ベルが流派東方不敗継承者なのは間違っているだろうか?   作:友(ユウ)

13 / 88
第十二話 ベル、デート(仮)する。

 

 

 

 

【Side ベル】

 

 

 

 

僕は朝の光が差す市壁の上で鍛錬を行っていた。

 

「…………………」

 

でも、僕の視線は時折屋上の出口である階段の扉へと向けられる。

その理由は、もしかしたらアイズさんがまた来るんじゃないかという期待と願望。

そう思いながらも来るはずがないと割り切ろうとする諦め。

それらが入り混じった複雑な心境だった。

僕は繰り出していた拳をピタリと止める。

 

「…………ダメだ。 こんなんじゃ修行に身が入らないや…………こんな体たらくじゃ、師匠にどやされちゃう……」

 

僕は座禅を組んで瞑想を始める。

それでも心の中の迷いは一向に晴れない。

その原因はやっぱり…………

 

「………アイズさんに嫌われた事だよなぁ………」

 

僕は溜め息を吐く。

初恋だった。

一目惚れだった。

これ以上ないほどに惹かれた。

神様からは、嫌われた女のことなんかさっさと忘れて、直ぐ傍にある新しい恋に目を向けるべきだと言われた。

でも、嫌われたとしてもそう簡単に諦めて割り切れる訳じゃない。

そのまましばらく瞑想を続けたが、一向に迷いは晴れなかった。

結局、エイナさんとの約束の時間が近づいてきたので僕は瞑想を打ち切り、約束の場所へと赴いた。

 

 

 

 

 

 

【Side アイズ】

 

 

 

 

昨日、ギルドでベルとバッタリ会ってしまい、思わず逃げ出してしまった翌日。

朝の特訓で顔を合わせてしっかりと謝ろうと思っていた。

でも、

 

「う~ん…………まだこの階層じゃ手応えないなぁ~」

 

ティオナがそう言いながら戻ってくる。

今いるのはダンジョンの20階層。

暫くは遠征などの大規模な予定は無いため、フィン、リヴェリア、ティオネ、ティオナ、私と、他2人でパーティを組み、昨日の午後から数日の予定でダンジョン探索に来ていた。

ベルに謝るのが先延ばしになっちゃうけど、せっかく皆からの誘いを断るのも悪いと思った。

 

「ところでアイズ、デスペレートはどうしたの?」

 

私の腰に携えられてるのは、砕けてしまったデスペレートに代わってベルから貰った錆びた刀。

その事が気になったのか、ティオナが訪ねてくる。

 

「……………壊れた」

 

私は事実を口にする。

 

「「ええええええええええええっ!?」」

 

ティオナとティオネが声に出して驚き、フィンとリヴェリアも口には出してないけど目を見開いて驚愕している。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ! デスペレートって私達の武器と同じように、【不壊属性(デュランダル)】が付加されてたはずよね!? それが壊れるなんてありえないわよ!」

 

ティオネが捲し立てる。

 

「そうだよ………! 解った! きっと不良品を掴まされたんだ!」

 

ティオナがそういった所で私は首を振った。

 

「違うよ…………私は知らず知らずの内に『折れない剣(幻想)』に縋っていた。 彼は、そんな『折れない剣(幻想)』を打ち砕いてくれただけ」

 

「彼………?」

 

「それに大丈夫。 代わりの剣はもうあるから」

 

「ほう………それはそこまでの名剣なのか?」

 

錆びた剣なんて言ったら驚くかな?

すると、再びモンスターが現れた。

 

「次は私が行く…………!」

 

私はそう言って一人歩み出る。

数は5。

私は剣の柄に手を掛け、駆け出す。

『明鏡止水』を会得してから、通常の状態でも今までより力を引き出せるようになった。

言葉では言い表しにくいけど、今までは力を強引に引き出して使っていた為に、無駄な体力を消費し、更に引き出した力の半分も十分に使えていなかった。

それを自然に、無理なく引き出し、余計な体力を使わずに全ての力を効率よく使えるようになった。

そんな感覚がする。

それにベルがやっていた武器に気を流す方法も、なんとなくわかった。

 

「…………ふっ!」

 

