無限の欲望と呼ばれる夏   作:ドロイデン

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21 vs破壊者

 白黄と水色の光が高速でぶつかる。俺の手刀と死神の剣がぶつかり合い、雷鳴にも似た轟音が鳴り響く。

 

「チィ!!」

 

 想像よりも重く、鋭く、そして読むことの出来ない斬撃を弾きながら苦虫を噛み潰す。聞いていた話と全く違うというのに、なぜか似た武器を使うために頬が引きつる思いだ。

 

「遅い遅い!!僕相手にこのザマじゃフェイトには勝てないよ!!」

 

「抜かせバッタもん!!」

 

「もう少し良い言い方があるだろ!!」

 

 再び鍔迫り合いとなり、また爆発と共に両方が少し下がる。

 

「くそったれ!!なんつー馬鹿力だ!!」

 

「フフフ、僕は力を司るからね!!下手な剣豪よりも単純な力だけは強い!!強くてカッコいい!!それがボクだからね!!」

 

「そうかよ!!」

 

 再び接近し、今度は蹴り技を主体で仕掛ける。が、それをわかったうえでなのか、死神は掌で受け止めて俺のことを投げ飛ばす。

 

「クソ、何で読まれる!!」

 

「ん~?まぁフェイトの方が速かったから、かな?」

 

 なんとも微妙な言い方だが、詰まるところ、俺の速さが足りないということだろう……

 

「……イモータル、リミッター全解除(フルパージ)

 

『マスター!!幾らなんでもそれは肉体的に酷しいです!!』

 

「俺が死神より遅いって言われたんだ……そこまで言われて、はいそうですか、で引き下がれるか」

 

 何より、恐らくこいつらはあの三人に似てはいるが別物……つまり他人であり、近しい存在、そんなやつにおめおめと敗北しましたじゃ、鈴を助ける迄に至れない。

 

『まったく、変なところで頑固なマスターですね』

 

「軟弱よりはマシだろ」

 

『分かってます。ですが解除するのは半分までです』

 

 それ以上は認めないとでも言うように厳しく言う愛機に苦笑しながらも、それで頼む、といった。

 

『それでは、システムハーフリリース』

 

 次の瞬間、制限していた魔力が一気に吹き出し、身体中を放電の膜で覆い尽くす。

 

「!?」

 

 死神に似た相手もその事に驚いたのか、それとも本能なのか、音速並の速さでその場から離脱しようとする。が、

 

「……遅い!!」

 

 それよりも速い超音速で移動する俺の比では無い。

 

「な!!」

 

「雷烈閃!!」

 

 驚いてる隙に、雷を纏った音速の右ストレートをがら空きの顔面にぶちこむ。砲弾もかくやという威力を発揮し、爆音と共に空中をバウンドする。

 

「雷撃掌!!」

 

 さらに回り込んでの発勁を横っ腹へと叩き込む。加速エネルギーと電撃のエネルギーが組み合わさって、破格とも呼べる一撃により、ショッピングモールの屋上から一気に地面へと破り抜ける音が響いた。

 

「ッ……イモータル、負荷はどれくらいだ」

 

『今ので最大限界の四分の一を消費してますね。コントロールの精度がまだまだです』

 

「くそ、たった二発でそれかよ」

 

 元々、俺の魔力はリミッターを施さねばならないほどに強力なのだが、それと同時に扱いもかなり難しいのだ。

 

 今の半分までリミッターを解除してでこれなのだ、もしイモータルが完全解除してたらということを考えるとかなりキツイものがある。

 

 正直言えば今ので戦闘不能になってくれれば良いのだが……

 

「雷刃封殺爆滅剣!!」

 

 そうは問屋が下ろすわけもない。バチバチと唸る雷鳴の剣がシューターのように多量に飛来し、俺は避けて弾くものの、触れた瞬間に爆発するせいで守りに徹しなければならなくなった。

 

「くそ!!なんつう威力だ!!馬鹿力は伊達じゃないってことか」

 

「さっきから馬鹿馬鹿うるさいよ!!」

 

 そして今度は円環状のシューターまで飛んできやがった。馬鹿力なのに射撃もできるとかずるいだろ!!

