DU:ゼロからなおす異世界生活   作:東雲雄輔

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お久しぶりです。皆様、いかがお過ごしでしょうか?

筆者はあいも変わらず、社畜をやっております。
転職も真剣に考えたのですが、このコロナの状況ではなかなか厳しく、泣く泣く今の職場で頑張っております。

GWでようやく見れなかったアニメを久しぶりに見ております。お陰様でアニメ版リゼロがようやく見ることができました。


この小説がアニメ二期の時系列まで行き着くことはあるのでしょうか。いや、そもそも、オリジナル色が強くなりすぎてエキドナとすら会わないかも。


第40話:黒幕の気配

 

 

 

 

 

「ところで、アキラきゅんってさ。もしかして高位な精霊術師だったりする?」

 

「やれやれ……だから、俺はそんなファンシーなもんじゃあないっつーの。ていうか、あまり距離を詰めてくるな。暑苦しい」

 

「アキラきゅんは、フェリちゃんの味方なんでしょ〜?だったら、ここはもっとフェリちゃんと親交を深めたほうがいいんじゃニャ〜い〜?」

 

「過度に慣れ合うつもりはないけどな。第一、『人を信じるな』って言ったはずだぜ。俺を利用するだけならともかく……過度に信用するのは禁物だぜ」

 

「それもちゃんと覚えてるよっ。でも、人を信じるにはまずお互いを知ることから始めニャいとニャンニャいんじゃニャ〜い」

 

「無理に猫言葉を使うなっ!そっちのほうが喋りにくいだろうがっ。今時、猫娘でもそんな無理な猫言葉使わねぇよ。ラブライブ見直してこい。星空凛を見習え」

 

 

 

 

 

食事処で腹ごしらえを済ませた俺達は情報収集も兼ねて街に繰り出すことにした。クルシュが乱心を起こした時期に領内で何か変わった動きがないかという考え『足で探る』方針に変更したのだ。

 

変更したのはいいんだが――――

 

 

 

 

 

「あのな………俺たちは曲がりなりにも拘置所を脱走してきたんだぜ。街中であまり目立つ行動を取るんじゃあねぇ。兵士に気づかれちまうだろうがよ」

 

「そうならないように〜アキラきゅんにも認識阻害の魔法がかけてあるんでしょ?現にフェリちゃん達のこと誰も気にしてニャいよ」

 

「………悪いが、それが信用ならないんだって。認識阻害の魔術たって………万能じゃあないんだろ。俺はそもそも魔法の方はからっきしなんだし。ちゃんとこの“指輪”が効果を発揮してくれているか怪しいんだぜ」

 

「大丈夫♪フェリちゃんが自信を持って勧める護身用の魔導具だからね。今、アキラきゅんの姿は他の人には全く別人に見えてる。だから、自然体にしてないとかえって怪しまれちゃうからね」

 

「なぁにが“自然体”だ………この状態が既に“不自然”だろうが。むしろ、こういう時はバラけて情報収集したほう――――」

 

「ちょめっ♪」

 

 

つんっ

 

 

「くぁぁああ…っ!?」

 

 

 

 

 

フェイリスに両脇の下を指先でつつかれ、魚のように背中をのけぞらせてしまう。フェイリスはニヨニヨと猫口に手を添えてご満悦だ。

 

 

 

 

 

「ワぁお♪アキラきゅんってば、思ったよりもビンカ〜ン!硬派ぶってるくせに意外に可愛いところあるじゃ〜ん」

 

「〜〜〜〜っ………テンメぇえ、いい加減にしろよっ!」

 

「ほらほら、怒らない怒らない。周りの人、みんなコワがってるよ」

 

 

 

 

 

確かに俺が激昂して大声を上げたことで通行人にいらん注目を集めちまっている。フェイリスは怖がらせていると言っているが………いや、寧ろ、みんな如何にも愉悦と言わんばかりの表情だ。

 

そもそも、俺とこいつの姿は他の人にはどのように認識されているんだ?

 

 

 

 

 

「お前、この指輪であいつらに一体どんな暗示かけてやがんだ?………さっきから生暖かい視線を感じるんだがよぉ〜。間違っても腐女子の薄い本が厚くなるような組み合わせにはしてねぇだろうな?」

 

「だぁ〜いじょうぶだって〜♪もぉ、アキラきゅんってば、本当に心配性だニャ〜。そんな挙動不審だと怪しまれちゃうってば!もっともぉ〜っと肩の力を抜いて。うりゃうりゃ♪」

 

 

もみゅもみゅっ

 

 

「はうぅっ!?……くぅあああっ」

 

「うりゃ♪うりゃうりゃ♪」

 

 

もみもみもみっ

 

 

 

 

 

俺の背後に回りのしかかるようにして俺の脇腹をもみしだくフェイリス。力任せに振払おうとするもくすぐったさから力が抜けて、膝をついてしまう。

 

それに更に気を良くしてか手をわきわきさせて近づいてくるフェイリス。その目は完全に獲物に狙いをすます捕食者《猫》の目をしている。しかも猫口のまま舌なめずりまでしていやがる。

 

 

 

 

 

「ふふ〜ん♪アキラきゅんの意外な弱点をはっけ〜ん。これは今までにない貴重な情報だ…――――」

 

 

びンっっ!!