私はモンスターとのすれ違いざまに抜刀。

全てのモンスターに一撃ずつ斬撃を与えたあと、そのまま鞘に収める。

そして全てのモンスターが灰と化した。

私が皆の所へ戻ってくると、

 

「…………すっごぉぉっぉい!! アイズどうしちゃったの!? 滅茶苦茶強くなってるじゃん! いつランクアップしたのさ!?」

 

ティオナが驚いた顔で詰め寄ってくる。

 

「私も聞きたいわ。 今のあなたの動き、全然見えなかったんだもん」

 

ティオネもその後ろで目付きを鋭くしている。

 

「………ランクアップはまだしてない。 次に更新すれば多分すると思うけど………」

 

「嘘っ! まだLv.5なの!? 今ので!?」

 

私は頷く。

昨日は気持ちを落ち着けるために部屋に篭ってたし、ロキに更新を頼むことすら忘れていた。

 

「ただ少し………力の使い方を覚えただけ」

 

そう思いながら、その力の使い方を教えてくれたベルは、今何をしているのだろうと考えた。

 

 

 

 

 

 

【Side ベル】

 

 

 

 

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……………」

 

僕は何度目かも分からない深い深い溜め息を吐く。

待ち合わせの場所で棒立ちになりながらも、空を見上げる。

ああ………空が青いなぁ…………

 

「おーい! ベルくーん!」

 

傍から見たらまさに上の空状態の僕に呼びかける声がした。

僕がゆっくりと視線を移すと、先日と同じように可愛らしい私服姿にメガネを外したエイナさんの姿。

 

「お待たせ! 待った?」

 

「あ、いえ………それほど」

 

僕の答えに満面の笑みを浮かべるエイナさん。

 

「ふふっ! 今のやり取り、ホントにデートの待ち合わせみたいだね?」

 

「ええっ!?」

 

いきなりそんな事を言われ、僕は慌ててしまう。

 

「そう考えてもらっていいよ。 今日はベル君を元気づける為に遊びに行くんだからさ」

 

エイナさんは本気か冗談か判断のつかない雰囲気でそう言う。

でも、不思議と僕の心は軽くなった気がした。

 

「さ、行こ!」

 

エイナさんは僕の手をとってグイグイと引っ張り出した。

 

 

 

 

 

 

【Side アイズ】

 

 

 

何故かわからないけど突然ムカっとした。

 

「……………………」

 

「アイズ? いきなり怖い顔してどうしたの?」

 

ティオナの質問に私は考える。

 

「……………分からない。 何故かムカっとした」

 

「へ………?」

 

丁度モンスターが目の前に現れる。

私は理由の分からない行き場のない怒りを目の前のモンスターにぶつける事にした。

 

 

 

 

 

【Side ベル】

 

 

 

 

未だにオラリオの事をよく知らない僕はエイナさんに引っ張られるままに付いて行く。

喫茶店でお茶をしたり、公園を散歩したり、アクセサリーショップで強請られたり。

正直、傍から見たらまんまデートだ。

そして何故か最初は手を繋いでいただけなのに、現在は腕を組んで歩いていたりする。

 

「エ、エイナさん…………その………近すぎませんか………?」

 

僕は辿たどしくエイナさんに尋ねる。

 

「あれ? ベル君はこういうのは嫌?」

 

エイナさんはいたずらっ子のような笑みを浮かべて問い返してくる。

 

「その………嫌ではありませんが、なんというか………知り合いに見られたら勘違いされてしまいませんか?」

 

エイナさんにはお世話になっているので、迷惑をかけてしまうのは気が引ける。

 

「ふふっ! いいよ、ベル君となら」

 

「………へっ?」

 

思わずエイナさんの顔を見る。

エイナさんの頬はほんのりと赤くなっていた。

そんなエイナさんが無性に可愛く思えてしまい、僕も恥ずかしくなってしまう。

 

「………………」

 

「………………」

 

お互いに会話が途切れてしまい、なんとなく気まずくなってしまう。

僕は何とか話題を探そうと視線を走らせると、じゃが丸くんの露天が目に入る。

 

「そ、そうだエイナさん! ジャガ丸くん食べませんか!?」

 

