ベルが流派東方不敗継承者なのは間違っているだろうか?   作:友(ユウ)

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第四話 ベル、【剣姫】と出会う

第四話 ベル、【剣姫】と出会う

 

 

 

冒険者になって半月。

少しずつ下の階層にも足を伸ばすようになり、漸く4階層のお許しが出て、数日。

相変わらず手応えのない敵を相手にして、暇を持て余していた僕は、ついエイナさんの言いつけを破り、5階層へと足を運んでいた。

そして、5階層に降りて、一番最初に遭遇したモンスターは、

 

「ヴヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」

 

牛頭人体のモンスターで、Lv.2にカテゴライズされ、本来ならもっと下の階層で遭遇するはずの相手。

『ミノタウロス』と呼ばれるモンスターと遭遇した。

普通の駆け出し冒険者なら絶望するほどの相手だけど、僕は逆に笑みを浮かべた。

 

「少しは手応えがありそうな相手が来たかな?」

 

僕はミノタウロスに向かって構えを取る。

ミノタウロスも僕に向かって威嚇の唸り声を上げている。

ダンジョンに潜って初めて会ったLv.2のモンスターに、僕は期待感を膨らませた。

そして、ミノタウロスに向かって一気に駆け出し、その巨体に拳を繰り出そうとして………

寸前で止めてしまった。

何故ならば、

 

「ヴォ!? ヴォオオオオオオオオオオオオッ!?」

 

ミノタウロスの体に幾つもの閃光が走り、切り裂かれていく。

いや、閃光が走ったというのは語弊がある。

何故なら、僕の目にはその閃光の正体が、ミノタウロスの身体を切り裂いていくサーベルの剣先がハッキリと見えていた。

胴、胸部、上腕、大腿部、下肢、肩口、首と流れるような動きでミノタウロスがバラバラにされていく。

僕から見ても、それなりの速さだ。

因みにバラバラにされる寸前にミノタウロスに向かって僕は駆け出していたため、ミノタウロスから溢れ出した血を避けることが出来ず、大量の血のシャワーを被る羽目になった。

拳を繰り出そうとしていた状態で固まる僕。

そんな僕に、

 

「……………大丈夫ですか?」

 

ミノタウロスをバラバラにしたと思われる人物が話しかけてきた。

腰まで届く金髪に、金色の眼で僕を見るその人物は、冒険者になって半月の僕でも話に聞いたことがある。

女性冒険者の中でも最強の一角と名高いLv.5。

【剣姫】の二つ名を持つ、アイズ・ヴァレンシュタインだった。

でも、そんな事は今は関係無かった。

今の僕の心は、たった一つの思いで占められている。

こんな気持ちは、師匠の強さに魅せられた時以来。

でも、あの時とは違う。

決定的に違う。

 

「あの………大丈夫ですか?」

 

彼女の美しさに、僕は魅せられた。

これが一目惚れという奴なのだろう。

彼女を見ているだけで顔が熱くなり、胸のドキドキが止まらない。

そして僕は、

 

「ほあああああああああああああああああああああっ!!」

 

あまりの気恥ずかしさに、その場から逃げ出した。

 

 

 

 

 

 

 

「エイナさぁああああああああああんっ!!」

 

僕は、周りの迷惑も考えずにギルドの建物に飛び込んだ。

 

「エイナさぁあああああああああんっ!!」

 

再びエイナさんの名を呼び、受付窓口に向かって駆け寄る。

すると、

 

「うわぁあああああああああっ!?」

 

エイナさんが悲鳴を上げた。

あ、そういえば今の僕って血まみれだ。

でも、今はそんなことり、

 

「アイズ・ヴァレンシュタインさんの情報を教えてくださぁぁぁぁい!!」

 

思いのままにその言葉を口走った。

 

 

 

 

 

あの後幾分か冷静になった僕は、シャワーを浴びてサッパリしたあと、エイナさんと向かい合っていた。

まあ、返り血で真っ赤に染まったまま街中を突っ切ってきたので、それについて少々小言を言われたが………

 

「それで、アイズ・ヴァレンシュタイン氏の情報だっけ? 何でまた?」

 

