ベルが流派東方不敗継承者なのは間違っているだろうか?   作:友(ユウ)

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第一話 ベル、オラリオへ行く

第一話 ベル、オラリオへ行く

 

 

 

 

 

東の地平線から朝日が昇る頃。

 

 

 

 

 

 

草原に徐々に朝日が差していく静かな朝。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「応えよベルゥゥゥゥ!!!」

 

「師匠ォォォォォォッ!!!」

 

そんな静かな朝に響く大音量。

 

「流派! 東方不敗は!!」

 

「王者の風よ!!」

 

互いに拳をぶつけ合う2つの影。

 

「全新!!」

 

「系列!!」

 

秒間数十発という拳のラッシュを交えていく2人。

 

「「天破侠乱!! 見よ! 東方は赤く燃えている!!!」」

 

最後に拳を合わせ、朝日をバックに構えを取っているのは、東方不敗マスターアジア。

そしてその弟子、ベル・クラネルであった。

 

 

 

 

 

【Side ベル】

 

 

 

師匠と出会い、約6年。

あの日、師匠に弟子入りしてからは、過酷な修行の日々が続いた。

今思えば、言葉にするのも億劫だけど、でも、あの日々があったからこそ今の僕がある。

師匠が言うには、僕は中々筋がいいらしい。

師匠にはもう一人、僕の兄弟子にあたる人がいるそうだけど、その人が10年かかってたどり着いた領域に、今の僕はいるみたい。

むしろ、兄弟子の人が修行を終えた時点の強さを、今の僕は超えているそうだ。

でも、その人は最後には師匠を倒したそうなので、まだまだ僕はその人よりは弱いみたいだ。

そして今日、僕は最後の修行を終え、村を出る。

村の馬車乗り場で、師匠とお爺ちゃんに別れを告げる。

行き先は、迷宮都市『オラリオ』。

あの苦しい修行の日々を乗り越えたのは、まさにこの日の為に!

冒険者になり、ダンジョンに潜り、可愛い女の子と運命的な出会いを果たすために!

そして、男の夢、ハーレムを築く為に!

僕はオラリオへ旅立つ!

なんてこと師匠に言ったらぶっ飛ばされる事間違いないから言ってないけど。

でも、前に師匠から、

『お主の拳には邪な想いが篭っておる。 だが、真っ直ぐ純粋な想いだ。 決して拳を振るう相手を間違えるでないぞ』

って言われたから、薄々感づかれてるのかもしれない。

 

「それでは師匠。 今日までお世話になりました!」

 

「うむ! これからも精進せい! ベルよ!」

 

「はい! お爺ちゃんも元気で!」

 

「はっはっは! ワシもまだまだじゃ。 お前の活躍がこの村に届くのを楽しみにしておるぞい」

 

師匠もお爺ちゃんも、笑顔で僕を見送ってくれる。

 

「師匠、お爺ちゃん………行ってきます!」

 

「行ってこい! ベル!」

 

「頑張れよ、ベル!」

 

その言葉を最後に僕は踵を返し、馬車に乗り……………込まずに馬車の横を通過する。

そして、

 

「たぁりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

道を全力疾走で駆け出した。

いや、だって馬車よりも自分で走ったほうが速いし。

そんな事を思いつつ、僕はオラリオへ向かって走り続けた。

 

 

 

 

 

馬車で1週間かかる道程を2日で走破した僕は、迷宮都市『オラリオ』にいた。

 

「わあ~、流石オラリオ。 村より全然おっきいや」

 

最初に驚いたことは、やっぱり街の大きさだった。

僕が住んでいた村より大きさも人の多さも比較にならない。

 

「っと、そうだ。 驚いてばかりじゃいけない。 えっと、冒険者になるには、まずはどこかの【ファミリア】に入団しないといけないんだったね」

 

僕は気を取り直して、【ファミリア】に入団するべく足を進めた。

 

 

 

 

 

「はっ! ウチはお前みたいな貧弱なガキが来るような弱小【ファミリア】じゃないんだ! 帰った帰った!」

 

通算30回目の似たような門前払いの文句を聞いて、僕は溜め息を吐く。

街の人々に話を聞いて色々な【ファミリア】を回って来たけど、尽く僕の弱そうな外見から面会すら受けさせてもらえず、門前払いを受け続けてきた。

 

「はぁ~………そりゃ自分の外見が貧弱そうなのは自覚してるけどさ~………」

 

僕はガックリと気落ちする。

そりゃ14歳でも小柄な方だし、しかも着痩せするタイプみたいだから、更に貧弱に見えるかもしれないけど。

これでも脱いだら凄いんだよ?

