DU:ゼロからなおす異世界生活   作:東雲雄輔

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世の中には「ネタを挟まずにはいられない病」というものがあると聞きます。筆者も間違いなくそれにかかっているとじかくしました。

正直、リアルが忙しいのでなかなか更新が難しいです。それと携帯で書いてるため何かとダメな点もあるかとは思いますが、こんな作品でよければお付き合いください。


第2章:激動の一週間編
第13話:セーブポイント


 

 

 

―――前回までのあらすじ!

 

 

 

ありのまま起こった事を話すぜ!

 

 

 

『俺はいきなり異世界に召喚されたと思っていたらいつのまにか“デスルーラ”を会得していた』

 

 

 

な・・・何を言っているのかわからねーと思うが、おれも何をされたのかわからなかった。

 

頭がどうにかなりそうだった。ご都合主義だとかチートだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ!

 

もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜっ。

 

 

 

次回!『十条の奇妙な冒険』――――――『ジュウジョウ・アキラ 夕陽に死す』

 

 

 

来週も絶対・・・見てくれよなっ!

 

 

 

 

 

「レム、レム。ジョジョが明後日の方向に向かっておかしなことを話し始めたわ」

「姉様、姉様。とうとうアキラ君の頭が仕事の負荷に耐えきれずおかしくなったみたいです」

 

 

「うるせえよっ!こんなことでもしてねぇーとやるせないんだよ。つーか、姉妹揃ってステレオサウンドで遠慮のない罵詈雑言はやめろってーの」

 

 

「現実逃避をするのは勝手だけど・・・早くしないと洗濯が終わらなくて迷惑するわよ。レムが」

「妄想に耽るのは勝手ですけど・・・アキラ君が早くしてくれないと掃除が進まなくて迷惑しますよ。姉様が」

 

 

「それはわかってるんだぜぇ。でもよぉ~、こんなに仕事量があるなんて俺ぁ聞いてねえぜ。執事の仕事が大変なのは予想していたが・・・現実はハヤテのごとくうまくいかねえよな」

 

 

 

 

 

俺は現実逃避を諦め一先ず目の前にたまった洗濯物の山に向き直った。ロズワール邸に住んでいる人間はそんなにいないはずなのに・・・もしかして俺をいじめるために屋敷中のシーツやらなんやら引っ掻き集めてきたなんてことぁねえよな?

 

 

 

 

 

「ジョジョ。それが終わったら屋敷のお庭のお掃除と食事の準備を手伝って、その後、銀食器を研き、寝台の布団干し洗濯と浴室の掃除、月に一度の屋敷の壁や外柵の点検、それが終わったら夕飯の準備もあるから。夜になったらジョジョには必要最低限の一般教養を身に付けてもらうわ――――――」

 

 

「そう。次にお前は―――『サル並みに物覚えの悪いジョジョに現実逃避する余裕なんてないわ』と言う!」

 

 

「サル並みに物覚えの悪いジョジョに現実逃避する余裕なんてないわ・・・ハッ!」

 

 

 

 

 

そう。ロズワール邸で目を覚ましてから早二日目の朝だが――――――

 

 

 

俺は殺人鬼・・・もとい『腸狩りのエルザ』を退けてから俺はもうかれこれ既に『5回』もデスルーラをする羽目になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すっかりボロボロの廃屋と化した盗品倉で自己紹介を済ませた俺はようやくエルフのお嬢様の『エミリア』って名前を知ることができた。

 

これだけ奮闘したのにも関わらず俺が手に入れたものはこの銀髪エルフのお嬢様の名前と笑顔、そして感謝だけ――――――大山鳴動して鼠一匹って気がしないでもないが・・・結果としてここで死ぬはずだった三人の命が救われたんだ。

 

せめて今だけはこの結果に感謝しねえとよぉ。

 

 

 

 

 

「―――ねえ、アキラはこれからどうするの?」

 

「え゛・・・どうするって―――さて、どうすりゃあいいのかね。そういやぁ、途中からバイツァダストを解除することばかり考えていて後のことは何も考えてなかったな」

 

「・・・『バイツァダスト』?」

 

「い、いや、なんでもない。ただの独り言だ。聞き流せ」

 

 

 

 

 

異世界に召喚された当初は『お嬢様に恩を売って身寄りのない俺を養ってもらおう』だなんて考えていたんだが。流石にこれだけ何度もやり直させられているとその気も失せた。

 

クレイジーダイヤモンドを使いこなしつつある今なら異世界に一人放り出されても多少はなんとかなるような気がしていた。

 

 

 

 

 

「それなら、アキラ。よければアストレア家に食客として来ないか?君には失礼なことをしてしまったしエミリア様を護ってもらった恩もある」

 

