ブラックブレット:破滅の風   作:i-pod男

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新年の新作です。以前からちょっとずつ書いていたものです。

友人の家へ遊びに行った時にメタルギア:ライジング・リベンジェンスをプレイした時にサムKAKKEEEと思って妄想が膨らんだ末に出来てしまった駄作です。できる限り原作には沿うつもりですが、ネットで見つけた英訳されたものを翻訳しつつ執筆している上フォーカスがオリ主なので見切り発車同然という有様です。



Stage I : The Samurai

西暦2021年、世界各地で地球に存在する全生物の天敵が突如として現れた。

 

名を『ガストレア』と言う。ガストレアウィルスに感染し、遺伝子を強制的に書き換えられた、生物の範疇を逸脱した醜悪な外見と赤い目、そして異常過ぎる再生能力を持つ、御伽話の中でしか出て来ない、『怪物』としか形容出来ない存在だ。

 

既存の兵器では全く歯が立たず、核兵器も人類の活動領域内では使用出来ない。各国が保有する軍事組織、国防組織が死力を尽くして張った防衛線により、ガストレアの侵攻は辛うじて防ぐ事が出来たが、世界中に点在する八十億と言う膨大な数の人間は瞬く間にその数を十分の一にまで減らされ、人類の活動領域が大きく狭まった。

 

これが後に『ガストレア大戦』と呼ばれる、人類が大敗を喫した歴史的な出来事である。

 

このガストレア戦争の最中、一つのプロジェクトが持ち上がった。人体を一部機械化してガストレアを葬れる兵士を作り出す、機械化兵士計画と呼ばれる物だ。

 

 

 

 

 

 

朧げな意識の中で冷たい手術台に横たえられた少年は手術用の服とゴム手袋を付けた人影にクリップボードに付いた二つの紙切れを見せられた。

 

「やあ少年。右胸から先と内蔵が酷い有様だ。左目も・・・・うん、角膜に酷い傷があるな。手短かに言おう。君から見て右の書類が死亡届、左がそうじゃない奴だ。死神が代わりに決断してしまう前に決めたまえ。どちらが良い?」

 

応急処置を施されて出血その物は止まっているが、血を流し過ぎて意識も思考も五感も曖昧になっていた。どっちが右でどっちが左か等と言う単純な事も皆目見当がつかなくなってしまっている。しかし、残った血塗れの左手を挙げたが、その動作が精一杯だったのか、ガタンと音を立てて手術大の上に落ち、少年はぐったりと動かなくなった。しかし、その指先は確実に左の書類の端を捉え、血判にも見える血痕を残していた。

 

 

 

 

 

 

「これが死。これが戦場・・・・素晴らしいッ!!!」

 

黒とニッケルプレートのゴテゴテした二丁拳銃を引っ下げた二メートルはあろうかと言う痩身の男がガストレアと人間の死骸で築かれた数ある山の上の一つでそう叫んだ。臙脂色の見るからに高そうなパーティースーツに身を包んだ彼は、吐き気を催す様な戦場では酷く場違い且つ不気味だった。

 

「そうは思わないかね、君は?」

 

男は振り向き、得物の刀を研いでいる青年に同意を求めた。長い髪を後ろで纏めた彼の服は至ってシンプルなチャコールグレーの作業着で、袖を腰回りに結んでいた。タンクトップから見える右胸から先は黒い機械となっており、生身の左側に比べて一回りは大きく、かなりアンバランスな見てくれをしていた。

 

「別に素晴らしいとは思わないが、これだけ殺したり殺されたり死んだりを繰り返してりゃ抵抗も無くなるさ。」

 

ようやく研ぎ具合に納得が行ったのか、刀身から顔を上げてスーツの男の問いにそう答えた。

 

「それよりお前は良いのか?」

 

「何がだい?」

 

「弾だよ、弾。もう打ち止めだろ?銃だけに。」

 

「それについては心配無用だよ、何も拳銃しか扱えないと言う訳じゃない。私はこれが気に入っていると言うだけだ。」

 

スーツの男は青年のつまらない洒落を喉の奥で笑いながら足元の袋から自動小銃と大量のマガジンを取り出して見せた。ガストレアの血や体液と思しき物に塗れているが、本体は全く無傷だった。

 

「んじゃ、コイツはついでだ。」

 

