あまりの衝撃に俺は頭が一瞬真っ白になった。なぜ、どうして、そんな風な思いが頭を過り、
『一夏くん?』
「っ!!あ、あぁ」
クアットロから通信で呼び掛けられて漸く正気に戻った。
「む、男の一夏が……」
「ちょっと黙れ掃除用具……って掃除用具!?」
「掃除用具!?」
ガビーンと擬音が付きそうなほどにメンタルにダメージを受けてるみたいだが、俺からしたらこれまた愕然とするしかない。
「な、なんで……お前はあの時に」
「掃除用具……確かに私の名前は箒だがそれは無いだろう……」
「ほ、箒ドンマイ」
「あ、マドカも居たんだ」
「最初から居たよ!!そりゃこの二人に比べたら影薄いけど!!」
そんな憤慨するマドカに笑いながら問いかけようとするが、状況がそれを許さなかった。
「――たく、粗方片付けたと思ってたんだが、まだアイツら居やがるのか」
振り返るとそこには先程より数は少ないが、それでも十数体のあのクローン兵がわらわらと近付いてきた。
「……とりあえずお前らはここで手を出さずに休んでろ。特に猪突猛進モップ」
「モップ……」
「ほ、箒!!傷は深いわ、ガッカリしなさい!!」
「鬼デスか!!」
変なコント状態になってるおかげで何となくぐだぐだだが、まぁ張り摘めてるよりはマシか。
「けど一夏、アイツらを倒すのは……」
「大丈夫だ鈴……お前だけはなにがなんでも守り抜いてやるから」
そう呟いた俺は懐の刀を抜き、飛行魔法を使い高速で接近する。
「雷雪ノ光迅!!」
一瞬にして何度も切り裂く高速の剣劇は的確に奴等の爆弾のある場所を貫き、切り裂き、はたまた魔力による電撃を纏わせた蹴りで寄ってきた邪魔なやつはぶっ飛ばす。
「煉華・
はたまた掌に電撃を纏わせた貫手で、リンカーコアのある胸部を貫き壊し、強制的に爆弾を使用不可能に追い込む。
「す、凄い……」
「私達がアレほど手こずったアレを、一瞬で無力化してるぞ」
マドカと掃除用具が驚いてるが、この程度できなきゃコイツらや管理局とマトモに戦うなんて出来るわけがない。
「さて、と」
最後の1体の脳天から真っ二つに切り裂き、刀を鞘に収めて三人の方へ再び体を向ける。
「とりあえず色々と確認したいから……悪いが大人しく武装解除して貰おうか?」
「……その前に一言聞きたいんだけど、一夏は管理局の所属なの?」
鈴(?)の言葉に俺は後ろ髪を掻き回しながら、
「その答えなら否だが……敵地でする質問じゃねぇぞ」
「……確かにその通りだな」
俺の台詞の後を追うように空から答えた女性、リインフォースが刀を抜きながら現れる。
いや、それだけではなく弾、数馬、本音、ノーヴェ、セイン、クアットロ、そしてトーレさんが三人を囲むように現れる。
「弾に数馬……それに本音にアインスさん」
「それだけじゃないぞ。どうやら一夏から聞いたことのあるナンバーズとやらまで」
「うう、多勢に無勢デェス……」
三人も状況が分かってるのか、大人しく武器を降ろしてデバイスを解除する。
「さて、それじゃあアジトに戻るぞ」
アジトとやらに連れてこられた私達は会議室のような一室に連れてこられていた。
「しかし……デバイスを取り上げられてしまったのは痛いな」
「しょうがないでしょ、敵地なんだし。それに一通り調べたらしっかり返すって、こっちの束博士も言ってたし」
そう、先ほどまで居た一夏と束博士は私達の事を話すと何やら納得したのか、デバイスこそ取られたがすぐに返すと確約してくれた。
「けど箒、私からしたら束さんがアンタに抱きついたりしてこないことに凄い違和感を覚えたんだけど」
「それを言うなら私は一夏達から、ずっととてつもない冷やかな視線を向けられてたんだが?」
ジトリと睨まれてさっと視線を反らす。まぁ箒の事だし、こっちの一夏に何かやらかしたりしたんだろうという予想ができる。
「……」
しかし、どういうわけか先ほどから私の体が疼くというか、違和感を覚えて仕方がない。まるですぐ近くに自分がもう一人居るような、そんな不思議な感覚が。
「たしか、部屋からはある程度出ても良かったわよね」
「あぁ、確か部屋にある通信機を使えば案内はしてくれるらしいが……」
箒が指さした通信機というか内線電話を私は取ると、
『はいは~い、何かご用かしら?』
どこか聞き覚えのある……というか、ヴィヴィオの格闘技のコーチであるノーヴェの声に似た女性の声が、受話器越しに聞こえてきた。
「束さんと少し話がしたいんだけど、案内してくれる?」
『うーん……ドクター?え?あ、分かりました~。束博士じゃないけど、ドクターがあなたと話をしてみたいって』
ドクターというと、確か名前は……
「ジェイル・スカリエッティ……」
そう、確かノーヴェ達を生み出したというマッドサイエンティストで、一夏達曰く、ただの一科学者として見るなら間違いなく上位に入るほど優秀だった男。
正直、何故一夏がそんな悪の科学者と行動を共にしてるのか疑問に思うが、恐らく、
「分かった。二人も一緒に行くけど構わないわよね」
『もっちろ~ん、時間は有限、有効に使わないとね』
と、受話器の音がプツリと途切れると同時に、入口のドアから……
「え?」
「む?」
「はい?」
現れたのは見覚えのある金髪にアメジストの瞳、姿こそナンバーズのラバースーツのようなものだが、その姿は間違いなく――
「「「シャ、シャルロット!?」」」
何故にここでシャルロットが出てくるのかと私達は声を揃えて驚く。
「えっと、誰と勘違いしてるのか分からないけど、ボクの名前はトゥーレだから。そりゃ確かに地球じゃシャルロットって名乗ってたけどさ」
詰まるところ平行世界の同一人物?他の連中と同じくそうだとしたら、シャルロットだけ立ち位置が変わりすぎだと突っ込みたい。
「まぁ、そんなどうでも良いことは放っといて、さっさと案内するから着いてきてよね」
「それは良いんだけど……アンタ目元の隈が酷いわよ」
それはもう何徹したのだと突っ込みたいくらいに真っ黒、心なしか髪の毛も若干パサついてるし。
「フフフ、育児って大変だよね、夜泣きするし中々寝てくれないし……」
(((育児!?)))
まさかの言葉に愕然とした。待て待て待て、てことは何か、この平行世界では一夏とシャルロット(トゥーレ)が……
※完全なる三人の勘違いです。
「そんなわけだからさっさと連れてってボクは疲れを癒したいのさ。だからちゃっちゃと付いてきてね」
その言葉に、流石にここまで疲労困憊としてる彼女を酷にさせるほど、人間やめてる筈もなく、私達はシャルロットの後に付いていくのだった。
オマケ
「ところで、マドカ?カップラーメン(¥298)食うか?」
「ごちそうデェース!!……は!!私何言ってるの!?」
※やってみたかった中の人ネタ