跳躍した。
「師匠ぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
ベル(不敗)も即座に地面を蹴る。
「流派! 東方不敗は!!」
「王者の風よ!!」
屋根の上から跳躍した人物は秒間数十発の拳のラッシュをベル(不敗)に向けて繰り出す。
ベル(不敗)もそれに応えるように同じく秒間数十発の拳のラッシュを放つ。
互いに拳をぶつけ合う2つの影。
「全新!!」
「系列!!」
拳の乱撃を交えながら空中から地上へと降り、
「「天破侠乱!! 」」
最後に互いの拳をぶつけ合い、左右対称になるような構えを取ると、
「「見よ! 東方は赤く燃えている!!!」」
2人の後方に炎が巻き起こった。
それを唖然と見ているのは、周りにいた往来の人々。
因みに今の『挨拶』で何人かは衝撃波によって吹っ飛ばされていたりする。
そして、ベル(不敗)が拳を交えた『挨拶』をしたのは当然、
「ベルよ。無事であったようだな?」
「師匠…………!」
ベル(不敗)の師である東方不敗 マスターアジアその人であった。
「師匠もこちらの世界にいらしていたのですね!」
「ふむ…………『こちらの世界』とな?」
ベル(不敗)の言葉に疑問を覚えた東方不敗にベル(不敗)が経緯を説明する。
その話を聞き終えると、東方不敗はギロリとヘルメスを睨む。
「な、何かな…………?」
その睨みに気後れしたヘルメスは何とか東方不敗を宥めようと考えを巡らせる。
「何、貴様という『
東方不敗はそう言いながらヘルメスに歩み寄っていく。
その雰囲気に何かを察したリリ(不敗)は、
「アスフィ様、ちょっとこちらへ…………」
アスフィの手を引き、ヘルメスから遠ざける。
「え? あの、リリさん?」
アスフィが困惑の声を漏らす。
だが、その直後、
「少しは反省せぬか! このうつけ者がぁっ!!!」
「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!??」
東方不敗によるヘルメスへの『
外伝9話目です。
遂にヘルメスが原因だと分かりました。
そしてそんな神に天誅を下すのは勿論我らが師匠東方不敗。
師匠見参です!
ヘルメスの運命やいかに!
それでは次回にレディィィィィィィッ…………ゴーーーーーーーーーーーーッ。