無限の欲望と呼ばれる夏   作:ドロイデン

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sts-Ex11 翳り咲く夏鈴(かりん)

「Gaaaaaa!!」

 

 俺という肉体を離れて、言葉すら放てなくなったカルマノイズ……いや最早獣は黒い電撃を纏った鞭のような物を力任せに振り回してきやがった。

 

「白鈴!!」

 

『プロテクション展開、同時にバリアジャケットを高速戦仕様に変更します』

 

 が、俺はすぐに魔法による障壁を展開、さらにバリアジャケットの背中からIS特有の機械パーツと共に魔力の翼を展開する。

 

展開装甲(アクティブアーマー)正常に稼働、いつでも大丈夫です』

 

「なら一気に駆け抜けるぞ!!」

 

 愛刀『雪片』を抜き、一呼吸のうちに懐へと飛び込む。魔力、歩法、そしてISによるエネルギーの三乗効果によるそれは、正しく瞬間移動と大差がない。

 

「Gaaa!?」

 

 が、少なからず俺と同化してた為か奴もこの動きに対応できたらしく、背後へと回った俺へと食らいつこうとする。

 

「雷閃!!」

 

「Gaaa!!」

 

 電撃による斬撃と電撃による閃鞭、互いの一撃がぶつかり合う衝撃は正しく互角で、少し頬をひきつらせる。

 

「流石は雑魚じゃないと言うだけはあるか……なら、こっちも覚悟を決めるか……」

 

 そう言うと俺は懐から再び弾丸……カートリッジLを取り出すが、そうはさせないと奴は連続で鞭を仕掛けてくる。

 

「く、このままじゃ……」

 

 あのカルマノイズのせいで今使える魔力は全力の二割が限度、ISのコアから供給されるエネルギーでなんとか今は戦えてるが、それも長くは持たない。

 

「――どこからだろう 声が響く

 立ち上がれっと言っている

 

 その時、後ろから飛んできた短剣が奴の地面に突き刺さると一気に爆発し、さらに翠の刃が奴の方へと飛んでいく。

 

「これは!?」

 

 振り返ってみれば、得物を構えて突っ込んでいく掃除用具……いや、箒とマドカがこちらを見て笑う。

 

「時間稼ぎは任せろ!!」

 

「だから、トドメはしっかり決めてほしいのデス!!」

 

「けど鈴は……」

 

 二人に預けたはず、そう言おうとした瞬間に魔法通信によるディスプレイが開く。リイスさん、そして弾と数馬からだった。

 

『彼女は此方で保護している。だから一夏は奴を頼む』

 

『無茶無謀するのは止めねぇから、さっさとケジメつけてこい!!』

 

『こっちだって好きで雑魚ノイズとクローン潰してるんじゃないからね』

 

「お前ら……」

 

 三人からの言葉、それに俺はフッと笑い、握りしめた弾丸をデバイスに込めた。

 

「白鈴、一気に決めるぞ!!」

 

『了解ですマスター。カートリッジL、ロード開始』

 

 

推奨BGM 風月ノ疾走(ソロver)

 

 

 次の瞬間、爆発的な魔力に肉体が悲鳴をあげるが、その程度問題なかった。なぜならば、

 

「好きなやつが無茶したなら、男はそれ以上の無茶をするのが当然なんだよ!!」

 

『バリアジャケットモード変換……ブラスターシステム稼働』

 

「ブラスターシステム……リミットリリース!!」

 

 次の瞬間、バリアジャケットの翼が巨大な機械翼へと変換され、両腕には巨大な機械の籠手がついたかと思うと、その全身から溢れんばかりの魔力の翼が展開された。

 

《がんばって、一夏》

 

「鈴……あぁ、やってやるさ!!」

 

 その言葉と共に、俺は全力で駆け抜けた。

 

「――この道を駆け上がるまで

 

 どこからか涌き出る旋律は、今を超えるための前奏曲(プレリュード)、そして後奏曲《ポストリュード》だ。

 

「Gaaa!?」

 

「白鈴、システムフル稼働で行くぞ!!」

 

『了解、無段階移行(シームレス・シフト)及び聖王核(レリック)による模倣事象の並列運用、イグニッション!!』

 

 奴に近づいた一瞬、俺が握っていたそれは長大な白銀の剣へと変わり、奴へと振るう。

 

 獣はまさかの行動に避けれずに吹っ飛び、また咆哮をあげる。

 

「それ私の技!?」

 

 箒は思わず驚いているが、この程度なら序の口。真価はここからだ。

 

「――失ってから気付く涙は 無情の極みだから

 

 続けて取り出したのは巨大な大鎌。言うまでもなくマドカの大鎌のそれだった。

 