 

「くぉくぉるぉのとぅおもよぉ~~~~っ!ラインハルト・・・お前!お前と言う男は・・・なんと素晴らしいっ!なんていいやつなんだ!それなのに、俺は・・・俺というヤツは『名門貴族アストレア家の養子となって一番の金持ちになれ』というダリオの遺言にしたがってアストレア家のっとりを画策してしまうところであった」

 

 

「アハハハハ、何だかずいぶん具体的な遺言だね・・・―――『心の友』か」

 

 

 

 

 

俺の下心を聞いてもなお笑顔でいられるコイツは本当にいいやつだ――――――いや、むしろコイツが主人公でいいんじゃね?

 

ていうかよぉ~。俺、コイツに何か迷惑をかけられたことあったっけか?逆ならわからなくもないんだけどよぉ。

 

ラインハルトは俺の『心の友』という言葉を聞いて少し寂しそうに複雑そうな笑みを浮かべている。もしかして俺無意識に地雷踏んじまったとかじゃあねえよな。

 

 

 

 

 

「しかし、ラインハルトは本当にいいやつだぜ。今日会ったばかりの俺を信用してくれただけでなくよぉ。まさか俺を客として招いてくれるだなんてさぁ~。マジで器デカイつーか、人生勝ち組というか。この世知辛い異世界で唯一俺の味方をしてくれたヤツだもんなぁ~」

 

ギリ、ギリギリギリギリ……ッッ

 

「~~~~痛て、痛ててててててててっ、ってぇええ!エミリア、お前、何すんだよ!?」

 

「え?」

 

「痛っっってぇ~~~~よ!」

 

「・・・あ」

 

 

 

 

 

なぜか、俺の治療をしていたはずのエミリアの手がいきなり俺の腕をつねり始めた。

 

 

 

 

 

「な、なんでもないわよっ。ちゃんと傷がなおったかどうかを確認していただけ」

 

「なおったかどうかの確認に爪を立ててつねるなよ。ああ、せっかくなおしてもらったのに・・・深々と爪痕が残っちまってるぜぇ」

 

「う、うるさいわねっ!男の子なんだからそれくらいのことで泣き言言わないの。なおしてもらったんだからちゃんと感謝なさい」

 

「さっきガラスで血達磨になっていた俺にあれほど過保護に振る舞っていたヤツとは思えねえ発言だぜぇ!」

 

 

 

 

 

俺のツッコミを無視して『ぷんっ』擬音を鳴らして頬を膨らまし腕を組んでそっぽを向いてしまうエミリア。どうやらこのエルフのお嬢様はさっきまでとは一転してご機嫌斜めらしい。

 

そこへタイミングよく徽章を取ってきたフェルトが戻ってきた。

 

 

 

 

 

「待たせたな、兄ちゃん!」

 

「えらく時間がかかったな」

 

「へへーん、簡単にとられないよう奥の方に厳重に隠してたかんな。何せ聖金貨10枚の取引だったから用心に用心を重ねてたんだよ―――ほら、約束通りコイツは返すよ」

 

「グレート。お前の抜け目のなさには感服するぜ。だけど、返すのは俺にじゃないぜ――――ほら、そっちのお嬢様がお待ちかねだぞ」

 

「・・・あ」

 

 

 

 

 

そこでようやくフェルトとエミリアの目があった。やはり、徽章を盗んだ手前顔を合わすのが気まずかったのだろう。笑顔で歩み寄ってくるエミリアに対してフェルトは辛そうに顔を背けた。

 

 

 

 

 

「今度こそ、徽章を返してもらえるわよね」

 

「あ・・・うん。もちろんだっ。姉ちゃんにも助けてもらったかんな。ちゃんと返すよ」

 

「ふふっ、ありがとう」

 

 

 

 

 

思わず見惚れるようなエミリアの母性溢れる笑みにフェルトは戸惑っている。

 

 

 

 

 

「・・・もっと、すげーきつくくるかと思ってた」

 

「そうね。本当ならそうするべきなのかもしれないけど。何だかいろいろあって・・・どこかのヘンテコリンな男の子のせいですっかり毒気を抜かれちゃったわ」

 

 

「あン?それ、何だか遠回しに俺をディスってないか」

 

 

「ほら・・・大事なもんなら、今度から盗られねーようにちゃんと隠せよ」

 

「あなたにその忠告されるのって変な気分ね。これに懲りたらもう二度と人からものを盗んだりしちゃダメよ」

 

「っ・・・そりゃ無理な話だ。こうでもしねえとあたしらは生きていけないしな。アタシはべつに悪いことしたとは思ってねーし、やめる気もねーよ」

 