そう聞かれ、僕はちょっと言い辛かったけど、

 

「え~~~っと…………ちょっと言いにくいんですけど、今日は5階層まで足を伸ばしまして………」

 

そこまで言うと、エイナさんのこめかみがピクリとする。

 

「それで5階層に降りて最初に遭遇したモンスターが、何故かミノタウロスでして………」

 

今度はエイナさんのこめかみがピクピクっと2回動く。

 

「それで戦おうとした時に、アイズ・ヴァレンシュタインさんが現れてミノタウロスを倒しちゃったんです」

 

その後一目惚れして、恥ずかしくなって逃げてきちゃったと伝えると、遂にエイナさんが爆発した。

 

「………もぉっ! どうして君は私の言いつけを守らないの!? 唯でさえ君はソロで潜ってるんだし、そうホイホイと下層に行っちゃダメじゃない! 冒険者は冒険しちゃダメって、いつも言ってるでしょ!?」

 

エイナさんは身を乗り出しながら僕を叱る。

 

「すみませんすみません! でも、浅い階層のモンスターじゃ手応えなさすぎて、つい………」

 

「“つい”じゃない! その“つい”が冒険者の命を落とす最大の原因なんだからね! そりゃ、今まで君が殆ど怪我をせずに帰ってきたことだけは認めてあげるけど………」

 

ほとんどっていうか、全くの無傷です。

 

「すみませんすみません! でも、『オラリオ』に来る前にも、ゴブリンやコボルトなら討伐経験があるので、どうしても物足りないって常々思っていたので………」

 

「討伐経験があるって言っても、所詮1匹や2匹でしょう!? ダンジョンの『中』と『外』を同列に考えないで!」

 

エイナさんの言葉は、全て僕を心配してくれているから出てくる言葉だ。

本気で心配してくれているから、僕は頷くことしかできないんだけど…………

『外』でのゴブリン討伐の最高記録は修行の一環で、100匹ほどのゴブリンの巣にこの身一つで乗り込んで全滅させたことかな?

もちろん無傷で。

まあ、そんなこと言ってもエイナさんは信じないだろうし、僕自身エイナさんに心配かけたくないから黙っていよう。

一通り説教して気が済んだのか、エイナさんは気を取り直して椅子に腰掛ける。

 

「それで、アイズ・ヴァレンシュタイン氏の情報だっけ?」

 

「は、はい………!」

 

「う~ん………ギルドとしては冒険者の情報を漏らすのは御法度なんだけど………」

 

「そ、そこを何とか………」

 

僕は手を合わせながらお願いする。

 

「………教えられるのは公然となってることぐらいだよ?」

 

エイナさんは、そう前置きしながらも情報を教えてくれる。

やっぱりこの人は親切だ。

エイナさんが語った情報は、

 

 

アイズ・ヴァレンシュタイン。

大手【ファミリア】である【ロキ・ファミリア】の幹部。

剣の腕前は冒険者の中でもトップクラス。

Lv.5相当のモンスターの大群をたった一人で殲滅したこともあるらしく、二つ名の【剣姫】の他に【戦姫】とも呼ばれる。

下心を持って近寄ってくる異性は全て撃沈。

ついには千人切りを達成したとか………

あと一番大事な情報として、付き合ってる異性がいるとは聞いたことがない、ということだった。

エイナさんもこれ以上は職務に関係ないとかで教えてくれなかった。

趣味とか好きな物とかも聞ければ良かったんだけど、僕としては最後の情報が聞ければ十分だった。

すると、エイナさんが話の最後に、

 

「君はもう神ヘスティアから恩恵を授かったんでしょう? 【ロキ・ファミリア】で幹部も務めるヴァレンシュタイン氏にお近付きになるのは、難しいと思う」

 

確かにエイナさんの言うとおりだ。

 

「………想いを諦めろとは言わないけど、現実をしっかり見なきゃ、ベル君の為にはならない」

 

「………はい」

 

わかってたつもりだったけど、こうやって現実を突きつけられると、苦しいものがある。

そんな僕を見て、エイナさんは困った顔をしながら、ギルド職員としての対応をした。

 

