主人公菜月昴の運命に立ち向かう姿はシュタインズゲートのオカリンに通じるものがあり、非常に感銘を受けます。
もし異世界に来たのが菜月昴ではなかったとしたらどんな物語が出来上がったのでしょう。これはそんなお話です。
プロローグ:はじまりは爆発と共に
―――爆ぜた。
―――その日、俺の目の前の世界全てが“爆ぜた”。
―――俺が“始まった”その日が始まりであり、全てが終わってしまったその日に―――目の前の時間全てが爆発した。
後悔しても戻らない。何も取り戻せない。俺に残されたものは何もない。俺になおせるものは何もない。
でも、もし……まだやり直しが効くなら……少しでも取り戻せるものがあるのなら俺は何度でも立ち上がる。
このグレートにクソッタレな理不尽な世界をぶっ壊してやる!
んでもって!壊れちまったもんは全てなおす。
“あいつ”の……“あいつら”の未来は俺が切り開いて見せる!
それができるのは俺しかいない。
この世界で唯一の“スタンド使い”である俺だけしかいないんだ。
俺に諦めることは許されない。時間が“爆発”して世界が壊れても俺は消えることができないんだから。
ゴォーーーンッ ゴォーーーンッ
「―――おろ?」
重厚でそれでいて神聖さを感じさせる教会の鐘の音。少なくとも現代日本ではおいそれと聞くことのできない音。
「おい、どけよ」
「あっ、すいません」
「ママー。買って買ってー!」
「ダメよ。今、食べたら晩御飯食べられなくなっちゃうわよ」
「ええーっ!いいじゃん、おやつなんだしさ」
ガヤガヤ、ガヤガヤ…
立ち並ぶ露天の数々。骨組みの上に丈夫な布を張っただけのいたって簡素な屋台が道路を挟むように並んでいる。祭りでもあるのか周囲は大勢のヒトで賑わっている。
何をおいても目を引くのは目の前を行き交う人々《ヒト》の容姿だ。
豚鼻もいれば、猫耳もいる。いや、それどころか顔が狼だったり尻尾が生えてたり……どう見てもコスプレの類いとは思えない。
「……グレート」
目の前の光景はどう見ても現代日本社会とは思えない。どっからどう見ても中世ファンタジーのそれだ。
「どうした、兄ちゃん?」
「え?」
「そんなところで突っ立ってねえでよ。せっかくだからなんか買っていけよっ!うちのリンガは絶品だぜ。鮮度も文句なしだ」
「“リンガ”?……リンゴじゃねえのか?」
「兄ちゃんの国ではリンガのこと“リンゴ”っていうのか?ほ~~~~ん……どっから来たんでい?」
「―――SU83方位の9045YX」
「わかんねえよ。名前で言え。名前で」
「東の海《イースト・ブルー》のフーシャ村ってところだ。その前はザナルガ●ドやアレキサ●ドリアに住んでたっけな」
「……そんな場所、聞いたこともねえな。そもそもそのイーストブルーってのがわかんねえ」
「ですよねー!何かわかってました」
どうやらここはワ●ピースの世界ではないらしい。少し期待してたぶん、非常に残念だ。ザナルガ●ドやアレキサ●ドリアって言葉にも反応しないからFFシリーズって訳でもなさそう。
オーケー!よくわかったぜ。これはハーメ●ンお決まりの神様転生なんかじゃあねえ!オリ主最強のご都合主義なんかでもねえ!
―――頼るあての一切ない。リアルなホームレス高校生の物語だぜ。
「そこで問題だ!このグレートにクソヤベェ状況でどうやって生き残る?
3択—ひとつだけ選びなさい。
答え1、ハンサムな俺様は突如天才的なアイデアがひらめく。
答え2、美人で可愛い貴族のお嬢様ヒロインがきて助けてくれる。
答え3、無駄無駄無駄。現実は非情である」
「―――答え4、『客じゃねえなら、とっとと失せろ』」
「…………あっ、ハイ」
怒られてしまった。ちくせう!
プロローグから黒幕をネタバレしていくスタイル。残念ながらこの作品の黒幕は決して静かに暮らしたいあのキャラではない。