DU:ゼロからなおす異世界生活   作:東雲雄輔

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今回も安定の一万字越え!ラムちーとレムりんがいると会話文が濃すぎてしょうがない。かなり端折った部分もあるのに当初構想していた地点まで半分くらいしか書けてない。かといって、これ以上文量を増やすのは得策ではない。

・・・・・・つ、つらい。



第19話:ロズワール邸の黒執事(嘘)

 

 

 

 

 

 

―――とまあ、そんなこんなで俺の理不尽なデスルーラの旅が再び始まったわけだぜ。

 

 

 

思った通り敵はやはり2体目のバイツァダストを送り込んできていたらしい。そして、俺は・・・いつ、どこで、何が引き金となったのかはわからないが、その発動条件を無意識に満たしてしまっていた。それしか考えられない。

 

 

―――『2周目』ではその原因を突き止めるべく再び村に赴いたが、原因はわからずじまいであった。敵の狙いが『エミリア』である以上、エミリアに関わる事件が起こると踏んでいたんだけどよぉ~・・・俺が村にいた限りは特に何の異変も見られなかったんだぜ。

 

 

―――『3周目』。バイツァダストが発動する直前にクレイジーダイヤモンドで“なおして”解除を試みようとしたが、俺にとりついているバイツァダストは『俺と一体化している』状態だったので『自分をなおせない』クレイジーダイヤモンドの能力の都合上、解除は不可能だった。

 

 

―――『4周目』。俺は現状の打破をめぐってやむなくある行動を起こすことを決めた。それはロズワールからエミリアの命を救ったことで受け取る褒美の内容を決めるよう迫られたとき・・・

 

 

 

 

 

「―――褒美は思いのまま!さあ~、何でも望みを言いたまぁ~~~え」

 

 

「―――ギャルのパンティおくれーーーっ!!」

 

 

 

 

 

・・・悪い。間違えた。コレは“2周目”でやったやり取りだったぜ。4周目で俺がロズワールに提示した内容はこっちだ。

 

 

 

 

 

「―――褒美は思いのまま!さあ~、何でも望みを言いたまぁ~~~え」

 

 

「グレートっ・・・『なんでも』ときたか。だったら――――――俺をこの屋敷で雇ってくれないか・・・三食昼寝付きでよぉ」

 

 

 

 

 

トラファルガー・□ーは言った―――『場所を変えなきゃ・・・見えねェ景色もあるんだ』と。

 

俺は村での自由気ままな一人暮らしを一先ず諦めてこの屋敷で働いてみることにした。この運命を変えるためにまず自分の立場を変えてみるしかないと判断したんだぜ。

 

この選択が果たして正しかったのかどうかはわからねえが、俺がバイツァダスト《運命》に打ち勝つためには他の視点からこの世界の歴史を観察するしか手はないんだぜぇ。

 

 

 

 

 

「やれやれ・・・この俺が執事の真似事とはよぉ~。この異世界において気ままな干物男ライフを送るには障害が多すぎるぜ」

 

 

「・・・“ひもおと”?」

 

 

「何でもねえよ。聞き流せ」

 

 

 

 

 

しかし、へこたれてる暇なんてねえよな。何せ、このお人好し《エミリア》の運命がかかってることだしな―――エミリアを理不尽な運命から救けてやれるのは俺しかいねえみてえだからよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当にアキラってば欲が無さすぎる気がするのよね」

 

「いきなりどうしたよ?」

 

「パックからのお礼だって蹴っちゃうし、王都で出会ったときもそうだった。『何でも一つ言うことを聞け』なんて言っておきながら、結局お願いしたのが怪我の治療なんだもん」

 

「そんな変なお願いをした覚えはねえんだがよ。俺は俺なりに最善の選択をしてきたつもりだぜぇ」

 

「ううんっ、アキラはわかってない!《ぴっ》」

 

 

 

 

 

エミリアは人差し指を俺の眼前につきだして子供をしかりつけて言い聞かせるように迫ってきた。

 

 

 

 

 

「こっちの感謝の気持ちが全然わかってない。アキラがそんな調子じゃあ・・・わたしが命を救われたことへの恩なんて、返せるわけがないじゃない」

 

「・・・そんなに負い目に感じることか?行きずりの他人がたまたま一緒にピンチに追いやられて協力しあって危機を脱しただけのことだぜぇ。俺もお前も運が良かった・・・それでいいじゃねえか」