「換金はしていくの?」

 

「あ………はい。 ミノタウロスと出会うまでは、普通にモンスターを倒していたので」

 

「じゃあ、換金所まで行こう。 私も付いて行くから」

 

気を使わせちゃったみたいだ。

僕もまだまだだな………

ギルド本部内にある換金所で、今日の収穫を受け取る。

ゴブリンやコボルトの『魔石の欠片』、占めて6500ヴァリスほど。

いつもよりダンジョンに潜ってた時間が短いから、何時もの半分程度だ。

お金を受け取る僕を、何故かエイナさんは呆れた表情で見ていた。

 

「ベル君。 低階層でソロで半日潜っただけで、何でそんなに稼いでるの?」

 

そんな事を言われる。

新人冒険者が低階層のソロで、一日で稼げる収入は、平均で2000ヴァリスほど。

3000ヴァリス稼げれば上等だ。

運良くドロップアイテムに恵まれたとしても、4000を超えるのが精々だ。

そんな中で、僕は一日潜っていれば、10000ヴァリスはまず超える。

魔石の欠片のみで。

まあ、平均戦闘時間5秒以下だし。

魔石を回収する時間の方が遥かに長い。

とまあ、半日でも6500ヴァリスも稼げば相当無茶していると取られても仕方ないわけだ。

 

「あはは………別に無理はしていませんよ。 ほら、今日もちゃんと無傷でしょう?」

 

僕は手を広げて、どこも怪我してませんということをアピールしながらそう言う。

 

「逆にそこまで無傷だと、ギルドに来る前にポーションで回復してるって疑っちゃうんだけど………」

 

そこで一度溜め息を吐き、

 

「まあいいわ。 今日もちゃんと無事に帰ってきてくれたし」

 

諦めたようにそう呟いた。

どうやら僕の稼ぎの量には突っ込まないことを決めたみたいだ。

報酬を受け取ったあと、ギルドを出ようとしたところで、

 

「………ベル君」

 

突然エイナさんに呼び止められた。

 

「あっ、はい。 何ですか?」

 

僕は振り向いて要件を尋ねると、エイナさんは少し躊躇するような仕草をしてから口を開いた。

 

「あのね、女性はやっぱり強くて頼りがいのある男の人に魅力を感じるから………えっと、めげずに頑張っていれば、その、ね……………ヴァレンシュタイン氏も、強くなった君に振り向いてくれるかもよ?」

 

一人の知人として、励ましてくれるエイナさんの姿に、僕は自然と笑みを浮かべる。

そして、心のままに口走った。

 

「エイナさん、大好きー!!」

 

「えうっ!?」

 

「ありがとぉー!!」

 

そのまま踵を返し、軽くなった足取りで駆け出した。

 

 

 

 

 

【Side ヘスティア】

 

 

 

 

