DU:ゼロからなおす異世界生活   作:東雲雄輔

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『ANOTHER ONE BITE THE DUST 《もう一つのバイツァダスト》』

【破壊力 - ∞ / スピード - B / 射程距離 - A / 持続力 - A / 精密動作性 - D / 成長性 - A】

原作ジョジョ第4部に登場したバイツァダストの亜種に当たる能力。仮面をかぶったヒト型の爆弾スタンドで胸にはドクロの意匠を凝らした爆弾を備えている。仮面に10個の目が一列に並んでおり、目の中には“ダイバージェンス《時間軸変動率》”を示す数字が一桁ずつ印字されている。

時間軸変動率《ダイバージェンス》に変動値を観測すると発生源である人間の影に擬態して一定数値を越えた時点で分岐点となった人間を爆殺する。同時に『時間』も爆破されるため分岐した不都合な未来《パラレルワールド》は存在しなくなる。


スタンドのモチーフはジョジョ五部に登場したスタンド『ベイビィ・フェイス』とウルトラマンティガに登場した機械人形『ゴブニュ』。



第12話:始まりの終わり

 

 

 

 

 

――――圧倒的な光景だった。わたしとパック二人がかりでも勝てなかった相手の攻撃をいとも容易く防いで軽々と蹴り飛ばした。

 

 

 

 

 

「オイ、あの兄ちゃん、何なんだよ!あの兄ちゃんから出てきたのって・・・アレも精霊ってヤツなのかよ?」

 

「いいえ。あんな精霊見たことも聞いたこともないわ。第一、ほとんどの精霊は夜になるとマナ切れで顕現することも出来ないわ」

 

「じゃあ『アレ』何なんだよ!?」

 

「わたしに聞かないでよ。わたしだってあんなの見るのは初めてなんだから」

 

「姉ちゃんはあの兄ちゃんの恋人なんじゃあねえのかよ」

 

「そんなわけないでしょ!変なこと言わないで」

 

 

「う・・・うくっ・・・フェルト?」

 

 

「っ・・・ろ、ロム爺!?起きたのか、ロム爺」

 

 

 

 

 

そこで先程間一髪命拾いして気絶していたお爺さんが目を覚ました。どうやら怪我の方もうすっかり心配ないようね。

 

 

 

 

 

「何がどうなってるんじゃ・・・儂は一体どうなったんじゃ?」

 

「~~~~~~っ・・・生きてるよっ。生きてるんだよ、ロム爺!《ギュウウッ》―――それで、腕は・・・大丈夫なのかよ?」

 

「儂の腕・・・さっきあの小娘に切り落とされたはずじゃったが。はて、いつの間にくっついたんじゃ?」

 

「だから、それは・・・きっとあの兄ちゃんが―――~~~~~~っ、ああくそぉっ!もう何がなんだかわかんねえよぉ」

 

 

 

 

 

あのお爺さんが無事だったことに感極まって涙をこぼす金髪の女の子。大事な徽章を盗んだ子にこんなこと言うのもおかしいかもしれないけど・・・この子、すごくいい子なのね。

 

 

 

 

 

「どうやら、あの御老人・・・本当に何ともないようですね」

 

「っ・・・『剣聖』ラインハルト」

 

「そんなに身構えなくても結構ですよ。御無事で何よりです―――『エミリア様』」

 

「そっちこそ、そんなにかしこまらないで。あなたのお陰でわたしも助かったのだし」

 

「いえ、此度の件。自分の至らなさによりエミリア様の御身を危険に晒してしまいました。この失態に対する罰はいかようにもお受けいたします」

 

「・・・そういうところ、わからないのよね、“あなた達”って」

 

「は?」

 

「危ういところに助けにきてくれて、こうしてどうにか助けられた。それなのに、その間の苦労や痛みの責任まで全部抱え込もうとするんだもの」

 

 

 

 

 

ラインハルトもあの子も余計なものを背負いすぎている。あなた達に救われた人もいることをもっと気づいて欲しいのだけれど。

 

 

 

 

 

「しかし、本当に驚きましたよ。斬られそうになっていたあの御老人を空中で引っ張り寄せただけでなく、あれだけの重傷を一瞬で元通りになおしてしまうだなんて・・・まさか彼が精霊術師だったとは思いもしませんでしたから」