 

「よくないわよ。アキラはわたしのために命を懸けてくれたじゃないっ!命懸けで助けてもらったからには相応のお礼をしたいの!それなのにアキラったら全然わかってくれないんだから」

 

「グレート・・・今回はなかなか強情だぜ」

 

 

 

 

 

やはりコイツはいちいち律儀すぎる。前回までのループの時もなんだかんだお礼と称しては俺の様子を見に来てくれていた―――エミリアはもしかしたら『自分にできる』お礼を探してるのかもな。

 

 

 

 

 

「―――よしっ!じゃあ、エミリア!お前に是非ともお願いがあるんだぜっ」

 

「え?・・・っ、う、うん!なに、何でも言ってちょうだい!」

 

「おう!それはな・・・」

 

「・・・っ《わくわくわく》」

 

「俺とこれから毎朝、朝のラジオJOJO体操に付き合って・・・――――――」

 

 

 

スッカァァァーーーーンッッ!!

 

 

 

「カーズ!?」

 

 

 

 

 

俺の要望に対するエミリアからの返答は辛辣なエメラルドスプラッシュであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イテテ・・・何がいけなかったんだろう?ラジオJOJO体操がダメなら・・・残るはもうキ●ミー体操くらいしかないぜ――――そうだっ!あれなら二人一組でやるから丁度いい!」

 

 

「『キル●ー体操』というのが何かはわからないのだけど。ジョジョが思い付くことならどうせしょうもないことなのでしょう。エミリア様のお仕置きがまだ足りなかったようね」

 

 

「お仕置きねぇ~・・・お仕置きなのか、アレはよ?とにかくツッコミ替わりのエメラルドスプラッシュは止めて欲しいんだぜ。回数を重ねる毎に威力が上がってっからさ」

 

 

 

 

 

怒ってへそを曲げたエミリアは自室へと戻り、今はラムとレムさんの案内により行動している。あいつは何だかんだで大人びてるように見えてやっぱり子供っぽい。いったい、どういう育ち方をしたらあんな風になるのやら・・・

 

 

 

 

 

「でよぉ~・・・さっきから俺はどこに案内されているんだ?屋敷の掃除や飯の支度もあるなら、俺はいつでもイケるんだぜ」

 

 

「レム、レム。やっぱりジョジョは使用人としての心構えがまるでなっていないわ」

「姉様、姉様。やはりアキラ君は使用人としての基礎すらなっていません」

 

 

「―――ひそひそ話するなら本人の聞こえないところでやらねえか、オラァ・・・だいたい使用人としての『基礎』だの『心構え』だの何のことだよ?」

 

 

「・・・ジョジョがロズワール様のお屋敷で使用人として働く上で何よりも優先して用意しなくてはならないものよ―――着いたわ」

 

 

「グレート・・・あまりいい予感はしないぜぇ」

 

 

 

ガチャッ、ギィイイイ…

 

 

 

 

 

ラムとレムさんの二人に案内されるがまま辿り着いた扉を開くとそこにあったのは――――――。

 

 

 

 

 

「―――にーちゃ素敵♪最高の毛並みなのよ、モフモフモフ~」

「ンフ~~~・・・」

 

 

 

 

 

我らが猫神パックとベッドの上で熱烈なラブシーンを演じるドリータが一人。何かよくわからねえんだが・・・これがラムとレムさんが見せたかったものなのかっ?

 

 

 

 

「グレート・・・これが使用人としての『基礎』と『心構え』だってのかよ。だとしたら俺はこれから使用人として何を信じていいのかわからなくなるぞ」

 

「・・・いえ。これはベアトリス様の術によるものです」

 

 

「―――ん゛?・・・何、見てるかしら?」

「やあ!アキラ。さっきぶりだね。こんなところで何をしてるんだい?」

 

 

「よう・・・パック。それと『ベアード様』も・・・ご機嫌麗しゅう」

 

 

「何かしら、その不快な響きは?ベティにはベアトリスっていう立派な名前があるかしら」

 

 

「バカな!ベアード様は俺のつけたあだ名が気に入らねえってのか。某ちゃんねるサイトより発信し『ニ●ニコ』で急速な展開を見せた『ベアード様』の名前が気に入らねえって言うのか」

 

 

 

 

 

