なお、キャラとしての設定はGOD準拠にしてます。
「ちっ、やりづれぇなおい」
両手に
「それはこちらの台詞です。チマチマと射撃してくるうえに幻術まで使われると魔力消費的に厳しいです」
「その幻術を物量で押し潰してくるからだろうが……ヴェルク、シューターを
『了解だ、マスター』
俺の言葉に愛機は的確に弾丸を20程生成し、それぞれを不規則な動きで発射する。
「く、パイロシューター!!シュート!!」
が、相手もそれをわかったうえで、後だしで相殺にかかる。これが既に10分ほど続いてるのだから困り種だ。
「(こうなったら奥の手か……)ヴェルク!!」
『了解、ファントムミラージュを発動』
建物の裏に隠れながら、その言葉と共に俺は
「!!消えた……?」
相手も回り込んで確認しに来たものの、既に俺は地下の基部ブロックの内部にいるため、かなり焦りを見せている。
「さて、ヴェルク、ちょっと早いが隠し玉を使うぜ」
『良いのか?そんなことをすればバレますよ?』
「どうせいつかはバレるなら出し惜しみするよりはマシだろ。それに相手は魔王だぞ?下手したらあれですら倒せない危険性だってある」
まぁ若干違うが、それでも似たようなスタイルならアレが来ても文句は言えないしな。
『……分かった、長距離射撃モードへ移行する』
愛機は不満たらたらのようだが納得してくれたようで、姿が拳銃二丁から長めの狙撃銃のように変化する。
(さて、一夏、数馬、これから言う付近に絶対に近寄るなよ)
(ちょ、弾お前まさか!!)
俺がそう宣言すると一夏が慌てるように聞き返す。
(弾、悪いことは言わないからやめた方がいいよ。下手したら結界ごと木っ端微塵になっちゃうからね!!そうなったら、下手すれば学校そのものが吹っ飛ぶからね!!)
(俺は魔王みたいな無茶はしねぇよ!!良いから範囲内に入るんじゃねぇぞ!!)
たく、と文句を言いながら、空に残しておいたステルスタイプのサーチャーを確認する。どうやらどうやっても対応できるように空中で魔力をチャージしている姿が目に取れる。
「けど、相手が悪いんだよな……」
俺はデバイスを肩に担ぎ、サーチャーからの情報で角度を決めるとカートリッジ四発を一気に発火させる。すると銃口の先を薄く覆うように俺の紅色の魔力が展開し、その中に入るほどの小型の魔力弾が形成される。
「本来は収束魔法なんだが、今回はバレるとゴメンだからな。カートリッジで一気に撃ち抜かせてもらうぜ」
『オルタバースシュート、スタンバイ』
デバイスの掛け声と共に球体が高速でジャイロ回転を始め、魔力の筒と玉の間に放電のようなものが流れ、
「これが俺の奥の手、オルタバースト……シュートォォォ!!」
タイミングを見計らい一気に銃爪を引いた。放たれた魔力弾はシューターを伸ばしたような砲撃となり、一直線に相手目掛けて地面を貫き空へと駆け抜ける。
『!!ルシフェリオン・ブレイカー!!』
相手も地上に出てから漸く気づいたのか、溜めていた魔力の砲弾が、まさしく砲撃というに相応しいほどの威力と共に照射された。
狙撃と砲撃、普通なら勝負する必要もない程だが、今回ばかりは話が違った。
俺の放った狙撃が炎の砲撃とぶつかったその瞬間、まるで炎の砲丸が中央から別れるように裂けていったのだ。
「な!?」
魔王(?)は驚く間もなく俺の砲撃の直撃を喰らい、大爆発と共にゆっくりと海中へ沈んでいくのだった。
「悪いな、俺のレアスキル、
収束圧縮、砲撃魔法使いの中で最高峰のレアスキルだ。周りから魔力を吸収し砲撃するまでは普通の収束なのだが、そこからさらに魔力弾を一定の大きさまで圧縮することで威力を増すことができるのだ。
一見地味な違いかと思うが侮るなかれ、実際はこの通り、シューターサイズの魔力砲撃でさえ、魔王の砲撃を上回るほどの威力を秘めるのだ。
