ベルが流派東方不敗継承者なのは間違っているだろうか? 作:友(ユウ)
エイナのストーカー騒ぎが解決した翌日。
ギルドの仕事を終わらせたエイナは一人で帰路に着いていた。
「…………ふう」
短い間とはいえ、ベルと一緒に帰っていたエイナは一人で帰ることに少なからず寂しさを感じていた。
「なんだかんだで、私もハーレム入りしちゃったしなぁ………」
ベルがアイズだけでなく複数の女性から想いを寄せられていたことは何となく気付いていた。
出来れば一番になりたいと思ってはいるが、ベルの一途さと純真さ。
更には、アイズの天然さを考えると、それも難しいと言う事も自覚していた。
暫く歩いていると、エイナはふと後ろを見た。
解決したとはいえ、どうしても追跡者がいないか気になってしまうのだ。
「……………大丈夫だよね」
事件はもう解決した。
そう自分に言い聞かせるように言葉にして呟く。
後ろには誰も居ないことを確認し、再び前を向く。
その時だった。
カツンと何か音が聞こえ、エイナはビクリと体を震わせてもう一度振り向く。
だが、月明かりが雲に遮られ周りは暗く、視界が届くところに人影は無い。
「…………だ、誰かいるの?」
エイナは恐る恐る声を掛ける。
しかし、返事は帰ってこない。
しばらく様子を伺うが、誰かが出てくる様子もない。
エイナはホッと息を吐き、
「気の所為か…………」
そう呟いて前を向こうと………
「………んむっ!?」
した瞬間、路地裏に繋がる道の影から手が伸びてきて、エイナの口を塞ぐと同時にエイナを路地裏に引きずり込んだ。
「ん~~~~~っ!?」
路地裏に引きずり込まれたエイナは壁に押さえつけられ、身動きを封じられる。
口が塞がれているため、声を上げることも出来ない。
エイナは暴れて逃れようとするが、相手は恩恵を持っているのかビクともしない。
その時、月を覆っていた雲が晴れ、月明かりがその人物の顔を照らした。
その人物は、黒髪のヒューマンの男だった。
(ヘ、ヘーンさん!?)
声を上げられないエイナは心の中で叫ぶ。
その男の名はヘーン・ターイ。
ドルムルやルヴィスと同じく、エイナがアドバイザーを務めていた冒険者の一人だ。
その時は特にこれといった印象は無かったが、悪い人では無いとエイナは判断していた。
だが、今目の前にいる彼は、明らかに普通ではなく、目が血走っている。
「き、昨日僕………み、見ちゃったんですよ………」
ヘーンはエイナを押さえつけながらいきなり話し出した。
「エ、エイナさんが………あ、あんなガキの女になる………? そ、そんな事…………許せない………!」
ヘーンは情緒不安定になっているのか、言葉も片言でうまく話せていない・
「あ、あんな奴に………ぼ、僕のエイナさんが汚されるぐらいなら………い、いっそ僕の手で………」
ヘーンはエイナの口を塞いでいる方の腕の肘を使ってエイナの体を壁に押さえつけ、空いた方の手をエイナの服の首元に掛けると、一気に引き下げた。
ブラウスのボタンが弾け飛び、その大きめの胸を覆う下着が露になる。
「ん゛~~~~~~~~~~~っ!!?」
エイナは叫ぼうとするが、口を塞がれているためそれも叶わない。
拒絶しようと首を振ろうとしても、恩恵の無いエイナではそれも不可能だった。
「はぁ………はぁ………エイナさん………エイナさぁん………!」
ヘーンは完全にエイナに対して劣情を催しており、空いている方の手でエイナの体を弄る。
(やだ! やだぁ!! た、助けて………誰か!!)
声を出せないエイナは心の中で叫ぶ。
しかし、ヘーンの手は止まらない。
下着の上から胸を触られ、エイナは嫌悪感から身体中に鳥肌が立つ。
そのエメラルドの瞳からは涙がボロボロと零れ、恐怖から身体を震わせる。
ギュッと目を瞑り、恐怖から逃れようとするが、現実は変わらない。
胸を触っていた手が、邪魔とばかりに下着に手を掛け、
(助けてっ!! ベル君っ!!!)
