ベルが流派東方不敗継承者なのは間違っているだろうか? 作:友(ユウ)
ハーメルンには初投稿です。
別の所でデジモンクロスを主に投稿してましたが、ここ1年全く書く気力が湧かず凍結状態になってしまいまして、ふと思いついた小説をこちらに投稿してみようと思った所存です。
気楽に読める小説として書いていますので、お気楽に読んでください。
では、どうぞ。
プロローグ 出会い
プロローグ 出会い
【Side ????】
ワシはまた過ちを犯すところであった。
地球の自然破壊を嘆き、憂い、その末に出した答えが全人類の抹殺。
そのためにデビルガンダムという存在に頼り、その手足となってデビルガンダムの進化、復活の手助けをしてきた。
しかし、そんな道を誤ったワシを止めてくれたのが、かつての弟子であった。
『アンタが抹殺しようとする人類もまた、天然自然の中から生まれしもの………言わば地球の一部! それを忘れて、何が自然の……地球の再生だ! そう………共に生き続ける人類を抹殺しての理想郷など、愚の骨頂!!』
それを聞いたとき、ワシは過ちに気付いた。
だが、ワシは既に大罪人。
故に愚者を演じ続け、最後に立ちはだかる壁として、弟子の前に立った。
そんなワシを、弟子は見事に超えてくれた。
最早、思い残すこともない…………
最期に東の水平線から昇る朝日を弟子と共に眺めながら、ワシは意識を手放した。
暗い………
何も感じない…………
これが死後というものなのか………
もし死後の世界があると言うならば、ワシは間違いなく地獄行きであるな…………
それにしても、地獄とはもう少し苦しいものかと思っていたが、それほど苦しくは無い……
「………うぶで…すか………いさん」
はて?
今、何か聞こえたような?
「だい……ぶです……!」
ふむ、やはり聞こえるな。
「大丈夫ですか!? お爺さん!?」
その声に導かれるように、ワシはゆっくりと目を開けた。
「あっ、気がつきましたか? 大丈夫ですか? お爺さん?」
儂の目の前にいたのは、白い髪と赤い目をした、歳が十にも満たぬ少年であった。
ワシはゆっくりと身体を起こす。
「どういう事だ? ワシは……死んだはずでは?」
改めて周りを見渡すと、地球では殆ど見ることが無くなった大自然と呼ぶべき広い草原と、緑に覆われた山々。
そして、ワシの後ろには、美しい湖が広がっていた。
「こ、ここは………?」
黄泉の国………地獄と呼ぶには余りにも美しすぎる光景。
「あの……大丈夫ですか?」
先ほどの少年が問いかけてくる。
「う、うむ、すまぬな。 少々混乱しておったようだ」
正直、ワシにも今の状況が把握できておらん。
どうやら、この少年がワシを起こしたようだが………
「ときに少年よ。 ここは死後の世界なのか? それにしては美しすぎると思うのだが………」
ワシがそう問うと、少年は目を丸くし、
「いえいえ! 死後の世界なんかじゃないですよ! 僕もお爺さんもちゃんと生きてます!」
首を横に振りながら全力で否定した。
どうやら嘘は言っておらんようだし、この純粋そうな少年が嘘をつくとは思えん。
「お爺さんはどうしてここに? 朝に水汲みに来たら、お爺さんが倒れていたのでびっくりしたんですけど」
そう問われ、ワシは腕を組んで考え込む。
ワシは間違いなくあの時弟子に看取られて死んだはず。
何故ここに倒れていたかだが…………
「…………わからん」