 

 

「ニ゛ャぁぁあああ〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!?」

 

 

「―――アキラくんと仲良くして頂くのは結構なのですが………あまり不埒な真似をすれば“もぎますよ”。レムが」

 

 

 

 

 

フェイリスが俺への悪戯に気を良くして調子に乗っていると、レムがフェイリスの背後から尻尾を掴んで上方に引っ張り上げてそれを止める。

 

フェイリスが忠義に厚い人物であることを理解してから流石にセクハラ行動までは看過できなかったのか。

 

 

―――いや、というより………飼い犬が、大好きな飼い主が目の前で他所の猫にじゃれつかれてるのを見て嫉妬するアレに近い。

 

 

 

 

 

「レムちゃん、それは反則だってゔぁ!そこ引っ張られると本当に痛いんだって……ゔぁあああっ!!」

 

 

ぎゅぎゅぅううう……っ

 

 

「ご存知ですか、フェイリス様?……ヤンチャな猫は、“去勢”をすると大人しくなると聞いたことがあります」

 

「それ、前にある“シッポ”のことだよねっ!?そっちも大事だけど、後ろのしっぽ引きちぎられた猫は立ち上がることも出来なくなっちゃうんだってばっ!」

 

「………では、試してみましょうか」

 

「〜〜〜っ……タンマタンマタンマーーーっ!そこだけはダメぇ……フェリちゃんの大事なもの引きちぎられたら、本当にフェリちゃん再起不能になっちゃうーーーっ!!」

 

 

「―――やかましいッ!うっおとしいぜッ!!おまえらッ!道のど真ん中で品のねぇ会話するのやめやがれっ!!」

 

 

 

 

 

妙に生々しいとうか……含蓄豊富というか……思わず、俺も自分の股間を抑えて震え上がりそうになる。男子にとって“去勢”はNGワードだぜ。せめて、俺が一回使うまではそのセリフを口にしないでほしい。

 

―――こんなことを言っちまったら、レムがエロ同人みたいに夜のご奉仕をやりかねねぇから断じて言わねぇけどよぉ〜。

 

 

 

 

 

「しかし、それにしてもよぉ〜。本当にこの指輪の魔法は効果覿面みてぇだぜ。あれだけバカ騒ぎしてるのに誰もこっちに気づく様子もねぇな」

 

「だから言ったでしょ。『最高級の魔導具だ』って。アキラきゅんみたいに魔法の才能に恵まれない人だと無理だけど。高位の魔道士が魔法を重ねがけすれば、別人に見せかけることも出来るし、『そこに誰かいる』って認識すらも消すことができるニャよ」

 

「………『変化の術』や『透明人間』になることも可能ってか。極めれば、女湯で覗き放題。サンジが喜びそうだぜ―――んで、こんな悪用するしか用途が思いつかないマジックアイテムを何でお前が持ってるんだ?」

 

「フェリちゃんは覗きになんか使わないしっ!―――フェリちゃんもフェル兄も残念ながら剣の実力はヘナチョコだからね〜。自分の身を守れる道具も必要だったの」

 

「確かにな。俺がもしお前を戦場で見かけたら、真っ先にその目障りな両耳を切り落としに行くところだぜ」

 

「フェリちゃんの猫耳に何か恨みでもあるのっ!?」

 

 

 

 

 

別に恨みなどない。ただ単に猫言葉とふぐり口に猫耳装備というあまりにもあざとすぎるキャラ作りに腹が立つだけだぜ。

 

 

 

 

 

「―――いけませんよ、アキラくん。そんな惨いことをするなんて」

 

 

ぱぁぁぁあ…

 

 

「………レムちゃんっ」

 

 

「そこは一思いにトドメをさすのが情けというものです。アキラくんに代わり、レムが誅伐をくだします」

 

 

「どうして二人揃ってフェリちゃんの扱いがぞんざいニャのっ!?ここに来て、フェリちゃんが尋常でないイジメにあいはじめてるんだけどっ!」

 

 

 

 

 

レムは元々ラムへのコンプレックスから来る人間嫌いの気質がある。ラム以外の全てを心から信じることが出来ず、他人が自分の心の中に踏み入ってくるのを極端に嫌がるんだぜ――――改めて、俺がレムにここまで慕われてる理由がわからなくなってきたぜ。

 

 

 

 

 

「フェイリスよぉ〜。さっきから何で妙に馴れ馴れしいんだ?俺とお前は利用し利用されるだけの関係なんだぜ。どうせ、これが終わったら王選を巡るライバル同士になっちまうんだぜ。過度な馴れ合いはお互いにとって、やり辛くなっちまうんじゃあねぇのか?」

 

「んもぉ〜、アキラきゅんはホント変なところでガンコなんだね。王選だとか、馴れ合いだとか、そんなんじゃなくて………クルシュ様の救出という大義の前には些細なことニャよ」

 

「グレート……」

 

「あっ、アキラきゅん!あそこの屋台セバブが美味しいんだよっ!アキラきゅん、食べる?食べるよね?食べるもんね?」

 

「わかったっ!わかったっ!いちいち顔を近づけるなっ。お前、セリフがいちいち毒々しいくせに顔だけは可愛いから刺激が強いんだよ」

 

 

 

 

 

こいつの腹黒い一面を俺は垣間見てるはずなのに今一つコイツのことを憎めない自分がいる。こいつは自分の目的のためであれば他人を利用することも厭わない、主のためであれば平然と非道も犯すし、1を捨てて100を救えるのであれば迷うことなく1を捨てられる冷徹さも持ち合わせている。

