ベルが流派東方不敗継承者なのは間違っているだろうか?   作:友(ユウ)

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第三十八話 ベル、借金を背負う

 

 

 

【Side ベル】

 

 

 

 

【アポロン・ファミリア】との『戦争遊戯(ウォーゲーム)』から少しの時が流れた今日。

【アポロン・ファミリア】から乗っ取…………もとい没収したホームの改装が終わり、本日からこの立派な建物が【ヘスティア・ファミリア】のホームとなる。

正面の入り口には神様が予め決めていた【ヘスティア・ファミリア】のエンブレムである炎と鐘が刻まれている。

このホームにはヴェルフからの要望で専用の鍛冶工房が。

更に前の温泉の事もあってか、神様とリリの強い要望でお風呂もある。

本来なら引越し作業というものがあるが、以前のホームが崩壊し、主だったものが無くなってしまった僕達は元より、毎日が切羽詰まっていたリリも荷物は少なく、まともな荷物があるのはヴェルフだけである。

そのヴェルフの荷物も僕達にかかれば一回で運び終わってしまい、大した時間もかからなかった。

 

 

 

 

「本当に立派だなぁ」

 

僕は新しいホームを見て回っていた。

正直以前のホームとは天と地の差。

外回りを回りながら外観を改めて見てそう思う。

するとその時、

 

「このっ…………いい加減に………!」

 

「い~~や~~~っ………!」

 

塀の向こうからどこかで聞いた事のある声が聞こえた。

 

「ん? この声って………」

 

気になった僕は跳び上がって塀の上に着地する。

そこから外側を見下ろすと、

 

「………ダフネさんと………カサンドラさん?」

 

見覚えのあるショートヘアーとロングヘア―の少女。

【アポロン・ファミリア】にいた2人の少女だった。

 

「あっ………【心魂王(キング・オブ・ハート)】」

 

ダフネさんが僕に気付く。

何故かダフネさんに服を引っ張られているカサンドラさんも僕に視線を向けた。

 

「え~っと…………」

 

僕は何と声を掛けていいか分からず戸惑っていると、

 

「勝ったのは君達なんだから、別に後ろめたく思わなくてもいいよ。喧嘩を吹っ掛けたのはこっちなんだし」

 

「そ、そうですか?」

 

てんで気にした様子もなくそう言ってくるダフネさんに僕はなんとか相槌を打つ。

 

「ウチらは元々強制的に入団させられたようなもんだからさ。逆に君らの所の神には感謝してるぐらいだよ」

 

相変わらずその場に留まろうとするカサンドラさんの服を引っ張りながらダフネさんはそう言った。

 

「は、はあ………それで、お二方は今は何を?」

 

ボクがそう聞くと、ダフネさんはため息を吐き、

 

「この子がね、今まで使っていた枕を無くしたらしいのよ」

 

「枕?」

 

「そう。新しいものを買えばいいって言ってるのに………」

 

「あ、あの枕じゃないとダメなのぉ~。あれが無いと、私、寝付けなくて………」

 

「…………つまりカサンドラさんは、この館に枕を置き忘れたってことですか?」

 

改装するときに【アポロン・ファミリア】の団員の私物は全部出したはずだけど。

 

「その………覚えてはいないんですけど………『予知夢(ゆめ)』でここにあるってお告げを………」

 

「はい?」

 

「だからぁ! そんなバカげた話言うの止めなさいってばぁ!」

 

「お願いだから信じてよぉ~~~~~~っ」

 

つまりは予知夢と言い張るカサンドラさんの夢をダフネさんはそんな理由で他の【ファミリア】を訪ねようとするのは恥だからやめろと言いたいらしい。

 

「わかりました。じゃあ、探してきます」

 

「「えっ」」

 

そう言った僕の言葉に、2人はきょとんとして固まる。

 

「しょ、正気………? 夢よ夢! この子の妄想なのよ!?」

 

「でも、ここにあるって思うんですよね?」

 

僕がそう聞くとカサンドラさんは何度も頷く。

 

「し、信じてくれるんですか………?」

 

「信じる理由はありませんが、信じない理由もありませんから。とりあえず探してきます」

 

僕の言葉に感極まったように瞳を潤ませるカサンドラさんを見て大袈裟じゃないかと思うけど、僕はカサンドラさんに具体的な内容を聞いてそこに向かった。

何故かダフネさんは最後まで引き留めようとしていたけど、そこまで頑なにならなくてもいいのにと思いながら僕は館の中に入っていった。

 

