機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別   作:グランクラン

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いよいよアリアンロッド戦です。
後、前回イラクと書かなければならないところをイオクと書いてしまい、一部の人が勘違いしていると思うので、ここで訂正しておきます。なのでイオクは今まで通りに姿を現します。
ではアリアンロッド戦です!


ラスタル・エリオン

 ギャラルホルンとファミリアがアリアンロッド艦隊を包囲して既に数時間が経過していた。皮肉にも両者が激突している場所はかつてフォートレスと鉄華団がぶつかり合った小惑星基地だった。ギャラルホルン連合は小惑星基地を改造し、そこを拠点として使用しながら戦っていた。

「ラスタル様!ダインスレイヴを使用しましょう!今更体裁を取り繕う必要もないでしょう」

 ラスタルの部下の一人がそういってラスタルに進言するが、ラスタルはそれを拒否する。

「駄目だ、先ほどからあちらのダインスレイヴ隊が周囲を散開している。こちらが撃てばあちらも撃ってくる上に、あちらの旗艦は小惑星基地の中だ。さすがにダインスレイヴでも小惑星基地を壊すことはできない」

 部下は悔しそうに正面に鎮座する小惑星基地を忌々しそうに見つめる。ラスタルも正面に位置する小惑星基地をまっすぐに見つめる。

「しかし、こちらのダインスレイヴ対策であんなものまで持ち出すとは、モビルスーツ部隊をダインスレイヴの被害を最小限で押さえるように艦を周囲にばらけて配置する。よく考えているな……この作戦を考えたのはマハラジャではないな。この作戦はファントムエイジ副指令『アルベルト・シュキュナー』だな。変わらん男だ」

 ラスタルの正面でバルバトスが暴れ回っていた。

 バルバトスが暴れていた時、アガレスは隙を伺うように小惑星基地の中に入っていく。整備班が整備を行っている場所に指示に従って機体を止める。

「アガレスの整備を急げ!」

 ファントムエイジ整備長『ゼム・ロック』が怒鳴り声を上げ、周囲を鼓舞する。サブレとビスケットがコックピットから出てくると、ヤマギが二人に駆け寄り、ドリンクを渡す。

「二人ともこれどうぞ」

「ありがとう、ヤマギ」

「さんきゅ」

 二人が黙ってドリンクを飲んでいると、ゼムが近くに寄ってきて、ゼスチャーで「どけ!」

と言っているのを確認すると、サブレとビスケットは奥へと入っていく。

 通路を奥へと進んで行くと、曲がり角で副リーダーであるアルベルトにぶつかりそうになる。

「す、すいません」

 咄嗟の事で後ろに数歩ビスケットが下がると、そのまま頭を下げて謝る。片やサブレはぶつかる前に完全に止まっていた。

「いや、こちらこそすまなかった。軽く急いでいたものでね」

 ビスケットは完全にアルベルトの雰囲気に気圧されてしまう。どこか苦手な雰囲気を漂わせる相手に生唾を飲み対峙すると、アルベルトは優しい言葉をかける。

「こんな状況だ、休める時に休んでいた方がいい。どこかの誰かさんのように休める時にさえ動き続けようとする奴もいるがな」

 そういいながらアルベルトはサブレの方を見つめると、サブレは知らん振りを続ける。ビスケットはそんな二人のやり取りを見ていると自然と笑いが込み上げてきた。

「やっと笑ったね。別に笑うなとは言わない。休憩中くらい戦いから少しぐらい離れてもいいんだ」

「……ありがとうございます」

 ビスケットは再び頭を下げると、アルベルトは指令室へと足を進めていく。サブレとビスケットは大きな休憩室に入ると、二人は近くの席に座って待機する。

「俺あの人怖い人だって今まで思ってたよ」

「真面目なだけだよ。ほら、真面目な人って怖いイメージがあるから」

 ビスケットにそういってフォローするサブレは周囲を見回す。休憩室ではある者は仮眠をとっていたり、ある者は食事をとっている。

「いつまで続くのかな?」

 ビスケットは不意にそんな愚痴を漏らすと、サブレは興味なさそうに「さぁ?」と冷たく返す。ビスケットは苦笑いを浮かべる。

 二人がそんな話をしている間、大きな指令室ではユージンが感心しながら周囲を見回していた。そうしているとアルベルトが指令室の中に入ってくると、司令席に座る。

「君たちはこういう指令室は初めてかな?」

 アルベルトのそんな疑問にオルガが代わりに答える。

「まあな。ていうかこんな広い部屋こそ初めてだが……」

「今でこそ珍しいが、こういう指令室は昔は多かったんだよ」

 アルベルト達がいる指令室は二重構造になっており、アルベルト達の下に二十人ほどが指令室での通信を行っていた。

「厄祭戦ではこういう施設が多かった。しかし、厄祭戦後期にはほとんどがモビルアーマーとの戦いで壊滅してしまった。この施設も機能のほとんどを失っていたのをこちらで修理して今回の作戦に組み込ませてもらった」