あの溢れんばかりのカリスマ性と吐き気を催す邪悪な眼差しのバッ●ベアード様だぜ!名前の語呂といいカリスマ性といいベアトリスにまさにうってつけと言ってもいいだろう。

 

 

 

 

 

「いいんじゃないかな、ベティ。アキラは本当にベティのことを尊敬してるみたいだよ。『ベアード』っていうのも何か威厳があってカッコいいじゃないか」

「そうかしら?・・・ベティはどうもコイツがつけた呼び名ってだけで気にくわないのよさ」

 

 

「そんなことはないんだぜ。こいつは正真正銘由緒ある最高にイカした名前なんだぜ。それにパックとベアード様の名前を合わせれば―――『パックベアード』となり、より本家に近づくことができる!そう・・・二人はまさに『パーフェクトジオング』のように・・・――――――」

 

 

 

ゴォウッッ!!!

 

 

 

「ふおぉぉおおおおおおーーーーーーっっ!?」

 

 

 

バタムッ!!!

 

 

 

 

 

台詞の途中で突如、突風のようなものに吹き飛ばされ扉の外に弾き出されてしまった。どうやらベアード様はなかなか距離感の難しいお方らしいぜ。

 

 

 

 

 

「・・・グレート。いくらなんでも容赦なさ過ぎるだろ。なあ、オイ・・・まだ話は終わって―――《ガチャッ》―――あれ?・・・部屋が変わった」

 

 

 

 

 

弾き飛ばされた扉を再び開けると部屋がベアード様の書庫ではなく衣装部屋に変わってしまっていた。さっきと同じ扉を開けたはずなのに・・・

 

 

 

 

 

「これがベアトリス様の使う『扉渡り』よ。」

 

「扉渡り・・・そういや、最初に会った時も俺が出てきた部屋があいつの禁書庫に繋がって―――」

 

「一度、ベアトリス様が気配を消されたらもうわからないわ。屋敷の扉を総当たりしない限り、あの方は自分からは出てきてくださらないから」

 

「屋敷の扉を自分の部屋と直接繋げるということか・・・この屋敷内の扉にのみ限定した『どこでもドア』ってわけだな」

 

「余計な時間をとってしまったわ。レム、早速始めるわよ」

「はい。姉様」

 

「ああ・・・その前にちょっと待ってくれねえか、お二人さん《バタンッ》」

 

「「?」」

 

 

―――ガチャッ

 

 

 

 

 

俺は二人が部屋に入ったのを確認し、自分も室内に入り扉を閉めてから・・・“再び開けた”。そしたら、俺の予想通り繋がった。

 

 

 

 

 

「―――よお、さっきのはいくらなんでもひどいんじゃねえか?」

 

 

「ひきゅっ!?」

「すごいね、アキラ!よくこんな短時間で見破ったね」

「くぬぬぬぬ・・・っ、どうしてこんなあっさりと正解を引きやがるかしら」

 

 

「扉を開けるにも“表”と“裏”があるからな。前回のパターンから考えて今回は同じ扉の“裏側”が正解だと踏んでみたが・・・俺の推理は見事的中だったようだぜ。ベアード様よぉ」

 

 

「だからベティをそんな風に呼ぶのはやめるかしら!」

 

 

「まあまあ、ここからはちゃんとした用件だ・・・ベアード様にちゃんと言っておきたいことがあるんだぜ」

 

 

「・・・今度は何かしら?」

 

 

「―――俺が快復できるよう魔法をかけてくれていたんだろ?そのことについてちゃんとお礼言わねえとよぉ」

 

 

 

 

 

これは2周目のループでエミリアから直接教えてもらったことだ。応急処置をしたのは確かにエミリアだけど、屋敷に連れてきてからの治療はベア様がやってくれていたらしい―――当然、そんなこと気絶していた俺は覚えがないけどよ。

 

 

 

 

「・・・そんなことを言うためにわざわざ扉渡りを破ったのかしら」

 

「こういう機会でもねえとよぉ~・・・ちゃんとお礼も出来ないんでな。邪魔して悪かったな。あとは思う存分モフってくれて構わねえぜ―――ベアード様」

 

「だから!人をその訳のわからない名前で――――――」

 

 

バタンッ!!

