デスノート A true new world starts 作:有山氏
心理戦、頭脳戦も、原作や、映画版に沿ったものになると思いますので、練られた展開ではない事に注意して読んでいって下さい。
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かつて死神によって地上に落とされたノートがあった。
それは名前を書くと人を死に追いやる事ができる死のノート、デスノートである。
そのノートを拾った一人の天才である『夜神月』は、自らの正義を貫き、名前を書き込んで犯罪者のいない世界に変えていく。だが、それを阻止するもう一人の天才、『L』という世界的探偵が日本警察と協力しキラこと夜神月を追いこみ事件を解決させた。
そして10年後、再び6冊のデスノートが地上に舞い降り、新たなるキラ『紫苑』が犯罪者を裁き始め、同時に6冊のデスノートを集めだす。彼の策略を止めるべく、警察組織にいる『三島』とLの遺伝子を継ぐ『竜崎』が手を組んでキラ事件は終結した。
2度のキラ事件が発生したが、これらはまだ序章に過ぎなかった。本当の物語はこれからだったのだ。
※
「……お父さん、お兄ちゃん」
キラであった夜神月の妹である夜神粧裕は、夜神月と父である総一郎の遺影が飾られた仏壇の前で手を合わせていた。
目を開けるとゆっくり立ち上がり、リビングの方へ歩き出す。肩までかかる赤みがかった髪を揺らしてソファーに腰掛けた。
部屋は暗く、粧裕一人しかいない。
そして、粧裕は目を瞑り記憶を辿っていった。
数ヶ月前に世界中に拡散された映像によって、兄がキラではないのかと疑い始めた。その映像には兄である夜神月が映っていたからだ。
頭も良くてスポーツ万能で、優しく頼り甲斐がある兄がまさか10年前に世界を揺るがしたキラの筈がない。
粧裕は真実を確かめるべく、警察に押しかけ父と深い関係にある
『松田桃太』に会いキラ事件の極秘資料を渡され真実を知った。
その資料には、死神が存在する事、死神の使用物である死のノートがある事、そのノートに名前を書き込んで夜神月は犯罪者を裁き、最期は死神に名前を書かれ命を落とした、等が記されていた。
どれも信用できないものであったが、松田桃太の鮮明な詳細部分を聞いて認めざるおえなかった。
父からの教えは嘘で、兄は犯罪者を裁き続けたキラであった。
母は受け入れられず、ショックで倒れ精神科に入院する事になった。
それからは、キラ信者が押しかけてくるのが常になり家を離れた。キラの親族であるから無理だと思ったが、この世界はキラを受け入れているのがほとんどなのだ。
手回しをしてくれて今は新たな家に住み、戸籍を変えず一人で亡くなった父の遺産と在宅での仕事をなんとかこなして生活している。
辛い記憶から抜けて、目を開ける。
頭の中に浮かぶのは、母や父、そして兄の姿だ。
本当に兄はキラだったのか。
だとしたら、キラとして本当に世界を変えたかったのか。
「どうして……」
毎日が自問自答の繰り返しだ。それでも結局答えは見つからないのだ。
ただ、一人で辛い毎日を過ごしてくしかない。
瞳から涙が溢れてくる。拭っても拭っても涙は止まらない。
兄はキラである。死んでしまった兄の事なんてもう何も分からない。それでも粧裕は沢山の人間を死に追いやった兄の事が今でも大好きなのだ。大好きで尊敬する唯一無二の大切な存在なのだ。
だから、だから……。
粧裕は首を振った。
兄は死んだのだ。何をしたって事実は覆らないのだ。
それでも、考えてしまう。
もしも、人を死に追いやる死のノートが目の前に降ってきたら……。
兄と同じ行動にでるのだろうか。
兄のように世界を変えようとするだろうか。
兄の果たせなかった事をやり遂げようとするのだろうか。
大好きな兄だからこそ、深追いして想像してしまうのだ。
いや、それほどまで追い込まれているのかもしれない。
母の入院、父の死、兄がキラであるという様々な重圧によって。
側にあった鏡を手に取り自分の顔を見る。涙は大分薄れてきた。
粧裕の瞳は大きく、子供の様な顔つきをしている。沢山の重荷を背負っているが、それが驚く程顔にでていない。
不思議に思いながら、粧裕は鏡を元あった場所に置いた。
静まったリビングで響いてくるのは、時計の秒針が進む音だけだ。
カチカチ、となる音を耳にしていると、急に別の音がどこかに飛び込んできた。
それは、何かが落ちたような音だった。
粧裕はその音が気になり立ち上がった。リビングを見渡すが何かが落ちたような跡はない。
一体何なんだと疑問に思っていると、ある場所が気になった。仏壇が置かれている部屋だ。
粧裕はその部屋へ引き寄せられるように歩んでいく。
部屋の中を覗くと、黒いノートが置かれていた。
粧裕はまさかと思い、そのノートを恐る恐る手に取る。
刹那、後ろから異様な気配が漂ってくる。それは急に現れたように感じた。
ノートを手に持ちながら、後ろからする気配を確かめるためにゆっくりと振り返る。
そこには、人間でもない、別の生き物がニタニタと目を向けていた。姿は細々としているが、硬い筋肉で覆われていて威圧感がある。黒い模様が体に埋め尽くされている。顔は骸骨のように見えるが表情がある。
資料で見たあの死神だ……。
粧裕は驚きのあまり、手に持っていたノートを床に落とした。同時に理解した。目の前にいる何かが死神であると。
そして、今拾ったノートは死神のノートであると。
「……あなたは、死神?」
息を飲んで粧裕は口を開いた。
すると、クククククッと目の前の死神は粧裕から目を離し笑い出した。
不気味な笑い声で、表情の半分が笑みで埋め尽くされている。
粧裕は深呼吸して、死神に問いかける。
「何、笑ってるの……?」
死神は徐々に笑い声を抑えて、粧裕に目を向けた。
表情に浮かぶ笑みは更に刻まれ、ゆっくりと口を開く。
「面白いから」
死神は再び不気味な笑い声を浴びせ始めた。
※文書を書き直しました。
苗字はどうしても変えたくなかったので、現実に考えれば不可能なのですが夜神のままにしました。そもそも兄がキラという事情を抱えて平常を保ってる事自体が厳しい話ですが、都合良く話は進んでいくので、すみません。。