ボクの【ファミリア】を立ち上げてから半月。

相変わらず新規入団者は現れてないけど、1人だけいる団員のベル君。

彼の非常識さに頭を悩ませていた。

いや、ベル君はいい子だし、むしろ好感がもてる子なんだけど、如何せん【ステイタス】が非常識すぎる。

その為、新人ならこまめにするはずの【ステイタス】更新を今まで一切していない。

むしろ、あの【ステイタス】がどうなるのか、ある意味怖くてしょうがない。

そしてベル君自身もある意味非常識だ。

【ファミリア】の資金が、現在10万ヴァリスほど溜まっている。

たった一人の新人冒険者が、半月でこれだけの稼ぎを出すっていうのも前代未聞だ。

理由として、ベル君はほぼ確実に1日で1万ヴァリス以上稼いでくる。

これだけでも新人冒険者としてはとんでもない非常識なんだけど、それに加えて、ベル君は武器や防具といった冒険者に必要不可欠な道具に全くお金を使わない。

聞けば、素手で戦っているので武器は必要ないらしく、防具に至っては、支給された防具がベル君の動きに耐え切れず、たった一度の戦闘で壊れたらしい。

まあ、防具が無いことは心配はしていない。

あのベル君の鋼の体なら、下手な防具よりも生身の方が防御力ありそうだし。

むしろ、ベル君がダンジョンに潜って怪我をしているところを見たことがない。

その為、ポーション等の回復アイテムにもお金を使わない。

なので、【ファミリア】として消費するお金は、食費などの、本当に必要最低限なものだけであり、無駄なお金を一切使わないので、お金は溜まる一方なのだ。

まあ、それでもベル君の非常識ぶりも新人冒険者の中ではの話だし、何事も無くあと数ヶ月もすれば、特に騒ぎ立てるようなものでもない。

他の神々にも、興味を持たれることは無いだろう……………何事もなければ。

例えば、いきなり第一級冒険者と喧嘩して伸してしまったり、階層主をソロで討伐してしまったり……………

どっちもベル君なら出来てしまいそうなので不安だ。

そんな事を考えていると、

 

「神様! ただいまー!」

 

いつもより早く、ベル君が帰ってきた。

 

「おかえり、ベル君。 今日は早かったね」

 

「ええ。 ちょっとダンジョンでトラブルがありまして」

 

「トラブルー? でも、君が潜ってるのってまだ低階層だろう? いくらトラブルがあったとしても、君が怪我をするような目には遭わないと思うんだけど……」

 

「トラブルといいますか、運命的な出会いといいますか…………」

 

そこでボクはピクリと反応した。

 

「もしかして…………女の子かい?」

 

「……………あはは」

 

僅かに頬を染めながら、乾いた笑いを零すベル君を見て、ボクは確信した。

ボクの心に沸々と嫉妬という感情が湧き上がる。

 

「どういう事だいベル君…………もしや、ピンチに陥ってた女の子を助けて惚れられちゃったなんてベタなオチじゃないだろうね?」

 

「あはは………僕もそうであればいいと思ったんですけど、まあ、なんというか、配役が逆になったといいますか………」

 

「詳しく聞こうじゃないか………!」

 

思わず低い声になったボクにベル君は説明を始めた。

第5階層に進んだら、何故かミノタウロスと遭遇したこと。

ベル君は、嬉々としてミノタウロスと戦おうと思ったこと。

その直前で、第一級冒険者のヴァレン某という女剣士が横槍をいれて、ミノタウロスを瞬殺したこと。

そのヴァレン某に、ベル君が一目惚れしてしまったことを聞いた。

 

「…………手応えが無いから下の階層へ行くのはともかくとして、ミノタウロスと正面切って戦うのは褒められた話じゃないなぁ………」

 

「ええっ? でも、ゴブリンとかと比べれば桁違いでしたけど、別にそこまで危険な相手じゃないと感じたんですけど?」

 

「いやいや、今の君はLv.1で申請してるんだよ? ミノタウロスなんかを倒しちゃったら、確実にギルドや他の神々から目をつけられる。 そうなれば、君の【ステイタス】を公表しなきゃいけなくなるんだよ。 君の【ステイタス】がどの程度の物なのか把握できてない今は、それはまだ避けたほうがいい」

 

「そういうものなんでしょうか?」

 

「まあ、君の強さがLv.1の枠に収まらないことだけはこの半月で確認できたけど、まだ全貌が明らかになってない。 そうなれば、他の神々に追求された時に説明が難しい上に、下手をすれば、ボクが君に『神力』を使って力を与えたとか言い出しかねない。 そうなれば、君の冒険者としての未来を閉ざしてしまうことになる。 だから、今は可能な限り君の【ステイタス】は秘匿しておきたいんだ」

 

「………分かりました」

 

「それに、アイズ・ヴァレンシュタインだっけ? そんなに美しくてべらぼうに強いんだったら、他の男共がほっとかないよ。 その娘だって、お気に入りの男の一人や二人囲ってるに決まってるさ」

 

「そ、そんなぁ………」

 

ベル君は情けない声を上げる。

けれど、ボクは続ける。

ベル君を他の女に渡すもんか!

