「これは私の得物です」
「邪魔だな……あんた」
三日月とジュリエッタが互いにぶつかり合うと、サンドバルとサブレは距離を互いに取り合い、石動は遠くからそれぞれの戦いを眺めていた。
「完成していたのか。レギンレイズ」
「お前たちの味方ではなさそうだな……死神」
「アンタを倒すのは俺達だ……それは変わらない」
「引いてください」
「あんたが引けよ」
サンドバルと副官が囲むようにアガレスは防戦一方になっており、三日月がレギンレイズを蹴り飛ばす。
「貴様の動きが鈍いのは補給を受けていないからだな……アリアンロッドならばともかく、我々相手では厳しかろう。狩られるのお前たちの方だ!」
アガレスは開戦してから補給を受けずに戦い続けていた。
「どうすんだオルガ!おいしいとこ全部持ってかれんぞ!アガレスだってそろそろ補給を受けさせねぇと」
「奴らごとやっちまうか?」
「兄貴は何言ってんの?アリアンロッド相手に勝てるとでも?」
「昌弘の言う通り!」
「ギャラルホルンともめてたんじゃここで勝っても損するよ!」
「でもあいつらは俺らが追い詰めたってのによぉ!」
モビルスーツ隊は軽く混乱しており、それをオルガが一声でまとめる。
「目的を忘れんな!ミカとサブレがサンドバルを押さえられりゃあ勝ちは拾える!頼んだぞミカ、サブレ……」
石動の攻撃をサンドバルがモビルスーツを使って回避する。
「あの中の一つがサンドバルなら………」
「三機いるなら三機とも!」
ジュリエッタがサンドバルに向かって攻撃を繰り出そうとすると、副官の二人が両サイドからワイヤーでジュリエッタのレギンレイズをからめとる。
「まずは一つ!」
両手の武器を振り下ろそうとするが肩のアーマーをパージして攻撃を回避する。
「何!?」
「それはもう見ました!」
レギンレイズはサンドバルのユーゴーを吹き飛ばし、追撃しようとする。
「グレイズとは違うんです」
「なら手加減はなしだ」
「!?上!」
上からアガレスがレギンレイズを蹴り飛ばし、レンチメイスで追撃を加えようとするのを黒いモビルスーツが狙撃してきた。
「狙撃?あれか」
ミカが黒いモビルスーツを捉えると味方のモビルスーツがいるなかイオク・クジャンが狙撃を続ける。
「あの距離!ただのまぐれ当たりだ……うっ!」
「味方もいるんだぞ?」
「どういう神経してるんだあいつ」
「イオク様は適当に白い奴でも撃っててください。邪魔です」
「援護してやってるんだぞ!」
「いりません」
しかし、ジュリエッタの攻撃をレンチメイス改で受け止め、イオクへレールガンの攻撃を加える。
「こいつ……この距離を………わたしと互角か!?」
「あなた以上です……そして私以上……ぐっ」
石動がアガレスとレギンレイズの間に入ってくる。
「シュヴァルベ?珍しい機体を……」
「こちらは抑える」
「アリアンロッドは俺が抑える。あんたは副官の二人を。三日月はサンドバルを……。正直に言えば推進剤や弾薬が少なくなってきた。アリアンロッドは俺がやる!」
「分かった」
「行かせるものか!ええいどうして当たらん!?」
「避けた方が当たりそうだな」
三日月への攻撃がすべて当たらない。
「守るってことはあれがそうか」
「私が二人を押さえる……君はサンドバル本人を」
アガレスはレギンレイズをワイヤーで拘束し、イオクをレンチメイス改で吹き飛ばす。
「邪魔ばかりを……」
三日月がサンドバルに攻撃を加え、副官が援護に入ろうとするがそれを石動が妨害に入る。
「よそ見とは……関心しないな。あとは頼むぞ」
ユーゴーの頭からミサイルが出てくるとそれを回避しマシンガンでミサイルを処理する。そしてそのままソードメイスで連撃を加える。それを見ていたビスケットはサブレに声をかける。
「サブレ!このままだと相手の首領を三日月が!」
「まったく……世話ばかりを掛ける!」
アガレスはレンチメイスでジュリエッタのレギンレイズをイオクの方へ吹き飛ばしワイヤーで両機を拘束する。
「くっ!邪魔ですイオク様!」
「突っ込んできたのはそっちだぞ!」
アガレスはそのまま三日月の方に向かうと、三日月の攻撃をレンチメイス改で受け止める。