「強情なんだから」

 

「ヘヘヘッ」

 

 

「っ―――・・・なっ!?」

 

 

 

 

 

フェルトが差し出した徽章をエミリアが受けとる。ただそれだけの行為だった。だが、この場で唯一、ラインハルトだけが――――――“何か”に気付いてしまった。

 

 

 

 

 

「な、なんてことだ・・・っ《ガシッ》」

 

 

「ラインハルト?」

 

「おい、いきなりどうした?」

 

 

 

 

 

徽章を差し出したフェルトの手を、横合いに見ていたラインハルトがいきなり掴み取っていた。

 

 

 

「い、痛いっつの!放せよっ」

 

「い、いきなり、どうしたんだよ、ラインハルト?徽章を盗んだのはフェルトが騙されていたからであって・・・寧ろ、今回のことについてはコイツは被害者だ」

 

「違うよ、アキラ。確かにそれも決して小さくはない重要な問題だが。僕が問題にしているのはそんなことじゃないんだ」

 

「オイオイ、どうしちまったんだよ」

 

 

 

 

 

ラインハルトは血相を変えて今まで見たことのないひどく動揺した様子でフェルトの腕を決して離すまいと強く握っている。

 

 

 

 

「・・・君の名前は『フェルト』というんだね」

 

「そ、そうだけど」

 

「家名は?年齢はいくつだい?」

 

「家名なんて大層なもんは持っちゃいねーよ。トシは・・・たぶん15ぐらい。誕生日がわからねえから―――つーか、放せよっ!」

 

 

「ラインハルト!もういいだろ。そいつはなにも悪くねえって!」

 

「ラインハルト。わたしからもお願いっ。徽章盗難の件なら・・・―――」

 

 

「・・・すみません。エミリア様。アキラ。その頼みだけは聞くことはできません」

 

 

 

 

 

こちらの頼みを突っぱねてラインハルトは聞く耳を持ってくれない。端から見ているとこちらも何が何だかわからねえ。

 

 

 

 

 

「ついてきてもらいたい。すまないが、拒否権は与えられない」

 

「ふざけ・・・っ!助けたからってあんまり調子に―――《フッ》―――っ?《がくっ》」

 

 

「おい、いったい何を!?」

 

「乱暴なやり方・・・あんまり手酷くやると、ゲートに後遺症が残るわよ」

 

 

 

 

 

憎まれ口を叩いていたフェルトにラインハルトが手をかざした瞬間フェルトはスイッチを切ったかのように気絶してしまった――――――ってぇ、ヲイッ!!

 

 

 

 

 

「エミリア!お前、さっき俺を気絶させたときに同じことしてやがったな!」

 

「え?・・・え~~~と」

 

 

 

 

 

『ゲート』ってのが何かはよくわからねえが。俺があの時エルザとの戦いの前に眠らされたのはエミリアに同じことをやられたらしい。

 

ロム爺も連れて行かれそうになっているフェルトを見て遂に棍棒を振りかざした。

 

 

 

 

 

「フェルトをはなせぇ!このクソガキがぁ・・・!」

 

「―――失礼、御老人。暫し眠っていてくだされ」

 

ヒュトッ!

 

「―――っ・・・おっ、こぉ!」

 

 

 

 

 

しかし、それも流れるような動きでかわすと自分よりも遥かに体の大きい巨人族のロム爺さんの首筋に手刀をおとした。ロム爺さんはまるで操り人形の糸を切られたように床に転がった。

 

 

 

 

 

「お、おい、ラインハルト」

 

「すまない、アキラ。君を客人として招くのはまたの機会になりそうだ」

 

「そっちじゃねえよ。お前、さっきフェルトの何に気がついたんだよ?」

 

「それをまだ話すことはできない。また然るべき時に然るべき場所で全てを話すよ―――――落ち着いて月を見れるのは、今日が最後かもしれないな」

 

「・・・グレート。コイツはテコでも動きそうにないな」

 

 

 

 

 

ラインハルトはそう言い残して気絶したフェルトを横抱きにしたまま盗品倉を去っていった。あとに残されたのは気絶したロム爺さんとエミリアと俺だけだった。

 

ラインハルトのあのただなら様子・・・何だかわからねえが、またろくでもないトラブルの予感がするぜぇ。

 

 

 

 

 

「―――行っちまったな。アイツはいいやつなんだけどよぉ~。いいヤツすぎて何を考えているのかよくわかんねえぜ。エミリア。お前もそろそろ帰った方がいいんじゃあねえか?今ごろ、家族が心配してるぜぇ」

 

「あなたはどうするの?」

 

