容疑者:前回&前々回、図書室で騒いだシンバル井上ちゃん(と主人公)
被害者:みぞれ
その日は朝から、いまひとつ具合がよくなかった。熱っぽく、一人で食べたお昼ご飯の味も匂いもよく分からない。食後の落ち着き先の図書室でも
あの手この手で
そこからの彼の対応は素早かった。最近ストレスで体調を崩してる部員が多いせいか、
「一人じゃどうにもならないから、ここでこうしてうずくまっていたんだろ。病人が、やせ我慢してる場合かよ」
蔵守君は、普段とは似つかわしくない強い口調で、早く背中に乗れと促してきた。実際、蔵守君であれ誰であれ、救いの手が差し伸べられるのはありがたい事だった。熱はともかく吐き気が酷く、安静にしていようと思えば、冷たい床に座り込んでじっとしている他なかったのだから。
「……でも、蔵守君にうつしたら」
それでもまだ、私が断を下せずにいると。
「大丈夫だって。鎧塚さんがかかってるのは多分、知恵熱の従弟分みたいなやつだから。今日は鎧塚さんにしては随分とおしゃべりしてたし、普段使ってない事に脳みそ使ったから脳がびっくりしたんだよ、きっと」
なんて、安心させようとしているのか
「……蔵守君のばか」
さすがに抗議しようかと思ったけれど、悪態をつくだけにとどめた。蔵守君の目尻に、それまでは無かったはずの隈が浮き出ていたから。
渋々ながら彼の背中に身を寄せ、首に腕を回した。急いでやってきたのか、蔵守君の背中は熱をもってほんのり暖かい。
「ごめん。汗臭いかもだけど、保健室までちょっとだけ我慢してね」
「……大丈夫、気にしない」
「そこは気にならないと言ってもらえると嬉しいんだけどね?」
蔵守君は苦笑いしながら軽口をたたくと、私を背負い直して歩き出した。いつもより歩調はゆっくり。私の具合を出来るかぎり悪くさせないように注意している事が分かった。保健室に辿り着くまで、すれ違う生徒達から好奇の目に晒されたが、今は体調の悪さの方が勝る。
私は黙って目を閉じ、蔵守君の首筋に顔をうずめて、彼の肩越しに感じる揺れに身をまかせながらつぶやいた。
「……蔵守君」
「ん?」
「ありがとう。来てくれて」
「……どういたしまして」
蔵守君の声には、どこか照れたような響きがあった。
保健室で体温計を借りて測ると38度近くあった。平熱の低い私には結構な高熱だ。ベッドに横になって休ませてもらうと頭痛はいくらか収まってきたけれど、
養護教諭の女の先生に解熱剤を出してもらい、早退の手続きが済むまでしばらくベッドで休ませてもらう事になった。
その間、蔵守君は私に付き添ってくれて、とりとめのない話を振ってきた。ほとんどが、部活の事だった。このところの彼の関心は、滝先生の指導中の部員のメモ取りで、人によって目に見えて筆の動く量が違ってきたという。
そんな事を語る彼の目がどこか優しげだったのが腑に落ちなかったのか、早退の手続きをしながら先生が話に混じってきた。
「滝君の言葉を真剣に聞いている人と、そうでない人がいるようにしか聞こえないが、君はそれでよしと思っているようだね。訳でもあるのかい?」
「いい事だからですよ。うちの吹部は立華みたいに腕利きが大勢いるわけじゃありませんが、それでも中学から吹奏楽を始めたりして、それなりのキャリアを積んだ人はそこそこいます。つまり、既に分かっている事ならあえて筆を動かす必要もないわけで」
「これまではそんな事も考えず、ただ惰性で行動していたというわけか」
先生が、納得したように頷いた。
ことさら反抗的な姿勢を取っているわけではなく、自分達が今出来る事と出来ない事をアピールする。それは、今までの受け身のままの姿勢でいるよりはずっとよかった。