 

「いいかい? そんな一時の気の迷いなんて捨てて、もっと身の回りを注意してよく確かめてみるんだ。君を優しく包み込んでくれる、包容力に富んだ素晴らしい相手が100%確実にいるはずだよ」

 

ボクはそう言うけど、ベル君は少し考える仕草をした後、複雑な表情をする。

むむっ、これはもうひと押し必要だな。

 

「ま、ロキの【ファミリア】に入っている時点で、ヴァレン某とかいう女とは婚約できっこないんだけどね?」

 

そう言うと、ベル君は項垂れる。

よし、ここからボクが気を引けば………

 

「そうだベル君。 【ステイタス】の更新をしてみようか」

 

ボクの言葉を聞いて、ベル君はガバッと顔を上げる。

思ったとおり食いついた。

 

「えっ? でも、詳細がわからないから【ステイタス】の更新は控えるって言ってませんでした?」

 

正直、ボクも【ステイタス】の更新は、違う意味で不安に思っている。

でも、なんとかベル君の気をヴァレン某からボクに逸らさないと。

 

「うん。 でも、更新によって、【ステイタス】が正しく表示されるかもしれないから、一度は更新してみようと思うんだ」

 

「あっ、なるほど。 その可能性も捨てきれませんね」

 

「じゃあベル君。上着を脱いで、ベッドに横になるんだ」

 

「分かりました」

 

そう言って、上着を脱いでいくベル君。

うわっ、やっぱり凄い体してるなぁ………

ベル君の鋼の肉体を見て、ボクは思わず溜め息を吐く。

その間に、ベル君はベッドにうつ伏せに横になった。

 

「じゃ、ちょっと失礼するよ」

 

ボクはベル君の背中に馬乗りになる。

ワザと太ももを密着させるように。

見れば、ベル君は無言だけど、その頬は僅かに赤くなってる。

ふふっ、少しは意識してくれてるみたいだ。

ベル君の様子に満足しながら、ボクはベル君の【ステイタス】を更新する。

やがて更新が終わり、【ステイタス】を確認した。

そこでボクは溜め息を吐く。

やっぱり変わってな………………

 

 

 

 

ベル・クラネル

 

Lv.東方不敗

 

力  :流派!東方不敗は!

 

耐久 :王者の風よ!

 

器用 :全新!

 

俊敏 :系列!

 

魔力 :天破侠乱!!

 

武闘家:見よ! 東方は赤く燃えている!!!

 

 

《魔法》

【魔法など必要ないわぁーーーっ!!!】

 

 

《スキル》

【流派東方不敗】

・流派東方不敗

 

 

 

【明鏡止水】

・精神統一により発動

・【ステイタス】激上昇

・精神異常完全無効化(常時発動)

 

 

 

英雄色好(キング・オブ・ハート)

・好意を持つ異性が近くにいると【ステイタス】上昇

・異性への好感度により効果上昇

・異性からの好感度により効果上昇

・効果は重複する

 

 

 

 

 

 

なんか増えとるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!???

英雄色好(キング・オブ・ハート)】ってなんだよ!?

バリバリハーレム主人公向けのスキルじゃないか!

つまりベル君は女の子と仲良くなればなるほど女の子の前じゃ強くなるっていうのか!?

うがーっと叫び出したくなるのを何とか堪える。

 

「神様? どうかしましたか?」

 

ボクの様子にベル君は怪訝に思ったのか聞いてきた。

 

「いいや、何でもないよ。 それよりも、やっぱり【ステイタス】に変化は見られなかったよ」

 

「そうですか………」

 

ベル君には、このスキルは絶対に知られちゃいけない!

ベル君がその気になったら、一体何人の女の子が虜になるか。

ベル君本人も『ハーレムは至高』なんて間違った教育(せんのう)をされてるから、進んでハーレムを築きそうだ。

………このスキルが発現したのは、やっぱりヴァレン某との出会いが切っ掛けなんだろう。

ヴァレン某への強い想い。

ベル君の育ての親からの教育(せんのう)

そして、ベル君自身の英雄になりたいという渇望と、師匠に対する強さへの憧れ。

その全てが混ざりに混ざってこのスキルとなって発現したとボクは予想した。

 

「…………全く………本当にとんでもない子だよ、君は」

 

ベル君に聞こえないように小さく呟く。

とりあえず、やっぱりしばらく更新はお預けだと心に誓った。

 

 


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