「ストップだ。隊長命令」
「あれ?ああ……助かったよ。殺さないようにって難しくて」
「今度からそれを教えないとな」
するとユーゴーの中からサンドバルが出てくると、降伏の合図を出す。
「くっ……悪魔め………」
「夜明けの地平線団に告ぐ。サンドバル・ロイターの身柄は預かった。速やかに武装解除に応じ降伏を受け入れよ」
三日月がサンドバルを拘束し、イサリビに向かっていく中、サブレはレギンレイズに近づいていく。そして、そのまま拘束していたワイヤーを解除する。
「なんのつもりですか!?」
「戦いは終わったんだ。これ以上拘束する理由もない。それともあんたはまだ戦うつもりか?」
ジュリエッタはどこか悔しそうな顔をすると、少しだけ前に出る。
「あなたの……あなたの名前を教えてください!」
「………サブレ……サブレ・グリフォンだ。お前は?」
「ジュリエッタ・ジュリスです。あなたの事覚えておきます」
お互いに機体を下がらせていく。
「これで終わりではないぞ!成り上がりのガキどもが。お前たちを目障りに思っているのは俺達だけではない。それを忘れるな!」
サンドバルが大きな声で叫ぶ中オルガは冷静に返す。
「構わねぇよ。そいつらにはあんたと同じ末路をたどってもらうだけだ。石動んとこへ連れていけ。仕事は終わりだ。火星に帰るぞ」
「ボス………戦いが終わりました」
マーズ・マセは艦長席で一人で酒を飲んでいると、後ろから副リーダーの男が話しかけてきた。
「どうなった……と、聞くのは無粋だな。鉄華団の勝ちといったところか」
「ええ。サンドバルは拘束後ギャラルホルンに引き渡されたそうです」
「で?こちらの様子は?」
「はい。こちらの部隊が夜明けの地平線団のアジトを襲撃後壊滅させたそうです」
マーズ・マセ率いるフォートレスは鉄華団が戦っているころ、夜明けの地平線団のアジトを襲撃していた。
「ボスの予想通りですか?鉄華団の居場所を教え、夜明けの地平線団と鉄華団を戦わせて、我々はその間に夜明けの地平線団のアジトを襲撃し人材と装備など一式を奪う」
「まあ大まかにはだな……邪魔な奴を消せたと考えるか。部隊に撤退の合図を出せ。ギャラルホルンが来る前に撤退する」
「まさか夜明けの地平線団を壊滅にまで追い込むとはな」
「ギャラルホルンの介入あっての勝利だろうよ」
「頭の首を取ったのはあいつらだ。事実を言ってんだ」
「何の金も生まれない仕事してくれちゃって。賠償金すら取れやしねぇ」
ジャスレイが名瀬にかみついてくる。
「いいじゃねぇか。航路の安全が確保されたんだ。鉄華団の働きには報いてやらねぇとな」
マクマードは名瀬に一つの端末を見せる。
「親父それは……」
「うちが火星で進めている新規のハーフメタル採掘場だ」
「例のクリュセの領内でも最大の規模になるっていう……」
「こいつの管理運営を鉄華団に預けようと思う」
マクマードの意見にジャスレイが文句を告げる。
「ちょっと待てよ親父!そいつはテイワズ本体のシノギにすべきでかいヤマでしょ!」
「鉄華団は身を削って仕事を果たした。その分の報酬はあってもいいだろうよ」
「でも奴らは新参でしょうが!」
「名を上げた今だ。鉄華団の旗を揚げたプラントを狙うバカもいねぇだろう。余計な手間が省けていいじゃねぇか」
ジャスレイはどこか納得のいかないような表情をした。
「決まりだ。名瀬お前から話をしてやれ」
「あいつらも喜ぶと思います。早く知らせてやりたいんで今日のところは失礼します」
名瀬が屋敷から出てくるとアミダが待っていた。
「浮かない顔して。鉄華団の仕事に何かケチでもつけられたかい?」
「そっちは問題ねぇよ。むしろ順調すぎんのが問題かもなぁ」
「なるほど……こっから先はあんたと同じ。身内に足を引っ張られるわけだ」
「オルガの奴はその辺の駆け引きがうまくねぇからな」
「ビスケットに伝えるしかないね。あとは兄貴のあんたが面倒見るしかないね」
「力押しじゃどうにもならねぇこともある。それを乗り越えなきゃあいつらは何か手に入れる度にそれ以上の敵を増やしていくことになる」
名瀬は浮かない顔を浮かべた。