僕は言ってからハッとなった。

何故にエイナさんにじゃが丸くんを勧めているのかと。

最初にエイナさんが言っていたじゃないか。

今日はデート気分でも構わないと。

何故僕はデート(仮)相手にジャガ丸くんを進めるような空気を読まない行動をしているのかと言ってから後悔した。

でも、

 

「いいよベル君。 私もジャガ丸くん好きだし」

 

エイナさんは特に嫌な顔もせず、笑顔で頷いた。

僕はちょっと驚いたけど、

 

「じゃ、じゃあ買いましょうか!」

 

そう言って2人で店の前に行き、

 

「すみません。 ジャガ丸くん2つください」

 

黒髪ツインテールの店員さんに声をかけた。

 

「は~い。 毎度ありがとうございま………す」

 

その声を聞いて、僕は、ん?と思う。

とても聴き慣れた声。

僕はその店員さんの顔をもう一度よく見る。

その人物とは、

 

「ベッ、ベル君!?」

 

「何やってるんですか? 神様」

 

自分の主神であるヘスティア様だった。

 

「い、いや………ボクも少しは自分の【ファミリア】に貢献しようかと………」

 

「神様、最近………というより、僕がダンジョンに潜り始めてから、僕は一日一万ヴァリス以上稼いでますよね!? 神様がバイトする理由なんてないじゃないですか!?」

 

「いや、ベル君ばかりに頼っていると自分が情けなく思えてしまって………」

 

「時給三十ヴァリスも大して変わりませんよ! 神様も神様なんですから、もう少し恥も外聞も気にしてください!」

 

「ジャガ丸くんを馬鹿にするなぁーー!」

 

と、そこで神様が僕の横にいたエイナさんに気付いたのか、

 

「誰だい? このハーフエルフ君は?」

 

神様が尋ねると、エイナさんはいつものギルド職員の雰囲気になり、一度会釈をする。

 

「初めまして、神ヘスティア。 わたくし、ベル・クラネル氏の迷宮探索アドバイザーを務めさせてもらっているギルド事務部所属、エイナ・チュールです。 お見知りおきを」

 

「ああ。 そういう事か、いつもベル君が世話になっているね」

 

すると、ちょいちょいと神様がエイナさんを手招きし、

 

「時にアドバイザー君。 君は自分の立場を利用してベル君に色目を使うなんてこと…………してないだろうね?」

 

小声でそういう神様。

すみません、聞こえています。

するとエイナさんは、

 

「|()()()()()()つけています」

 

と、自信を持って言った。

 

「そうかい。 その言葉、信じたよ」

 

神様は機嫌よく頷くと、じゃが丸くんを2つ用意し、

 

「ほら、ご注文のじゃが丸くんだ。 60ヴァリスだぜ」

 

僕は60ヴァリスを払ってジャガ丸くんを受け取る。

とりあえず、神様の説得はホームで行うことにして、僕達はその場を離れた。

 

「変わった神様だね?」

 

「すみません………」

 

僕はエイナさんに頭を下げるしか無かった。

 

 

 

 

 

日が暮れる頃、待ち合わせに使った場所で僕達は別れようとしていた。

 

「エイナさん、今日はありがとうございました。 えっと………楽しかったです………」

 

「ふふっ! 私も楽しかったよ…………ねえベル君」

 

「はい、なんですか?」

 

「少しは元気出たかな?」

 

「えっと………その………は、はい………!」

 

思えば大分気分は軽くなったように思える。

 

「そっか………それなら私が誘った意味もちゃんとあったかな」

 

「すみません。 心配かけて………」

 

「そこは、『ありがとう』って言って欲しいかな?」

 

そう言われて僕はハッとする。

 

「ありがとうございます、エイナさん」

 

僕は笑顔でお礼を言う。

 

「どういたしまして」

 

エイナさんも笑みを浮かべて返事を返した。

 

「これを切っ掛けに、私の事も見て欲しいなぁ………なんて」

 

「えっ?」

 

「ベル君がヴァレンシュタイン氏の事をそう簡単には諦められないことはわかってる。 でも、約束してくれたよね。 私の前から居なくならないって………」

 

「は、はい………」

 