 

 

 

 

 

ベア様が何か扉の向こうで文句を垂れていたが、俺はまたぶっとばされる前に早々に扉を閉めた。

 

 

 

 

 

「さてと・・・野暮用も終わったことだし。ここからは使用人としての仕事に専念させてもらうぜ。というわけで、まず俺は何をすればいいんだ・・・“先輩”」

 

 

「・・・そうね。まず、そのみすぼらしい服装のまま働かせたりしたらロズワール様の品位が疑われるわ。というわけでジョジョの制服を用意することから始めるわよ」

 

 

「グレート・・・この学ラン、結構気に入ってるんだけどな。このピースマークやハートマークの装飾なんて探すのに苦労したんだぜぇ」

 

 

 

 

 

ジョジョキャラに憧れてわざわざその手の店を渡り歩いて手に入れた装飾品だ。まあ、普段学校に通うときは目立つから外していたんだけどよ。いつでも装着できるよう絶えずポケットに忍ばせてあったんだ。

 

 

 

 

 

「でもよぉ~・・・この衣装部屋って見るからにエミリアやロズワール専用なんだろ?俺に合う服なんてねえぞ」

 

 

「姉様、姉様。アキラ君の言う通り、ロズワール様の衣装はアキラ君と違って背が高くて足が長い設計のためアキラ君に合う服は見つけられません」

「レム、レム。ジョジョの言う通り、ジョジョはロズワール様と違って背が低くて足が短くてピーマルのような顔をしているからジョジョに合う服は見つけられそうにないわ」

 

 

「―――お前ら鬼かっ!?」

 

 

 

 

レムさんは若干オブラートに包んだ表現だったが、ラムに至っては服の仕立てとは全く関係のない一節が追加されている。

 

 

 

 

 

「グレート。こうなったら手近な服を『なおして』使うしかねえな。クソッ・・・今に見てろよ。俺のクレイジーダイヤモンドは伊達じゃねえんだぜ」

 

 

「「・・・・・・。」」

 

 

「ん?・・・二人ともどうかしたんスか?」

 

 

「「・・・いえ」」

 

 

 

 

 

ラムもレムさんも一瞬意味深な反応をしていたが、すぐに手頃な服を選び始めた―――なんか俺が『鬼』呼ばわりして極悪人扱いされたのがよっぽどむかついたのか?

 

 

 

 

 

「―――なあ、ラムやレムさんはメイド服以外の衣装って持ち合わせていないのか?」

 

 

「・・・何でそんなことを聞くのかしら?」

 

 

「いや、単なる興味本意。ここにはロズワールとエミリアの服が腐るほどあるってぇーのに・・・お前ら姉妹の服とかはないように見えるから」

 

 

「レムも姉様もこの制服だけあれば十分ですから」

 

 

「少年漫画の主人公じゃあるまいし・・・もうちっとくらいお洒落してもバチはあたんねえぜ。女の子は着飾ってなんぼだからよぉ~」

 

 

「ダメよ、レム。この黒服が最高に格好いいと思っているジョジョにはメイド服が如何に機能的で身分を証明するのに便利なのかわかりっこないわ―――だってジョジョだもの」

 

 

「俺のこだわりをさらっとディスってんじゃねえよ!この羊肉がっ!」

 

 

 

 

 

やはり、この姉はレムさんに比べて圧倒的に口が悪い。こんなんで本当にメイドが務まっているのかよ。

 

 

 

 

 

「ジョジョ。とりあえずこれをあててみてもらえる?」

 

 

「・・・って、これ明らかにデカイだろ」

 

 

「バカね。これを来た状態で裾や袖の長さを合わせるの。そしたら後はレムがジョジョの体に合わせて仕立て直してくれるわ」

 

 

「グレート。流石、パーフェクトレムさんだぜ。裁縫スキルにおいても超一流ってことかよ。毎度のことながらレムさんにはお世話になりっぱなしだよな」

 

 

「?・・・何のことかよくわかりませんが。肩回りと腰回りは問題ないようですので裾上げと袖合わせするだけで済みそうですね」

 

「それが終わったら早速ラムの仕事を手伝ってもらうわ。まず、屋敷のお庭のお掃除と食事の準備を手伝って、その後、銀食器を研き、寝台の布団干し洗濯と浴室の掃除、月に一度の屋敷の壁や外柵の点検、それが終わったら夕飯の準備もあるから。夜になったらジョジョには必要最低限の一般教養を身に付けてもらうわ――――――サル並みに物覚えの悪いジョジョに現実逃避する余裕なんてないわ」

 

 

「・・・オーノーだズラ。俺もうダメズラ・・・こりゃあ就職先間違えたかな」

 