三日月とサブレのもとにハッシュが現れると頼みごとをする。
「少しいいですか?俺もモビルスーツに乗りたいんです。三日月さんとサブレ隊長から団長に頼んでくれませんか?」
ハッシュの言葉にユージンが口を挟もうとする。
「はぁ!?」
「まあまあ。面白そうじゃねぇの」
「どうしてだ?」
「モビルスーツの操縦に関しちゃ三日月さんとサブレ隊長が一番でしょ。だから……」
「そうじゃなくて乗ってどうすんの?」
「三日月さんより強くなります」
「いいんじゃない」
「分かった。俺からオルガに伝えておく。多分三番隊預かりになるから覚悟しておけ」
「おい!三日月!サブレ!」
ユージンが止めようとするのをシノが再び止める。
「三日月とサブレが面倒見んならいいんじゃねぇの。そろそろ下に一人ぐらい付けてもいいだろ?」
「ったく……どうなっても知らねぇぞ」
「何の話?」
「ビ……ビスケット」
ビスケットへのユージンとシノによる説明に数時間かかった。
クーデリアは三日月の畑に水やりをしているとアトラが車でやってきた。
「クーデリアさん!」
「おかえりなさい。あの……お一人ですか?」
「ビスケット達はまだ仕事があるんだって」
そんな話をしている中オルガたちは車で移動しており、その間ギョウジャンは何とかノブリスと連絡を取ろうとしていた。
「クーデリアさんが命を狙われたと聞いて是非とも急ぎでノブリスさんと今後のご相談をですね……」
「何度もご連絡いただいて申し訳ありませんが……」
そういって連絡が途切れる。
「なんとしてもノブリスを通してクーデリアに我々が……無実であることを伝えなければ……何をしているかわからん連中だ。早くしなければ……」
焦り続けるギョウジャンの前についにオルガが姿を現した。
「邪魔するぜ」
「お邪魔します」
オルガは失礼な態度で入ってくるが、ビスケットは丁寧に頭を下げて入ってくる。
「なっ……何なんだ君たちは!?」
「アリウム・ギョウジャン。あんたに話があって来た」
ギョウジャンとオルガとビスケットはソファに座り込む。
「それで英名轟く鉄華団の団長が今日は突然どのようなご用件で?」
「バーンスタイン商会のハーフメタル採掘場を襲った件、クーデリア・藍那・バーンスタインの命を狙った件、それと夜明けの地平線団を使って俺達に弓を引かせた件についてです」
「この落とし前。あんたどうつけるつもりだ?」
ギョウジャンが必死になって言い訳をしていると、それが三日月の一声でぴたりと止まる。
「あんた何言ってんの?」
「まあ君のような子供にはまだわからないかもしれ……」
「俺は落とし前をつけに来た。最初にそう言ったよな」
オルガが足を机に乗せると、ビスケットはギョウジャンに提案を出す。
「ギョウジャンさん。こちらは今回の損害賠償をきっちり払っていただければ文句はありません。ですが、あなたがこのまま言い訳をするのであればこちらもそれなりの手を使わせていただきます。料金についてはこちらになります」
ギョウジャンは端末に書かれた料金を見ると端末を投げつける。
「は……払えるかこんなもの!」
「払えねぇ場合どうなるかわかってんだろうな?」
ビスケットは小さくため息を吐く。
「それは……わ……分かった、待ってくれ、今金は用意する」
「お願いします」
ギョウジャンは電話を掛けると、何とかギャラルホルンに通報しようとしていた。
「ギャラルホルンに通報はしたな?到着はまだか?」
「そ………それがあいつらその件にはかかわらないって言ってる。鉄華団はギャラルホルンとつながってるんじゃ……」
ギョウジャンに焦りの色が濃くなってくるとオルガはギョウジャンをせかし始める。
「おい。金はまとまりそうなのか?」
「い……今その話をしてるんだ………。だったら何とか私たちだけで始末を……おいどうした?」
「お前らだけでなんの始末をつけるって?」
「おい。しっかり見張れよ」
「は……はい」
外も中も鉄華団の団員の手によって制圧されており、もはやギョウジャンに打つ手はなかった。ビスケットはあきらめるように首を横に振る。
「やっぱりこうなるのか……」
