ベルが流派東方不敗継承者なのは間違っているだろうか? 作:友(ユウ)
【Side ベル】
【イシュタル・ファミリア】から春姫さんを助け出してから数分後、背後で光の柱が天に上った。
僕達は思わず立ち止まって振り返る。
「あれは…………」
「もしかして………神様の天界への強制送還………?」
「……………もしかしなくてもイシュタル様か?」
「あり得ますね。あれだけ暴れれば建物自体にガタが来てもおかしくありませんから、崩落に巻き込まれたのかも…………」
「…………もしかして………凄く拙い?」
「大丈夫でしょう。あくまでイシュタル様が送還されてしまったのは事故です。私達が直接手を下したわけでは無いので、我々の責任の重さには関係ありません。むしろ先に手を出したのはあちらなのですから自業自得です」
「リリ…………少し黒くなってる?」
リリの雰囲気に少し引いた。
そのまま僕達はその場を離れ、ホームに戻ってくると、
「お帰りベル君!」
神様が僕達を出迎え、
「春姫殿ぉっ!!」
命さんを筆頭に【タケミカヅチ・ファミリア】の人達が僕が抱いている春姫さんに群がってくる。
「春姫殿! 春姫殿!」
「春姫ぇ!!」
気絶している春姫さんに何度も呼びかける命さん達。
気絶させる原因を作った僕は、少し申し訳なく思った。
「だ、大丈夫です。僕が少し無茶してしまった為に気絶していますが、しばらくすれば目を覚ますでしょう」
その言葉を聞いて、ホッとする【タケミカヅチ・ファミリア】の人達。
すると、
「さて、お疲れ様だったねベル君……………ところで………」
神様がそう言いながらくるりと後ろを振り向き、
「何で君がここに居るんだ、ヴァレン某!」
ビシィ、とアイズさんに指を突きつけた。
「?」
アイズさんは首を傾げるだけで何故問いかけられたのか分かっていないようだった。
「あ~、それはですねヘスティア様………」
リリが説明を始めた。
どうやらアイズさんは、ギルドに僕が攫われたことを報告する際、偶々ギルドにいたらしく、僕が攫われたと聞いて【イシュタル・ファミリア】に後先考えずに突っ込んだらしい。
僕を助けようとしてくれてたことは素直に嬉しいんですけど、何やってるんですかアイズさん…………
そこからはいつも通り神様がアイズさんを威嚇してアイズさんが天然で受け流す光景があった。
数日後、結局春姫さんがどうなったのかといえば、
「わたくしっ、サンジョウノ・春姫と申しますっ! こっ、この度はヘスティア様の【ファミリア】に入団させていただき…………」
なんと春姫さんは、同郷のいる【タケミカヅチ・ファミリア】ではなく、僕達【ヘスティア・ファミリア】に入団することを希望した。
その理由は教えてくれなかったけど、何故か僕の事をジッと見ていたような気がする。
そして一通り自己紹介を終えると、春姫さんの方を後ろからリリがガシッと掴み、
「突然すみません春姫様。少々お話がありますのでご同行願えますか?」
そう言うと、リリは春姫さんの返事も聞かずに強引に連れていった。
「えっ? あれ? あれ~~~~~~~~?」
春姫さんも意味が分かってないのか変な声を上げていた。
そして何故か、カサンドラさんもその場からいなくなっていた。
【Side リリ】
春姫様を連れて、カサンドラ様とやってきた場所。
そこは、
「それではリリさん、お話を伺いましょう」
「…………そちらの方は、もしや…………」
目の前にいるお二人は、我らが同志であるシル様とリュー様。
そしてここは『豊穣の女主人』。
「はい、お二人の予想通りです」
私が答えると、
「あは~、またですかベルさん」
「まったく、ベルにも困ったものです」
シル様は苦笑し、リュー様は呆れたように額に手を当てる。
「あ、あの、アーデ様…………この方たちは一体………?」
春姫様は未だに現状を理解していないようで、疑問を口にしています。
ふむ、それならば、
「単刀直入に聞きます。春姫様、ベル様の事をお慕いしていますね?」
「ふわっ!?」
一瞬で顔が赤くなり、耳と尻尾もピンと立っている。
「もう一度聞きます。 ベル様を愛していますね?」