 

 

数分後、カサンドラさんが言った通りの場所で枕を見つけて戻ってきた。

 

「これで合ってますか?」

 

僕がそう言いながら見つけた枕を見せると、

 

「これですっ!」

 

カサンドラさんがにべもなくその枕に飛びつき、ぎゅーっと抱きしめる。

 

「………本当にあった」

 

ダフネさんは信じられないといった表情でそう呟いた。

 

「あのっ! 本当にありがとうございました! 私を信じてくれて、本当に、本当にっ………!」

 

「い、いえっ。そこまで感謝されることじゃないような………」

 

カサンドラさんは何度も頭を下げてお礼を言ってくる。

すると、ようやく気が済んだのか頭を下げるのを止め、ダフネさんに何か耳打ちをした。

 

「えっ……? 本気? それでいいの?」

 

「うんうんっ………!」

 

驚きながら確認しているダフネさんに、カサンドラさんは赤くなってコクコク頷いた。

すると、ダフネさんは僕の方を向き、

 

「【心魂王(キング・オブ・ハート)】、一度出直すわ………またね」

 

そう言いながら2人は立ち去る。

 

「…………また?」

 

ダフネさんが言い残した言葉に疑問を覚えていると、

 

「ベルくーん! ちょっと来てくれー!」

 

ホームの中から神様が僕を呼ぶ。

僕が神様の元へ駆け寄ると、

 

「何か御用ですか?」

 

「ああ。君がいないと格好がつかないからね。まずはこれを見るんだ!」

 

そう言って突き出された手には紙があり、内容を読んでみた。

 

「…………『【ヘスティア・ファミリア】入団希望者募集! 来たれ子供達!!』」

 

所謂勧誘ポスターという奴だった。

 

「これと同じものをギルド本部の掲示板やバイト先にも貼り出してある。指定の時間までもう少し。そろそろ入団を希望する子供たちが集まってくる頃だぜ」

 

そう言って神様は窓の外に視線を向ける。

そこには、

 

「う、うそっ………」

 

五十人を超える数の様々な種族の亜人達が集まっていた。

 

「ゆ、夢じゃないよね?」

 

「現実さ、ベル君。ここにいる子供達はみんな、ボク達の【ファミリア】を選んでくれたんだ!」

 

呆然としていた僕の隣で神様が見よとばかりに手を広げる。

 

「『戦争遊戯(ウォーゲーム)』に勝利したことで一躍有名になってしまいましたからね。特にオラリオに来たばかりの新人冒険者達には魅力的に映ったのでしょう。今、一番勢いのある派閥(ファミリア)だと…………まあ、あれだけ大暴れして完勝してしまえばそう見られるのも当然ですが………」

 

リリがそう言うけど、その大暴れの約半分はリリだけどね。

だけど今は、

 

「ついに零細【ファミリア】脱出………! 神様、やりましたね!」

 

「ああ! 【ファミリア】を発足してから苦節三ヶ月………! 短いようで長かった!」

 

僕と神様は手を取り合って喜びを表現する。

 

「………といいますか、ベル様の実力をもっと早く多くの人に広めていれば、いくらでも入団希望者は出てきたと思うんですけどね…………」

 

リリが神様に対してボソッと呟く。

 

「し、仕方ないじゃないか! ベル君のレベルやアビリティがアレだったんだから………」

 

「まあ、確かにアレですからねぇ………」

 

そう言うリリも同じでしょ!

内心突っ込みながら集まった人達を見渡すと、

 

「あっ、ダフネさん、カサンドラさん………!」

 

先程まで話していた少女たちを見つける。

前庭に出てくると、2人が先頭まで出てきた。

 

「この子がね、君達の【ファミリア】に入りたいって………」

 

ダフネさんがそう言いながら隣にいるカサンドラさんの頭に手を置く。

カサンドラさんは恥ずかしそうにこちらに微笑みかけてくる。

さっきの『またね』の意味がようやく分かった。

 

「随分集まってるな」

 

「あ、ヴェルフ」

 

館からヴェルフが出てきて周りを見渡しながらそう言う。

 

「人が増えるのは良い事ばかりじゃないぞ。逆にしがらみなんかも増える」

 

「うん、そうだね。それは分かってる。でも、その辺りは神様なら大丈夫と思うけど……」

 