「今回の件ではうちには死人も出てる。払う金もねぇなら今すぐ向こうに行ってあいつらに詫びてこい」
「そ……それは……待っ…」
三日月が銃を取りそのままパンパンパンパンと四発発砲する。床に血が広がるとオルガはそのままビスケットとともに立ち上がる。
「さてと……帰るか」
「うん」
全員が外に出ると、昭弘と三日月と昌弘とサブレは黙ってビスケットから離れる。すると、ビスケットはたまったストレスを吐き出した。
「穏便にって言ったじゃないか!どうしてこうなるんだ!」
「仕方ないだろ!このままじゃ死んじまった奴らが浮かばれねぇだろ!」
「だからって!大体オルガは強引すぎるんだ!そんなんだから半年前の作戦であんな失敗を!」
「お前だって一年前で失敗してるじゃねぇか!お前は慎重すぎるんだよ!」
四人は同時にため息を吐く。
「始まりましたね。ビスケットさんと団長の喧嘩。今じゃ恒例行事だけど」
「オルガもオルガだけど兄さんも兄さんだ」
「ていうか。あの二人がこの様子じゃどうしようもねぇな」
「ハッシュ、ライド、撤退の準備をしていてくれ」
ライドとハッシュはそのまま撤退の準備を進める中、昌弘が素朴な疑問をサブレにぶつけた。
「そういえば、ビスケットさんがアトラさんと付き合うようになったのは一年前の失敗が理由でしたよね?」
「ああそうだよ。あの時の失敗をアトラが慰めて、二人の距離が一気に縮まったんだ」
「……あれはお前の責任が強いと思うけどな。それとなくそういう方向にもっていくというか……」
「あの後、俺とサブレはアトラからほっぺをたたかれたんだけど」
三日月は少しうるさそうな顔をすると、みんながサブレの方に期待の視線を向ける。サブレは小さなため息を吐くとそのままビスケットの後ろに回る。
「大体……わひゃ!」
サブレはビスケットの脇に手を通すとそのままくすぐって見せる。ビスケットが「ぜぇぜぇ」と息を吐き、動きが完全に止まると、サブレはそのままみんなの方を向く。
「はいはい!撤退!撤退!」
「……すごいな」
「昌弘……憧れてるのか?」
「眠れないんですか?」
アトラは外で涼んでいるクーデリアのもとに向かう。
「いえ。今日はまだ眠りたくないんです」
「明日になったら家に帰っちゃうんですね」
「家というか会社ですけど」
「お父さんとお母さんのところには帰ってないんですか?」
「今は……やらなければならないことがたくさんあるんです。三日月達のおかげで当面の危険も解消されましたから、また頑張らないと」
アトラはクーデリアに三日月たちの農場の話を聞かせる。
「三日月とビスケットもねこの一年で農場の事、たくさん勉強したんですよ。いろいろ調べて、新しい栽培方法を試してみたり、新しい種を蒔いてみたり」
「聞きました。すぐ枯らしてしまうって。読み書きの方はどうです?」
「う~ん……どうだろう。興味のあることはちゃんとするんだけど、それ以外はいいってさぼるから……でも、時々ビスケットに言われて勉強はしてるんだよ」
「三日月らしいですね」
「いっつもきっぱりし過ぎててね。そこが三日月のいいところなんだけど。今じゃエンビ達の方が読み書きはちゃんとしてるかも」
「なんだか懐かしいですね、みんなで勉強したのが」
クーデリアはどこか懐かしそうにする。
「みんなクーデリアさんに感謝してるんだよ。最初に文字を教えてくれて。文字が読めればできる仕事も増えるから」
「そういう努力がもっと実を結ぶ世の中にしないといけませんね。そして、私自身ももっと学ばなければいけません。アリウムと良好な関係を築いていれば、今回のような事態にもならなかったはずなのです」
「クーデリアさんは何も悪くないよ!海賊をけしかけてくる方が絶対に悪い!」
そんなアトラの言葉でもクーデリアの思いは変わらない。
「でも、そうさせたのはやはり私自身なのだと思います。きっともっと上手に解決する方法があったはずなのに……。何かある度に争いごとになる。それでは鉄華団の皆さんや三日月のような人が生まれ続けてしまう。その連鎖を私はなくしたい」
