機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 別   作:グランクラン

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 ビスケットに生きていてほしいっと思い書いた小説です。まあ、見てもらえばわかるように一部の人間が死なずに物語に参加していきます。あくまでも主人公は三日月なので、そこは変わらないように、話を作っていきたいと思います。楽しんでいただけたらと思います。


別壱
ヒューマンデブリ


 オルガ・イツカが目を覚ますと視線の先に自分を長い間支え続けてきてくれたビスケット・グリフォンの無残な姿が有った。

 ビスケットは下半身をモビルワーカーによってつぶされており生存は絶望的だった。

「ビスケット!返事をしろ!」

 オルガの叫びはビスケットの耳には届いていないのか、それとも届いているのか、オルガには判断できなかった。しかし、ビスケットは必死に手を伸ばし、生きようともがく。一生懸命に伸ばしたその手をオルガが握りしめる。

「オル…ガ……俺たちで………鉄華……団を———」

 そこでビスケットは力尽き、地面に伏してしまう。

「ビスケットォォ!!」

 オルガの叫びが空に響き、空からは雨が降っていた。

 

「ビスケット!!」

 オルガは勢いよく叫び、ベットから起き上がる。

「ゆ、夢か?」

(またあの夢か………)

 オルガは額を抑え、頭を左右に振る。ブルワーズとの闘いを前に一時的な睡眠をとるように言われた。オルガは、団長としての仕事をビスケットに任せ、久方ぶりの睡眠をとっていた。しかし、オルガはここ最近ビスケットの死ぬ夢に襲われており、夢を見れば見るほどそれは現実感が増してくる。

(そんなはずはねぇ……あれは夢だ)

 自分にそう言い聞かせるオルガはそれでも不安を隠しきれなかった。

 そんなことはない、これからも俺を支えてくれるはずだと。しかし、日に日に現実感を増していく夢の感覚は次第にオルガに嫌な予想をさせるには十分だった。

 コンコン!

「オルガ!そろそろ作戦時刻だよ」

 ビスケットのそんな声が聞こえてくる。

「ああ、今行く」

 オルガは嫌な汗をぬぐい、ジャケットを握りしめ、そのまま外に出ていく。

 ドアの外ではビスケットがいつもの表情でオルガを待っていた。

 ビスケットの顔を見ると、夢の姿が一瞬だけ浮かぶ。

「オルガ?」

「なんでもねぇよ」

 そういいながらオルガはブリッジに移動していく。

 

 百里とバルバトスがブルワーズのマン・ロディと交戦し始めてすでにかなりの時間が経過していた。両機は移動距離の長い機体で来たために、デブリ帯ではうまいこと戦えずにいた。