エイナは心の中で愛しい男性に助けを求めた。
その時、
「エイナさんっ!!」
その声を聞いた瞬間、エイナは目を見開いた。
次の瞬間にはバキッという打撃音と共にヘーンの姿が消えて、代わりに空中で足を振りぬいた体勢のベルがその目に映った。
ベルがヘーンの後ろから空中回し蹴りでヘーンの側頭部を蹴りつけ、路地裏の奥に蹴り飛ばしたのだ。
ヘーンはその一撃で完全に気絶している。
ベルはエイナの前に着地する。
「エイナさん! 大丈夫ですか!?」
ベルがエイナを気遣うと、
「ベル君っ!!」
エイナはベルの胸に縋り付いた。
「ベル君………! ベル君っ………!!」
涙を流しながら何度もベルの名を呼ぶエイナ。
「大丈夫です………もう大丈夫です、エイナさん」
ベルはエイナを安心させるために声を掛けながらその肩を抱く。
しばらく泣いて落ち着いたのか、エイナは離れる。
「ゴ、ゴメンねベル君………いきなり………」
「いえ、僕の胸ぐらいならいくらでも貸しますよ」
ベルはそう言った所で現在のエイナの服の惨状に気付く。
エイナは腕で隠しているが、チラリと見えた胸の下着にベルは顔を赤くして慌てる。
「エ、エイナさん! と、とりあえずこれを羽織ってください!」
ベルはダンジョンの帰りだったのか身に纏っていたサラマンダーウールをエイナに羽織らせる。
「あ、ありがとう………ベル君」
エイナは顔を赤くしながらそう言うと、
「で、でもベル君………何でここに?」
エイナは気になることを尋ねる。
「えっと………何と言うか………嫌な予感がしたと言うか………虫の知らせって奴です」
「そう………なんだ………」
「でも、本当に間に合って良かったです」
ベルはそう言うと、
「今日も家まで送ります。行きましょう」
「あの………ヘーンさんは?」
「かなり強く蹴っ飛ばしたので、数日は目を覚ましません。明日の朝にでも回収して、ギルドに突き出しますよ」
ベルはそう言うと、エイナを伴ってその場を離れた。
エイナの自宅に到着すると、
「それじゃあエイナさん、今日はゆっくり休んでください」
ベルはその場を立ち去ろうとした。
だが、
「ま、待って………!」
エイナが弱々しくもベルの袖を掴み、引き留めた。
「エイナさん?」
ベルがもう一度エイナの方を向くと、エイナは俯き、体を震わせながら言った。
「ベル君…………今日は………今日だけでいいから………一緒に居て………?」
「エイナ………さん?」
「ごめんベル君…………でも私………怖くて………」
その顔に孤独に対する不安と恐れを浮かべるエイナ。
今にも壊れてしまいそうな雰囲気を感じ取ったベルは、
「……………分かりました」
エイナの傍に居ることを選択した。
食事を終わらせ、ベルはエイナの寝室にいた。
一緒の部屋で寝て欲しいとのエイナの頼みだ。
現在、エイナはシャワーを浴びている。
ベルは、女性の部屋にいるという事実に緊張しているが、瞑想をして誤魔化そうとしている。
暫くすると、部屋のドアが開き、
「ベル君………?」
エイナの声が聞こえ、ベルは瞑想を止めて目を開く。
「ッ………!?」
その瞬間、ベルは息を呑んだ。
何故なら、エイナはその身体にバスタオルを一枚巻いただけというとんでもない格好でその場に立っていたからだ。
ベルは反射的に思い切り後ずさったが、ベッドに足を引っかけ、ベッドに腰かける様な体勢になった。
「エエエエ、エイナさん!? な、何て格好をしてるんですか!?」
ベルはそう言うが、エイナはゆっくりと歩み寄ってくる。
そして、
「ベル君…………お願いがあるの…………」
「お、お願い………で、ですか………!?」
大慌てするベルとは対照的に、エイナは落ち着いているように静かだ。
更にエイナはベルに歩み寄る。
そしてバスタオルを留めてある部分を外すと、バスタオルはハラリと舞い落ち、その裸体が露となった。
「私を………抱いて………?」
「エ、エイナさん!? 待って、落ち着いて!」
顔を真っ赤にするベルは、目を瞑ってエイナを見ないようにしている。
だが、エイナはベルの両肩を掴むと、そのままベッドに押し倒した。
「全部………忘れさせて………不安も………恐怖も…………」
「エ、エイナさんっ!?」
ベルの顔に自分の顔を近付けていくエイナ。
「……………………好きだよ、ベル君」
半年後、ギルドから寿退職するエイナの姿があった。
そのお腹には、新たな命を宿す膨らみが…………
そしてその四ヶ月後。
無事に赤子を出産。
その赤子は白い髪をしたクォーターエルフだったそうな。
~~~~~Fin~~~~~
はい、何故か思いついてしまったエイナさんENDでした。
ここにきて初めてR-15のタグが役に立った気がする。
押して駄目なら押し倒せを実行したエイナさん。
ベルは押しに弱いですからこういうのもアリなんじゃないかと…………
とりあえず番外編なので本編とは何の関わりもありません。
批判もあるかなぁ…………
ともかく次回にレディー………ゴー!!