 

「・・・え?」

 

「違うのですか?エミリア様のお知り合いであればあれば・・・高位の力を秘めた精霊術師だとばかり思っていたのですが」

 

 

 

 

 

わたしはラインハルトの言葉に驚いた。あれだけあの子のことを信用しているのに、まるであの子のことをよく知らない口振りで語る様子に違和感を覚えた。

 

 

 

 

 

「ラインハルト。あなたはあの子の実力を知っていてこの場を任せたんじゃないの?」

 

「いいえ。実は彼とは今日初めて会ったばかりでして。彼が戦っているのを見るのも・・・『これ』が初めてなんですよ」

 

「それなのに怪我人のあの子にあんな危険な戦闘狂の相手を任せたの!?」

 

「・・・確かに彼の戦いを見るのはこれが初めてですが。彼が強いということだけは雰囲気だけでハッキリとわかります。これでも近衛を任ぜられた騎士ですし――――何より、あんな覚悟を秘めた真っ直ぐな目を自分は見たことがありませんので」

 

 

 

 

 

剣聖と讃えられ王国一番の騎士であるラインハルトが絶対の信頼を寄せている。しかも、今日会ったばかりで一度も戦いを見たことがないと言っている。

 

あの子は自分を『スタンド使い』と言っていたけれど・・・魔術でも精霊術でもない『スタンド』って、いったい―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっきくらった蹴りのお返しだ。手加減はしてやったが、それでも効いただろォ」

 

 

ガタッ ヒュタ・・・ッ!

 

 

「―――ええっ!素敵!素敵だわぁ・・・今の一撃、感じたわぁ♪わたし、あなたのことを見くびっていたみたい。まさかこんなに刺激的《魅力的》なヒトだったなんて」

 

 

「グレート。このオンナ・・・絶対マジーよ!病院に連れてくベキだぞ、コイツ!」

 

 

 

 

 

かなりの力を込めて蹴り飛ばしたのにダメージどころか攻撃を受けて目をキラキラ輝かせて悦んでいやがる。相手を殺すことだけでなく自分が痛め付けられることにすら悦楽を感じてやがるんだ。

 

 

 

 

 

「今日は本当に最高な日だわ。かの名高き剣聖に会えたことだけでも幸運なのに・・・それに勝るとも劣らない極上の獲物がもう一人手に入るなんて。今日は本当についてるわ」

 

「―――ああ、そうかよ。幸運ついでにさっさと撤退したらどうだ?どうせ勝てやしねえんだからよぉ」

 

「血の滴るような最高のステーキを前に、飢えた肉食獣が我慢できるとでも?」

 

「ぐうの音も出ねえ正論をありがとよ」

 

 

とん……っ ビュンッッ!! ビュンッッ!! ビュンッッ!! ビュンッッ!!

 

 

「やれやれ、蜘蛛みてえなことをしやがる」

 

 

 

 

 

その細身のどこにそんな力があるのかはわからないが、床から壁へ、壁から壁へ、壁から天井へ、天井から床へ、床から天井へ。俺の周囲を人間離れした動きで飛び回り撹乱してくる。壁や天井に両手両足で張り付く姿は蜘蛛そのものだ――――――両手に吸盤でもついてんのか?

 

 

 

 

 

「さっきは遅れをとったけど。この速さで動くわたしを正確に捉えることが出来るかしら―――そろそろ出血で気分が悪くなってきたのではなくて?」

 

 

「《ギュウッ、ポタポタ》・・・・・・。」

 

 

ドンッ ギュォオオオオオッッ!!!!

 

 

「――――サヨナラ♪」

 

 

「・・・クレイジーダイヤモンド《ビジャアアアッ》」

 

『ドォォオオラァアアアアアアッッ!!!!《ピヒュ……ッッ!!!!》』

 

 

 

 

 

天井から垂直に俺の首筋めがけてククリ刀を降り下ろしてくるエルザ。だが、俺は完璧な迎撃体勢でそれを迎え撃った。

 

俺の体から滴り落ちる血を掌に貯めてそれをクレイジーダイヤモンドのパワーでぶん投げてぶち当てる。それだけで―――

 

 

 

ドゴゴゴゴオン……ッッ!!!