鋼の肉体だよ?

細マッチョだよ?

 

「まあ、それでも見た目だけで判断する【ファミリア】なんて、こっちから願い下げだけどさぁ………」

 

僕はそう呟きながら、ふと後ろを振り向く。

先程から僕を尾行している気配がある。

正確には、20件目の【ファミリア】に、門前払いを受けた辺りからだ。

曲がり角の内側から、縛った長い髪の毛がはみ出ている。

悪意は無いようだから放って置いたけど、ここまで尾行されていると気になってくる。

だから僕は声をかけることにした。

 

「あの、先程から僕を尾行している方。 僕に何か御用ですか?」

 

そう声をかけると、その見えている髪の毛がビクッと跳ねた。

そして、恐る恐るといった雰囲気で顔を見せたのは、黒髪をツインテールにした女の子だった。

 

「き、気付いていたのかい?」

 

「ええ、特に気配も消していませんでしたし。 そのぐらいの尾行ならすぐに気付きます」

 

「因みに何時ぐらいから?」

 

「今から10件ほど前の【ファミリア】に門前払いを受けた辺りからですね」

 

「は、ははは。 最初から気付いていたのかい………」

 

「ええ。 これでも武闘家ですから。 腕には自信がありますよ」

 

「ぶ、武道家かい………?」

 

そう言うと、その女の子は僕の身体をジロジロ見てくる。

 

「わ、悪いけど、とてもそうは見えないかな?」

 

「武”闘”家です。いいですよ。 見た目が貧弱なのは僕自身わかってますから」

 

と、そこまで言って、僕は彼女の雰囲気の違いに気が付いた。

 

「あの、失礼ですが、もしかして神様ですか?」

 

その瞬間、彼女の目がクワっと見開かれた。

 

「き、君は僕が神だって気付いてくれたのかい!?」

 

「え、ええ………雰囲気というか、気の流れというか、普通の人とは違うと感じたんです。 だから、もしかしたらって思ったんですけど………」

 

「いや、嬉しいよ。 僕自身こんなナリだからさ。 初対面で神だって気付く人が殆どいないんだよ」

 

「そ、そうですか………ところで、先程から僕を尾行していた理由は何ですか?」

 

僕は先程から気になっていた理由を尋ねる。

 

「おお。 そうだったそうだった。 君、ボクの【眷属】にならないか?」

 

「えっ? ほ、ホントですか!?」

 

「ああ。 僕もちょうどファミリアの勧誘を行っていてね。 っていうか、【眷属】が1人も居ない状態なんだけど……」

 

「で、でもいいんですか? 僕は弱そうな見た目ですし、田舎者ですし………」

 

「もちろんさ。 ボクを神だと一目で見抜いてくれた君に、ボクの【家族】になって欲しい。 それに何より、君の人柄は好ましく思える」

 

僕は、その神様の目をジッと見つめる。

その言葉に、嘘はないと思えた。

 

「分かりました。 僕を神様の【眷属】にしてください!」

 

そう言うと、神様は嬉しそうな顔になり、

 

「よし! 決まりだ! じゃあ早速ついて来てくれ! ファミリア入団の儀式をやるぞ!」

 

そう言って神様は僕を引っ張って行こうとしたけど、

 

「あっ、ちょ、ちょっと待ってください!」

 

僕は慌てて引き止める。

 

「どうしたんだい? あ、や、やっぱりボクの眷属になるのはイヤかい?」

 

「いえいえ! そうじゃなくてですね神様! 僕達、一番大切なことを忘れてますよ!?」

 

「一番大切な事?」

 

神様は首を傾げる。

僕は苦笑して一度気を取り直すと、

 

「初めまして神様。 僕はベル。 ベル・クラネルと言います。 神様、お名前を伺っても宜しいですか?」

 

僕は自己紹介をした。

すると、神様は嬉しそうに笑い、

 

「ボクはヘスティア。 神ヘスティアだ。 初めまして、ベル君」

 

その名を名乗ってくれた。

 

「ベル君。 改めて、僕の【眷属】になってくれるかい?」

 

「はい! 僕を神様の【眷属】にしてください!」

 

「よし! ベル君、付いてくるんだ! 改めて、ファミリア入団の儀式をやるぞ!」

 

「はい!」

 

僕は神様に連れられ、歩き出した。

 

 


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