「じゃあそういう日が来たらクーデリアさんもここで一緒に三日月とビスケットと一緒に農場をやりましょう。だってそうなったらクーデリアさんのお仕事も終わってますよね」
「それは……とても素敵な提案ですね」
クーデリアは笑顔で返す。
「聞いてた話よりしょぼいなぁ。まだ全然なんもねぇじゃん」
「それがいいんじゃないか」
名瀬に連れられてビスケット達はハーフメタル採掘場に来ていた。
「これから採掘を進めりゃ五年先も十年先も。それこそ何十年たってもお前らに莫大な利益をもたらしてくれる」
「宝の山なんだよこれが」
「こんなものをくれるなんて……」
「何十年先なんて全然分かんねぇじゃん。俺おっさんになってんのか?」
「ここからは先の事をちゃんと考えていかなきゃいけないんだよ。ここを回していくにはもっと人手もいるね。新しく仕事を覚えないと……ユージンに任せようかな」
「さすが団長補佐!言うなぁ!」
「シノもやるんだよ。オルガに任せるとまた変な方向に向かうし……」
すると、名瀬がビスケットを単身呼び出し、遠くに連れていく。
「ビスケット、念のためにお前に言っておいた方がいいと思ってな。これからはテイワズ内にも気を付けておけ」
「え?」
「お前たちの事を厄介に感じている奴もいるからな。いいな。オルガはそういうのはまだまだだ。お前が頼りだからな」
「……気を付けておきます」
二人が話していると後ろから声が聞こえてくる。
「ああよかった。皆さんここでしたか。現場の方から見てもらいたいものがあると……」
その場に急ぐとその場には見慣れないガンダムフレームがあった。
「これってモビルスーツですよね?でもこのフレームって……」
「ああ。見慣れねぇ装備が付いてるがこいつはガンダムフレームに見えるな」
「ガンダムフレーム」
シノがまっすぐにガンダムフレームの方を見つめる中、さらに奥へと案内する。
「奥にもう一つあるんです。そっちはモビルスーツにしては大きいんですが……」
オルガたちはマクギリスに会いに火星支部に来ていた。
「素顔のあんたと会うのは初めてだな」
「火星で会ったのは君と帽子の彼だけだったか。彼はここにいないようだが……。活躍は石動から聞いた。元気そうで何よりだ」
「そっちはなんか疲れてるね」
「三日月君!」
「旅の疲れだろう。明日にはまた地球にたたなければならないのだから気が重たい」
「まずは礼を言わせてもらう。テラ・リベリオニスの後始末助かったよ」
「サンドバルを捕らえた君たちへの返礼としては安いくらいだ。他に何かあれば遠慮なくいってくれ」
「仕事の分の報酬はもらってんだ。それよりも、アンタが仮面なしで俺らを呼びつけた要件を聞こうか」
オルガは疑いの視線をマクギリスに向ける。
「言葉にすれば大した話でもないのだがな……鉄華団とは今後もいい関係でいたいのだよ……そう身構えないでもらいたいな」
「ギャラルホルンが一枚岩じゃねぇってことは今回の件で分かってる」
「アリアンロッド艦隊の事か?」
「あんたは何がしたいんだ?」
「前に話したとおりだよ。腐敗したギャラルホルンを変革したい。その為にはより強い立場を手に入れる必要がある。当面の目的としてはラスタル・エリオンよりも上に行くことだ」
「アリアンロッド艦隊の総司令ですね。あなたと同じセブンスターズの一員でもある」
「今の所私一人の力で太刀打ちするのは難しい相手でね。協力してくれる味方が必要だと感じている」
「あんた正気か?俺らみたいなチンケな組織にする話じゃねぇな」
「私は君たちを過小評価する気はない。君たちとしても、私と組むことに十分な利益はあると思うが」
「時間をくれ………。俺一人で決めるわけにはいかねぇ」
「時間が必要だと?」
「ああ、相棒とちゃんと話さないといけないからな」
するとマクギリスは少し考え込むと、黙ってうなずく。
「分かった。そういうことならいいだろう。どのみち私もすぐに動く気もない」
マクギリスとオルガの結論は出ることなく終わった。
どうだってでしょうか?今のところは話が大きく動くことはありません。マーズ・マセの動きに今後は注目していてください。
次回は『アーブラウ防衛軍発足式典』です。よろしくお願いします。