 

「・・・ッッ―――!?」

 

 

 

 

エルザの体はおもちゃのように吹っ飛んでいった。掌にためた血を投げつけるという『水かけ遊び』もクレイジーダイヤモンドのパワーで投げれば――――――即席の散弾銃《ショットガン》になるんだぜぇ。

 

 

 

 

 

「―――ガハッ・・・エふっ!」

 

 

「悪役の技だからあまり使いたくはねえんだがよぉ~。これでわかったろ。今の俺なら直接手を触れなくても―――少量の水がありゃ充分に殺せる」

 

 

「素敵っ・・・まさかこんな攻撃法があるなんて。ますますあなたの腸を引きずり出してみたくなったわ♪」

 

 

「・・・グレート。さっきの直撃を受けてもそれだけの口が叩けるのか」

 

 

 

 

 

どうやらコイツは相手を殺すか自分が死ぬか、どちらかが終わるまで止まりそうもねえな。なら仕方がねえ。再起不能なレベルでヤツをぶっ倒すしかねえ。

 

 

 

 

 

「さあ、もっと楽しませてちょうだい。わたし相手に生半可な攻撃はかえって逆効果よ」

 

 

「―――みてぇだな。確かにこのままだと埒があかなそうだからよぉ。俺もこっからは本気で仕留めにいかせてもらうぜぇ。敗者に鞭を打つようでちと心が痛むが・・・いや、全然痛まねえか。そもそもテメエが話をややこしくしたんだもんな」

 

 

「あら、少し優位になったくらいで生意気なことを言うのね。『腸狩り』の異名は伊達じゃないのよ。例え牙を失おうと爪を失おうと骨を失おうと相手を殺すまで止まらない―――――それが『腸狩り』よ」

 

 

「《とんとんっ》すみませんねェ、“生意気”で。お詫びといっちゃなんですが・・・ご覧に入れましょう―――――― 『一流コックの別格の脚捌き』っ」

 

 

 

 

 

俺はこれ見よがしに足を肩幅に開いて半身になってブルース・リーのような構えをとる。勿論、この構えに意味はない。ただの挑発だ。

 

 

 

 

 

「――――これだけはよぉ~。マジにやりたくなかったんだぜ。クレイジーダイヤモンドの全力のパワーで生身の人間を“本気”でぶっ飛ばすなんて・・・考えるだけでも恐ろしい」

 

 

「あなたの全力・・・楽しみだわぁ。どれ程のものなのかしらね」

 

 

「死にたくなかったら防御に専念することだな。俺が言えるのはそれだけだ」

 

 

「・・・・・・。」

 

 

 

 

 

俺の警告がハッタリでないことを骨身に染みて理解しているのか二本のククリ刀で防御よりの構えをとるエルザ。どうやらお遊びなしの本気でくるらしい。

 

 

 

 

 

「――――『腸狩り』エルザ・グランヒルテ」

 

 

「――――『スタンド使い』十条旭」

 

 

 

 

 

まるで神聖な決闘の儀式を行うように名乗りを上げ、俺もその礼に応じてアドリブで返す。

 

―――西部劇のガンマン風に言うと『抜きな!どっちが素早いか試してみようぜ』というやつだぜっ。

 

 

ガタッ ドシャァアア……

 

 

一瞬の硬直の後、訪れた倉の中にあった壊れかけの家具が崩れ落ちた音・・・それが開始の合図となった。

 

 

 

 

 

「―――っ!《ヒュッ!》」

 

「―――首肉《コリエ》っ!」

 

 

ドコォオオオオオ……ッッ!!

 

 

「~~~~っ!グッ・・・速―――っ!」

 

 

 

 

 

エルザが初動を切り出すよりも一瞬早くクレイジーダイヤモンドの上段蹴りが炸裂した。エルザも体勢を立て直そうと上体を起こすよりも早く二撃目が降り下ろされた。

 

 

 

 

 

「―――肩肉《エポール》っ!!」

 

 

ガコォオオオオオンッ!!

 

 

「・・・あぐっ!?」

 

 

「背肉《コートレット》っ!!鞍下肉《セル》っ!!」

 

 

ドギャアアアアアアッッ!! ゴキャァァアアアアアッッ!!

 

 

「胸肉《ポワトリーヌ》っ!!」

 

 

ズドゴォオオオオオオオッッ!!