青年は傍らの小さなリュックから黒いポーチを取り出し、スーツの男に投げて寄越した。

 

「ベレッタ対応のマガジンだ。二十発入り二本、十五発入り四本だ。銃の使い方なんざ知らねえし、使わねえのも勿体無いからやるよ。」

 

「ではお言葉に甘えてありがたく使わせて貰うよ。射撃ぐらいは私が教えても良いんだがね。思っている程難しくはない。動いているとは言え、あんな大きな的だ。余程壊滅的でなければ君でもどうにかなるさ。」

 

「来るぞ!!第二波だ!!」

 

迷彩服の自衛官があらん限りの声を上げて叫び、途端に空気が張り詰めた。二人の周りにいる者達も戦闘準備に入った。

 

巨大な砂嵐の様に土や瓦礫がガストレアに蹴立てられ、無数の真っ赤な目が近付き、大きくなって来た。巨大な昆虫を幾つも合成した様なガストレア達の輪郭が双眼鏡越しに見え始める。

 

「お喋りはここまでの様だね。到達まで後三十秒と言った所か。」

 

銃の点検と初弾の装填を手早く済ませ、スーツの男は死体の山から大道芸人の様に軽やかに飛び降りた。

 

「言うだけ無駄かもしれないが、一応名乗っておこう。私は蛭子影胤だ。覚えなくても良い。」

 

「変な名前だな。ガキの頃に漢字書くの苦労したろ?」

 

「良く言われる。それと、10歳になった頃にはもう慣れたし、書き順もしっかり覚えた。」

 

「俺だけ名無しの権兵衛ってのも格好がつかないから俺も名乗らせてもらう。姓は桐生、名は正宗。縮めてサム。同じく別に覚えなくていい。ま、縁が有ったらまた会おうぜ。」

 

「無ければ?」

 

「問題無いさ。地獄で会おう。」

 

二人はそれぞれの得物を手に、悠然とガストレアの方へと向かって行った。

 

そして大戦から、約十年の月日が流れた————

 

 

 

 

 

春の夕暮れ時、沈みかける太陽が大きなビルの屋上にあるベンチで寝そべるビジネススーツ姿の正宗の影法師を作っていた。

 

「暇だ・・・・・・」

 

整った顔立ちはだらしなく半開きにした口と目で台無しになっていた。本人はそんな事などお構い無しに体勢を変えて大きく欠伸をし、惰眠を続けようとした。

 

「おーい、正宗ー!」

 

しかしそれも勢い良く開かれた屋上のドアの向こうから己の名を呼ぶ相棒である小学生位の少女によって阻まれた。膝小僧が隠れる程丈の長いモッズコートとそれに付いたフードを目深に被っている為顔は見えない。

 

「何だ、真由。始末書と大量の書類整理で疲れてんだが。」

 

「しゃちょーが来てくれって、大至急。」

 

「未織が?あいつが何だって?」

 

「アレが完成したってさ。」

 

再び寝返りを打ってその少女———真由に背を向けようとしたが、彼女の言葉で眠気があっと言う間に吹き飛んだ。まるでとんでもなく豪華なプレゼントを目の当たりにした子供の様に目が輝き、満面の笑みが顔を占める。

 

「本当か?」

 

「ん。詳しい事は良く分かんないけど、正宗の期待通りに仕上がった筈だって。今は勾田高校にいるよ。」

 

「良く報せてくれた。行くぞ。」

 

先程までの気だるさはどこへやら、正宗は飛び起き、階段を何段も飛ばしながら駆け下りた。真由も小柄ながらもその後を付いて行く。社員専用の駐車場に置いてある自前のハーレーに飛び乗ると、勾田高校を目指して走り出した。丁度放課後だから教師は多くても生徒はそうはいない筈だ。

 

逸る気持ちを抑えられず、明らかにバイクが通るには無茶がある様な裏路地や街道を抜け、車線上にいる車両の間を縫って行く。後ろで抗議の声を上げる真由の言葉も全く耳に入らない。校舎の中には生徒も教師も殆どおらず、運良く遭遇する事も無く生徒会室に辿り着いた。ノックをしてから入ると、桃色の振り袖姿の生徒が二人を出迎えた。

 

彼女こそが巨大兵器会社『司馬重工』の社長令嬢にして開発研究にも携わっている偉才、司馬未織である。

 