 アルベルトの目の前の大きな画面では戦場の状況が詳しく表示されていた。戦場ではバルバトスとパイモンが暴れているのか、アリアンロッドのモビルスーツが次々と落ちていくのが分かる。

 

 バルバトスはテイルブレードを動かしながら二機のモビルスーツのコックピットを切り裂きつつメイスでコックピットを頭部ごと叩き潰す。

 パイモンは大きなハンマーを振り回し、十機ほどのモビルスーツを相手に互角以上の戦いを行っていた。それをジュリエッタは後ろから感心していた。

「す、すごい。こんな戦いができるなんて……」

 パイモンと戦っているモビルスーツを指揮していた後ろのモビルスーツが怒鳴り声をあげる。

「何をしている!たかが一機のモビルスーツ相手にてこずるなど!」

「で、ですが……このモビルスーツ強くて」

 そして、バルバトスが前線で暴れていると、指令室ではアルベルトがもう一つの戦場に目を向けていた。

 ガエリオの部隊がマクギリス率いる外縁軌道艦隊相手に互角の戦いを続けていた。一進一退の攻防を続ける。

 ガエリオはキマリスヴィダールのドリルランスでマクギリスに成りすましたアグニカのバエルを突き刺そうとするが、アグニカは難なく回避して見せる。そして、そのまま蹴り飛ばす。

「マクギリス!今だ力を求めるか!?」

 いまだマクギリスだと思っているガエリオにアグニカは少しだけ笑いそうになる。しかし、それをグッと我慢してマクギリスのふりをする。

「お前も見えていないのさ……ガエリオ」

「俺はお前を殺したとき、はじめてお前を理解できる!それが俺なりのけじめだ!」

「イカれているな……」

「正気故だ!マクギリス!」

 そうどなるガエリオをアグニカは心の奥で笑いながらバカにする。

『それが言える時点でお前はおかしいんだよ……ボードウィン家の息子よ。自ら阿頼耶識を使う事を躊躇しない人間がまともなわけがないだろう?阿頼耶識を頼らねばならないけじめか………みじめだな』

 ガエリオはドリルニーを飛ばすが、それをバエルは片手で受け止めて見せる。さすがにガエリオも驚かずにはいられない。

「なっ!?」

「……みじめだな。そして……愚かだな」

 キマリスを走らせようとするが、目の前の画面はスラスターの残量が残り少なくなっていることを示していた。

「くっ!ここは一度引く」

 キマリスを含めて一度ガエリオは部隊を引かせる。

「准将!」

「石動こちらも一旦引くぞ」

 

「ガエリオ・ボードウィンのキマリスが帰投しました。今から整備に入ります」

 ラスタルへそういう報告が上がると、ラスタルは少しだけ考え込む。

(おそらくマハラジャから……アルベルトから動くことは無い。あの男はそういう人間だ。多分こちらから動くことを待っている。だが、わざと隙を作るとしたら次にキマリスを出した時だ。それが最後だな……)

 ラスタルは自ら掌をふと見つめると、ギャラルホルンに入ったころにマハラジャと喧嘩したことを思い出す。

『いつかお前のそういうところは自らを滅ぼすぞ』

(お前は預言者のような男だな……賭けてみるか……お前が信じた者を)

 視線をふと正面でモビルスーツを倒し続けているバルバトスへ向く。ラスタルは覚悟を決め戦う。

 

