01 始まり
「まずは、ようこそ初めまして、我が第1管理世界、ミッドチルダへ」
次元渡航船から降りて言われた最初に言われたのは、そんな定型文だった。隣には一緒に行動することになったシャルロットこと、ジェイルさんの娘であり部下のトゥーレが、どこで仕入れたのか麦わら帽子を被りながら目の前に立っている。
「どう?異世界の初感想は?」
「……なんていうか、外見だけ見れば対して地球と変わらないね」
にべもなくいう僕に、トゥーレは苦笑いである。というのも、ベンチに座る親子にエスカレーター、ホロ映像式の便案内ボードと、それほど地球と変わった雰囲気はまるでない。
「まぁミッドも地球も、科学技術だけなら見た目はどっこいどっこいだからね。ただこっちは基本エコカーで、携帯の代わりにデバイス、みたいなもんだし」
「でもデバイスって、携帯の何倍も価格するんですよね?良く子供から持てるな……」
「そもそもの話、ミッド含め管理世界の就労可能年齢が10歳ぐらいだからね。管理局……地球でいう警察と検察と裁判所が合わさったような組織……だと特にそうだよ」
なんとも物騒な話だ、そう思いながら僕達はドクターに指定された待ち合わせ場所……駐車場へとやって来た。
「そういえば誰が迎えに来るんです?街中じゃ魔法は原則禁止だって聞きましたけど?」
「えっと……チンク姉様とセイン姉様ですね。言っておきますが、チンク姉様に身長や体格の話はNGだよ?」
「NG……ね、具体的には?」
何となく理由が分かった気がするので、とりあえず少しだけトゥーレにかまをかける事にすると、
「えっと、例えば地球でいうロリだとかペチャパイとか……ハッ!!」
案の定、言ってから気づいてるが、もう既に遅かった。なぜなら
「ほう、貴様姉に対してそんな風に思っていたとはな……」
まるで鬼神のようにゴゴゴと揺れるオーラを噴出した銀髪の少女……恐らくはチンクと呼ばれる少女が立っていたから。
「ヒィ!!姉様いつの間に!!」
「つい先ほどだ。しかし着いて早々に幼児体形だの胸が小さいだのと……」
「こ、これはその……」
「トゥーレ、お前とは少しO★HA★NA★SHIしたいと前々から思っていてな、悪いが少し付き合ってもらうぞ」
イチカ~助けて~、そう叫ぶ未来の相棒に内心で合掌しつつ、僕はただただ苦笑を浮かべるのだった。
「えっと、もう一人のセインさんは……」
「こっこだよ~!!」
「わぶ!?」
突然後ろから抱きつかれたと思いきや、何やらとても柔らかい膨らみに押し付けられ……って違う違う!!
そう思って慌てて離れると、そこにはどういうわけかメイドな格好の水色ヘアーな、見た目トゥーレと同い年ぐらいの少女が我が物顔で立っていた。
「なっはは~悪戯成功!!」
「た、質悪いですよ!?というか、公衆の往来で何をやってるんですか!?」
「大丈夫大丈夫、ここら辺はクアットロが一時的に人払いしてくれてるからね。それで、君がドクターが言ってたイチカか~」
ふむふむと、まるで値踏みするように観察する彼女に若干下がりながらも、なんとか何時もの平常心に戻る。
「それで、僕達はどうやって移動するんです?」
「あー、それも含めてちょっと移動しようか、どうせあの二人も暫くは戻ってこないし」
そういわれて僕はセインさんに連れられ、なぜか用意されていた一台の乗用車……ぶっちゃけ地球のムー○に乗り込む。ちなみに僕は助手席で、セインさんが後部座席にいる。
「着いて早々だけど、まずは私達がどんな風な事をしてるのか、ドクターからは聞いてる?」
「……ドクターが犯罪者で、レリックとかいう特殊な鉱石?を集めてるんでしたっけ?」
「そ、で前々から今日、ここにその現物が現れるって話だから、早速強奪しようって寸法さ。さらに言うと、君も来させて私達の実力を見せちゃおうって訳さ」
セインさんはそう言うと、突然服を脱ぎ始める。ぎょっとして前を振り返って慌てて日除けカバーを足元から取り出して広げる。いくら人払いしてるって言っても、恥ずかしいものは恥ずかしいんだよ!!
「ん~?何やってるの?」
「イエ、ベツニナニモ……」
「なんで片言……って、ああそういうことか、別に恥ずかしくないから振り向いてみなよ」
いやいや、振り向けって言われても服を着る音が全くしなかったんですが?そう言おうと思ったが、なぜかシートを通り抜けてしまった僕はばたりと倒れ込んでしまう。
「~~!!」
そこで見たのは、肌とかは隠れてるが、体格が一切隠されてないラバースーツを身に纏った、それなりに整ってるプロポーションのセインさんの姿があった。
「な、なんですか!!それ!?」
「これ?これが私達ナンバーズの戦闘服であり、通常服装なんだよ」
「ドクター……」
天を仰ぐが、内心ではドクターにこれ以上ない賛辞を送る。いくら鈴という彼女が居れど、男としてこんなのを見せられたら……うん。言わせんな。
「まぁ気にすることはないよ。それよりも、さっさと移動するから掴まっててね」
「あ、はい。でもどうやって移動を?」
「ヌフフ、イチカ、移動手段は何も陸や空だけじゃないんだよ。あ、ここからは念話にしてね?色々と大変な事になりたくないなら」
はい?そう思った瞬間、今度はまるで沈むような感覚と共に、文字通り体が地面をすり抜け始めた。
『ち、地中!?』
『そ、私のIS『ディープダイバー』。地中だろうが水中だろうが、私に掛かればどんなところでも泳いで移動できるのだ!!勿論呼吸もね!!』
まるで得意気に語るが、確かにこれは凄い。まさか彼女に掴まってるだけでその恩恵が受けられるとは……。
『……ってあれ?もしここで手を放したらどうなるんです?』
『恩恵を受けられなくなって、酸欠で死ぬよ?ちなみに水中と同じで、土の中で口開くと一気に土を食べちゃう危険性があるんだ』
『それは嫌ですね』
と、そんなことを言ってる間にまた地表に出てくると、そこはさっきの空港……宇宙港が見える埠頭のような場所だった。
「じゃあ私はここで。あとはクアットロが何とかしてくれるよ」
「はぁ」
「それじゃイチカ、あとで楽しいことしてあげるからね~」
そう言ってセインは再び地中へと戻っていく。どうでもいいが、最後のそういうのは勘弁してもらいたい……鈴にバレて死にたくないし。
「ふーん、アナタがドクターのお気に入り……ねぇ?」
ビクリとして振り向くと、そこにはセインと同じラバースーツに白いコートと眼鏡を掛けた女性が立っていた。
「……確かに私好みね、たまにはウーノ姉様の話を信じてみるべきかしら」
「えっと、アナタが?」
「あぁ、そうよ。私がクアットロ、よろしくねイチカ君」
次回『02 空港火災』
一夏「リリカルマジカルがんばるぜ!!……ってこれでいいのか?」
クアットロの口調難しい……これで合ってるのか……?