無限の欲望と呼ばれる夏   作:ドロイデン

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なんか書いててグダクダになってしまった……そんなわけで、クオリティには目を瞑ってもらえると嬉しいです。


sts04 分岐点

「イチカ~戻ったよ~」

 

 六課の戦いを観察していたセインの帰還の言葉に、俺は立ち上がっておかえり、と口にした。

 

「まったく一夏は、ドクターが超魔改造ドローンで映像撮ってるんだからそっちで見れば良いのに」

 

「そっちはもう確認してる。けど、視点が別なのを見ても損はないだろ」

 

「わざわざ自分の試作品を壊されるところを?」

 

 セインの言葉に俺は苦笑を禁じ得なかった。端から見れば確かにそう、だが、

 

「別に能力過剰で持て余してただけ。それに、ただ封印しなければ物理衝撃で分裂するだけの欠陥品だよ」

 

「そんな欠陥品が有ってたまるかって、局の人間なら言いそうだけどね」

 

 そりゃそうだ。何せ本体の中にはその為だけに回収したロストロギア一つ組み込んでるんだ。下手なISなんかよりも凶悪じゃなきゃ話にならない。

 

「それで、目的の新人たちはこれをどう攻略した?」

 

「一人、新人チームの指揮官ポジのが居てね、ソイツと召喚師の子でなんとか本体を封印して……って感じかな。あとの二人は増殖したやつを二人に近づけさせないように……って」

 

「なるほどな……」

 

 集めた情報だと、指揮官ポジのはガンシューター系の使い手……となるとぶつけるのは弾が適任なのだが……

 

(……どうやら簪がターゲットしてるらしいからな)

 

 俺らの中で一番の癖者というか……地味にねちっこいと言うべきか、簪の獲物を奪ったら最悪本音使って毒殺されかねない。

 

(まぁなんとか説得はしてみるか……折衷案でなんとかできるかな)

 

 簪は簪でやるべき事が多いし、何より技術士としても簪は必要不可欠な存在だからな。

 

「それじゃあセイン、俺らのチームのメンバーに集合するように頼む。多分トゥーレは()()で大変だろうけどさ」

 

 

 

 

 

 数分後、基地のとある一室に十数名の人間が集まった。

 

「お疲れさまねイチカ君」

 

「おかえり~いっくん」

 

 チーム……いや、次元世界最高クラスの科学者クアットロと束さんがそれぞれ白衣を靡かせながら帰還を労い、

 

「チッ、なんでアタシが留守番なんか」

 

「仕方ないでしょ、ノーヴェまで出払ったらもしもの時ヤられるからね」

 

 不満タラタラにケッ、と吐き捨てるノーヴェと、それをどうどうと宥めるセイン、

 

「……」

 

「かんちゃん、少しは何か喋ってよ~」

 

「……徹夜明けで任務だったのに揺らさないで、気持ち悪くなる、最悪吐く」

 

 眼鏡を外して眠く不機嫌そうにしている簪と、その隣で何時ものようにのほほんとしてる本音、そして

 

「んで一夏、俺らをここに呼ぶって事は」

 

「進展があった……そう見るべきだよね」

 

 旧友であり親友の弾と数馬は本題を急かす。心配しないのは、俺がそんなやわな人間ではないことを信じてる証なのか否か。

 

「まぁ待てよ、あとはリイスさんとトゥーレを……」

 

「遅れてすまない」

 

 と、噂をすればなんとやら、毅然とした足取りでやって来たリイスさんと……かなりフラフラとした足取りのトゥーレがやって来た。

 

「大丈夫か、トゥーレ」

 

「なんとかね……レリックをドクターに渡したらあの子がくっついてきて大変だったんだ」

 

「あー……」

 

 一応ドクターや俺達の中で幾分ちゃんとしてるのと言われるとトゥーレしか居ないために、ある意味では仕方ないといえばそうなんだが。

 

「……次の任務の時、休みをやるから気晴らししてこい」

 

「……休みだったら余計に休めないじゃん、イチカ」

 

