無限の欲望と呼ばれる夏   作:ドロイデン

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コラボ中ですが、ちょっと行き詰まったので番外編を一つ。

近いうちにコラボの続きは出します、はい


番外編 ペットが欲しい

「ペット飼いたい!!」

 

 夕食時、突然の鈴のその宣言に俺は意味がわからず首を傾げた。

 

「いきなりどうした、そんな藪から棒に」

 

「だって私達の回りって、ペット飼ってる人達ばかりじゃない」

 

「そうか?」

 

 別段知り合いでペット飼ってる人間なんて居ないはずだが。

 

「ヴィヴィオのとこはウサギとフェレットだし、フェイトさんのところは竜と狼、はやてさんのところも狼飼ってるじゃない!!」

 

「ちょっと待て、え、そういうこと?」

 

 フリードは確かにペットと言われれば納得できなくはないが、アルフとザフィーラに関しては使い魔と守護獣だし、ユーノさんも変身できるとはいえ普通の人間、クリスに関してはもはやぬいぐるみだ。

 

 というかさらっとユーノさんを高町家に入れてやるなよ。たまに無限書庫から引っ張り出して来てるのは知ってるけど。

 

「いや、けどナンバーズ組は……あー、もしかしてルー繋がりでガリューとか虫連中が入るか」

 

「それに簪だって、一応竜飼ってるようなもんじゃない」

 

 そう言われればなるほど、納得はできた。

 

「けどいきなりペットなんだ?そりゃあ鈴が動物好きなのは知ってるが」

 

「……だって、一夏が居ないと寂しいから」

 

「あー……」

 

 研究者兼格闘技コーチ兼嘱託魔導師(嘱託に関しては研究者やってるからほとんど声が掛からないけど)なんてやってるおかげで時間をゆっくり取れなくなり、折角二人で暮らしてるのに一緒の時間が取れないことを、鈴は遠回しに言ってるのだと思う。

 

「まったく、ほんと可愛いやつだな鈴は」

 

「ふにゃ!?///」

 

 俺は鈴の頭を優しく撫でながら微笑む。

 

「大丈夫だよ、どんなことがあっても俺は鈴の側にいるって決めたんだからさ」

 

「う、うん……///」

 

 そんな一時を楽しみながら、俺と鈴は和やかに夕食を進めるのだった。

 

 余談だが、その日の夜に自宅にて猫の鳴き声のような声が響いたのはご愛敬である。

 

 

 

「……というわけでして、なんとかなりませんでしょうか」

 

 翌日、昼休みの時間帯を狙ってとある相手に通信をしてみると、件の相手は苦笑いを浮かべていた。

 

『えっと、のろけ話ごちそうさまでした?』

 

「いや、別にのろけてたわけじゃないんですがなのはさん」

 

 なぜ管理局のエース・オブ・エースにして、ヴィヴィオの母親である彼女に聞いたのかといえば、

 

『フェイトちゃんに聞いたら確実に犬の魅力を教え込まれそうだからね~』

 

「教え込まれるというか、あれはもう洗脳の域かと」

 

 少し前に小型犬を買い始めたオットー&弾のコンビだが、その際にペットショップの犬コーナーで店員顔負けの力説と笑みで薦めた……というより脅迫した?のが件のフェイトさんである。

 

『かといってはやてちゃんに話をしたら絶対に猫派閥に連れてかれるし』

 

「ザフィーラという犬が居るのに猫好きとはこれいかに」

 

 といってもはやてさんはまだ良い方で、彼女の場合は友人である二人に猫好きにO☆HA☆NA☆SHIされそうなので頼るわけにもいかない。

 

 ではなぜなのはさんかといえば、意外とこの人どっちも好きというタイプ……というだけじゃなく、仮にフェイトさんと彼の二人がどこからか嗅ぎ付けてO☆HA☆NA☆SHIしようとしたさいの保険でもあるからだ。

 

『まぁ私としては鈴ちゃんが基本的にお世話するのなら、やっぱり猫より犬じゃないかな』

 

「そのこころは?」

 

『犬って種類によっては忠誠心強いし、何より番犬とかにもなるからね』

 

「なるほど……では」

 

『うん、私の方から話はしておくから近いうちにでも行ってみて、あそこなら犬がいっぱいいるから』

 

 

 

 数日後、

 

「ただいま、鈴」

 

「おかえり、一夏……え!?」

 

 帰宅した俺を出迎えに来た鈴が驚きの声をあげる。

 

「一夏、その子……」

 

「前に鈴がペットが欲しいって言ってただろ?だからちょっと知り合いに相談して貰ってきたんだ」

 

 俺は腕のなかで顔をひょっこり出してるそれ……まだ子犬のハスキーを彼女に渡す。

 

「え、でも貰ってきたって……え?」

 

「なのはさんの知り合いに犬を多く飼ってる人がいてな、相談しに行ったら珍しくなつかれて……」

 

 その知り合い曰く、生まれたばかりの子犬らしく、飼うなら丁度良いのではないかとのこと。

 

「とりあえずフェイトさんにも相談して、近く犬小屋を用意してくれるって……」

 

「――ありがとう一夏!!」

 

 そう言うと子犬を抱えてくるくると回り始める嬉しそうな鈴に、子犬も嬉しいのかワンと吠える。

 

「ねぇ一夏、名前は!?」

 

「いや、まだ決めてないよ。鈴が名付けてくれ」

 

「うーん、そうね……」

 

 抱き締めながらうんうんと考えてると、鈴はふと此方を見る。

 

「そういえば、この子って性別は?」

 

「話によればオスってことだけど」

 

「オスか~……うん、決めた!!」

 

 そう言うと鈴は子犬を床に下ろし、自身も屈んで子犬を見る。

 

「ツァイト、貴方の名前はツァイトよ」

 

「ワン!!」

 

 子犬……ツァイトと名付けられた彼は再び吠えると鈴の方へ飛び付き顔をペロペロと舐め始める。どうやら気に入ったようだ。

 

「アハハ、くすぐったいわよツァイト」

 

 笑顔で笑う彼女に俺は自然と笑みが溢れるのだった。


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