 

 

 

 

予想はしていたけどよ。やはりこのロズワール邸の使用人の仕事は労働基準法を無視した激務になりそうだ――――――グレート・・・働きたくないでござる。

 

 

 

 

 

―――仕事その1『料理』。

 

 

 

 

 

「アキラ君。ソルテをとってもらえますか?」

 

 

「あいよ。ソルテってのは・・・これか?」

 

 

「そっちはシュガーよ。ソルテはこっち。ジョジョは調味料の知識もないのね。そんな調子じゃあ厨房は任せられないわ」

 

 

「・・・見かけよくにてると思ったら“塩”と“砂糖”なんだな、これ。あと誤解されないように言っておくとだぜ。調味料の知識はあるが、俺の国と呼び方が微妙に違うだけで扱っている調味料は基本同じだよ」

 

 

「強がりはいいから早くそこにあるカロットの皮剥きをしてちょうだい《ショリショリ》」

 

 

「か・・・カカ□ットーーーーーッッ!?」

 

 

「「・・・・・・。」」

 

 

「ツッコミなしッスか・・・やれやれ、大人から子供まで知ってる戦闘民族の名前も知らねえのかよ。鳥山先生が泣いてるぞ、チクショウ《ショリショリショリショリ》」

 

 

「随分と慣れた手つきね、ジョジョ。包丁使いだけなら及第点よ。でも、ラムの速さには追い付けないようね《ショリショリショリショリ》」

 

「流石、姉様は野菜の皮向きをする姿だけでも絵になります」

 

 

「グレート・・・美少女はこういう時特だよな。野郎が同じ作業をしていてもそんな暖かいコメントは望めないってのによ」

 

 

「そう。悲観することはないわ。ラムとジョジョとでは使用人としての格が違いすぎるだけよ―――あなたはこのラムにとってのモンキーなのよ、ジョジョ」

 

 

「聞き飽きたわ!その台詞っ!」

 

 

「―――何を隠そう。ラムの得意料理は『ふかし芋』よ《ドヤァ》」

 

 

「ドヤ顔してんじゃねえよ!調理行程一つしかねえだろ!」

 

 

「―――流石、姉様。レムには到底真似できそうもありません」

 

 

「あんたが今作ってる『アリゴ』の方が遥かに格上でしょうがっ!!」

 

 

 

 

 

―――仕事その2『掃除』

 

 

 

 

 

「やれやれ、この屋敷は小物が多すぎらぁ。これじゃあ細かいところの掃除が大変なんだぜ。物はなるべく少なくしておくのが部屋を綺麗に保つ秘訣なんだぜ」

 

 

「ロズワール様の品位を保つために必要最低限の装飾品だけを取り揃えております。ある程度、古くなったものは適時王都で新しく買ったものと交換してます」

 

 

「うげぇ・・・マジかよ。そこまでして見栄を張りたいかねぇ・・・貴族様の考えることは理解できないぜ」

 

 

「アキラ君は典型的な庶民ですから、物を少なくして効率的に家事を行うという考えも悪くないと思います。レムはその考えを否定しません」

 

 

「わかっちゃあいるけどよ。さらっと貧乏人扱いされたみたいで心底悲しいよ・・・――――――ん?レムさん、あそこの壁にかかっている絵・・・額縁が壊れてねえッスか」

 

 

「本当ですね。一昨日、レムが掃除したときは異常なかったはずですが」

 

 

「・・・ちなみに昨日、掃除したのは?」

 

 

「・・・この絵も古くなってきましたし、そろそろ新しいものと取り替えなくてはなりませんね」

 

 

「ヲイ・・・さらっと姉様の犯行を隠蔽しようとしてんじゃねえッスよ。もしかしてさっきの『品位を保つために新しいものと買い換える』って話も姉様の犯行を誤魔化すためのおためごかしじゃあなかろうな!?―――スッゲーな、あんたっ!恐いものナシだな!ちったぁ自分の立場とか考えろよっ!」

 

 

「この絵は下げておきましょう。ここに飾るものについては後日新しいものを購入します」

 

 

「グレート・・・この姉妹、やっぱ腹の中が真っ黒だぜ――――――仕方がねえ。とりあえず、今日のところは“コイツ”を代わりに・・・かけておくとしよう」

 

 

 

ゴトッ おぉお~ん…

 

 

 

「・・・何ですか、これは?」

 

 

「見りゃあわかるでしょ?―――『石仮面』ッスよ。この屋敷の雰囲気に合ってるでしょ。この仮面が世代を越えた因縁の戦いの引き金を――――――」

 

 

 

バキャャァアアッッ!!