 

 

「もも肉《ジゴー》っ!!」

 

 

ズトバァァアアアアンッッ!!

 

 

「―――~~~~・・・っっ!!!?」

 

 

 

 

 

容赦なく繰り出されるクレイジーダイヤモンドの怒濤の蹴り技にエルザは反撃もできず、まるでピンボールのように体が跳ね回る。

 

それでもなお反撃する意思を捨てずにふらつく体でククリ刀を持って立ち上がってきた。だが、それすらも・・・無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァーーーーーーっっ!!

 

 

 

 

 

「カッ、ふばっ・・・まだよ、まだ・・・わたしは―――っ」

 

 

「――――――羊肉《ムートン》・・・ショットッッ!!」

 

 

ドッ・・・――――――ゴォオオオオオオオオオオオオンッッ!!

 

 

 

 

 

最後のフィニッシュブローに防御などとれるはずもなく盗品倉の壁を突き抜けて吹き飛ばされていくエルザ。女を痛め付けるのは俺の主義に反するが、これもエルザ自らが望んだ結果だ。

 

 

 

 

 

「―――デザートは・・・いらねェか」

 

 

 

 

 

思った通り、ヤツにメインディッシュ《ラインハルト》はいらない・・・前菜《俺》だけで充分だったようだぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――全く派手に暴れおって。この店、誰がなおすと思っとるんじゃ、まったく」

 

「やれやれ、命があっただけありがたいと思えよ。こちとら、あの殺人鬼を撃退するのに精一杯で建物に気を使ってる余裕なんかなかったっつーの」

 

 

 

 

 

全てが終わった盗品倉はあまりの戦いの激しさに内装はメチャクチャに、壁はあちこち穴だらけになっていた。

 

―――あのお爺さんが嘆くのも仕方がないけど。でも、この子とラインハルトが駆けつけてくれなかったら、わたし達三人ともやられていたのよね。

 

憎まれ口を叩くお爺さんに売り言葉に買い言葉で乱暴な切り返しになってるあの子を見て改めてそう思った。するとあの子の何気ない呟きに金髪の子が反応した。

 

 

 

 

 

「撃退って・・・倒したんじゃねーのか!?」

 

「アレくらいじゃあアイツはくたばんねえよ。もっともかなりのダメージを受けたろうからさすがにもう襲ってはこれないだろう」

 

「うへェ~・・・あんなクソ異常者がまだ生きてるのかよ」

 

「大丈夫だ。ヤツの目的は完全に失敗したから、これ以上、お前らを始末するメリットもない。だから、もう襲われる心配はないと思うぜ《ポンッ、なでなで》」

 

「・・・そ、そうか―――って!頭、撫でんな!子供扱いすんじゃねぇーよ!噛むぞっ!」

 

「ヘヘッ!まあ、そこはほら俺の方が年上だし。もっと言えば命の恩人だしな。何にせよ、お前も無事で何よりだ」

 

「う、うるせぇ!命の恩人だろうと何だろうと・・・知ったことかっ。大体、兄ちゃんは何なんだ、まったくよう」

 

「照れるな照れるな―――お前もよく頑張ったな。上出来だぜ」

 

「//////~~~~っ・・・ああ~~もう!うっせえよ!」

 

 

 

 

 

―――そっか。わたし、あの子のことをまだ何も知らないんだ。

 

今日一日でいろんなことがありすぎて忘れていたけど。あの子がどこから来たのか、リンガが好きなのか、わたしを助けてくれた理由も、名前すらもわたしは知らない。

 

知らないけど。彼とはすごくすごく長い付きあいのような感じがする。あの子にいっぱい助けられたから?

 

考えてみればそう。あの道端で竜車に轢かれそうになった女の子も、その子のお母さんも、この倉のお爺さんも、あの『フェルト』って子も、わたしも―――あの子に救われたんだ。 

 

 

――――あの子は今日一日でたくさんの人の『運命』を変えたんだ。

 

 

 

 

 

ポタポタ、ポタポタタ・・・ッ

 

 

「っ―――ちょっと!あなた、血が全然止まってないわよっ」

 

「ああ。そういや・・・そうだな」

 

「だから言ったじゃない。動くと出血が酷くなるって・・・んもう!本当にバカなんだから!」

 

「だから、その俺のお袋みたいな態度はやめねえか?」

 

 

「―――アキラ。そこの御老人を治したように自分のケガを治すことは出来ないのかい?」

 

 

「そうよっ。どうして戦いの最中にケガをなおさなかったの。まさかなおせる回数には制限があるの?」

 

 

「やれやれ・・・そういやぁ言ってなかったっけな。俺のクレイジーダイヤモンドは――――」

 

 

 

ガタッ!