 

 

ーーーしかし、その本質は決して外道ではないんだぜ。

 

 

他人を利用し、外道を犯し、大義のための犠牲を厭わない。でも、心の奥底では………それらの選択をした自分に十字架を架している。

 

自分の心がボロボロになっても主君の為ならばと自己犠牲をやめないそのいじらしさを………俺はさんざ見せつけられたからよ〜。

 

 

 

 

 

「な、なんですか………アキラくん?」

 

 

「……………ハァー」

 

 

「そ、そんな憂いを帯びた眼差しで見られると困ってしまいます」

 

 

「いや………『類友』とは思わないけど、友達って自然と似たタイプが集まるのかなと思ってよぉ〜」

 

 

 

 

 

まあ、この自覚のない忠犬レム公にそんなこと言ったところで仕方ねえかーーーって、和んでる場合じゃあねえ。そろそろこの状況を打破する方法を探らなくちゃあならねぇ。

 

 

 

 

 

「はい♪フェリちゃんイチオシのカルステンの名物料理だよ〜。レムちゃんの分もあるからね」

 

 

「グレート………確かに美味そうだな」

 

「アキラくん、まだ食べてはいけません。もしかしたら、幻覚剤でも仕込まれているかも………」

 

「おっと、いけねぇ。くわばらくわばら」

 

 

「入ってニャーーーーーいっ!!」

 

 

 

 

 

まだまだ油断ならねぇ状況だが、レムにつられてついついフェイリスをいじってしまう。

 

いや、それも本当はわかっている。今、こうしておちゃらけているのは、本能的な不安を隠そうとしてるその裏返しだということを………拘置所を抜け出して領内をさ迷っている時から、ずっと拭えない気配のようなものを感じていたことを。

 

 

 

 

 

「(―――ヘンだぜ。街の中は普通のはずなのに………妙な気配のようなものを感じるぜ。追手は来てねぇ………フェイリスの指輪の認識阻害は完璧なはずなのに……………ここには“何か”いる)」

 

 

「―――アキラくん、どうかしたんですか?」

 

 

「え?」

 

 

「何か気になるものでもあった?急にぼーっとしちゃってさ〜」

 

 

「あ、ああ………悪い。少し考え事をな」

 

 

 

ザワッ

 

 

 

「――――………っ!?」

 

 

 

 

 

俺は感じた。“聞こえた”とか“見えた”とか“匂いがした”とか………そんな五感的なものではなく第六感的なもので何か得体の知れない気配めいた“呼吸”のようなものを感じた。

 

そして、その“呼吸”を感知した方に視線を向けると。

 

 

 

 

 

コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛・・・

 

 

『――――――――――――――』

 

 

 

 

「………“かかし”?」

 

 

 

 

 

それは何の変哲もない一体の案山子だった。

 

全身藁であまれた体をしていて、麻布の革袋で出来た頭部に日傘をかぶせて、両手の部分に手袋をして、一本足で真っ直ぐに立っているそれは間違いなくよく畑に立っているあの案山子だ。

 

しかし、奇妙なのは案山子が立っていたのが、畑などではなく。ボロボロの民家だったということ。

 

そして、もう一つ奇妙なのが、何故か真っ直ぐにこちらの方を向いて立っていたことだ。

 

 

 

 

 

「―――ニャんかあの家に気になるところでもあったの?」

 

 

「……………なあ、アレってよぉ〜。前からあの位置にあったのか?」

 

 

「“アレ”って?」

 

 

「ほら、あそこに立っているだろ………――――え?」

 

 

 

『―――――――――――――――』

 

 

 

 

 

俺が一瞬、フェイリスの方に目をやった直後。ほんの一瞬しか目を離していなかったはずだ。

 

そのほんの一瞬の間に案山子の体の向きが、わずかだが微妙に変化していた。

 

 

 

 

 

「っ………さっきまで確かにこっちを向いていたはずなのに………」

 

 

「もうっ、あそこはずっと前から空き家で誰も住んでニャいよっ!それよりも今日は夜も遅くなっちゃったから早く引き上げよう」

 

「アキラくん。ここであまり動き回ると目立ちすぎてしまいます。フェイリス様の言うとおり、ヴィルヘルム様と合流するのは明日にしましょう」

 

 

「“空き家”…………なのに、何で?」

 

 

 

 

 

案山子の向いてる角度が、ほんの数秒前とは明らかに変化していた。風や地震のような自然現象ではない。明らかに第三者か動かしたか、案山子“自身”が動いたとしか考えられないような不自然な変化だ。

 

 

 

 

 

「いや、そもそも何でこんな民家の中に案山子なんて立ててやがるんだ。もしこれがスタンド使いの仕業だとしたら――――」

 

 

「ちょっとちょっとアキラきゅん!?そっちには何もないってば!」

 

「何かあの家にあったんですか?」

 

 

 

 

 

レムとフェイリスが俺のただならぬ様子に不安を感じてか俺の後ろをつけてきた。考えすぎかもしれない。だが、俺はここに来てから何か得体の知れない驚異を感じている。

 

何度も死線を潜ったことによって育まれた直感力か、はたまたスタンド使い特有の引力か………いずれにせよ、俺の脳から発せられる危険信号を信じて、『あの案山子を全力で警戒せよ』を全力で行動するのみだぜ。

 

 

 

 

 