「ああ。ボクに任せてくれ。一人一人面接してその辺りはきっちりと適性をみるから」

 

僕達で盛り上がっていると、また一人敷地内へ入ってくる気配を感じた。

僕は遅れてきた入団希望者かと思ったけど、

 

「盛り上がってるところ邪魔するわね」

 

「ヘファイストス!」

 

「ヘファイストス様!」

 

神様とヴェルフが声を上げる。

やってきたのは【ヘファイストス・ファミリア】の主神であるヘファイストス様だった。

 

「随分賑やかじゃない」

 

「へっへ~ん! 凄いだろ? 皆ボク達の所の入団希望者なんだぜ!」

 

神様が胸を張ってそう言う。

 

「そう。まだ入団したわけじゃないのね。ならギリギリセーフってとこかしら?」

 

「何のことだい?」

 

ヘファイストス様の言葉に神様は首を傾げる。

 

「はいこれ」

 

ヘファイストス様は何やら紙を取り出し神様に手渡す。

 

「何だいこれ?」

 

そう言いながら神様はその用紙を広げ、

 

「……………………」

 

固まるように無言になった後、

 

「合計十億ヴァリスの請求書~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!!???」

 

大絶叫がその場に響いた。

 

「どどど、どーいう事だよヘファイストス!」

 

「あ~それね。少し前にあなたの子供が行方不明になったことがあったじゃない」

 

「まあ、想像通り杞憂だったけどね」

 

「その時にご老体がバベルで暴れたでしょ?」

 

「師匠君の事だね。それとこの請求書に何の関係が…………」

 

「あれだけバベルを揺らしておいて中が無事で済むと思う?」

 

「……………………」

 

「そういう私の店も、結構な被害を受けたしね。私の所だけでも、被害額は五千万ぐらいかしら?」

 

「じゃ、じゃあこの請求書は……………」

 

「ご想像通り、バベル全体の被害額の合計よ」

 

「ちょっと待った! 何でその請求がボクの所に来るんだ!? 師匠君がベル君の師匠だからって、ボクの所に請求が来るのはおかしいだろ! 百歩譲ってそれに納得したとしても、半分はミアハの所のキョウジ君が原因だろう!?」

 

「それについては、はいこれ」

 

ヘファイストス様は別の紙を取り出し神様に見せる。

気になった僕は後ろからその紙を覗き込んだ。

達筆の共通語(コイネー)で書かれたその内容を要約すると。

 

『賠償は全額【ヘスティア・ファミリア】へと請求されたし。ベル、これも修業よ。ウワッハッハッハッハッハ!! by東方不敗』

 

ということだ。

 

「師匠ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

僕は思わず叫んだ。

その瞬間、ズザザザザザザっと大移動する入団希望者達。

先程までの賑わいがウソの様に静まり返り、前庭からは誰一人としていなくなった。

……………と思いきや、

 

「幸先悪いわねぇ」

 

「えと………その………」

 

何故かダフネさんとカサンドラさんの2人はその場に残っていた。

 

「あれ? お二方は立ち去らないのですか?」

 

リリが怪訝そうな視線を向ける。

 

「まあ金額には驚いたけど、よくよく考えれば君達なら十億ぐらいすぐに返せそうだって思っただけだよ。ま、これは実際に相対した奴じゃないと分からないと思うけど」

 

「だ、大丈夫ですよ、きっと………!」

 

ダフネさんとカサンドラさんはそう言ってくれる。

 

「で? ベル君、君は師匠君の言いつけを守ってこの借金を背負うつもりかい?」

 

「まあ背負いたくないのは当然ですが、師匠の言いつけを破ると後が怖いので………」

 

「まあ、今の俺達なら『下層』所か『深層』にも行けそうな感じだからな………少し頑張れば借金返すのもそう難しくは無いだろ?」

 

「ごめん皆、師匠の無茶振りの所為で………」

 

「気にしないでください。今回は誰が悪いというわけではありませんので。まあ、少し位キョウジ様に手伝ってもらってもバチは当たらないと思います」

 

何気にリリは根に持ってるっぽい。

 

「で? ウチ等の入団は許可してくれるのか?」

 

「が、頑張ります…………!」

 

「あ~うん。いきなり借金まみれになっちゃったけど、それでもいいかい?」

 

「さっきも言ったけど、そのぐらいすぐに返せると思ってるよ」

 

「うんうんっ………」

 

