突然だが、俺はかなり悪運が強い。昔のオータムさん達の誘拐を含めて運がドン底クラスに低い。
そんな俺だったのだが……
「さて、とりあえず話をさせてもらおうか下郎?」
「下手に騒ぐのであればなのは達を呼ぶのも致し方ありませんよ?」
「逃げてもボクのスピードを追い越せるかな?」
なんであの三人と似た姿の魔導師に絡まれるんだよ!!
数十分前
「なんか……面白味も何にもないな……」
至って普通の学生生活をしていた俺はゴールデンウィークという休日の現在、男三人で近くのショッピングモール『レゾナンス』で買い物をしていた。
え?時間が進むのが早い?だって試合とか見るつもり全くないし、授業だって普通の真面目に受けてるだけだからな、基本書くことのほどもない。
ちなみにクラス代表トーナメントは(祭り上げられた)簪が所属する四組の圧勝だったらしい。そりゃ、心読めるレアスキルに弾幕主体の機体に乗せたらそうなるのは当たり前だろうけどな。
「逆に一夏よぉ、面白い事ってなんだよ」
「そりゃ学校が襲撃されるとか?」
「アハハ……天災の束さんならあり得そうだね」
休憩とばかりに入ったバーガーショップで、他愛もない会話をしながら数馬が引き攣った笑みを浮かべながらポテトを摘まむ。
「つか、正直言うと今スゲェ近接ベルカ以外と戦いたい」
「そりゃ無理だろ……って俺か!?」
弾(ミッド式)がじろりと睨む。まぁ半分は冗談だが。
「しかし、トゥーレを連れてこなくて良かったのかね~一夏」
「いいんじゃね?それにトゥーレが居たら女の子一人を男子が三人で囲ってる図になるぞ」
「それは……だいぶ絵にされるね」
自画自賛だが、俺達はそれなりに顔は整ってるし、女子たちが騒ぐほどにイケメンらしい。が、休日まで客寄せパンダのような視線を向けられるのは勘弁したい。
「……んぐ!?」
と、数馬が何かに気づいたのか、外を見て驚きの声をあげた。なんだなんだと俺たちも確認してみるとそこには……
「……」
ジーっと睨んでこちらを観察してる、肩にフェレットを乗せた茶髪に青い瞳をしたショートカットの女性が……
『……おい、あの顔どこかで見たことあるよな』
『いや見たことあるというよりは、寧ろ見覚えがありすぎるよな』
『うん、髪型は違うけど間違いないね……』
三人揃って念話で確認し、
『『『……魔王から逃げるぞ!!』』』
揃ってテラスから飛び出した。浮遊魔法を足だけに使って揃って人のいない方向へ走りだす。
相手は驚いたもののこちらの追跡をし始めており、フェレットが着ていたフードの中に隠れる。
『くそったれ!!なんであんな魔王が此方に居るんだよ!!管理局の仕事してるんじゃねぇのかよ!!』
『知るかんなもん!!ていうかあのフェレット絶対にドクター達が言ってた司書長だろ!!なんでそんな重要人物まで居やがるんだ!!』
『二人とも念話しながら喧嘩してる場合じゃ無いでしょうが!!とにかくトゥーレに念話……は遠すぎて無理だったよコンチキショー!!』
喧々囂々だが、あんな血も涙もない魔王に捕まったらそれこそ命が何個有っても足りやしないため、俺達は兎に角走りまくった。
ショッピングモールの裏手、人通りの多くない臨海公園へと走りきったものの、それでも魔王(?)とフェレットの二人は付いてきていた。
「……人を見て逃げるとは、幾らなんでも失礼ではありませんか?」
まるで無機質に問うてくる少女に、俺は息絶え絶えながら睨み付ける。
「そっちこそ、俺らの後をつけ回すとかストーカーかよ」
「……まぁ、こちらとしても半プライベートを潰される形で頼まれましたので、見失うわけにはいかないので」
「そうか……よ!!」
俺は言い終わると同時にシューターをアサルトシフトで五発飛ばす。が、彼女も冷静にシューター……
「「変換資質か/ですね……」」
恐らく炎熱だと見切りをつけて厄介だと思いながら三人と……!!
