無限の欲望と呼ばれる夏   作:ドロイデン

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半分ルビタイトル詐欺に近いです。ただ、ルビを抜けばそれなりに詐欺じゃなくなってると思います。


第四章 福音の風
32 甲斐性というなの地獄(水着選び)


 さて、あの事件から漸く一ヶ月近く経ち、IS学園……特に一年生では近々開かれる臨海学校で盛り上がっていた。

 

「そんな盛り上がるようなイベントかねぇ」

 

「まぁ暑くなってる時期だしな……海ってだけで気分が上がるのはしょうがなくね」

 

「なんか、二人とも凄いだれてるぞ……」

 

 数馬の指摘に仕方ないだろ、と俺と弾は呟く。屋上で男三人という珍しい状況で、俺は自作のサンドイッチにかぶりつく。

 

「次の休みに、トゥーレとマドカとラウラと簪と本音の水着選びに付き合わされるんだぞ……憂鬱にもなるさ」

 

「俺も同じく蘭の……どっちかと言えば荷物持ちさせられるからな……女子の買い物は長くて困る」

 

「あー、それは確かに困るね。ていうか一夏は多すぎだよ」

 

「うっせー」

 

 しかも水着選びとなると、確実に似合うか否か聞いてくるし、何より五人もとなると姦しいのレベルじゃない。はっきり言えば肩身が狭い。

 

「くそ……なぁ数馬、お前も一緒に来いよ、そうすりゃ男三人女子六人で丁度良くなるし」

 

「そうなるとダリル先輩とフォルテの二人も混ざってくるよ、多分」

 

「……勘弁してくれよ……」

 

 それは死ねる、ただでさえ常々の極端アピールに辟易としてるんだ、ヤムチャしたくはない。

 

「ていうか、千冬さんはどうするんだろ、水着選び」

 

「あー、確かに。そういうのに疎そうだし……って一夏どうした」

 

「…………いや、何でもない」

 

 千冬姉の水着か……今さらだけど海もプールも行ったこと無いから、そういう姿の千冬姉って見たこと無いんだよな。主に金銭的な意味と俺の傷という意味のダブルパンチで。

 

「……一夏はやっぱ水着買わねぇのか?」

 

「まぁな……刃物恐怖症と違って、背中の傷跡は目に見えるからな、女子からしたら気味悪いだろ、見慣れてなきゃ」

 

「鈴も最初は驚いてたけどな、それからだっけ、一夏に中国武術教えようなんて言い始めたのは」

 

「今となっちゃ懐かしい思い出だよな」

 

 おかげで中学時代では素手の襲撃は殆んど無敗、武器持ってこられて五分五分だったけどな……俺からは攻撃しないけど。

 

「あれ、先輩からメールだ」

 

「フォルテ先輩から?内容は?」

 

「何々……『臨海学校で他の女の子に靡かないように、土曜に私の水着選んでほしい』……」

 

 ……うん、

 

「「ようこそ、深淵へ」」

 

「フ、彼女のお願いに勝てる男は居ないんだよ……」

 

 惚れた弱味というやつだが、これで道連れは一人増えた。

 

「「「はぁ……憂鬱だ」」」

 

 

 

 

「なぁ……いったいいつまで続くんだ?」

 

 さて土曜日当日、蘭を含めた何時ものメンバー(ただしダリル先輩とヒルダを除く)で大型ショッピングモール『レゾナンス』へとやって来たわけなんだが、女子達は七人も居るためか、思い思いに話しながらショッピングに夢中になっていた。

 

「女が三人寄れば姦しいとは良く言うけど、二倍もいれば尚更だな」

 

「主に原因は一夏だけどな」

 

「五人も言い寄られるなんて、鈴に知られたら大変だろうね」

 

「言ってくれるなよ」

 

 まぁ鈴もちゃんと理由を話せば分かってくれる…………筈だ。うん、多分。

 

「……一夏か?」

 

「ん?」

 

 と、急に名前を呼ばれ何事かと振り返ってみると、そこには見たことのある長い銀髪と高い身長、そして紺と白のボーダーシャツを着た眼鏡の女性

 

「リイスさん?」

 

 元オータムさん達の仲間で、去年まで一緒に生活していたリイス・ウィンターさんの姿がそこにはあった。

 