 

 

 

「OH MY GOooOooDっ!?いきなり、何をするんですか、レムさんっ!?」

 

 

「すいません。この仮面からあまりに禍々しい不吉な予感がしたものですから・・・つい、うっかり」

 

 

「『うっかり』じゃねえだろっ!『うっかり』はあんたの姉様だろっ!」

 

 

 

 

 

―――仕事その3『洗濯』

 

 

 

 

 

「ハァ・・・ハァ・・・わかっちゃあいたことだけどよ。この世界に・・・この時代に洗濯機なんてないんだよな。まさか洗濯板で手洗いをさせられるとは」

 

 

「早くしなさい、ジョジョ。このままだと洗濯物を干すことが出来なくなるわ」

 

 

「グレート・・・洗濯がこんな体力仕事だとは思わなかったぜ」

 

 

「根性がたりないわよ、ジョジョ。ただでさえ無能なんだから体力仕事くらい張り切って馬車馬となって働きなさい」

 

 

「馬車馬になれって何だよ!?丁稚奉公を強要するにしても馬車馬になれはないだろ!・・・つーか、この有り余る洗濯物の量は何よ?この屋敷には俺含め6人+一匹しか住んでないはずだろ。実は他に幽霊でも住んでるってか?アダムスファミリーと同居なんて考えただけでもゾッとするぜ」

 

 

「無駄口を叩く暇があるなら手をもっと早く動かしなさい。ジョジョの仕事が遅いとラムとレムが迷惑するのよ」

 

 

「迷惑するのはレムさんだけだろっ!今日見ていた限り、お前、実は大して仕事してないだろっ!」

 

 

「ラムは今日、ジョジョの教育係という大変な仕事を引き受けているのよ。ジョジョの成長があまりに間抜けだとラムが迷惑して引いてはレムが迷惑するのよ」

 

 

「お前もレムさんに迷惑かけてる一員だと自覚して頂戴ねぇーっ!!・・・ったく、こういう時こそお前の魔法の出番じゃあねえのかよ」

 

 

「よく知ってるわね。ラムが魔法を使えるなんてこと」

 

 

「っ・・・ああ。ロズワールのメイドさんだから魔法の心得ぐらいあるだろうと勝手に当たりをつけたが・・・まさか本当だったとはな」

 

 

「そうね。でも、ラムの貴重な魔力をこんなことで使うわけにはいかないのよ。ジョジョのようなマダオのために消費する魔力ほど無駄なものはないわ」

 

 

「マダオって呼ぶんじゃねえよっ!お前のようなうっかりメイドにいたいけな新入りをマダオ呼ばわりする権利がどこにあるってんだ、テメエ!?」

 

 

「無駄口を叩くのはそれくらいにしなさい。今のジョジョはラムの下僕なんだからラムの言うことには絶対服従よ」

 

 

「誰が下僕だ・・・チクショーっ――――・・・ハンッ、“先輩”こそちったぁ新入りを手伝ったらどうだい。その胸に装備した自前の『洗濯板』はそのためにあるんじゃあないですかね?」

 

 

 

ヒュカォォオオオオ―――――――ッッ!!

 

 

 

「ワムゥゥウウううっ!?」

 

 

「―――次に無駄口を叩いたら首を跳ねるわよ」

 

 

「テメエ・・・ため無しで魔法ぶっぱしやがったな」

 

 

 

 

 

―――仕事その4『庭の剪定』

 

 

 

 

 

チョキチョキッ バチンッ バチンッ

 

 

「フゥーーー・・・グレート。これだけある庭木の手入れをいつも二人だけでやっているのかよ?」

 

「ええ、そうよ。流石に毎日とまでは言わないけど小まめに手入れをしておかないとこういうのはどんどん伸びてしまうものよ」

 

「人間の髪の毛と同じかよ《チョキチョキ、チョキチョキ》壊すのとなおすのは簡単なのにな。手入れってなると面倒くせぇったらねえぜ」

 

「『なおす』のが・・・簡単?」

 

「まあ、必要になったら見せることもあるだろうさ。もっとも・・・そんな機会訪れない方がいいんだけどな」

 