 

 

 

「っ―――アキラっ!」

 

 

 

バガァァアアアアアアンッッ!!!!

 

 

 

 

 

ラインハルトが警告した瞬間、壁をぶち破って血だらけで満身創痍となったエルザが猛スピードでエルフのお嬢様めがけて突進してきた――――――斎●一みたいなことをしやがる。

 

 

「―――……っ!」

 

「―――……ッ……!」

 

「……ーーーっ!」

 

 

各々が何かを叫んではいるが俺は別に慌てちゃあいなかった。

 

 

 

 

 

「グレート・・・幸せだったのによぉ~。壁ぶち破る体力なんてなかった方が《キュゥゥゥゥンッッ》」

 

 

 

 

 

俺がクレイジーダイヤモンドのなおす力を発動した次の瞬間―――俺が事前に仕掛けておいた我ながらえげつない罠が発動した。

 

 

 

 

 

ドボォォオオッ! ズドォォオオッ!! ズボォオオオッッ!!

 

「―――っ・・・~~~っ、あっっぐ・・・!!?《バタッ》」

 

 

 

 

周囲に散乱していた無数のガラス片がエルザの体に一斉に襲いかかったのだ。これにはさしものエルザもたまらず床を転がり倒れ伏した。

 

 

 

 

 

「・・・え?」

 

「今のは・・・なに?」

 

「ガラスの破片が一斉に襲いかかったぞ」

 

 

 

 

 

フェルトやエルフのお嬢様らは目の前で起きた光景に混乱している―――わかるわけねえよな。今、俺がやったのはクレイジーダイヤモンドの“なおす”能力の応用なんだからよ。

 

 

まず、俺はエルザとやりあっている最中に予め『俺の血』を入れたガラス片を床にばらまいた。

 

その上で血液散弾銃をぶつけてエルザの体に『マーキング』を施した。

 

あとは俺が『固まった血』を直せば・・・ガラス片はエルザの体に付着した『俺の血液』目掛けて飛んでいく。

 

 

――――俺の『自動追尾弾』だぜ。

 

 

 

 

 

「っぐ・・・あなた、今何を―――――っ!?」

 

 

「そこまでだ、エルザ!」

 

 

「―――っ!・・・いずれ、この場にいる全員の腹を切り開いてあげる。それまではせいぜい、腸を可愛がっておいて」

 

 

ヒュタッ! ヒュバ、ヒュバッ、ヒュタッ!

 

 

「・・・呆れたぜ。あれだけ痛め付けたのにまだ動けるのかよ」

 

 

 

 

流石にあの重傷で勝負を挑むほど愚かではなかったらしい。ラインハルトも深追いをやめてすぐに戻ってきた。

 

 

 

 

 

「すまない、アキラ。君があれほど追い詰めてくれたというのに取り逃がしてしまった」

 

「謝んなって。寧ろ、お前がいなかったらこの結果には辿り着けなかった。感謝してぇのはこっちなんだよ」

 

「そう言ってもらえると助かるよ」

 

「ああ。本当に・・・やれやれ、だぜ《すとんっ》」

 

「アキラ!?」

 

 

「兄ちゃんっ!?」

 

 

 

 

 

俺は緊張の糸が途切れたのか腰を落として座り込んでしまう。フェルトが心配そうに駆け寄ってくる。

 

 

 

 

 

「大丈夫だ。ちっとばかし貧血ぎみなだけだ。それよりフェルト・・・頼みがあんだけどよ」

 

「な、何だよ、こんなときに・・・」

 

「この姉ちゃんに盗んだ徽章、返してやってくんねえか?もう依頼主もいなくなっちまったことだしよ」

 

「・・・っ」

 

「な!頼むよ」

 

 

 

 

 