「久しぶりだな一夏、壮健そうでなによりだ」

 

「リイスさんこそ、珍しいですねこんなところで」

 

「なに、少しこちらの方へ来る予定があってな、ついでだし買い物でもしようかと思ってきてみたら、というやつだ」

 

 見たところリイスさんの左手には三つほどお店の紙袋が握られていた。

 

「弾と数馬も久しぶりだな、元気そうでなによりだ」

 

「そりゃこっちの台詞だってリイスさん」

 

「けど、こっちに来た用事ってなんです?リイスさんがレゾナンスとか騒がしいところ苦手じゃなかったですか?」

 

「酷いな数馬、まぁ確かに好んで来ないというのは間違いじゃないがな」

 

 若干苦笑いだが、間違いではないと肯定するリイスさん。

 

「少し待ち合わせをしていてな、相手がここを指定したこともあって、ついでにな」

 

「そうですか……」

 

「あぁ、ところで三人とも、こんなところで何をやっているんだ?ここは女性用の水着の店だが?」

 

 リイスさんの言葉に、俺達はここにいる理由を簡潔に話した。

 

「なるほどな……しかし一夏、君も大分女難の相があるみたいだな」

 

「それ、気にしないように勤めてたんですけどね」

 

「フ、だがちゃんと一線は敷いてるようで何よりだ、でなければ私自ら一夏君とO☆HA☆NA☆SIしなければならないからな」

 

「勘弁してくださいよそれは」

 

 笑いながらそう言うリイスさんは、付けていた腕時計を確認し、ふと此方を見る。

 

「……」

 

「?どうかしました?」

 

「あぁ、丁度良いと思ってな、二人とも、一夏君を少し借りることは出来るかい?」

 

 弾と数馬は少し不思議に思うが、おずおずと首を縦に振るう。

 

「一夏も少し構わないかな?」

 

「ええ、それは構わないんですけど、いったい?」

 

「ついてくれば追々な」

 

 

 

 

「……なんでさ」

 

 そう呟いた俺は間違いない筈だ。いや、何言ってるのか分からない?俺だって説明を求めたい位なんだが、いったい全体。

 

「……ふむ、一夏、これとこれなんかどうだ」

 

「……良いんじゃないかな」

 

「おいおい、興味なしとはちとアレじゃねえのか?一夏よぉ?」

 

「……ていうか、なんで千冬姉の水着選びの場に引っ張り出されにゃならんの?」

 

 隣で苦笑いだが確実にニヤニヤとしてるリイスさんにジトリとした目で睨む。しかも千冬姉の隣にはオータムさんまで居るし。仕事はどうした実働部隊。

 

「なに、千冬から一緒に買い物でもと誘われてな、時期を考えると水着関連、しかも偶然一夏と出会ったならこれもとな」

 

「……本音は?」

 

「一夏君が恥じらう姿を肴にでもしようかなと」

 

「やっぱりオータムさん達と考えが同じじゃねぇか!!」

 

 つか裏組織の実行部隊の人間が堂々とショッピングとかどういうこっちゃ!?

 

「何を今さらそんなこと?」

 

「あぁ……そういえば元とは言え同じ部隊の人間でしたね」

 

「おい一夏、これなんかはどうだ」

 

「千冬姉は千冬姉でもう!!」

 

 白い水着はなんか千冬姉のイメージと違うんだ……ん?

 

「……なぁ千冬姉、あの黒いやつとかは?」

 

 それはマネキンに着せられていた、胸元に紐がついた黒い水着だった。

 

「お、結構良いな、見る目あるじゃねぇか一夏よぉ」

 

「確かに、千冬は白より黒系の色が似合うしな。見慣れてることもあって」

 

「ほうリイス、それは私が暗に純情とかそういう風には見えないと言ってるのか?」

 

「断じてそれはない」

 

 大人の女性三人にも好評価で、千冬姉は店員に同じモデルの水着があるか確認してもらう。

 

「しかし、一夏はやはり服選びの才能あるな、短時間でいいのを見つけられたぞ」

 

「そんな才能要らないですよ」

 

「謙遜すんなって、それで、一夏自身は水着買ったのかよ」

 

「オータムさんは俺の背中のこと知っても言ってます?気味悪がるやつが出てくるだけですよ」

 