蔵守君も、疲れているはずなのに見るべきところは見ている。
「それとね、今度のサンライズフェスティバルのユニフォームの候補も決まったんだ。ありがたいことに、ギリギリまで待ってくれるというから、滝先生に断りなしの独断調達はやらずに済みそうなんだよ」
どうやら掘り出し物を見つけようで、心の底から嬉しそうに、蔵守君はスマホを操作して衣装の見本を見せてくれたけど、私は思わず眉をひそめた。
白のロングブーツと赤のグローブ。そして目を引く羽根付きベレー帽。ここまでは何も問題ない。だけど。ちょっと動いたらお尻が見えそうなプリーツスカートに、へそ出しコスチュームはどうにも扇情的すぎて、ちょっとどころじゃなく恥ずかしい。*1
「……どうしてこの衣装を選んだの?」
「業者さんが良い人でね。これにすれば格安にまけてくれるそうなんだ」
それはまけてくれるのではなく在庫処分したいからでは、と思うんだけど。
「……これはちょっと、露出が多くて恥ずかしい」
「おいおい。鎧塚さんだって南中の吹部で鍛えられたんだろ。合奏コンクールやら何やらで、さんざ観客から注目されるのに慣れた身が、今更この程度の露出で恥ずかしいとはどういうことだ」
「……それとこれとは話が違う。だいたい、まだ4月なのにこの衣装は寒そう」
「それなら鎧塚さんの方から、部長なり田中先輩なりに異議申し立てをしてくれよ。たまの女子のおしゃれの機会に、寒そうだから止めようとか。虎の尾を踏みたくはないなあ」
余計なお世話だと言われそうだし、と衣装の変更に蔵守君は気乗りしない様子でいる。私も、嫌だけど何が何でも衣装を変えてほしいというほどでもなかったので諦めようとしたら、先生がまた私達の間に割って入ってきた。
「ふむ……。確かに今の時期のへそ出しルックは健康面からみて感心せんな。それにだ。大事な彼女の艶姿が、鼻の下伸ばしたカメラ小僧の慰み物になるのも面白くなかろう?」
「鎧塚さんは彼女じゃないですし、先生の言い方の方がよっぽどやらしいですよ。でもまあ、また保健室送りにしちゃうのも確かによくないかな……」
当初の方針にぐらつきが生じたのか、蔵守君は腕組みをして考え込み始める。そんな彼の様子を見て、あと一押し必要かと呟いた先生は意地悪そうに微笑んだ。
「ところで話が変わるがね。男女がセックスする場所は、彼氏や彼女の部屋が定番だそうだ」
『!?』
なんてことを言うんだ。
喉の渇きを癒そうと口に含んだコップの水が気道に入ってむせ返る。
「ゲファッ、ゴフッガハッ」
「せ、先生。いきなり何を……」
われながら、はしたない咳。
でも幸か不幸か、蔵守君は先生の爆弾発言に注意が向いて私の事はスルー。こういうのを放置プレイと言うんだろうか。嬉しさ半分寂しさ半分。
「それで、男がいざ行為に及ぼうとすると、女は
先生はわざとらしく保健室の灯りを消し、カーテンも閉じ、不敵な笑みを浮かべてベッドに腰掛ける。なぜか、蔵守君のすぐそばに。
「私も処女だった頃は、灯りを消して行為に及ぶのはきっと裸を見られるのが恥ずかしいから。そう思っていたんだよ」
暗くなった室内で、先生の吐息と
「思ってた、って事は今は違うと?」
「うむ。性欲丸出しの男などお猿さんみたいなものだ。いやらしくてだらしなくて、残念な彼氏の顔を直視して、惚れた男に幻滅したくないからだと悟ったのだ」
そう言って、先生はタイトなミニスカートに網タイツで装飾された美脚を組み直す。つい先ほどまで、そんなコケティッシュな仕草を見せつける先生のおみ足をさりげなく、しかしねっとりとした視線で窺っていた蔵守君は試されていたと気付いて顔が引きつってる。