「――――……………民家に人の気配はない。あのかかしは、明後日の方向を向いたままだ」

 

 

 

 

 

案山子の死角に入るのを意識して、案山子の背後から回り込むように接近する。タネはあの案山子か………それとも別の何かか………近づいてみりゃわかる。

 

俺は牽制用に用意しておいた投擲ナイフを1本取り出して、構えた。

 

 

 

 

 

「ねえ、アキラきゅん。さっきからどうしたのさ?」

 

 

「しっ!………静かに」

 

 

「―――フェイリス様、ここはアキラくんの言うとおりにしましょう」

 

「いくら何でもビクついてるんじゃニャいの?こんなところに何にもニャいってば」

 

 

「確かにビクついてるのかもしれねぇ。だが、確かに見えたんだぜ。俺の勘が告げてるんだ。ここでそれを無視して先に進んではいけねえってよぉ〜。とにかくイヤな感じがするんだぜ」

 

 

「…………イヤな感じって言われても」

 

 

「少し確かめるだけだ。周りを警戒しておいてくれ」

 

 

「「………………。」」

 

 

 

 

 

俺の言葉に腑に落ちないといった表情をしながらも背後を警戒してくれるフェイリス。レムも俺の行動に疑問は抱いているものの迷うことなく俺の指示に従ってくれた。

 

背後の二人が万全の体制になったのを確認し、俺はクレイジーダイヤモンドの腕だけを召喚し、ナイフを握らせた。

 

 

 

 

 

「『ドォラァァァッッ!!』」

 

 

 

ズガァアッ!! ボギャァアア……ッッ

 

 

 

 

 

クレイジーダイヤモンドが投げたナイフは、ライフル弾のように案山子の胴体部分を貫通し、案山子を上下真っ二つにへし折った。

 

案山子はそのまま力なく地面に倒れ伏し、ピクリとも動かなかった。そして、俺が感じていたあの奇妙な呼吸のようなものも感じなくなっていた。

 

 

 

 

 

「〜〜〜〜……ふぅーーー………すまない。確かに神経質になりすぎていたようだぜ。俺の思い過ごしだったみたいだ」

 

 

「――――っ!?………アキラきゅん………“これ”何の冗談?」

 

 

「………え?」

 

 

 

 

 

俺の思いすごしを謝りつつ振り返るとフェイリスはさっきまでのニヤニヤとした猫笑いが完全に引っ込んでおり、冷や汗をダラダラと垂らして折れた案山子の方を見ていた。

 

 

 

 

 

「どこにあんなものを隠し持ってたの?………冗談にしては笑えニャいって………ちょっと不謹慎すぎるんじゃニャいの?“動物の死骸”ニャんて」

 

 

「“死骸”っ!?」

 

 

 

 

 

フェイリスの言葉に俺も息を呑んで、案山子の方を凝視する。すると案山子の足元には不自然に破裂した動物の死骸がゴロゴロと転がっていた。

 

 

 

 

 

「………フェイリス。お前、さっき……この家は空き家だって言ってたよな?ここらの住民は、揃いも揃って………野良犬や野良猫の亡骸を集める趣味でもあるのかよ〜?」

 

 

「そんニャわけないでしょ。フェリちゃんもこんニャの初めて見たよ」

 

「この動物達………自然死ではありません。火の魔鉱石を体の中に詰め込まれて『内側から破裂』したような状態です」

 

 

「そんなことまでわかるのかよ」

 

 

「レムのように鈍器で叩き潰したのであれば、磨り潰したような痕跡が残ります。姉様のように切り刻んだのであれば、傷口はもっと鋭くなっているはずです」

 

 

「グレート………身震いする程の説得力だぜ」

 

 

 

 

 

レムとラムの経験則から来る検死分析は素直に評価せざるを得ない。でも、俺はそれは少し違うと感じていた。

 

 

 

 

 

「(………魔鉱石………多分、石炭か火薬のようなものだと思うけど。それを体内に埋め込まれた?一体、誰が何のために?それにもしそれで爆破されたのであれば、焦げ跡や爆発音が発生するはず。何より、カカシの足元にこれだけの動物達が寄り集まって死んでるのはどう見ても異常事態だぜ)」

 

 

「………………。」

 

 

ぐい〜〜〜っ ぐりぐりぐり…

 

 

「オイオイ!何してんだよ?死体を引っ張るんじゃあねえぜ。信仰深いわけじゃあねぇかよ。死体を無碍に扱うとバチが当たっちまうぜ」

 

 

「………この子たち、死んでからかなり時間が立ってるみたいだけど…………死んだ時期にはバラつきがあるみたいニャね。今日、死んだばかりのものと死後3日くらい経ってるものもある。まるで死期を悟ってここに集まってきたみたい」

 

 

「グレート。科捜研の女がもう一人いたのかよ。『特技は検死解剖。趣味は剥製づくりです』ってか〜?」

 

 

「失礼なことを言わニャい!治癒術士として戦場に出てると嫌でも人の生き死にを目にすることがあるの。動物を診るのは初めてだけど、それくらいのことはわかっちゃうの」

 

 

 

 

 

ここまでの話をまとめると『案山子の足元に集まった動物の亡骸は内側から破裂させられており、死んだ時期もバラバラ』という奇妙な図式が出来上がっている。

 

 

 

 

 

「レム。このカカシに魔術的な痕跡は残ってたりするか?」

 

 