頬を染めながら言葉を紡いでいくエイナさんに僕は引き込まれていく。

 

「嬉しかったんだよ。 ハッキリと約束してくれたことも………この前に大好きって言ってくれたことも………」

 

「あ、あれは………」

 

「わかってる。 ベル君がそんなつもりで言ったんじゃないって。 でも、時々でいいから、ヴァレンシュタイン氏じゃなくて、私の事も見て欲しい………」

 

そう言いながら、エイナさんは僕に歩み寄ってくる。

 

「これは…………私の気持ち………」

 

そう言いながらエイナさんは僕に顔を寄せ…………

頬に暖かな感触がした。

 

「えっ……………!?」

 

僕から離れたエイナさんの顔は真っ赤になっている。

えっ? もしかして、キスされた!?

僕はハッとなって頬に手を当てる。

 

「じゃあね、ベル君」

 

僕が呆然としてる間に、エイナさんは踵を返して立ち去ってしまう。

僕はしばらく棒立ちのまま突っ立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

【Side ティオナ】

 

 

 

 

 

ドゴオォォォォォォン、と突然爆発音が鳴り響く。

 

私がビックリしてそっちを見ると、アイズの前にはまるで強力な魔法を撃ち込んだかのようなクレーターができていて、アイズが相手をしていたと思われる骸骨モンスター『スパルトイ』の破片が粉々の状態でアイズの周りに散らばっていた。

 

「ア、アイズ………? 一体どうしたの?」

 

私は恐る恐る尋ねる。

すると、

 

「分からない………何故か今までとは比較にならないぐらいイラっとした」

 

私がドン引きするぐらいの無表情の裏にある不機嫌さを感じて、私は冷や汗を流す。

今日のアイズはどこかおかしい。

いつもなら本当に無表情で、感情の起伏も殆ど無いと言っても過言じゃないアイズが、今日に限って不機嫌さがはっきりわかるぐらいにイラつくことが何度もあった。

たった今感じた不機嫌さは、比較にならないけど………

今私たちがいるのは37階層。

フィンとリヴェリアが、そろそろ切り上げようかと相談している。

すると、

 

「フィン、リヴェリア、もう少しこの場に留まらせて欲しい」

 

本当に今日は珍しい。

あのアイズが我侭を言ってる。

 

「理由は?」

 

「自分の力を試したい。 それだけ。 時間はかけないし、皆にも危険な事はさせない」

 

「………………」

 

フィンがアイズの眼をジッと見つめ、アイズも逸らすことなく見つめ返す。

 

「…………わかった。 いいだろう」

 

フィンが折れて許可を出した。

 

「ありがとう………」

 

そう言ってアイズはこの階層に一つしかない広大なルームの中央付近に立つ。

そのまましばらくの時間が流れ、私はアイズがこの階層に留まった理由を考えていた。

この階層にはこのルーム一つしかないし、元々いたモンスターもさっき全部片付けちゃった。

それでもこの階層に留まる理由。

特にモンスターが生まれる間隔が短いわけでもないし…………

そこまで考えてハッとなった。

ちょっと待って、この階層って確か!

私がそこまで思い至ったところで地面が揺れ始め、アイズの目の前の地面が隆起し始める。

 

「そうか………もう3ヶ月経ったか………」

 

リヴェリアもその理由に気付いたみたいでそう呟く。

そう、一定階層ごとに現れる超強力モンスター。

通称『迷宮の孤王(モンスターレックス)』。

通常のモンスターよりも遥かに強いそのモンスターは、大勢の冒険者が力を合わせて倒すもの。

アイズはそのモンスターを………

 

「皆………手を出さないで」

 

たった一人で戦うつもりだったんだ。

地面を突き破って現れたのは、さっきまで戦っていた『スパルトイ』を黒くして巨大化させたようなモンスター『ウダイオス』。

下半身は地面に埋まり、上半身しか見えないけど、その大きさは10mほどの巨大さを誇る。

その手に持つのは黒剣。

『ウダイオス』からすれば片手剣であるそれは、私たちからすれば大剣をはるかに超えた威力を持つ一撃必殺の凶器。

 

「アイズ………本当に一人でやるつもりか?」

 