「鎧塚はお前の大事な相棒だろう。ならば彼氏ですらない猿どもの、残念という形容詞すら用いるにおこがましい視線から守ってやるがいい」
「ヘソだけはなんとか死守してみせます」
「そうしたまえ。うまくいった暁には、ご褒美にスカートめくりくらい許してもらえるかもしれんぞ」
……おヘソで済んだ方がまだよかったかもしれない。
私が
とはいえ彼がリストアップした他の衣装は、ヘソ出し衣装よりはいくらかマシといったレベル。もっと別のから選んでほしかったけれど、また雑用を増やしてしまった事を思うと、これ以上注文をつけるのは
「鎧塚も分かったかね。嫌だと訴えても、男は嫌よ嫌も好きの内と勝手に脳内変換してなかなか気を変えたりしない。男を翻意させるにもやり方というのがあるのだ。たとえば今度のように、自分の彼女の肌色率高めな姿をどこの馬の骨とも知らぬ男共のよこしまな視線に晒してたまるかとか、欲情のはけ口にされてたまるかとか、独占欲に訴えてみるといい」
女性はいくつになってもこの手の話になると食いつきがよくなるのだろうか。饒舌になった先生が有用だけど、前提からして明後日の方向を向いてるアドバイスを披露してくる。
「……私と蔵守君は付き合っているわけではないんですが」
「結構結構、鎧塚はまだ高校生なのだからな。心は売っても身を売ってはいかん」
もう水は飲みほしていたので、今度はむせないで済んだ。でも中身ごと先生の顔に吹き飛ばしても問題ないような気もする。
「まあ、それは置いといてだ。私のもとにも噂は届いているぞ。移動教室の度、鎧塚は蔵守にくっついて離れようとしないとな。しかもクラスも部活も一緒で距離もそう遠くないとくれば、年頃の女の子が妄想たくましくしない方が無理というものだ」
さすがに、噂がそこかしこに広まっている事は知っていた。
どうして蔵守君と一緒に行動しているか、本当の理由は言いたくない。本当は、彼の陰に隠れていないで■■に会いたい。でも、会うのが怖くて仕方ない。
「奥手な鎧塚が、彼氏でもない相手になぜそこだけは積極的になるのか、私は知らんがな。噂の種になる行為だと自覚はあるだろう。問われるたびに一々違うと言ってもキリがないぞ」
それでも別によかった。望んでやっていることだから。私は我慢するだけで済む。ただ、蔵守君に迷惑をかける事になるのは申し訳なかった。
「事情はどうあれ、好きでないなら、思春期真っ盛りの男子を勘違いさせるような行為は慎む事だ。……ま、蔵守も蔵守で、周りの事は良く見えるのに、身近な女の子の事は見えていないようだがな」
私を見舞っている間、蔵守君は私の体調の事など気にかけず、部活の話ばかり振ってきた。それが先生には
あれが、蔵守君なりの見舞いの仕方なんだろう。
家に帰って、夕方までベッドで寝ていると、お母さんが薬と一緒にお
「みぞれ、調子はどう?」
「……うん。明日は学校に行けると思う」
頭痛は完全に引いて、体温もようやく平熱。汗をかいたパジャマと下着の着替えを手伝ってもらっていると、お母さんが何故かニヤニヤして私の顔を
「ついさっきね、吹部の子が……ほら、みぞれと同じオーボエ吹いてるって子が見舞いに来たのよ。ほら、これ」
そう言って、お母さんが手さげ袋から2冊の大学ノートと薄い冊子を取り出す。ノートの方は午後に受けるはずだった授業のもので、冊子の方は30分ほどで終わるオーボエの基礎練習の教本を書き写したものだった。