「………いいえ。ただのカカシです。魔力を込められた形跡も見られないごく普通のカカシです」

 

 

「因みに………魔獣や害獣を引き寄せる罠型の魔術なんてあったりするのか?」

 

 

「いいえ。そのようなものは聞いたこともありません。もし、仮に作れたとしても、高濃度のマナに満ちた環境でなくては。加えて……それを作るにはロズワール様と同等の魔術の知識と熟練度が必要不可欠かと思われます――――あっ!でも、レムはアキラくんの匂いなら世界中どこにいたってわかりますよ♪」

 

 

「喜べる要素が何一つねえぞ、それ」

 

 

 

 

 

もしこのカカシに魔術がかけられたのだとしたら、害獣寄せくらいしか思いつかないが………それにしたって、不可解な点は多数残る。

 

 

 

 

 

「ったく………なにかねぇのかよ?ひと目でわかるようないかにもな怪しい受信機とか犯人の髪とか抜け殻とかよぉ〜」

 

 

「アキラきゅん。もういいでしょ?これ以上、ここを調べてもニャにも出てこないってば。今はクルシュ様を助けることが最優先でしょ」

 

 

「けどよ〜。何か不気味だぜ。正体のわからないこの『何か』を無視して先に進むのはよぉ〜………子供の頃『刑事コロンボ』が好きだったせいか、こまかいことが気になると夜もねむれねえ」

 

 

「こんなところ調べてもニャにもニャいってば!いいから早く行こうよっ」

 

「アキラくん。フェイリス様の言うとおりです。こんなところで長居していれば、追手が来るかもしれません。今は目先の小さな疑問よりも一刻も早くカルステンの異変を解決するのが先決です」

 

 

「グレート…………この異常な光景は、カルステンの異変とは無関係だってことかよ」

 

 

 

 

 

俺にはそうは思えない。この一見平和な光景の陰で、こんな無残な光景が広がっているんだぜ。仮にカルステンの異変とは無関係だとしても、俺には何かの脅威だとしか思えないぜ。

 

 

 

 

 

「ほら、行くよ!早くどこかの宿屋に隠れないとまずいんだから」

 

「アキラくん。もうすぐ日が暮れます。急いで」

 

 

「あ、ああ……」

 

 

 

 

ゴロッ

 

 

 

 

「………っ!」

 

 

 

 

『―――――――――――――――』

 

 

 

 

 

気のせいか………上半身から真っ二つにされ、地面に転がっていた案山子の顔が動いたような。

 

 

 

 

 

「………まあ、このままにして行くのもなんか後味悪いよな」

 

 

ズキュゥゥゥウンン……ッッ

 

 

「この動物たちもこれなら、ちったぁ安らかに眠れるだろ」

 

 

 

 

 

俺はクレイジーダイヤモンドで真っ二つに壊した案山子とボロボロの動物たちの亡骸を元通りになおして地面に埋めておいた。

 

何の手がかりも得られなかったのは残念だが……せめて人目に惨たらしい亡骸をさらされないよう埋めるくらいのことはしておいてやるぜ。

 

 

 

 

 

「―――アキラきゅん。早く来ないと置いてくよー!」

 

「今日の晩御飯はレムが用意しますので、早く宿に行ってお食事にしましょう。湯浴みも任せてくださいっ」

 

 

「ああ。もう少しだけ待っててくれ――――じゃあ、“お前”にも悪いことをしたな。コイツらが静かに眠れるよう見守ってやってくれ」

 

 

ぱんぱん……  パサッ

 

 

 

 

 

俺は地面に落ちていた案山子が被っていた帽子の土をはらってから、案山子の頭にかぶせ直してやった。そして、合掌してその場を立ち去った。

 

 

 

 

 

『―――――――――――――』

 

 

 

 

 

最後にチラリと振り返った時には、あの案山子から感じていた物々しい雰囲気はすっかりなくなっているように思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一時はどうなることかとも思ったが………フェイリスの認識阻害のお陰で誰かに見つかることもなく悠々と宿にチェックインして、食事も済ませ、一息つく事ができた。

 

けど、俺にはどうしてもあの案山子の周辺に散乱していた動物の無惨な亡骸が引っかかっていた。

 

 

 

 

 

「―――どうもわかんねぇんだよな〜」

 

 

「アキラくん、さっきのボロネーゼの隠し味なら、屋敷に帰ってからレムが手取り足取り教えて差し上げますよ?」

 

 

「それ『手取り足取り』教えてもらう必要ないなぁ!!材料の名前を口に出すだけで事足りるよ、んなもん!!………………って、そうじゃなくてよぉ〜。クルシュに王選を辞退させた“犯人”のことだよ」

 

 

 

 

 

この領地は、一見すると平穏そのものだが、その陰で得体のしれない“なにか”が動いていることは確実だ。それはさっきの異常な有様の亡骸から見ても間違いない。

 

 

 

 

 

「………アキラきゅんは、クルシュ様の心変わりは黒幕がいると考えてるの?」

 

 

「ああ。俺は………クルシュが大切な誰かを人質に取られてるんじゃあないかと考えている。例えば『一番信頼をおいている側近のフェリックス・アーガイル』を人質に取るとかすりゃあよ。王選を辞退させることくらいはできるんじゃないかってよ」

 

 

「なるほど!さすが、アキラくんです」

 

 