「弾!!数馬!!」
俺が叫ぶと同時に二人ともそれぞれの武器を抜き、後ろから来た攻撃をそれぞれ捌く。
「――ほう、手加減したとはいえ、我の魔力弾を打ち消すか」
「――ふーん、僕らのオリジナルとは違うけど、なんか似てる雰囲気してるな~」
その言葉と共に空中から現れたのは、黒混じりの白髪に翠の瞳をした杖を持つ女性と、これまた水色のツインテールに獰猛な赤い目をした大鎌を持つ女性の二人が現れた。というか……
「げ!?」
「魔王、死神、騎士王の三色揃いかよ!!」
「ついでに一緒にいるフェレットを含めて数え役満……全然嬉しくないよ」
俺らがそう呟くと、白髪の女性が嫌そうに唸る。
「こやつら……あの子鴉と我らを間違えておるな……許せん」
「王よ、仕方ありません、我々の姿は彼女達をベースにしています。よって、彼らがなのは達と私達を間違えるのは仕方ないことです」
「分かっておる!!しかしだな、折角久しぶりにユーリと地球に来たというのにあの子鴉め……これが終わり次第とっちめてくれる」
「どうでもいいけど王様、喋ってると三人とも逃げちゃうよ?フェイト達から頼まれたけど、ボクは早く戦いたいんだよ!!」
「えぇい!!お主は少し静かにせんか!!いくら力のマテリアルとはいえ、貴様はこの十年近くで遊んでおっただけではないか!!」
何やら喧嘩してるのか?なんとも不思議な光景に唖然としながら、俺らはチラリとアイコンタクトをすると逃げられるように態勢を整える。
「――さて、と、逃げようなどと思ってくれるなよ?下郎」
しかし、白髪の彼女の一言によって、まるで見計らったように広域に封時結界が張られてしまった。多分、あのフェレットの仕業だろう。
「何分我々もプライベートだからの、できることならばゆっくりユーリと旅行と洒落こみたい。であるからして」
目の前の女性三人は瞬時にバリアジャケットを身に纏い、再びこちらに得物を構える。
「我々としては、早々にお縄となって貰いたいのだが?」
「……言っておくが、俺らは何にも悪どい事はしてねぇぞ?」
「しらばっくれるな、お主ら……そして恐らくその協力者が
ただの魔力関知だけでそこまで言いますかね……。
「それに我々としては貴様らの後ろにいる人間の方が重要での……悪いが力づくでも引っ張っていかせてもらうぞ」
「冗談抜かせ!!」
俺はそう言うとすぐにイモータルをセットアップし、背中の魔力翼を展開して放電を解放する。
「悪いがこちとら普通の学生生活を送りたいだけなんでね、悪いが帰ってもらうぞ!!」
「抜かせ下郎……っ!!」
白髪の女性は魔力弾を放とうとするが、寸でのところで数馬の長槍に邪魔される。
さらに茶髪の少女も魔力弾(炎)を放とうとするが、そちらも弾の射撃に邪魔される。
「悪いけど、君の相手はボクだよ!!」
「そういうこった、ここは一対一とさせてもらおうか」
「チィ!!この優男めが!!」
「レヴィ、貴方は残ってるもう一人を」
魔王と似た姿をした女性が呼んだ、レヴィと呼ばれる青髪の女性は鎌を魔力剣に直し、まるで神速の如く接近してくる。が、俺も手の魔力剣を伸ばして相対する。
「へぇ、フェイトみたいにビリビリするね!!」
「ちっ、剣が重たいなおい!!」
できればトゥーレと簪が応援に来てくれればなと淡い期待を思いながら、俺達の戦いが始まるのだった。
次回「20 紫天」
うん、ユーノ君の台詞出せなかったねwホントは出したかったんですが、マテリアル娘をメインにしてしまった結果が……とりあえず……すまんセイン(おいこら