「安心しろ、そこは責任を持ってなんとかしてやる……クアットロが」

 

 その言葉に愕然となるクアットロだが、トゥーレの調子を戻してもらわないと色々と大変なことになるからな。

 

「んじゃ、早速アイツらの戦闘記録から分析と行こうか、クアットロ頼みます」

 

「はいはーい」

 

 そう言ってクアットロがホロキーボードを叩くと、それぞれの前にホロディスプレイで戦闘映像が流れる。

 

「まずは隊長陣……高町なのはからか」

 

「新人たちはちょっと癖が強そうだし、確認のためよイチカ君」

 

 まぁ確かに確認に視た感じでは癖がそれなりに大きいのは確かだからな。

 

「やっぱこの人の射砲撃はキツいな。相手したのⅡ型のA装備だろ?」

 

「高機動型に的確にシューターを当てる……しかも自分自身が動きながらそれをできるのは中々居ないよ」

 

「そんなのを俺がまともに相手しなきゃいけねぇとか、涙でちまうよ」

 

 弾が辟易としてるが、その表情はとても良い笑顔だった。

 

「なら次は執務官の方だな。正直言うと、此方もさほど前までのデータと変わらないからな」

 

「隊長陣は有名すぎるからな、逆に対策しようとすればなんとかなるのは仕方ないさ」

 

 此方も流石はエース・オブ・エースと長年組んできただけあって、シューターも接近戦もお手の物ときた。

 

「とりあえずこの二人にはガジェットの分配を気を付ければ何となりそうだな。つっても高機動型は調整必死だけど、そこのところどうなんです束さん?」

 

「まぁ中身にロストロギア使ってる訳じゃないから調整は可能だよ~。何せこの束さん謹製の()()()()()I()S()()()を内蔵させてるしね」

 

「あら?私とドクターもそれに関わってるわよ?なんで自分一人の手柄にしてるのかしら?」

 

 まぁまぁと俺は宥めながら、とりあえずは可能ということで納得する

 

 本来ならレリックをエネルギー源にするつもりだったのを、束さん、ドクター、クアットロが共同開発したISコアから一部の機能をオミットすることで作り上げたそれは、ISのように拡張領域やSE等は全くないが、レリック並いやそれ以上のエネルギーを内蔵してる特注品なのだ。

 

 しかも現在量産設備が完成してるため、1日数十から数百のガジェットは作られてるから、足りないどころか有り余るくらいだ。

 

「んで問題の新人だが……それぞれ順番にいこうか」

 

 俺がそう言うとディスプレイが切り替わり、白いハチマキに青い髪の少女が写し出される。

 

「スターズ03、スバル・ナカジマ。地球系ミッドの戦闘機人……ドクターが言うところのタイプゼロセカンドだったかな」

 

「タイプゼロ……ってことはアタシの姉貴になるのか?」

 

 ノーヴェがそう聞いてきたので俺は肯定すると、そのノーヴェは視線を鋭いものに変える。

 

「続けるぞ。術式は近代ベルカ系、デバイスは見たところ足のローラーブーツと右手のナックル。典型的なFAだな」

 

「しかも厄介なことに、戦闘機人としての能力は一切分からないから、どんな力を秘めてるのか分からなかったよ」

 

 けど、とセインはそう言いながら別の映像を展開する。そこには青い魔力の道を移動しながら、大型のガジェットⅢ型を一発で殴り沈める姿が映っていた。

 

「単純な破壊力はノーヴェの蹴りと対等、もしくはそれ以上なのは間違いないかな」

 

「しかも先天系魔法(インヒュレート)持ちか……血筋だけにこればかりは予想してたが」

 

 もしもこれでコイツの先天固有技能が魔力増幅関連なら目も当てられん。道なき道を行くなんて相手は堪ったものじゃない。

 

「けど攻撃は大振りのパンチとキックだけみたいだから、一夏とは相性が良いんじゃねえか?」

 

 と、弾が気づいたようにそう言う。

 

「そうだな、一夏君の攻撃は流し技もだが、投げ技に間接技(サブミッション)と、そちらの方面の方が得意だからな」

 