「フェリックス・アーガイルが人質にされて、どこかに監禁されてると考えりゃあ『フェリックスが治療を拒否してる』っていうのも………本当のところ、フェリックスは治療はおろか、会うことすらできねぇ状況だからだって考えればよ〜。一応の辻褄は合うぜ」

 

 

 

 

 

そして、それを可能にしてるのが、さっき見かけた動物の死骸を破裂させた能力者の仕業だと考えれば、推理の方向性としては悪くねぇぜ。

 

 

 

 

 

「確かにそれであれば、王選を辞退する可能性は充分にありますね。フェリックス様の件も納得のいく理由だと思います」

 

「おうよ!どうよ、この名推理!伊達に名探偵コナン検定一級は持ってねえぜっ!」

 

 

「――――残念だけど……その推理は見当外れだよ。クルシュ様は“そんなことくらい”で止まる人じゃないよ」

 

 

「あっらぁ〜〜〜っ!?」

 

 

 

 

 

超絶ドヤ顔で長い時間かけて推理していた内容をぶった切るふえにガクッと頭を垂れる。

 

 

 

 

 

「クルシュ様は、自分の生涯を覇道と王道を歩むと誓を立てたお方だからね。フェル兄の命も大事だけど、両者が天秤にかけられたのなら、クルシュ様は迷うことなく波動を歩む御方だよ」

 

 

「け、けどよ……」

 

 

「クルシュ様は王道を歩む人だって言ったでしょ。例え、大切な人を人質を取られたからって悪人に屈してしまえば、その道は邪道に塗り替えられてしまう。クルシュ様なら、王選を辞退せずに人質を救出する方法を考えるね〜、きっと!」

 

 

「グレート………家臣の信頼が厚いのは結構だがよ。もっと広い視野で考えねえか?俺の推理だって………十分筋は通ってると思うんだぜ」

 

 

「そういうアキラきゅんこそ……“思い込み”が真実を見る目を曇らすってこと自覚しといたほうがいいよ〜。その推理にしたって“根拠”はないでしょ?」

 

 

「………ま、まあ、それを言われたら………確かにそうなんだけどよ〜………………ガクッ」

 

 

 

 

 

自信満々に披露した自分の推理をこうもあっさりと否定されると流石に凹むぜ。毛利小五郎もいつもこんな気持だったのかよ。

 

 

 

 

 

「そんな落ち込まないの!フェリちゃんはクルシュ様のことを誰よりもよく知っているからね。アキラきゅんはクルシュ様に会ったことすらないんだから、わからなくて当然だよ」

 

 

「自分の大切な家臣が危険に晒されてるんなら、王選を捨ててでも助けそうなもんだけどな」

 

 

「そこはクルシュ様とフェル兄の間には絶対の信頼と絆があるからね〜。クルシュ様の王道はフェル兄にとっても夢なんだよ。アキラくんだって料理のことに関しては譲れないものがあるでしょ?それと一緒だよ」

 

 

「やれやれ………黒幕の推理をするにはまだまだ情報不足みてぇだな」

 

「情報収集ならレムが行ってきますよ。クルシュ様にまつわる情報を集めてくればいいんですね?」

 

「早まるなって。こんな時間に……そんなことやってられる状況じゃあねえだろ」

 

 

 

 

 

レムは俺の役に立ちたくて仕方がないとばかりにまた犬耳生やして犬尻尾を振っているが、俺達は指名手配犯だ。あまり派手に情報収集しすぎるとヤバイ。

 

 

 

 

 

「…………せめて、クルシュが王選を辞退するようになった前後………いや、せめて………最近、何かカルステン領で起こった目立った他の異変さえわかれば、その事件から何らかの因果関係がわかるかもしれねぇんだけどよぉ〜」

 

 

「“異変”ですか………そういえば、さっき厨房をお借りした時に少し気になる話を聞きました」

 

 

「………厨房で?………ていうか、そんなすごい話が聞けたのか?」

 

 

「はい。何でもつい最近、このカルステン領からバスティーユ監獄に投獄された罪人がいたそうですよ」

 

 

「な、なんだってーーーっっ!?」

 

 

 

 

 

俺はレムの発言に某ミステリーレポーターの方々と同じリアクションで驚いてみせる。

 

 

 

 

 

「……って、それの何処が大した話なんだよ!?罪人がしょっぴかれたら監獄送りなのは別に当たり前のことじゃねえか」

 

 

「アキラきゅんって、たまに常識的なことを知らないよね〜」

 

 

「ええ?」

 

 

「『バスティーユ監獄』―――このルグニカで最も厳重で過酷な監獄と言われてる犯罪者にとっての最果ての場所。その警備体制の厳重さは『鉄壁』と称され、侵入も脱獄も過去に一度たりとも許したことはニャい。国中の凶悪犯罪者達を纏めて収容している要塞みたいな場所だよ」

 

 

「そんなにスゴいのか?」

 

 

「はい。まず、バスティーユ監獄は、組織的な脱獄を防ぐために普通の人は近づくことすら許されておりません。囚人との面会も一切不可。そのあまりにも過酷な環境のせいで、この国の司法も余程の危険人物か重罪人でもない限り、そこに収監することはないと言われています」

 

 

 

 

 

グレート………完全にグリーン・ドルフィン・ストリート重警備刑務所じゃあねえかよ。いや、面会不可で建物に近づく事もできないってことを考えるとインペルダウンに近いかもしれねえ。

 

 

 

 

 