「正宗君、真由ちゃん、いらっしゃい。えらい速かったな。」

 

「親父の形見預けてまで作った武器が完成したって聞いたら急がん訳が無いだろう。道路交通法に抵触するすれすれでバイク飛ばして来たんだ、早く見せてくれ。」

 

「せっかちやねえ、もう。ま、ええわ。ほな隣行こか。」

 

高校の生徒会室に似つかわしくない高級感溢れる木製のドアを開くと、生徒会室の倍以上はある部屋に通された。そこには様々な機材が揃っており、秘密の研究室らしい雰囲気に真由は興奮を隠せず辺りを見回していた。

 

「これか?」

 

「これや。」

 

端のテーブルに鎮座している大きなケースを未織は指でトンと軽く叩いた。

 

「搭載する機能ははっきり分かっとったし、プロトタイプの為に使う物もあったからそっちは問題無かったんやけど、あんなリクエスト初めてやったし、本体の強度も視野に入れなあかんかったから手間取ってしもうて。堪忍な。」

 

「構わない。」

 

ケースのラッチを外して蓋を開けると、一振りの太刀が中に入っていた。しかし通常の刀の見てくれを遥かに逸脱した、SF映画にでも出て来そうなデザインだった。

 

「コイツは凄いな。」

 

「やろ?高周波ブレード『HFムラサマ』。鞘はM16アサルトライフルを意識してるんよ。トリガーを引いたら炸薬でパイルが刀の鍔を打って飛び出す仕掛けや。飛び道具にもなる様に柄の先端に軽〜くスパイク付けといたからな。勿論、切れ味は元のまんまや。」

 

鞘から抜くと、赤い刀身が露わになった。

 

「流石、良い仕事するね。」

 

「それだけやないで。生体認証のロックが掛かってるから、正宗君しか使えん様になっとるんや。正宗君やなかったら高周波の機能も使えんし、抜く事も出来ひんよ?」

 

「しかし、持ち運びはどうする?」

 

総重量が多少上がる事は慣れれば良い事だが、鞘がここまでゴツくなってしまうと普通の太刀の様に佩くのは物理的に不可能だ。しかし、未織はまさにその質問をするのを待っていたとばかりに笑みを浮かべた。

 

「言うと思ったわ。心配ご無用やで?ほい。」

 

ケースの中に残っている機械のアームが付いたベルトを取り出した。アームの先端には丁度ムラサマが収まるラックの様な物が付いている。

 

「腰にあると邪魔になる時もあるかもしれへんから、アームで背中辺りに固定する事も出来るんよ?動きは阻害せえへん様になっとるわ。ベルトは防刃繊維で簡単には切れへんし。」

 

正に至れり尽くせりの出来映えである。

 

「パーフェクトだ未織。」

 

「補強目的で念の為に炭窒素チタンでコーティングはしてあるけど刀身が耐え切れて且つ大抵の物を斬れる高い周波数に合わせるん、ほんに大変やったんやで?こんな年代物壊してしもたら勿体無いどころの騒ぎやあれへんし。」

 

「十六世紀の戦国時代に作られたらしい。でもプロトタイプ製作の為に虎徹と同田貫を渡しておいたから幾らか楽だったろう?」

 

「せやけどあんな値打ち物を修学旅行先で買うた木刀みたいにポンポン使てくれ言うて出されたから別の意味で疲れたわ。どれも壊れずに上手く行ったからええ様な物の・・・・・」

 

その時の苦労を思い出したのか、未織は顔を顰めてこめかみを抑えた。

 

「まあ兎に角、これでお互い取引の条件を果たした。俺は製作期間中の雇われ人、その間に未織に最高級の武器を作って貰った。」

 

「じゃあうちの民警部門、もうやめるん?」

 

未織は寂しそうに目を伏せた。

 

「最初はそのつもりだったが、案外社宅の居心地が良くてな。安定した給料とたまのボーナスが出る間は当分世話になってやるよ。」

 

未織の肩を軽く叩き、その場を後にした。

 

「正宗、これからどうすんの?」

 

「決まってるだろ?試し切りだ。モノリスの外に出るぞ。俺は今頗る機嫌が良い。この方角なら現在地から一番外周区に近いな。」




こんなめっちゃくちゃな拙作ですが、評価・感想・誤字脱字の報告などなど、お待ちしております。

それでは良い2017年をお過ごしください。

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