「……まぁ、鈴から仕込まれたってのも有りますし、何よりリイスさんが教えてくれましたから」

 

「おやおや?いっくん顔があかガガガガ!!痛い痛い!!」

 

「千冬姉仕込みのアイアンクローもあるんですよ束さん?」

 

「ごめんなさい許して!!許してくださいぃぃ!!」

 

 からかってきた束さんに嘆息しつつ、次の映像へとディスプレイを切り替える。

 

 今度のは二丁拳銃を構えるオレンジツインテール……簪が気に入ったという指揮官タイプの少女だった。

 

「スターズ02、ティアナ・ランスター。新人メンバーの司令塔……正直言うとこれだけのパッとしないタイプだな」

 

「……だからこそ、私が遊んであげたい」

 

 何とも良い笑顔をしてる簪だが、それだけに不安も殊更なんだよな。

 

「……言っておくけど簪、変なことをして目を付けられるのだけは勘弁なんだが?」

 

「そこは大丈夫、私は単純にこの子に技術教えてあげるだけ」

 

「……内容は?」

 

「詳しくは言えないけど、幻術関連」

 

「……」

 

 まぁ直接叩きのめしたりするわけじゃなさそうだし、別に構わないだろうな。

 

「壊すなよ?」

 

「壊れたらそれはその子自身が弱かっただけ。私には関係ない」

 

「おいおい……」

 

 軽く嘆息しながら、俺は次の映像へ変えると、そこには赤い髪の少年……というか黒一点の彼の姿があった。

 

「ライトニング03、エリオ・モンディアル、電撃の魔力変換資質持ちのプロジェクトFの残滓。武装はどちらかといえば突撃槍だな」

 

「てことは、対処は僕がすれば良いかな一夏?」

 

「まぁその通りだ」

 

 突撃槍は文字通り突き技が主体となる。が、同じ槍使いの数馬ならばそれのあしらいかたは手に取るように分かるだろう。

 

「速さでは劣るが、捌きと繋ぎは恐らくお前の方が何枚も上手だ、対処が楽で良いだろ?」

 

「どうだろ、僕も魔力量はそこそこだから……まぁ足止めくらいなら朝飯前程度にはできるかな」

 

 暗に負けるつもりは無いという心強い言葉に苦笑しながらも、俺は最後の召喚魔導師の少女を写し出す。

 

「ライトニング04、キャロ・ル・ルシエ、アルザスの巫女の血筋で、後方支援のFB。驚異度で言えば一番高い」

 

「それはル・ルシエの守護竜と契約を交わしてるから、かしら?」

 

「確証はないが、まず間違いないだろ」

 

 4年前の『アルザスの大噴火』は次元世界……ひいては古代系列の集落で起きた事件としてはかなり有名で、その中には黒い巨竜と桃色の髪の少女という噂もあったりした。

 

「映像で確認した白い竜しか出さないところを見ると、黒い巨竜の方は制御できないのかもしれないな」

 

「やぶ蛇で大暴走ってのは勘弁してほしいかな~」

 

「ただまぁあのタイプは基本的に優しすぎるからな、突発的なことでもない限りは大丈夫だろ」

 

 巨竜抜きなら驚異度は最下位だし。

 

「この子はルーテシアに任せるとしよう。同じ召喚獣使いだ、攻略法は心得てるだろ」

 

「そうだね~。で、これからどうするの?」

 

 束さんの言葉に、全員がこちらを見つめる。

 

「……とりあえず六課とぶつかってみるのが吉だな。近々にはドクターが注視してたあのオークションもある。()()の動き方は分からないが、恐らく動いてくるのは間違いないだろ」

 

 恐らく混戦になるであろうその戦いを思い、俺は拳を強く握る。

 

「……とりあえずしばらくは静観だ。俺は用事があるから数日ミッドから離れる」

 

「おいおい、何処に行くつもりなんだよ一夏?」

 

 ノーヴェの問いに、俺は暗く笑った。

 

「なに、ちょっとした墓参りだよ」




次回 sts05「誓い」

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