「そ、それはその……………はい…………」
春姫様は一瞬躊躇しましたが、最後に小さく頷きました。
「やはりそうでしたか。では、率直に申し上げます。私も含め、この場にいる皆様も春姫様と同じ気持ちです」
「はわっ!?」
その言葉が予想外だったのか、春姫様は驚いたように声を漏らします。
「はい。私はベルさんの事、好きですよ」
シル様が、
「私もベルの伴侶として添い遂げたいと思っています」
リュー様が、
「あうう………わ、私も………ベルさんのこと………好き………だよ」
カサンドラ様が、
「そして、もちろん私もベル様をお慕いしています」
そして私が。
それぞれの言葉でベル様への想いを口にする。
「ふ、ふぇぇ………」
春姫様は驚きすぎて顔を赤くしながら声を漏らすだけです。
「そして、誠に悔しい事ですが、現在のベル様のお気持ちはアイズ・ヴァレンシュタイン様に向いています」
「ッ!?」
その事実に、春姫様はショックを受けた様子でした。
「更にアイズ・ヴァレンシュタイン様もベル様に好意を持っています」
「ッッ!?」
「まあ、お互いの想いには気付いていない様子ですが、その程度は気休めにもならないでしょう」
「そ、それでは…………」
「ベル様の一番になることは、残念ながら不可能に近いでしょう」
「…………………」
春姫様は俯き、頭の耳もその感情を表すようにへたりと垂れてしまっている。
「…………ですが…………」
「えっ?」
「二番目以降でも、あなたはベル様と一緒に居たいと思いますか?」
「ど、どういう…………」
「つまり、ベル様のハーレムを共に作り上げませんかと言っているのです」
「ハ、ハーレムッ!?」
「正直、私達がベル様と共にいる方法はそれしか無いと思っています。私とてベル様を独占したいという気持ちは無いわけではありませんが、ヴァレンシュタイン様を相手にベル様の一番を勝ち取ろうとするのは、あまりにも戦力差が大きすぎるのです。それに、万一にもヴァレンシュタイン様を退けられたとしても、ここにいる皆様はもちろんの事、ヘスティア様やギルド受付嬢のチュール様といった同性から見ても魅力的な方々がベル様を狙っているのです。可能性は更に低くなるでしょう」
「そ、それは…………確かに………」
「とすれば、ハーレム要員となって皆でベル様の元に押し掛けた方が、可能性は高いでしょう。とはいえ、無理強いするつもりはありません。春姫様がベル様の一番を狙いたいと言うのならそれを尊重します」
「わ、わたくしは…………」
春姫様は軽く俯き、考えを巡らしているようです。
「…………わたくしはクラネル様の事を英雄だと思っております」
春姫様がそう言う。
「そして同時に、素晴らしい英雄の周りには素敵な女性たちが集まると思っております。わたくし如きがその女性達と対等などという自惚れた考えなど持ち合わせてはおりませぬが、どのような形であれ、クラネル様の傍に居とうございます」
春姫様は決意した目で前を向きました。
にしても、自惚れとか何言ってるんですかねこの人は?
整った容姿に抜群のプロポーション。
おまけに
謙虚を通り越して既に嫌味ですよこれ!
「ですので、どうかこの春姫を、皆様と同じくクラネル様のハーレムの一員に加えていただけないでしょうか?」
そう言って春姫様は頭を下げました。
まあ、最初から分かり切っていたことです。
「歓迎しますよ。春姫様」
そう言って私達は新たなる同志を迎え入れた。
さて、ハーレム包囲も着々と広がってきていますね。
後は出来ればヘスティア様やチュール様にも同志になっていただきたいものです。
この二人を味方にできればベル様のハーレム包囲網も完成したと言って良いでしょう。
今は無理でしょうが…………いずれチャンスも来るでしょう。
その時には…………
私の本気、舐めないでくださいね、ベル様♪
第四十六話です。
前話の後日談的な話だったので短いです。
とりあえずハーレム包囲網は着々と完成に近付きつつあります。
ベル君の運命やいかに。
次回からは原作8巻に入ります。
お楽しみに。
それでは次回にレディー………ゴー!!