「マジかよ。そんな場所に投獄されるような犯罪者がこのカルステン領にいたってのかよ。そいつは一体何をやらかしたんだ?」

 

 

「………何もしてないそうですよ」

 

 

「………は?」

 

 

「ですから、何もしてないそうです」

 

 

「そんなはずはねぇだろ。そんなヤバいところに送り込むんならよぉ〜。それこそ王選候補者のクルシュの暗殺を目論んだとか………魔獣を操って領地を滅ぼそうとしたとか………」

 

 

「そこまでの詳細な情報は聞いてないそうですが………情報は確かなようです。バスティーユ監獄から護送の竜車が通るのを何人もの方々が目撃していたそうです」

 

 

「う〜〜〜ん……普通に考えたら、ヤバイ前科があったとか、国家反逆を企てていたとか………ありそうなもんだけどな。箝口令を敷いて情報漏えいを防いだのか」

 

 

 

 

 

いや、凶悪犯罪者の魔窟から迎えの護送を寄越すなんてな目立つことしといて納得の行く説明をしないなんて、却って、混乱や不安を招くだけだ。

 

何故、わざわざそんな監獄を選んだのか………何故、その理由を民衆に開かせなかったのか………

 

 

――――そいつが、クルシュの秘密を握っていたため、誰も立ち入れない監獄に監禁したとは考えられねえか?

 

 

 

 

 

「その人に話を伺ってみれば、クルシュ様のことがわかるかもしれません」

 

 

「けどよぉ〜、侵入するのは脱獄するよりも難しいんだぜ。スティッキィ・フィンガーズなら簡単そうなんだけどよ〜」

 

 

「正規の手順で面会を希望することもできませんし。もし、それをするとなると王族の方から直々に許可を得るくらいでなくては」

 

 

「王選候補者のエミリアの許可………じゃあ、流石に無理だよな」

 

 

 

 

 

でも、今まで聞いた情報の中では圧倒的な具体性と信憑性がある。そいつがクルシュの秘密を握っている可能性も高い。多少、無理してでもそいつと接触する価値はありそうだぜ。

 

 

 

 

 

「よし。なら俺はそっちのバステト監獄とか言う場所をあたってみるとしよう。お前らはヴィルヘルムさんと合流して、クルシュの動向を探ってみてくれ」

 

 

「アキラくん一人で行くつもりですか?それは流石に無茶です!」

 

「そうだよ!ただでさえ、こっちは動ける人数が限られてるんだから、あまり勝手なことをされると」

 

 

「ようやく具体的な手掛かりが掴めそうなんだぜ。ここで臆病風に吹かれて逃げてるようじゃあ何も得られやしないぜ。俺のクレイジー・ダイヤモンドなら格子戸や扉を突破できる。多少、手荒いが………――――」

 

 

 

 

ぞわっ

 

 

 

 

「………っ!」

 

 

 

 

 

まただ。また、あの時と同じ感覚だ。

 

得体の知れない何かが迫ってきているような………薄気味悪い正体不明の生物が這い寄ってくるかのようなこの感じ。

 

 

 

 

 

「アキラくん?」

 

「今度は何ニャ?」

 

 

「しっ………静かに」

 

 

 

 

 

宿の主人にバレたのか?それとも追手が来たか?――――いや、どちらでもないみてぇだぜ。

 

俺は外から見えないように部屋の窓の横の壁に張り付いて、窓の外を覗いてみた。

 

 

 

 

 

ニャ〜  ヴルルル……

 

 

 

「…………野良猫?……それに野良犬か――――っっ!?………う、ウソだろっ」

 

 

 

 

 

宿の外では、数匹の野良犬と野良猫がウロウロと徘徊していた。ただそれだけのこと………“ただ、それだけ”のことだ。だが、それ“だけ”じゃあなかった。

 

 

 

 

 

ボタ…… ボタボタ……

 

 

「――――あの犬………胴がバックリ喰われて、モツ(内臓)が垂れていやがる。猫も顔面が半分腐っているぜ。如何にも、どっかの肉食獣に襲われたと言わんばかりの有様だ」

 

 

 

 

 

遠巻きに見てわかるくらいの死に体だ。いや、あの出血量の少なさ………『とっくに死んでいる』はずだぜ。なのに規則正しく隊列を組んで、この周囲を見回していやがるっ!

 

 

 

 

 

「グレート………カルステン領は死んだ動物を蘇生させて警邏させるような非人道的な行いを黙認してやがるのかよ〜っ」

 

 

「そんなわけないでしょっ!フェリちゃんだって、あんなの初めて見たよ!」

 

 

「じゃあ、ありゃあ一体何なんだよっ!?この村ではTウィルスの開発に成功してるとでも言うのかよ!?それともアレが生きているとでも言うつもりか!」

 

 

「…………いいえ。遠目に見てもわかりますが、あれが遺体であることは間違いありません。ですが、死者を蘇らせるような秘術などあるはすが――――っ………いえ………一つだけありました。ですよね、フェイリス様?」

 

 

「………っ!」

 

 

 

 

 

レムが何かに思い当たり、フェイリスもそれを聞いてはっと息を呑んだ。

 

 

 

 

 

「何だよ?………何か思い当たることがあるなら、言えよ」

 

 

「アキラくんがこのカルステン領に来る前にレムはクルシュ様のことを一通り調べ上げました。その中にクルシュ様の治める地で屍人の兵士が蘇り、人を襲うという事件があったんです」