ダフネさんの言葉にカサンドラさんも頷いている。

 

「そうか………じゃあ改めて、ようこそ【ヘスティア・ファミリア】へ。ボクは君達を歓迎しよう」

 

借金が増えたけど仲間も増えた。

暫くは借金返済が主になると思うけど、とりあえず師匠の言いつけだから頑張ろうと思った。

尚、その数分後、【改宗(コンバージョン)】を終えた神様が、

 

「よく………よく来てくれた二人とも…………重ねて君達が来てくれたことに感謝するよ」

 

と泣きながら2人の手を握る神様の姿を見かけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

【Side ロキ】

 

 

 

 

 

やれやれ、まーたドチビの【ファミリア】の評価が急上昇や。

おもしろくなーい。

ウチはそう思いながら団員達の【ステイタス】の更新を行っていく。

まあ、フィンを始め高レベルの団員達の上り幅はそれほどでもないんやけど…………

最後に残したベートとアイズたん。

この2人については最近よくわからん。

アイズたんはまあ【憧憬一途(リアリス・フレーゼ)】ちゅうスキルがあるもんやで分からんでもないんやけど、ベートに関しては謎や。

まあ今現在そのベートの更新を行っとるんやけど、それが終わり、ウチが【ステイタス】を確認すると、

 

 

 

 

 

 

ベート・ローガ

 

 

 

 

Lv.少林寺

 

 

 

力  : 父さん………父さぁぁぁぁぁぁぁぁん!!

 

耐久 : 負けない………! 負けるわけには……死んでも負けるわけには!

 

器用 : 少林寺再興は、オイラがやり遂げる!

 

俊敏 : オイラの姿が見えるかな?

 

魔力 : 同じ時を分け合ったアニキとならば!

 

 

 

 

 

蹴撃孤狼(クラブ・エース)

英雄(キング)乙女(クイーン)戦士(ジャック)道化(ジョーカー)とのレゾナンスで【ステイタス】上昇

英雄(キング)に対する対抗心により【ステイタス】上昇

・各【ステイタス】に超補正

・スキル【少林寺拳法】習得

 

 

 

【少林寺拳法】

・少林寺拳法

 

 

 

 

 

それを見た瞬間頭が真っ白になった。

なんやこれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!

レベルもアビリティも訳分らんことになっとるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!

い、いったい何やこれは!?

何と言ったらいいかわからん!

こんなこと初めてや!

遂には頭がショートしてウチの意識は遠くなった。

 

 

 

 

気付けば目の前にアイズたんがおってベートはもうおらんかった。

話を聞けばベートは気を失ったウチをほっぽって行ったらしい。

少し位心配せえや。

とりあえずウチは気を取り直してアイズたんの【ステイタス】を更新することにした。

もうアイズたんの【ステイタス】がどんな上がり方しとっても驚かん自信はある。

どんな【ステイタス】でもベートのあの【ステイタス】には敵わんやろう!

さあこいやぁ!!

 

 

 

 

アイズ・ヴァレンシュタイン

 

 

Lv.アメリカンドリーマー

 

 

 

 

力  : お前たちに坊や扱いされてたまるかぁぁぁぁぁっ!!

 

耐久 : I'll never give up!!

 

器用 : I will be back!

 

俊敏 : どうした? もう一度笑ってみなよ?

 

魔力 : 例えこの身が砕けようとも!

 

剣士 : 俺が夢だ! 俺が希望だ! 俺は今こそ最高に燃えてやる!! 俺は夢を掴むんだぁぁぁぁぁぁっ!!

 

 

 

 

 

「ごふぁっ!!」

 

無理やったぁぁぁぁっ!!

ベート並みの【ステイタス】やった!

あ、また………

再び気が遠くなるのを感じ、ウチはそのままその感覚に身を任せた。

 

 

 

 





第三十八話完成。
何とか今日中に間に合った!
とりあえず原作以上の借金背負うことになりましたがダフネとカサンドラは加入。
ミアハの所はキョウジがいますので、まあ、命の代わりちゅうことで。
あとはお待たせベートとアイズのステイタス。
さて、このネタも既に何度もやってますからそろそろインパクトが薄くなってる頃かなぁ?
ともかく次回からは春姫編になるかと………
でもって今週も時間が無いので返信はお休みさせていただきます。
次回からはちゃんと返せるかと。(仕事の予定次第ですが)
それでは次回にレディー………ゴー!!




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