「せぇや!!」

 

 それを振り回し、飛び出す翡翠の刃は先程のそれと瓜二つ、いや、威力だけならこちらのほうが上だった。

 

「アタシの呪りeッTぉまで!?いったいどうなってるデス!?」

 

 何てことはない、ただの無茶ぶりを極限までやってるだけのこと。

 

 あの夏の日以来、俺はとにかくがむしゃらになって技や力を磨いてきた。失ったもの、手放したものに見合うだけの力を得なければと業を重ねてきた。

 

 そして手に入れた力、それは本来紅椿と呼ばれるはずだったそれに搭載されるはずだった無段階移行……経験などに応じて自在に武器を作るそれと、聖王核(レリック)の力で限定的に得た強大な魔力と処理速度により瞬時に作り出す、それが俺の切り札。

 

「魔導と科学の融合……これが俺のブラスターシステム、セイクリットシフトだ!!」

 

 産み出したのは鈴が持っていた剣二つ、それもXD時に持っていたそれを取り付け、手裏剣となった物を

 

「――壁を越え その先の勇気に繋ごう

 

 一気に投げつける。が、しかしそれを獣は鞭で弾き飛ばし、こちらに飛びかかってくる。

 

「Gaaa!!」

 

「ラァァァァ!!」

 

 互いに殴る殴るの攻防だが、いかんせん速さでは此方が勝る。故に奥義の一つで畳み掛ける。

 

煉呀狂咲(れんがきょうしょう)兜理華武斗(とりかぶと)!!」

 

 振るう拳に電撃を纏わせ胸部……肺と気管支に強大なインパクトを与える。電撃と加速によって振り抜かれたその一撃は奴を吹き飛ばし、さらに痙攣を起こして倒れている。

 

「内臓に電撃を当てたからある程度は制限できるだろうが……」

 

「Gaaaaaaaaa!!」

 

 正しく読み通りとでも言うように、奴は人の姿から元の巨大な鳥のようなそれへ姿を変えていく。

 

 そして何を思ったのか、奴は高度を上げたかと思うと、次の瞬間急転して逃げるように飛び去る。

 

「逃がすか!!」

 

 慌てて空へと飛び出すが、まるでタイミングを見計らったとでも言うように飛行型のノイズが攻撃を仕掛けてくる。

 

「クッ、このままじゃ……!!」

 

「――遠き地にて、闇に沈め……デアボリック・エミッション!!」

 

 逃げられる、そう思ったその時聞き覚えのある詠唱が聞こえたかと思うとノイズ達が一瞬で闇の中へと消えていく。

 

「リイスさん!?」

 

「早く行け一夏くん。こちらを気にしてる余裕は無いだろ」

 

「はい‼」

 

 軽く返事をし、俺は奴に向かって駆け抜ける。やがて結界の張ってある隅で出られずに暴れてる奴に照準を合わせる。

 

「来い、禁月輪!!」

 

 展開したのは鈴が使っていた巨大な円環の丸鋸、それを三つ展開し、それぞれの中心に魔方陣を展開させてそれぞれを重ねる。

 

「成層の彼方より来たれ無限の雷光」

 

 重なった円環は高速で、それぞれが別の方向へと回り始める。

 

「聖核、雷光、零落の円環を我は繋ぐ者」

 

 次第に円環事態も電撃を帯び始め、右手の刀も帯電する。

 

「晩鐘を貫き、今全てを破極する!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雷豪ノ覇刃(らいごうのはじん)滅破閃突(めっぱせんとつ)

 

 

 

 

 

 

 

 円環の中心の輪に放たれた電撃による突き、それに呼応するように放たれたそれは正しく、

 

「Gaaaaaaaaaaaa!?」

 

 破壊するもの(ブレイカー)、それに相応しく一撃にて業の獣を貫き消滅させる。塵すら残さず、全てを焼き消して……。

 

 

 

 

 

 

オマケ vivid時空一夏宅にて

 

マドカ「アレ?一夏さん犬飼い始めたんデスか?」

 

一夏「ん?あぁまあな。可愛いだろ」

 

マドカ「あぁ~確かになご……ヘックシュン!!」

 

一夏「ん?風邪か?」

 

マドカ「いやそんなわけ……ヘックシュン!!ヘックシュン!!」

 

一夏「……」ツァイトを近づけてみる

 

マドカ「ヘックシュン!!ヘックシュン!!い、一夏さんヘックシュン‼」

 

一夏「うん、アレルギーだな間違いなく」

 

マドカ「デェェス……これはまさかウェスト嫌いながここまで侵食してきて……ヘックシュン!!」

 

一夏「いやさらっと寄宿学校ネタ突っ込んでくるなよ……」


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