「えっ………?」
「何故ワシが湖の辺で倒れていたかが全く思い出せん」
「ええっ!? もしかして記憶喪失ってやつですか!?」
「いや、自分の名も、ワシが何者であったのかも覚えておる。 何故ここにおるのかだけがさっぱりわからん」
「そ、そうですか………」
ワシは少し考え、ひとまず現状把握に努める事を決めた。
その為に、現在頼りになるのはこの目の前の少年。
そういえば、初めて会った頃のドモンもこのぐらいの歳であったか。
ここで会ったのも何かの縁だろう。
「そういえば少年よ。 名は何と言う?」
「あっ、はい! 僕はベル。 ベル・クラネルといいます」
「ベル……か。 ふむ、良き名だ」
「あ、ありがとうございます」
そう言いつつ頭を下げるベル。
ベルが頭を上げたところでワシも名乗った。
「ワシの名は東方不敗。 マスターアジアと呼ぶ者もいる。 よろしくな、ベル」
【Side ベル】
僕は、いつも通り朝の日課である水汲みに湖まで来ていた。
でも、そこで湖の辺に倒れている初老の男の人を見つけたんだ。
僕は慌てて声をかけると、そのお爺さんはすぐに気が付き、キョロキョロと辺りを見渡した。
いきなりここは死後の世界なのかと聞かれた時にはびっくりしたけど。
でも、どうやらそのお爺さんは、何でここにいるのかが思い出せないみたい。
その『トーホーフハイ マスターアジア』と名乗ったお爺さんは、情報が欲しいみたいで、僕に色々聞いてきた。
僕は、立ち話も難だったので、そのお爺さんを家に案内することにした。
見た限り、悪い人には見えないし。
僕は道すがら、その人に話を振ってみた。
「そういえばお爺さん。 お爺さんは何をしてる人なんですか?
「ワシか? ワシは武”闘”家よ」
「武道家………って、お爺さん冒険者なんですか?」
「冒険者? いや、ワシは武闘家であって、それ以上でもそれ以下でも無いわい。 それよりベル。 冒険者とは何だ?」
「えっ? 知らないんですか? 冒険者っていうのは、迷宮都市『オラリオ』で神様から『恩恵』をもらって、ダンジョンに潜ったり魔物を討伐したりする人達のことですよ」
「オラリオ? 神? ダンジョン? 魔物?」
お爺さんは、まるで初めて聞いたと言わんばかりに、不思議そうに首を傾げる。
でも、神様が地上に降りてきているのはかなり昔から知られていることだし、魔物についてはダンジョンだけではなく、世界中に蔓延っている。
知らないとは考えにくい。
そのことについて尋ねようとしたとき、
「グキキキキキッ!」
嫌な鳴き声が響いた。
「えっ?」
「何じゃ?」
すると、道の脇にある茂みの中から、10匹ほどのゴブリンが出てきて僕達を取り囲んだ。
「う、うわぁあああああっ!? ゴ、ゴブリン!? 何でこんな人里に!? しかも群れで!」
ゴブリンは最下級の魔物。
でも、8歳になったばかりの僕に、太刀打ちできる相手じゃない。
しかも、それが10匹の群れだというなら尚更だ。
「グキキキキ………!」
ゴブリンは、まるであざ笑うかのような笑みを向けている。
相手が子供と老人の2人なら、楽勝だとでも思っているのかもしれない。
ゴブリン達がジリジリと近付いて来る。
このまま僕達は嬲り殺しにされちゃうんだろうか?
お爺ちゃんに聞かされて、憧れた英雄みたいに困ってる人を助けたり、強大な敵を倒したり、可愛い女の子との出会いも出来ずに、こんな所で僕は死んじゃうんだろうか?