幸か不幸か、今年はオーボエに新入部員は来なかったけれど来年もそうとは限らない。私達も、もう上級生。後輩の指導も仕事のうちに入る。北宇治の吹部に入ってくる子は、中学では吹奏楽未経験だった初心者も珍しくない。そういう子にも技術や理論を伝える為に、誰にでも伝わる言葉で噛み砕いて説明する必要があった。
これはその時に備えて、教本にある理屈や理論を分かり易い言葉で他人に伝える練習だった。教本を読んで説明どおり出来たとしても、どこか感覚だけで理解しているところはある。そういうところは、うまく言葉に出来ない。自分なりに冊子にまとめていると、嫌でもそういう部分と向き合う事になる。南中の吹部では代々受け継がれてきた練習の一つで、私が紹介すると蔵守君も嬉々として練習カリキュラムに取り入れた。
それ以来、私と蔵守君は、お互い別々の教本を基に、本業に影響が出ない範囲でこういう事をやって、ちゃんと相手に説明できるかの訓練を続けている。
「……蔵守君が」
私は冊子を覗きながらつぶやく。そこかしこに教本の記述と一致しない文言が見つかった。ただそれが間違いという訳でもない。長ったらしい文章を、彼なりの短い言葉に書き換えたり、具体的な例を付け加えて分かりやすくしようと試みたりしているのだ。つまり、内容は理解しているという事が伝わってくる。
「わざわざ来てくれたんだし、玄関で挨拶だけさせてとんぼ返りさせるのも何だから、みぞれの様子を見に部屋に上がったらって誘ってみたんだけど」
「……嫌!」
自分の部屋に同い年の男の人を入れる。嫌悪感よりも恐怖心から本能的に悲鳴を発してしまった。お母さんがあからさまに顔をしかめる。
「みぞれったら、第一声がそれ? そりゃ年頃の男の子を部屋に入れたくはないでしょうけど、見舞いに来てくれた子に、それも知らない仲でもない子に、いきなり嫌はないでしょう」
いつまでたっても男の子に耐性ができないんだから、とお母さんは肺が空っぽになるのではと思うほどの大きな溜息を吐く。
「向こうもそう言われると思ったんでしょうね。嫌がるでしょうからって、すぐ断って帰ったわよ」
そう言われると、さすがにばつが悪い。お母さんから視線をそらして、逃げるように冊子をめくっていると、最後のページに一枚のメモ用紙が挟まれていた。寄せ書きだった。
喜多村先輩から
「ゆっくり休んで元気になって戻ってきてね☆ *イ`^ᗜ^リ」
岡先輩から
「気合いよ`Д´)」
優子から
「薬、飲んだ? 安静にしてる? やる事ないからって、スマホ眺めてばっかりは目によくないからほどほどにね(◉ω◉`)」
……お母さんかな?
そしてもう一つ、端っこの方に小さく「今日は図書室でうるさくして(m´・ω・`)m ゴメン…」
……気にしてたんだ。こういう形で謝ってくるのは、ちょっとズルい。
今度はノートを開いた。最近は見なくなった、綺麗な字で授業の内容がまとめられている。2年生になって、授業の進みも早くなって、蔵守君のノートの字も次第に速度優先の乱雑なものになっていた。わざわざ、書き直してくれたのかもしれない。手間をかけさせてしまった事への申し訳なさと、細やかな心遣いへの嬉しさが相半ばする。
「ねえ、みぞれ。同じ楽器やってるそうだけど、あの子とはうまくやれているの?」
「……分からない」
嫌われてはいないと思う。蔵守君はなにかと私に優しくしてくれる。ただそれが、去年の事での同情から来る行為なのか、また別の理由からなのか、はっきりしない。
「蔵守君は、同じ楽器を一年も一緒にやってれば、言葉にしなくても伝わるものがあるって言ってくれるけど……」
今日の図書室での
「あらあら、根暗なみぞれを甲斐甲斐しくお世話するなんて、物好きな男の子もいたものね」