「ダーリンはまだなの!?」

 ラフタは悲鳴にも似た叫びをあげる。

「こうデブリが多いとやりづらい。この反応……」

 敵の攻撃をうまいこと回避しながら三日月・オーガスは鉄華団の仲間の昭弘・アルトランドの弟の昌弘の機体を捉えた。

 宇宙海賊ブルワーズの頭領ブルック・カバヤンはいまだに見つけられない敵の船に苛立ちを隠しきれなかった。

「まだ見つからないのか!?」

 しかし、その直後、予想もつかない方向から敵は姿を現した。

 デブリ帯の中を突っ切るという危険な行為をしながらもイサリビとハンマーヘッドはブルワーズの戦艦に奇襲を仕掛けることに成功した。

『こっちが奇襲を受けちゃったじゃない!どうすんのよ!?』

 通信をしてきたのはこれから出撃する組織のナンバー2のクダル・カデルだった。

「こっちは乗り込んできたやつをたたく、お前は外をたたけ!」

 クダルはガンダムフレームのグシオンで出撃する。

 そしてイサリビからは今から昭弘が出撃しようとしていた。

「待たせたな昭弘」

「すまない…ヒューマンデブリの俺らなんかの為に…」

 謝る昭弘にオルガはあきれたような表情をする。

「まだ言ってんのか?いい加減聞き飽きたぜ。今までがどうだったかは変えられねぇよ。俺らだって宇宙ネズミだ。ただ……」

 間を少しだけ開けると、はっきりと告げる。

「これから先は変えられるよ……俺らの手でいくらでも。いまここでお前がそれを証明して見せろ!!」

 そんなオルガの言葉に昭弘ははっきりとうなずく。少しだけ笑顔になると叫び出撃する。

「昭弘・アルトランド!グレイズ改出る!」

 昭弘はまっすぐに弟の乗るマン・ロディに近づこうとするが、それを別の機体が立ちはだかる。しかし、後ろから昭弘への援護攻撃が入ると、敵は二手に分かれる。

「昭弘の邪魔はさせない!」

「昭弘!急げ!」

 アジーとアミダは百錬で昭弘の道を作ってくれる。

「すまない!みんな」

 そういうと昭弘はまっすぐに昌弘のもとにたどり着く。

「なにをいまさら」

 昌弘はあくまでも昭弘に攻撃を仕掛けるが、昭弘はあえてそれをよけない。機体の距離は次第に短くなっていき、昭弘の機体は昌弘の機体にがっちりしがみつく。

「迎えに来たぞ!昌弘」

 しかし、昌弘の反応は予想以上に低い。

「俺ずっと待ってたよ。兄貴を……けど、分かったんだ……期待だけしても無駄だって、期待しただけ辛くなるって」

「だからこうして迎えに来た」

「それが無駄なんだよ!!」

 昌弘は大きな怒鳴り声をあげる。

「こうして兄貴が迎えに来てついて行って、それで何が変わるっていうんだ!?遅かれ早かれどうせ死ぬ、だってそうだろ!?俺たちはヒューマンデブリなんだ!地面でなんて死ねない……宇宙で……ゴミみたいに死んでいくんだ」

 昌弘のネガティブな反応に昭弘ははっきりと答える。

「そうだな……俺もそう思っていた」

 兄の言葉に昌弘は「え?」と少し驚く。

「俺はデブリだ、何をやったってどうしようもねぇ、このまま一生何も変わらねぇって、正直お前のこともあきらめちまってた……けどな、こんな俺を人間扱いしてくれる奴らが……いや、家族だって言ってくれる奴らができたんだ」

 昌弘は体を震わせ、「家族?」と問い直す。

「あぁ、みんながお前を待ってくれるだから……」

 次第に昌弘の様子がおかしくなっていく。表情が少しづつ裏切られたという顔に変わっていった。

「家族ってなんだよ。兄貴、アンタと父さんと母さんと……それだけだったよ、俺の家族は……」

 昭弘の言葉は逆に昌弘に裏切ったと思わせるのには十分だった。

「昌弘……」

「俺が……あんたの事を待っている間に……一人だけいい目にあってたのかよ!!やっぱりあんたは俺を捨てた!」

 にらみつけるような視線は次第に昭弘に焦らせた。必死で弁明しようとする昭弘。

「違う!昌弘俺は……」

 しかし、そんな言葉も昌弘には届かない。

「あんただってさ…今にわかるよ…アンタは勘違いしてるんだ……人間だなんて………笑うよ。どうせすぐにわかるんだ……ヒューマンデブリがどうやって死んでいくか。すぐにね!」

 どこか壊れたような表情をする昌弘。

 三日月の乗るバルバトスはグシオンとの交戦になっていた。しつこく追撃するバルバトスにクダルは苛立つ。

「どいつもこいつもつかえねぇ!」

 周囲にいるマン・ロディはほとんどが戦闘不能になっており、残りのマン・ロディもとてもではないが、加勢に入れる状況ではない。しかし、そんな中クダルは組み合う昌弘の姿を見つけた。

「あいつを使えば、白いやつを……」

 クダルはダッシュで昌弘のもとに向かう。

「昌弘そいつを抑えておけ!」

 昌弘ごと昭弘を殺そうとするクダルに対して、昭弘は「しまった!」と焦りを見せる。

 しかし、昌弘は昭弘を突き飛ばす。

「昌弘!!」

 グシオンのハンマーが昌弘を襲おうとするとき、周囲にいる機体に新たなエイハブウェーブの反応を示す。場所は……

「上か!?」

 クダルは攻撃を中止し、後ろに少し下がる。そして昌弘とクダルの間に黒い機体がレンチメイスを振り下ろす。

「し、死神?」

 黒い機体の右肩にはドクロと死神の鎌のマークが刻まれている。

「ガンダムフレーム……アガレス」

 アガレス……それはこの宇宙で死神と恐れられた機体だった。




 どうだったでしょうか?とりあえずは昌弘は生存は確定したと思っていただけたらと思います。黒い機体であるアガレスについてはこれからも出てくる重要な機体です。この機体とパイロットがこの先の死亡フラグを回避してくれます!パイロットは次回から参加です。
 では次回のタイトルは『死神』です。
 次回はバルバトスVSグシオンVSアガレスです!
 アガレスのパイロットに期待を!!

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