 

『マスター!!』

 

「分かってる!!雷閃!!」

 

 俺は迫り来る円環へと手刀の斬撃を飛ばすことでそれを無力化する。が、嫌な雰囲気を感じとり、さっき突き落としたビルの方角に目を向ける。

 

 そこにはどういうわけか雷雲が立ち込め、異常なまでの魔力密度が形成されており、どう見ても大技を使うというのがバレバレだったのだが

 

「くそったれ、モールの中に隠れて撃つとか卑怯だろ!!」

 

 馬鹿が頭を使うとろくなことにならないとは良く言うが、もはやこれはそれの範疇外、埒外に他ならない。いくら封時結界が張られていて、外には全くの影響がないと分かってはいても、ここまで度外視して使うとは思っても見なかった。

 

「イモータル!!相殺できるか、アレ」

 

『現状の魔力の残りから考えればギリギリ、マスターの体質上、カートリッジシステムは搭載されてませんので』

 

「けど、あんな技放たれたらそれこそ大惨事だ、なんとしてもぶっ倒す」

 

 俺はそう宣言すると、残っている魔力のほぼ全てを両腕だけに集める。バチバチ言っていたスパーク音がさらに激しさを増してバリバリという音へと変わる。

 

 さらにそこから、刀を握るように中段に構えると、まるで電撃の魔力がスパークしながら魔力の剣を形成する。

 

「……俺の使える最大限で、アレを倒させてもらう!!」

 

 その言葉を待っていたかのように、かの雷雲から一合の雷が降り注ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「砕け散れ!!雷刃滅殺!!きょっこーざーん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雷雪ノ片撃(らいせつのへんげき)!!」

 

 

 

 

 青く巨大な雷の剣による一撃と、白黄に輝く高出力の斬撃が海上でぶつかり合い、今までで一番の爆発音が響く。まるでソニックブーム以上の衝撃波が結界内部を行き来し、若干だが空に皹が入るのが見えてしまう。

 

『マスター!!このままでは!!』

 

「魔力衝撃に耐えきれないか!!」

 

 残念ながら俺は壊す方は得意でも結界を張ったり直したりというのは全くの専門外だ、はっきり言えば弾も数馬もそっち方面の技能は門外漢だ。

 

 流石に不味い、そう思ったその時、空を覆っていた結界の魔力が消えたかと思うと、別の魔力結界……それも知ってる魔力の感覚が感じ取れた。

 

(ふう、危機一髪だったねいっくん!!)

 

(束さん!?)

 

 まさかの天災の登場に俺は驚愕した。まさかこのタイミングで現れるなどと誰が思おうか。

 

(どうして、というかなんで!?)

 

(ふふふ、言ったよね?この束さんは結界魔導師だって、それに私のISネットワークを使えばどこに魔力反応があるか、どんな状況になってるかぐらいモニターすることだって朝飯前なんだよ)

 

 そういえば確かにそんなことを言ってたし、何より俺らもISの待機アクセサリーを持ってるしな……。

 

(それに師匠からのお願いもあったしね、こっちでの支援者として私が話を通すし、まぁ司書長だろうがなんだろうがこの束さんに任せときなさい!!)

 

(……なんか任せたらいけない気分になるのはどうしてでしょうか?)

 

(細かいことは聞かないの!!それより、師匠の娘さんに似てる娘の回収しておかないと大変じゃないかな?)

 

 そうだった……そのバッタもんはいったいどこに居るのやら……っておいおい

 

「……見つけたけど」

 

 水色の女性は目をぐるぐる回して横になりながら、瓦礫の山に頭以外を埋もれさせていた。

 

 まぁ、あんな馬鹿威力の技を屋内で使えばこうなるのは必然だった気もするが、やはりお馬鹿というか、そういう方面に頭が弱いのだろうと考えるに充分だった。




次回「22 対談」

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