もっとも、圧縮したのを解放するわけだから、加減を間違えば幾ら強力な結界でも四散させるぐらい訳もないんだが。
「さて……助けるべき……だよな?」
俺は一向に浮かぶどころか気泡すら出てこない事に一抹の不安を覚え苦笑いを浮かべるのだった。
数馬side
「うわぁ……相変わらず凄い爆発」
先程の爆発が起こった方向を見ながら僕は苦笑いを浮かべる他が無かった。
「君もそう思うよね?王様?」
同意を求めるようにそう聞くと、王様はグヌヌと唸りながら腕を組んでいる。
「……よもやシュテルが負けるとは……いや、あの子鴉一味の言う通りの逸材と思うのが道理か」
「なんか、余裕そうだね王様」
「ふん、塵芥が兎だっただけのことだ、それに貴様は我の手によってお縄につくことが決まっとるようなものじゃから……な!!」
まるで確定事項とでも言うように漆黒の魔力弾の暴風が空から飛んできた。けど、
「それは無駄だって分かってるよね!!」
なんの躊躇いもなく
「く、凍結のレアスキルなんぞ使いおってからに!!」
魔力変換資質・凍結、一夏が電気、あの魔王似の子が炎熱といったように存在する変換資質で、最も発現が少ない能力。
変換資質の影響も、電気が運動神経や反射神経の向上、炎熱が熱さや傷みへの耐性、最大魔力量が総じて高いなどの恩恵があるなかで、凍結はそういったメリットが全くない。が、しかし
「魔力弾凍らせるのは初歩の初歩だからね!!」
こういった風にアレンジが効きやすいという使いやすさがある。
「チィ!!紫天の書を使う暇も無いか、ならば!!」
と、どうトチ狂ったのか王様は本をしまうと、杖先に魔力の刃を展開させて、突撃槍のように構える。
「魔法使いが杖を槍にするのは如何かと思うが?」
「なに、勝てば良かろうだ!!」
そういって上段から降り下ろすように杖槍を凪ぎ下ろす。それを僕は後ろへ下がりながら弾き返すが、少しだけ驚きを隠せなかった。
(砲撃使いだから格闘戦が弱いと思ってたのはダメだったな……槍の捌き方や動かし方を心得てる)
「敵を前に思考など、余裕だな色男!!」
「そうでもないよ!!クルム!!」
『セイバーモード!!』
クルムの掛け声と共に槍が半ばから分裂し、先端からそれぞれ魔力の刃が現れる。
「ッ!!」
王様も気づいたらしく、一瞬で距離を取る。恐らく左腕での一閃を恐れたのだろう。
「槍に二刀……純粋な近接型か」
「へぇ、分かるんですかやっぱり」
まぁ実際僕はマルチタスクが不得手だからね。使えるのも斬撃を飛ばすくらいだし。だから、
「ほぼ的な遠距離型は……簡単に倒せま……!?」
そう言おうとした瞬間、根源的な恐怖を感じて後ろへと下がるが、次の瞬間血のようなどす黒い剣が落ちてきて爆発し、近くの屋上まで飛ばされてしまった。
「なんだ……今のは……!?」
訳もわからず空を見上げると、そこには大型の二対四翼の機械の翼と白い修道服に似た着衣をしてる金髪の少女の姿があった。
「ディアーチェ、大丈夫ですか?」
「む、すまぬユーリ、助かったが初手マトリクスはどうかと思うぞ」
「下手な魔力弾だと凍らされるのが目に見えてましたので……つい」
ついであんなものを射たれたら困るんだが……っとそれよりも、だ。
「二対一か……厳しいなこりゃ」
見た感じ、揃って高火力型だ、槍を使ったヒット&アウェイ戦法の俺としては一番キツイ。しかもあのユーリといった少女の手には先程爆発したはずの剣がまた握られている。
「さて形勢逆転だ、今ならユーリの本気を受ける前に捕縛してくれるが?」
「私も、できれば戦いたくないので投降して欲しいんですけど……」
再びの投降勧告に俺は冷や汗を掻く。相手は高火力、手数も相手が上で、実力も恐らくは相手が……だが、
「冗談!!」
「であろうな色男!!」
俺は再び槍で構えて飛び出すのだった。
次回「vs破壊者」