無限の欲望と呼ばれる夏   作:ドロイデン

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今回は前回のプロローグの後日談的な感じです。そして短いですw


プロローグ2

「……」

 

 気がついたとき、僕が目にしたのは真っ白な天井だった。

 

「……気がついたみたいね」

 

「……!?」

 

 僕はその声に驚き、思わず立ち上がろうとするが出来なかった。

 

「ここはドイツの病院よ、胸を刺した貴方を私達が救急車を呼んで運んで貰ったの」

 

「…………」

 

「言っておくけど、私達は誘拐犯が殺しかけた貴方を助けたってことになってるから、それに応急処置も少しだけどしてあげたし」

 

「…………なんで、僕を助けたんですか?」

 

 彼女は少し驚きながら此方を見る。

 

「僕は貴方とは関係のない赤の他人です……しかも僕は男で貴女は女性……見捨てはしても助ける理由なんて……」

 

「…………確かに助ける義理は無いわ。けどね、私には見捨てられなかったのよ……私は元スラム孤児だったから」

 

 僕はその言葉の意味が分からなかった。

 

「貴方を見てると……昔の自分を思い出すの。生きることに絶望して、自分自身を無意味な存在と思っていたあの頃を……」

 

「……同情で助けたんですか?」

 

「はっきり言えばそうね。でもね、私も他の三人も、過去は違えど何かしらの傷を負ってるのよ……」

 

 そう言いながら彼女は遠い目で見上げた。

 

「だから放っておけなかった。自分達と貴方を重ねちゃって、助けたいと思ったから助けた。そこに理由は必要?」

 

「…………いいえ」

 

 僕が首を横に振ると、彼女はにっこりと笑う。

 

「なら、暫くはよろしくね」

 

「……暫く……ですか?」

 

「そう、なんでも織斑千冬……貴方のお姉さん、引退してこれから一年ドイツで教官をするらしいわ。だから、彼女に頼まれて、千冬が帰ってくる約一年、私達四人が貴方の一時的な保護者になるの」

 

 ……今なんて言った?

 

「……姉さんが引退してドイツで?」

 

「うん」

 

「しかも教官?」

 

「ええ」

 

「帰ってくるまで貴方達が保護者?」

 

「そうよ。私は元アメリカのIS代表だから、一応表の身元も確りしてるしね」

 

 詰まるところ、外堀は完全に埋ってるらしい。だが、

 

「…………日本語はともかく、三者面談とか授業参観とか……」

 

「勿論私が出るわよ、まぁもっとも、面談ぐらいにしか行かないけど」

 

「……お皿とか足りないだろうし」

 

「そんなもの買えば済む話よ」

 

「……ね、寝るところも……」

 

「安心なさい、色々つてを使って隣の家を買ったから、私以外はそっちに住むわよ。勿論千冬の部屋には絶対に入らないし」

 

 ……断る手段は一つとしてなかった。

 

「…………と、とりあえず姉さんと話をさせてください」

 

 僕に残されたのは、そんな言葉を言うだけだった。

 

 

 

『ふむ、やはり驚くか』

 

 電話にて言われた姉の第一声はそんなものだった。

 

「驚くに決まってるよ。姉さん勝手に決めて……」

 

『まぁ元々今年限りで引退するつもりでは居たからな。そこを狙ったようにドイツの軍からスカウトされてな、正直無職というのも家を担ってるお前に悪いからな』

 

「そう思うならせめて掃除と洗濯はできるようになってよ」

 

 若干呆れながらにそう言うが、姉は通話越しに小さく笑ってる。

 

『そう言うな。私と違ってスコールは気遣いができるしな、何より私と似てか度胸が据わってる』

 

「……(そのスコールさんが誘拐の実行犯の一人なんだけどな)」

 

『それに、学校でのお前の事を何とかしてやると、会ったときに言われてな、正直、アイツから聞くまではただの僻み程度にしか考えてなかったが……まぁ、少しは堪えたな』

 

 その言葉に少しだけ驚く。あの姉が堪えるなんていうとは、それこそ慢心しないAU○並みに驚きだ。

 

『おい一夏、地の文が仕事してないぞ。そして私は武器を湯水のように投げたりしないからな』

 

「とりあえず、その勘の良さに驚きなんだけど……」

 

『まぁいい。とりあえず一年はそういうことだ。お前は精々、少し喧しい中国の娘と乳繰り合っていればいいさ』

 

「ちょ!?俺とアイツはまだそんなんじゃ……」

 

『心配するな、何が起ころうとある程度は私が何とかしてやるとあの喧しい娘に言っておけ。何せ、お前の事を真に理解してくれてるのは、そいつともう一人の親友ぐらいなものだろ?む、すまない生一つ追加だ』

 

 そう言って姉さんは電話を切った。後に残ったのは、顔を紅くして俯く俺と、愉しそうに嗤ってるスコールさんとオータムさん、そして何故か合掌と十字それぞれしてるウィンターとスプリングさん……さらに何故か周りの患者と看護師達から生暖かい目を向けられるのだった。

 

 とりあえず、日本に戻ったらどう切り出そうか悩む俺だった。

 




余談ですが、最近FGOで山の翁ピックアップしてましたね~……札五枚と無償石15で一枚当たりましたw

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