僕が情けなく叫び声をあげそうになったとき、
「のうベルよ。 こやつらは何じゃ?」
なんとも場違いな声色で、お爺さんがそう尋ねてきた。
「な、何言ってるんですか!? こいつらはゴブリンで、世界中に居る魔物で、魔物の中では最弱ですけど僕なんかじゃ歯が立たなくて…………」
「落ち着けぃ!!!! ベルよ!!!!!!」
怒鳴り声とも取れる大音量の声が響いた。
その声の大きさに僕は驚き、ゴブリン達も固まった。
「ベルよ! いかなる時も冷静さを失ってはならん! どんな時でも冷静さを失わなければ一筋の光明を見つけ出すことも可能だ!」
お爺さんの自信に満ちた言葉は、恐怖に飲まれていた僕の心に幾分か余裕を持たせてくれた。
「ベルよ。 聞くにこやつらは人に仇なす者。 成敗しても構わんのか?」
「えっ? は、はい。 それは勿論……」
「そうか………ならばベルよ。 その場を動くでないぞ」
お爺さんはそう言うと、無防備にゴブリン達の前に歩き出した。
「お、お爺さん!?」
僕は慌てて呼び止めようとしたけど、その前にゴブリンの1匹がお爺さんに襲いかかった。
「ギギィーーー!!」
ゴブリンは、手に持った剣をお爺さんに向かって振り下ろす。
でも、お爺さんは微動だにしない。
「お爺さん!!」
僕は思わず叫ぶ。
ゴブリンの剣がお爺さんの身体を切り裂く。
そう思った瞬間、
「ギッ!?」
ゴブリンが驚いたような声を漏らす。
かくいう僕も驚いていた。
お爺さんは、ゴブリンの剣を左手の人差し指と中指の2本で挟み込み、受け止めていたからだ。
「ふん! そのような腰の入っておらん剣で、この東方不敗の首を取ろうなんぞ100年早いわぁ!!」
お爺さんはそう言うと右の手を握り込み、振りかぶると、………剣を受け止めていたゴブリンが弾けとんだ。
「えっ?」
僕は思わず声を漏らす。
気付けばお爺さんの拳がいつの間にか突き出されており、その先にいたゴブリンは、影も形も無くなっていた。
「おお、いかんいかん。 つい力が入りすぎてしまった。 それに思ったよりも軟弱であったな」
お爺さんはそんな事まで言う始末。
でも、僕はそんな事を気にしていられなかった。
「さあ! どんどんかかってこんかぁ!!」
お爺さんの叫びに、ゴブリンが一斉に襲いかかる。
僕の後ろにいたゴブリンも、僕を完全に無視し、お爺さんに向かっていく。
360°を完全に包囲され、お爺さんの逃げ道はないと思っていた。
ゴブリン達が、ほぼ同時にお爺さんに剣を振り下ろす。
でも、その剣は、全てが空振っていた。
何故なら、お爺さんの姿はそこにはなかったら。
ゴブリンがお爺さんの姿を探し、キョロキョロとしている。
そういう僕も、お爺さんの姿を探し、辺りを見渡すが、どこにも居ない。
すると、
「どこを見ておる!? ワシはここだぁー!!」
上からそんな声が聴こえ、僕は反射的に上を見た。
ゴブリン達も上を見る。
そこには、信じられないことに10mほど上空にお爺さんが跳躍していた。
お爺さんは腰布に手をかけると、一気に引き解き、まるで鞭のように振り回し、
「はぁっ!!」
横から振り抜くと、腰布が信じられないほど伸び、ゴブリンの1匹の頭に突き刺さると、大剣で切り裂いたかのごとく、脳天から真っ二つにした。
お爺さんは空中から下りてくると何事もないように着地し、腰布を振ると、腰布が瞬く間に捩れ、まるで槍のように真っ直ぐな棒状の形になる。
「そりゃあっ!!」
お爺さんはその腰布の槍を、まるで手足を扱うかのように自在に振り回し、ゴブリンを次々と真っ二つにしていく。
やがて、10秒も経たないうちに全てのゴブリンを討伐し終えたお爺さんは、腰布の槍を解き、元通り腰に巻くと、僕に振り向いた。
「ベルよ。 無事であったか?」
お爺さんはそう言ってくるが、僕の心はある感情でいっぱいだった。
目の前のお爺さんの圧倒的な強さ。
物語でよく見る英雄の特別な力や、魔法の力とは全く違う、純粋な己の力。
それを振るうお爺さんの姿に、僕は魅せられた。
僕はおぼつかない足取りでフラフラとお爺さんに近付く。
そして、心のままにこの言葉を口にした。
「お爺さん! 僕を、弟子にしてください!!」
東方先生襲来!
でも、なぜこの世界に来たのかは永遠の謎!
ベル君は一体どうなってしまうのか!?