 

「・・・・・・。」

 

 

「ところでレムさんや。そんなところで遠巻きに眺めて何をしていらっしゃるんでせう?」

 

「ジョジョの拙い手つきで庭木をズタズタにしないか気が気じゃないんでしょう。そうするとレムが後始末をしなくてはならなくなるから」

 

「それはお前だろ。さっきからお前が刈った木がことごとく虎刈りになってるじゃあねえかっ!こんなところで三刀流の技を見せなくていいんだよっ!」

 

「・・・だったら、きっとジョジョの髪が気になっているのね。品のないボサボサの頭が目につくんでしょう―――そうよね、レム」

 

 

「・・・はい。姉様」

 

 

「―――だったら、レムがジョジョの髪を整えてあげなさい。悦びなさい、ジョジョ。レムの腕前はロズワール様のお墨付きよ。レムの手さばきでジョジョも天国へ連れてってくれるわ」

 

「『喜ぶ』って漢字間違ってねえか!?なんか俺がレムさんにいやらしいことを強要してるみたいになってんゾ!」

 

 

 

 

 

・・・屋敷の仕事は一度取りかかってみるとあまりにも幅広く。やってもやってもキリがない。こうして俺はろくな休憩時間もとれぬままほぼ一日ぶっ通しで働きづめとなった。

 

 

―――だが、残念ながらこれで終わりじゃねえ。

 

 

俺は何も使用人になるためにここに来たわけじゃあねえんだ。俺はエミリアに降りかかる運命を変えなくてはならない。重要なのはむしろここからだ。

 

 

 

 

 

「グレート・・・何だかんだ夜になっちまった。エミリアはどこだ?」

 

 

「―――エミリア様のことをお探しかぁ~~ね?」

 

 

「おおっ!?ビックリした・・・お前、いきなり現れんなよ」

 

 

 

 

 

いきなり背後から現れたのはいつもの道化衣装に身を包んだロズワールだった。コイツに何かされたわけではないけどよ~・・・なんかコイツに背後に立たれることには恐怖を感じるんだぜぇ。なんつーか、こう・・・性的な意味で?

 

 

 

 

 

「この屋敷はどうだい?少しは慣れてきたのかぁ~な」

 

 

「・・・慣れてきたとはとても言えねえな。一日でヘトヘト。こんなんで明日から大丈夫かよって感じだぜ」

 

 

「君も思ったより一生懸命に働いてくれているようだしね~ぇ。早く慣れてくれることを願うばかりだぁ~よ」

 

 

「見てたのかよっ!?あんた、仕事していた訳じゃあねえのか?」

 

 

「もちろん、それはちゃあ~んとやってるよ。これでも領主様だからね。民の平穏な生活を願ってい~つも必死に励んでるわけだぁ~よ」

 

 

「(・・・ウッソくせぇ)」

 

 

「それよりエミリア様だったね。それなら今ちょうど中庭の方にいるよ」

 

「この時間に・・・中庭?」

 

「なぁに、彼女のちょっとした日課さ―――行ってみればわぁ~かるよ」

 

「あ、ああ・・・どうも」

 

 

 

 

 

それだけ言い残すとロズワールは静かに去っていった。あいつもどこか胡散臭いんだよな~・・・読めねえっつーかよ。腹に一物抱えてそうっていうか――――――まるで俺がいいように『泳がされてる』ような気がする。

 

俺は深く考えるのはやめて中庭の方に出た。夜ということもあって外は真っ暗だ。んだが、その中でひときわ光っている場所があった。

 

 

 

 

 

「もしかして、あの光ってるところがそうか・・・エミリアー?」

 

 

「―――……―――………」

 

 

「誰かと話してやがんのか」

 

 

 

 

エミリアは光と蛍のような謎の光球に包まれながら目を閉じて口をパクパクさせていた。アレは間違いなく誰かと話しているような雰囲気だ。

 

しばらく様子を見ているとエミリアの周囲から光が消えて蛍のような光球も霧散した。

 

 

 

 

フッ パキュゥゥゥン…

 

 

「―――アキラ?・・・どうしたの、こんな時間に」

 

「あ、ああ、悪い。邪魔したか?」

 

「ううん。そんなことない・・・そんなことないよっ」

 

「お・・・おう」

 

 

 

 

 