 

 

「グレートっ………ゾンビどころか、モノホンのリビングデッドってことかよ」

 

 

「―――『不死王の秘蹟』………かつて魔女が生み出して、今はもう失われた超魔法だよ。本来は『屍を意のままに操る術』だけど………失伝した今となっては『屍を動かす』程度のことしか出来ない術だよ」

 

 

 

 

 

フェイリスが忌々しげに過去の古傷を突かれたように表情に影を落とす。そりゃあそうだよな。自分達の領地で起こった事件だ。それにフェイリスも深く関わって巻き込まれたと見て間違いない。

 

 

 

 

 

「この村の中に誰かその秘法を使ってるやつが紛れ込んでるってわけか。もしかしたら、その事件の犯人がクルシュへの復讐のために秘密裏に行動しているとしたら……――――」

 

 

「違うと思う。あの事件の犯人はもうすでに死んでいるし、死者を蘇らせる邪法も永遠に失われてる。あんな悍ましい事件はもう2度と起きないよ」

 

 

「でも、現によ―――――……………そうか。すまねえな。こんな状況だから、ついよ」

 

 

 

 

 

フェイリスが苦々しくそう呟いたのを見て、俺は閉口した。俺はどうやら意図せずして、フェイリスのトラウマに触れてしまったらしい。

 

 

 

 

 

アゥオーーーーーーン……

 

 

 

「っ………アキラくん。動物達がどんどんここに集まってきてます」

 

 

「グレートっ………認識阻害はかけていても動物だから『鼻』が利きやがんのか。『黒幕』は俺らが侵入していたことに気づいていた。そして、認識阻害の魔術で隠れることも………だから、『匂い』で俺達を探しに来たんだ。あの動物達の死体を何らかの方法で操ってな」

 

 

「じゃあ、あの動物達は………クルシュ様の王選辞退の件に関与しているということですか?」

 

 

「ああ。俺達がここへ来る道中見かけたあの動物の死骸も………今にして思えば、この術の被害者たちだったのかもしれねえな」

 

 

「もしそうだとすると、黒幕はかなり用意周到で狡猾な相手です。もしかしたら、エミリア様を殺そうとした暗殺者とも関係あるかもしれません」

 

 

「――――くっ………くっくっくっ」

 

 

「何がおかしいの?………フェリちゃん達、追い詰められちゃったんだよ!?」

 

 

「くっくっくっくっ………だってよぉ〜。今まで正体の掴めなかった黒幕がこんなとこまで近づいてきてんだぜ――――グレートですよ、コイツは」

 

 

 

 

 

この領地に入ってからというもの、ずっと雲を掴むようにもがき足掻いてきた。それがやっとカタチを持って俺たちの前に現れた――――俺がぶっ飛ばす相手に近づきつつあるって事だぜ。

 

 

 

 

 

「どうします、アキラくん?レムがまとめて蹴散らしますか」

 

 

「いや、あの野良犬や野良猫は元を辿れば………自分の死を弄ばれてる被害者たちだ。どうやって操ってるのかは、わからねえがな」

 

 

「でも、あれだけの数ニャよ!?一匹も傷つけずに逃げるニャんてできっこないって!」

 

 

「と思うじゃん?」

 

 

 

 

 

俺はそう言って手荷物の中からドヤ顔である物を取り出した。

 

 

 

 

 

「獣避けの『匂い袋』だぜっ!この中身を破れば、暫くは動物も寄り付かなくなるはずだぜ」

 

 

「さすが、アキラくんです!正に『隙を生じぬ二段構え』というやつですね」

 

 

「覚えたてのアキラくん語録を使うな。使い方がビミョーに間違ってるから」

 

 

 

 

 

魔女の匂いで、道中、魔獣に襲われるんじゃあないかと準備しておいたものだったが、意外な形で役に立ったな。

 

まあ、実のところ………ハイウェイ・スターも真っ青な追跡能力を持つレムにも効かないかな〜なんてかすかな希望を抱いていたことは内緒だぜ〜。

 

 

 

 

「………ちょっと待って。何でアキラきゅんがそんなものを持っているわけ?」

 

 

「ついこの前も………魔獣の群れに襲われて体を喰い千切られて死ぬ寸前まで行ったばかりだからな。命はなんとか繋いだけど、ゲートに後遺症が残っちまってな。その時のトラウマから長旅には必須だと俺は考えたわけだぜ。『備えあれば憂いなし』………ってやつかな」

 

 

「………アキラきゅんって、脳みそ空っぽでお気楽天国の変人さんかと思ってたけど。実は、結構、修羅場をくぐっているよね〜。意外と頼りにニャるかも♪」

 

 

 

 

プッツーーーーン…

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――では、これより『フェイリス囮作戦』を実行に移す。レム、準備はいいな?」

 

「はい!待ってました♪」

 

 

「待って待って待ってーーーーーっ!その作戦やっちゃニャめーーーーっっ!!フェリちゃんが悪かったから、こんなところに置いてかないでよーーーっっ!!まずはこのロープほどいてよーーーーっっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 




筆者個人としてはエキドナと主人公をぜひ絡めてみたいですね。リゼロの中で一番好きなのはやはりレムですけど。

アニメを見てるとエキドナのキャラが好きになってきますね。本性がわかっていてもついつい惹かれてしまうのは悲しいアニメ好きのさがですね。

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