「俺か?俺は・・・――――行くあてもないし。しばらくここで休ませてもらうぜ。当分の間は何も考えたくねえからよ」

 

 

 

 

 

このループを抜け出すことに集中してずっと動き続けていたせいで肉体的な疲労よりも精神的な消耗が激しい。本当は今後の異世界暮らしに向けて生活設計とか考えたいのに・・・今は何も思い浮かばない。とにかく今は何も考えずに眠りたい。

 

過酷な減量を乗り越えて計量をパスしたボクサーが、試合よりも食べ物のことしか考えられなくなるアレと同じだ。

 

 

 

 

 

「ならわたしの家に招待してあげるわ」

 

「あん?」

 

「アキラはわたしの命の恩人よ。あなたには腸狩りなんていう危険人物から護ってもらったし。あなたのお陰で徽章も無事取り返すことができた。そのお礼がしたいの。このまま身寄りのないあなたを放っておいてあなたに死なれでもしたらわたしの寝覚めがすごく悪くなっちゃうの。だから、勝手ながらあなたはわたしが保護することにします」

 

「久々に聞いたな。お前のその超絶ワガママ理論・・・――――つっても、俺としてはわたりに舟っつーか・・・ぶっちゃけ願ったり叶ったりなんだけどよぉ~。俺みたいなヤツを信用して本当に大丈夫か?今日会ったばかりの赤の他人だぞ」

 

「『今日一日の長い付き合い』でしょ。あなたのことは十分信用してるから大丈夫。あなたは見ず知らずのわたしのために命を懸けて戦ってくれたもの。だから、今度はわたしがあなたにお礼する番―――《きゅっ》―――ね♪」

 

 

 

 

 

『ね♪』なんて言いながら俺の手を両手で握るんじゃない。その可憐な容姿も相まってその仕草がとんでもなく似合っているんだっつーの!

 

グレート!俺の異世界生活は早くも超絶美少女とのフラグゲットから始まっちまったぜ。あわよくば俺はハーレムルートを構築してハーレム王にでもなっちまうぞ!こりゃあ最高に幸先いいぞ!

 

 

―――実際は今日一日で何度も死んでるけどよぉ。

 

 

 

 

 

「・・・すまん。恩に着るぜ」

 

「うん♪そうそう。素直な子はわたしも好きよ」

 

「年下扱いすんなって・・・これでもア●ゾンでエロゲを買える年齢なんだぜ」

 

「エロゲってのが何かはわからないけど・・・何となく物凄くしょうもないものだってことだけはわかっちゃったかな―――立てる?」

 

「ああ」

 

 

 

 

 

エミリアはそう言って床に座り込んだ俺を引っ張り起こそうと両手で引っ張ってくれるが・・・

 

 

 

 

 

ガクガクガクッ

 

 

「・・・だ―――っ!?《くらぁああ》」

 

「アキラ?」

 

 

 

 

 

立ち上がった瞬間、俺の足がぐらぐらとふらつき、ものすごい立ちくらみに襲われた。

 

 

 

 

 

「頭痛がする・・・は、吐き気もだ!くっ・・・ぐぅ・・・―――な、なんてことだ。このDIOが・・・気分が悪いだと?このDIOがエミリアに手を握られて・・・立つことが出来ない・・・立つことが出来ないだと!?」

 

「ちょっとアキラ!大丈夫?アキ・・・―――っ・・・――――っ――・・・っ!」

 

 

 

 

 

薄れ行く意識の中、俺は思った。『よくよく考えたら俺はかなりの血を流しすぎていた』と。

 

エルザに蹴り飛ばされてガラスを突き破り全身ズタズタに切り傷を受けて、エミリアに気絶させられたまま放置され、ラインハルトに起こされるもろくな治療を受けずに戦線復帰、エルザとの戦いの最中調子にのって『血液散弾銃』や『血液追尾弾』をふんだんに使った。

 

 

―――ああっ、そりゃあしょうがねえわ・・・貧血も起こすってもんだぜ。おかげでエミリアが何を言ってんのかも全然聞き取れねえ。

 

 

 

 

 

「――――っ・・・っ・・―――っ・・・・っ!!」

 

 

「しょおおがねーなああああ~~~~。たかが『買い物』来んのもよォォ―――楽じゃあ・・・なかっただろ?え?エミリア―――これからはもっと・・・しんどくなるぜ・・・・・・てめーは・・・――――」

 

 

 

 

 

その言葉を最後に俺の意識は完全にブラックアウトした。

 

 

 

 

 




文字数を5000文字程度に抑えるといったな―――アレはウソだ。

今回も6000字越え。前回はぴったり8000字になってしまいました。

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