「キマリスが戻ったのなら、バルバトスとパイモンも戻せ。次の出撃で決めるぞ」

 アルベルトが指令室で大きな声を上げて周囲に伝えると、バルバトスとパイモンがそれに合わせて帰投する。正面の画面にゼムが映る。

「パイモンとバルバトス。両方合わせて二十分で済ませてくれ。アガレスも同じタイミングで出す」

「二十分……無理難題を提示するな、分かった……できるだけ早く済まそう」

 ゼムは通信を切ると、大きな声を上げる。

「おめぇら!二十分でパイモンとバルバトスの補給を済ませろ!」

 三日月がコックピットから出てくると、どこかからオルガが姿を現して、奥へと連れていく。マハラジャも指令室へと姿を消す。

 グシオンがレールガンでモビルスーツへ攻撃を続ける。そうしていると後ろからラフタが援護に入った。

「三日月が戻ったの?」

「ああ、その間は俺らでつなぐしかねぇ」

 そうしている間にも三日月を休憩室へ連れてきたオルガはビスケット達に託す。

「ミカを頼む。伝言だ、「次にキマリスがでたタイミングでこちらが隙を意図的に作る。それまでには出てもらう。いつでも出れるようにしておけ」だ」

 ビスケットが「分かった」と告げると、オルガはそのまま休憩室を出ていく。その間に指令室にはマハラジャが入ってくる。

「どうでした?戦場の様子は」

「どうということは無い……敵と物量の差がありすぎて面白くない……」

 正面の画面には快勝を続けるファントムエイジとファミリアのモビルスーツが映っていた。それをどこか面白くなさそうに見ているマハラジャ。

「あちらは動くのか?」

「間違いないでしょう。ラスタルが動くとしたら間違いなくそこしかありません。今更アリアンロッド艦隊はギャラルホルンを名乗れない、なのだとしたら間違いなく死ぬ事を望むでしょう。死ぬことで後のギャラルホルンへの自分なりのけじめにするつもりでしょう。それはあなたが一番良く分かっておいででしょう?」

 アルベルトが少しだけ微笑みながらマハラジャに問いかけると、マハラジャはどこか複雑そうな表情になる。

「分かっているさ。ギャラルホルンの為なら自分がその礎になることもいとわない奴だ。だからこそ……俺は……」

 どこか遠くを眺めるような目になると、アルベルトは再び正面を見つめる。

「止めようとした……彼がそうなってしまえば殺すしかなくなるから……でも、決めたんでしょ?だったら……」

「そうだな……俺は決めてしまった。今更後戻りができると考えていない。でも……今でも思うことはある……そうならない、別の未来があったのではないか?っと」

 マハラジャは自分の右手を見つめ、そして昔の事を思い出す。昔マハラジャがさし伸ばした手をラスタルは拒絶した。

「でも……断られた。今更虫のいい話かな……あきらめたくはなかった。それでもあいつの友だ……あいつを殺してやることが……俺の………俺なりのけじめだ」

 マハラジャはふと振り返るとそのまま指令室を出ていく。

 

 キマリスが再び出撃していくのを確認したように小惑星の各砲門が開くと、一斉攻撃が始まる。それに呼応しモビルスーツ隊も一旦後ろに引く。アリアンロッドのモビルスーツ隊の半分以上が攻撃でやられると、ラスタルもいよいよ最後の足掻きを見せようとしていた。

「……ダインスレイヴ隊。一斉放射」

 ラスタルの号令と共にダインスレイヴ隊がダインスレイヴを放射態勢を取る。

「照準はどういたしましょう?」

「照準敵小惑星要塞……放て!」

 小惑星要塞へめがけてダインスレイヴの攻撃が次々と当たっていく。しかし、ダインスレイヴの攻撃は一つも小惑星基地を壊すことは無かった。指令室では一斉攻撃で揺れこそしたものの、施設自体は問題なく機能していた。

「ダインスレイヴの攻撃による我が軍の損害を知らせろ!」

 アルベルトの指示で指令室で調査を始めると、部下の一人が声を上げて報告する。

「一部のモビルスーツ隊が被害を受けたようですが、要塞と艦隊に被害なし!」

 アルベルトが立ち上がり全員に向け号令を出す。

「逆賊アリアンロッドは禁止兵器であるダインスレイヴを無断使用し、悪用した!この罪は重い!ダインスレイヴ隊!構え!」

 小惑星から多くのモビルスーツが出撃すると、それに続いてアガレス、バルバトス、パイモンが姿を現す。出撃したモビルスーツはダインスレイヴを構えていた。それ以外にも各艦隊からダインスレイヴを構える。