リヴェリアが警告のつもりで呼びかける。

私もアイズに考え直すように願った。

でも、

 

「大丈夫」

 

そう言いながら剣を抜き、

 

「一撃で終わらせるから…………!」

 

その鞘からその刀身を顕にした。

私達は、今までアイズの剣をしっかり見たことがなかった。

アイズは私達の目にも止まらぬ程の居合抜きでモンスターを仕留めてきたため、その刀身をはっきり見たのはこれが初めて。

私は、今までの切れ味からどれほどの名剣だろうと期待していたけど、そこに現れたのは、

 

「さ、錆びてる………!?」

 

遠目に見ても鈍らだと分かるほどに錆び付いた刀身だった。

アイズはその剣を正眼に構え、あろう事か眼を瞑った。

『ウダイオス』の前にその無防備な身体を晒すアイズ。

 

「アイズ! 逃げて!!」

 

私は思わず叫ぶ。

『ウダイオス』が巨大な黒剣を振りかぶる。

 

「何してるの!? 逃げなさい!?」

 

ティオネも叫ぶ。

それでもアイズは動かない。

 

「ッ…………!」

 

リヴェリアも助けに入るか迷っているようだ。

私は耐え切れなくなって思わず駆け出そうとしたとき、アイズの身体に淡い金色の光がまとわりついている事に気がついた。

 

「何? あの光?」

 

そうして足を止めてしまったことに私は後悔した。

『ウダイオス』の黒剣が振り下ろされ始める。

 

「アイズ!!」

 

私はまた駆け出すけど、もう間に合わない。

いくらLv.5とはいえ、あの一撃を受ければ無事では済まない。

そして、アイズに黒剣が叩きつけられる寸前、アイズが眼を見開いた。

その瞬間、叩きつけられる黒剣。

私は絶望感に包まれる。

アイズが避けた素振りはない。

つまり直撃。

私はその場で膝を付き、項垂れてしまう。

 

「ア………アイズーーーーーッ!!」

 

私は思わず叫ぶ。

答えは返ってこないだろう。

それでも私は叫ばずにはいられなかった。

でも、

 

「大丈夫だよ………ティオナ」

 

いつもと全く変わらない落ち着いた返事が帰ってきた。

 

「えっ?」

 

私は思わず顔を上げる。

そこには信じられないことに、金色のオーラを纏ったアイズが輝く剣を持って『ウダイオス』の黒剣の一撃を微動だにせず受け止めている姿があった。

 

「フッ………!」

 

アイズが受け止めていた状態から剣を押し返し、『ウダイオス』の黒剣が大きく跳ね上げられる。

アイズはその場で跳躍し、信じられないことに『ウダイオス』の全長よりも高く跳んだ。

アイズは輝く剣を振りかぶる。

 

「はぁあああああああああああああああっ!!!」

 

いつもとは違う、とても気合の入った声。

アイズは降下と同時に剣を振り下ろす。

輝く剣の一撃は、頑丈なはずの『ウダイオス』の骨格を容易く切り裂いていき、遂には魔石ごと全身を一刀両断にした。

地面に難なく着地したアイズは、何事もなかったように剣を鞘に収める。

それと同時に灰と化す『ウダイオス』。

 

「か、階層主を…………一撃!?」

 

ティオネが驚愕している。

でも、私は一目散にアイズに駆け寄り、

 

「アイズの馬鹿―――っ!! なんであんな無茶したの!? 私とっても心配したんだからね!!」

 

抱きつきながら思わず叫ぶ。

 

「ごめんティオナ。 でも、大丈夫って確信があったから………」

 

「そういう問題じゃない!!」

 

私達を心配させた罰として私はしばらくアイズを放さなかった。

 

 

 

 

 

 

 






第十二話です。
色々とはっちゃけてみた。
エイナさん容赦なし。
アイズからベル君を奪えるか!?
一方アイズは階層主を一発KO。
おまけにベルの状況を察知してイラついてました。
因みにアイズが何故ベルの状況を察知できたのかは…………一応理由になるかわからない理由がありますので、もう少しお待ちを。
因みに次回で漸くリリが出てきます。
それでは次回にレディィィィ…………ゴー!!
なんつって。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。