フェルトは俺を見て少し驚いた表情をしていたが、やがて『いつもの』悪戯っぽい笑みを浮かべて答えてくれた。

 

 

 

 

 

「命を助けてもらったんだ。恩知らずな真似はできねーよ。盗ったもんは返す!」

 

「ああ。素直な子はお兄さん好きだぜ。ついでに命の恩人である俺をもう少し敬ってくれてもいいんだぜ」

 

「調子に乗んなっつーのっ。待ってな!今、持ってくるからさ―――《タタタタッ》」

 

 

 

 

 

フェルトはまるで母親に親孝行をしたがる娘のような素直さで快く了承してくれた。俺は遠巻きにこちらを見ていたエルフのお嬢様に声をかけた。

 

 

 

 

 

「つーわけでよぉ・・・勝手な話なんだが。あいつのことこれで許してやってくんねえか?アイツも被害者だったわけだしさ」

 

「~~~~っ、バカっ!そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!早く手当てしないと・・・―――ねえ、あなたの力でなおせないの!?」

 

「・・・なあ、約束覚えてっか?『無事に徽章が返ってきたら一つだけ俺のお願いを聞いてもらう』ってアレだ」

 

「そんなの後でいくらでも聞いて上げるからっ。早くあなたの力で――――」

 

「・・・俺の『クレイジーダイヤモンド』は『自分の傷は治せない』んだよ。世の中、都合のいい事だらけじゃあねぇってことだなぁ」

 

「そんな・・・っ」

 

「つーわけでよぉ――― そこで一つお願いなんだが・・・『傷の手当て』・・・してくれねえか?」

 

「っ・・・バカ、当たり前でしょ」

 

 

 

 

エルフのお嬢様は『ほとほと呆れ果てた』と言わんばかりの態度を見せつけるように不機嫌そうに俺の前に膝をつくと魔法で治療を始めてくれた。

 

 

 

 

 

パァァアアアア……ッ

 

「やれやれ、これで終わったな―――花京院、イギー、アヴドゥル・・・終わったよ」

 

「・・・誰よ、その“カキョウイン”と“イギー”と“アヴドゥル”って」

 

「俺の人生の先生の一人だぜ。今度、彼らが残した名言の数々を教えてやるよ」

 

「《パァァアアアア……ッ》・・・・・・ごめん」

 

「何だよ、突然急に?」

 

「―――・・・ごめん。わたしのせいで、あなたに・・・こんな辛い思いをさせてしまって。わたしの都合に関係のないあなたを巻き込んじゃった」

 

「・・・別にお前のせいじゃあねえだろ。俺が受けた苦労やケガの責任まで全部抱え込もうとする必要はないぜぇ」

 

「っ・・・あなたに言われたくないわよっ!」

 

「何を怒ってんだよ?」

 

「知らないわよ、もう!このアンポンタンっ」

 

「アンポンタンって・・・今時、なっかなか聞かねえぞ」

 

「茶化さないの!」

 

 

 

 

 

どうやら本気で怒ってるわけではないらしいが、何かこいつの気に触るようなことをしたかな。俺?

 

 

 

 

 

「・・・ねえ、一つ聞いてもいいかしら?」

 

「何だよ?」

 

「どうして、わたしを・・・――――ううんっ!やっぱり何でもない」

 

「何でもないってこたぁないだろ。何かそんなに聞きにくいことでもあったのか?」

 

「・・・・“名前”。そういえば、まだ名前を聞いてなかったわよね」

 

「そっか。言われてみりゃあ確かにそうだ。じゃあ、何か今更でおかしな気もするけど――――俺は『十条旭』。通りすがりのスタンド使いだ」

 

「『ジョジョ・アキラ』?変わった名前をしているのね」

 

「ジョジョじゃなくて『ジュウジョウ』な・・・このやり取りも通例だよな。それで、お前の名前は?」

 

「―――『エミリア』。ただのエミリアよ。ありがとう、『アキラ』!・・・わたしを助けてくれて」

 

 

 

 

 

 

 

 




原作のラインハルトのチートっぷりを見てると普通にクレイジーダイヤモンド勝てないんじゃあないかな?

そう思うとラインハルトの戦闘描写をいれることができなくなった。だって、ぶっちゃけ主人公属性においてラインハルトに勝てるとは思えないし。

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