「照準アリアンロッド艦隊……放て!」

 ファントムエイジのモビルスーツのダインスレイヴから一斉に弾が射出される。次々とモビルスーツを、艦隊に直撃していく。各艦に突き刺さり火を噴いていく。

 ラスタルは攻撃の衝撃から額を正面の画面にぶつけてしまう。頭から血が流れると、部下の一人が報告を上げる。

「艦隊の……半分以上が落ちました……モビルスーツ隊も……ほとんど全滅しました。これでは……」

 ダインスレイヴを撃とうにもダインスレイヴ隊は先ほどの攻撃で全滅してしまった。アルベルトはダインスレイヴ隊に攻撃をやめさせ、後ろに下げようとすると、それとすれ違うようにバルバトスとアガレス、パイモンが前に出る。

 バルバトスは目の前で攻撃を仕掛けてきた黒いレギンレイズを振り払い、メイスで攻撃を仕掛けようとする。しかし、その攻撃は部下が身を挺して庇う。

「お前たち!どうして!?」

「お、お逃げ……ください……イ…オク………様」

 瀕死の重傷を負ってしまった部下はイオクが逃げるまでの時間を稼ぐため、バルバトスにぶつかっていく。三日月は鬱陶しそうにメイスを振り上げ振り下ろす。

「貴様!」

「イオク様!」

 複数のレギンレイズがバルバトスへ襲い掛かってくる。バルバトスはテイルブレードを振り回し、次々と落としていく。

「お逃げ下さい!イオク様!逃げて、ラスタル様の……我々の敵を!」

 そういって部下達がバルバトスに向かって戦いを挑む。イオクは涙を流しながら急いでその場を後にする。

「お前たち……すまない!」

 その間、アガレスはファンネルを放ち、周囲の敵モビルスーツを倒していく。レンチソードを振り回し艦の一つを落とす。パイモンも同じようにハンマーを振りかぶり、艦の側面にたたきつける。

「俺達も行こうぜ!」

 シノが勢いよく飛び出そうとするがそれをオルガが制止する。

「行かなくていい……お前らは次に備えて補給に戻れ。シノ、昭弘、お前らそろそろ弾薬とスラスターが限界だろ」

「でもよ!」

「ああ、三日月達だけ戦わせるつもりか?」

 シノと昭弘はそろって不満を漏らすが、オルガは引くことは無かった。

「駄目だ。それに戦いはまだ終わってねぇんだぞ」

 オルガのまっすぐな視線に負けてしまったシノと昭弘は小惑星へと撤退する。三日月とサブレの戦いを身近で見つめる、多くの兵はその戦いを見てふとつぶやく。

「これが……ガンダムフレーム。かつて厄祭戦を終わらせた機体」

 アガレスはスキップジャック級のカタパルトの開閉ドアをたたき割ると、格納庫めがけてレンチソードの銃撃を浴びせる。格納庫から火を噴き、バルバトスは後ろにまわってスキップジャック級のスラスターへメイスを振り下ろす。

 その瞬間ブリッジがひときわ大きい揺れと共に軽い爆発が起きると、ラスタルを除いて死んでしまう。ラスタルも血だらけになりながら正面に視線を合わせる。正面にはパイモンが降り立った。

「……マハラジャ」

「……ラスタル」

 二人の脳裏にかつての思い出がよぎった。今更戻れない記憶を思い出すと、ラスタルはふと微笑む。

「……さらばだ。友よ……あとは任せた」

 マハラジャは一筋の涙を流し、ハンマーを振り上げた。

「……さらばだ、友よ……後は任せろ」

 ハンマーを勢いよく振り下ろす。ブリッジがつぶれてしまうとスキップジャック級のあちらこちらから火が噴き始める。アガレスとバルバトスは急いでその場から離れる。パイモンはゆっくりとその場から移動していく。

 スキップジャック級は大きな爆発を起こすとそのまま沈んでしまった。

 

「一つの命が終わったか……だが、ここから第二局面と行こうか!」

 イラク・イシューは素早くガンダムゼパルを掛けると、そのまま戦場へ突入しようとしていた。

 誰もが予想すらできない戦いが始まろうとしていた。




どうだったでしょうか?サブレのシリアスな予告やオリジナルキャラクターの予告が見たいという意見があったので、今回から少しの間予告はオリジナルキャラクターたちにやってもらいます。
マハラジャ「ラスタル……お前を今でも親友だと思っているよ。あとは任せてくれ……ラスタル。次回機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ『原初の厄祭』」

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