確かに私は人好きがするような性格ではないと自覚している。でもそれにしたって実の娘にその言い草はないんじゃないかと思う。
「彼は人が良いんでしょうね。そのせいで余計な重荷まで背負っているようだけど」
どう返答していいか分からなかった。お母さんは、手放しで蔵守君の事を誉めている訳ではない。人が良いとは、扱いやすいの裏返しでもあること。そのくらいのブラックユーモアを解する分別は、私にも身についていた。
「同じ楽器を介した意思疎通か……。私はそういうコミュニケーションの取り方はよく分からないけど、素敵だと思うわ。だけどね」
お母さんは穏やかな顔をして、ベッドの上に腰掛けた。造りの良いベッドは、私とお母さん、二人分の体重を受けても嫌な音一つ立てない。
「はっきり言葉で言わなきゃ、伝わらないものもあるのよ」
息を吞む私を意に介することなく、お母さんはお粥を小皿によそう。
「言葉では伝わらないものもある、なんてのは言葉を尽くした上で、初めて言える台詞よ」
そう言って、お母さんがお茶請け代わりに食していた、軽く塩茹でしたそら豆を差し出してきた。
「……っ」
「塩っ気がきついでしょう? 横着して冷めたままの作り置きを食すと舌がそう感じるのよ」
私は舌がひねくれてるからこっちの方が好きだけどねと言いつつ、お母さんは一旦部屋から出て、温め直したそら豆を持ってきた。今度は味わいがまろやかで、食もすすむ。ほどよく濃い目に落ち着いた味付けが、疲れた体に染み渡る。
「おいしい……」
「お料理も手間を惜しめば本来の味から離れてしまう。言葉だって交わさなければ、だんだんと疎遠になってしまうものよ。彼の事をただのクラスメイト、ただの部活仲間以上の人と思えるのなら、みぞれの方からも動かないと駄目よ。私はね、大事な人がいなくなってから後悔するみぞれを見たくないの」
だから蔵守君とも仲良くね。そう付け足してお母さんは笑って、お夕飯の下ごしらえに出ていった。
「……私は、蔵守君と仲良くなりたいのかな」
一人だけになった部屋で、私は布団に潜り込んで呟いた。
「私が仲良くしようとしたら、蔵守君は嬉しいのかな」
私みたいな面白みのない人間が距離を縮めようとしても、迷惑じゃないのかな。マイナスに進む思考を振り払うように何度か寝返りを打ち続けていると、壁に貼り付けた吹部の連絡網が目に入った。蔵守君の一つ上、そこにあるのはあすか先輩の名前とメールアドレスだった。
「……あすか先輩なら、きっと遠慮なく本音を言ってくれる」
本音を聞きたい、でも本音をぶつけられたくない。私は少しばかりの小細工を施して、スマホを叩いた。
おまけ
――優子とみぞれの電話でのやり取り――
あすか先輩にメールを送ると、ほどなくしてスマホから着信音。先輩からの返信にしてはいくら何でも早すぎだろうと覗いてみると、優子からだった。
「みぞれが体調崩したのって蔵守のせいなの!?」
……やってしまった。
通話中、私が
「やっぱりアイツのせいなのね! 明日学校で会ったら〆てやるんだから!」
と優子は怒髪天を
「ち、違うの。私が気分悪くなったのは蔵守君のせいじゃない……とも言い切れないところも無きにしも非ずとも限らないというか……」
「何よその奥歯に歯垢ためまくったような言い方! ……ああ分かった。要するにアイツがうるさくしたせいもあるかもだけど、体調崩した原因はそればかりじゃないって事なんでしょ?」
「……優子、すごい」
香織先輩が絡むと途端に暴走してしまう優子だけど、香織先輩が絡まない事では驚くほど的確に状況判断を下す。香織先輩は良い人だけど、優子は先輩とは距離を置いた方がいいんじゃないかなあ、と思った。
「あ……、先輩から返信きてる」