ヤベエ・・・なんかエミリアの笑顔が眩しい。まるでクリスマスにサンタさんを間近で見たチビッ子のような耀かしい笑顔だぜ。

 

 

 

 

 

「ずいぶん、ご機嫌じゃねえか。何かいいことでもあったか?」

 

「うん。さっき微精霊と話をしていたんだけど・・・それがあんまりにもおかしくて」

 

「何だよ、それ・・・精霊様ってのはすべらない話まで出来るのか。だったら俺も是非精霊と契約を結んでみたいもんだぜ」

 

「今日のアキラの仕事ぶりを見てみんな大笑いしていたそうよ。ラムもレムも今まで見せたことのないような顔をしていたっていうから・・・あのラムが魔法を放ちながら、おっかけっこしてたなんて本当に信じられなくて―――ぷふっ!」

 

「ヲイ、コラ!精霊ども!何、人の姿を見て笑い者にしくさってんだ、コルァ!?俺があいつのパワハラにどんだけ必死で耐えていたと思ってんだ、オラァア!」

 

 

 

 

 

 

といっても俺は精霊の姿を見ることも声を聞くことも出来ないので辺りには虚しく俺の怒声が木霊するだけであった。

 

 

 

 

 

「でも、不思議ね。アキラってば、あの気むずかしいラムとレムともうあんなに仲良くなっているんだもん」

 

「グレート・・・アレを気むずかしいで片付けるのかよ。レムさんはともかくラムはただの毒舌メイドだぜ」

 

「でも、二人ともとってもいい子よ。アキラも本当は楽しかったでしょ・・・あの二人といるの」

 

「さあな・・・そこんとこだが俺にもようわからん」

 

 

 

 

 

レムさんはガチRESPECTだし。ラムのことも別に嫌いではないが、俺とあいつは会うたびについついお互いに喧嘩腰になってしまう―――――ウマが合わないってことなんかな。

 

 

 

 

 

「なあ、エミリアよぉ~。お前に言っておかなけりゃあならねえことがあったんだぜ」

 

「言わなくちゃならないこと?」

 

「以前の腸狩りのことでも学んだとは思うがよぉ。お前はまだまだ狙われてる可能性があるんだぜ。だから、しばらくの間はなるべく屋敷から出ないようにしていた方がいいんだぜ」

 

「心配してくれてるんだ」

 

「・・・まあな。お前は少し目を離すとフラフラ~っと村に遊びに行きかねんからな」

 

「わたし、そんな子供じゃないわよ。それに村なんか・・・わたし一人じゃあ絶対に行けないわ」

 

「え?・・・お、おう」

 

 

 

 

 

急にエミリアの顔が沈んだものとなった。何かおかしなことを言っちまったか?いや、でも・・・前回までのループだと必ずエミリアはアーラム村に遊びに来ていたけどな。

 

 

 

 

 

「そうだ。アキラの方こそもういい加減決まった?」

 

「決まったって何が?」

 

「お礼よ。お礼!わたしの命を救ってくれたことに対するお礼がまだ終わってないわ」

 

「グレート・・・お前、まだそれ引っ張ってんのかよ」

 

「当たり前です。アキラはすぐにはぐらかそうとするんだから」

 

 

 

 

 

『もう十分だ。要らない』っつってもコイツは聞きやしねえ。かといって俺も別にやってほしいことなんかないしな。

 

 

 

 

 

「やれやれ、今度までには何か適当に考えておくぜ。そうでもしねえとお前が満足しねえみたいだからよぉ――――あっ、でも・・・そうだな」

 

「なに?何か思い付いたの?」

 

「いや、お前が将来、王となったときにお返しをもらった方が何かとグレートな報酬がもらえそうだと思ってよ。つーわけで、ここはよぉ~・・・“出世払い”で返すってことにしてもらえねえか

 

 

 

――――――“エミリア皇女”」

 

 

 

「っ・・・も、もう・・・アキラってば気が早いんだから。それにそれを言うなら『女王』でしょ」

 

「いいじゃねえか。女王よりも皇女の方が響きが可愛いじゃねえか」

 

 

 

 

 

この約束が果たされるかどうか・・・それはわからねえが、今は目の前のコイツを護ってやらねえとな。

 

 

 

 

 

 





リゼロは未だに謎や伏線の多いストーリーですね。原作者様の頭の中で展開されている世界観は改めてすごいなと思います。

この作品も早くレムさんがヒロインになれるように頑張りたいっ!

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