 おかげで中学時代、プールの授業は最初の一回除いて全て見学、それどころか川や温泉すら入ったこと無いし。

 

「だから基本は部屋に籠って一人音楽を聞くだけ……楽なもんでしょ」

 

「そうか」

 

「それじゃ、俺は弾達の所に戻るんで、流石に長いこと席を外してると文句言われそうなんで」

 

 そう言って立ち去る俺を、二人はただただ見送るだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ???視点

 

「……来ましたか、篠ノ之束」

 

「いや~まさか君の方から連絡してくるなんてね。いったいどうやって?」

 

「まあ……少しそちら方面の知識があるので」

 

 振り向かず、昔出会った真っ直ぐな少女と似た声の持ち主の言葉に答える。

 

「知識ねぇ……正確には、君自体がそれを行えるんでしょ」

 

「……知ってましたか」

 

「まぁこの天才でも最初分かったときは驚いたけどね。君、()()()()()()()()()()()()でしょ」

 

「…………知っていたんですか」

 

 確かにその通りだ。私は、本来なら7年前のあのクリスマスにこの世から消えている。

 

「偶々あの決戦の最後を見てたからね。後学の為に聞かせてよ、いったいどうやったの?」

 

「……私にも分かりません、ただ一夏君の誘拐の前の冬、ギリシャの片田舎で目を覚ました。約一年という歳月の中で、私はこの世に人間として生を受けた」

 

 もっともその時は記憶喪失だったから、自分自身が何者なのかなどさっぱりだったが。

 

「ふーん?てことはもう魔法は使えないのかな?」

 

「いえ、()()()()には数段劣りますが、それでもAAくらいの総合魔力は持ってます。それに過去の魔法も」

 

 もっとも、人間だから()()はもう使うことは叶わないが。

 

「そっか……で、君が言ってきた()()、ちゃんとあるんだよね」

 

「ええ」

 

 そう言って私はとある()を取りだし、魔法を発動させ、中に封じていた大きな紫の結晶を見せた。

 

「これが、かつて世界を一つ壊した結晶ね……」

 

「もっともそれは、再生機能などは完全に無くなった紛い物、ブレイカー数発も直撃で受ければ完全に消滅するような代物ですが」

 

「いいよいいよ、寧ろそうじゃなきゃ君やいっくんが倒せないでしょ」

 

 彼女はそう言って結晶を掴み、持っていた瓶にそれをしまう。

 

「けど良いの?これを使うのは君の主様への裏切りなんじゃないかな?」

 

「……確かにそうかもしれません、ですが、今彼女には私が居なくても大丈夫なほど、友や家族に守られている。ならば私は、自らが守りたいと思った彼を守るだけです」

 

「そっか……」

 

 それだけ言うと彼女は懐から銀に白線の入った()()()()()()()()()()()()()を此方へ渡した。

 

「これは君へのサービスだよ。いっくんを守るっていう君への、私から最初で最後のプレゼント」

 

「……デバイスですか」

 

「古代ベルカのアームドデバイスとISを融合させたパーソナルデバイス、その名も『シギルウィンド』!!」

 

 シギルウィンド……意味を知れば失笑ものだな。

 

「確かに……」

 

「私も暫くすればあっちに向かうけど、くれぐれもいきなり壊さないでよ」

 

「ふ、心得ているさ」

 

 そう言って私は魔法を展開し、その場からとある場所へと転移した。

 

「いっくんを頼むよ……リイス・ウィンター、いや

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 祝福の風、()()()()()()()




次回「33 海についたら十一時(オーシャンズ・イレブン)!!」


ここから作品について少し話をしたいと思います。

現在ストーリーはISのアニメ一期最後まで来てるのですが、それが終わり次第、ISからほぼ完全に離れ、リリカルなのはstsに入りたいと思っています。

IS成分はある程度残す……というか結構使うんですが、タイトルをリリカル編に入り次第『魔法少女リリカルなのは』へ変更しようかなと考えています。

ですが、途中で原作タイトルを変更するという事をして良いのか……というよりしなくて良いのか、若干悩んでる部分があります。

ということなので、もし可能ならで良いです。変更するべきか否か、皆さんの意見を言って貰えると幸いです。

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