銀河HP伝説   作:アレグレット

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趣味レート事件

 アウグスト・ザムエル・ワーレンは普段は温厚な人柄だが、いざともなると剛直さを発揮する提督として知られている。自由惑星同盟においてオーベルシュタインにつかみかかったビッテンフェルトが謹慎を受けた際、彼の麾下が憲兵隊と一触即発の状態になった時、彼は装甲車の上で胡坐をかき、双方の間に立ってにらみをきかせ続けたというのは有名な話である。

そして、彼は諸提督の中でアイゼナッハとならんで数少ない妻子持ちの一人でもある。正確には妻は死別してしまって、息子がいるだけなのだが、それだけにシングルファザーとして精一杯の愛情を注いでいた。自分の両親のもとに預けてはいるが、軍務の合間や休暇を息子と一緒に過ごすことは彼の日課の一部になっていたのである。

 

 その彼が、珍しく頭を抱えてゼー・アドラーの席に座っていたのは、酒量が過ぎたからでは決してなかった。

 

対自由惑星同盟への侵攻の機運が高まっている中、今宵もゼー・アドラーには、日頃の激務を終えた提督たちが三々五々集まって話の華を咲かせていた時の事である。

「あぁ・・・・あぁ・・・・あぁ・・・!!いやはや参ったな。」

酒宴が始まってからずっと浮かぬ顔をしていたワーレンが、突然グラスを置いて頭を抱え始めたのである。どうしたのか、と日頃特に仲のいいルッツが尋ねると、

「卿は羨ましいなぁ。」

と、ワーレンは抱えていた両の手の間から憔悴ぶりを示した目を出して言う。

「なんだ、藪から棒にどうした。」

「卿には趣味があるだろう。射撃、銃の手入れ、シュミレーターにこもること。」

あれ?最後のは趣味のレベルと言えるのか、と周りの提督たちは疑問符を浮かべていたが、ワーレンの様子がただ事ではないので、黙って聞くことにした。

「もう長い事やっているな。卿にも趣味の一つくらいあるだろう。」

「それで困っているのだ!あぁ・・・エルマー、父さんはお前に恥をかかせたくはないんだが!」

ワーレンが頭を抱え、自分の髪をぎゅうっと掴んだ。

「おいおい、そう頭を抱えていては理由もわからんぞ。話してみろ、何か力になれるかもしれない。」

と、ミッターマイヤーが言う。その隣でビッテンフェルトが例によって大声で、

「そうだとも!ここにいるのは進退全て共にすると誓った同志たちだ!困ったときは村八分!!何かあれば何でも言ってくれ!!」

ブ~~~~~~~ッ!!!と盛大にワインを吹き出したのはミュラーだった。彼は顔を真っ赤にして謝りまくると、メックリンガーにハンカチを差し出されて、彼は恐縮しながらも素早くテーブルと自分の服をぬぐった。

「なんだ!?どうした??」

ミュラーは3分の1笑い、3分の1同情、3分の1どうしていいかわからないという微妙な顔をしながら、

「ビッテンフェルト提督、村八分とは・・・・その・・・・制裁を行う事ですよ。絶交をしたり、その人を村ぐるみで除外することを言うのです。」

「何?!そうなのか、いや悪かったな!全然そういう意味で言ったんじゃないぞ!!」

だが、諸提督の頭の中には「困った時は村八分!!」というフレーズがキャッチコピーのようにエコーし続けていたのである。

「で、どうなんだ?何が問題なんだ?」

当のワーレンは自分の問題で一杯一杯だったと見え、今の話に食いつこうとしなかった。憔悴した顔を一同に向けながら、

「俺には息子がいてな。ちょうどいま7歳になる。俺の小さなころににそっくりなのだ。」

「良いではないか。かわいい盛りだな。」

ミッターマイヤーが羨ましそうに言う。

「あの老け顔のワーレンの少年時代というのはどうだったのだ。今と同じ顔――。」

「しっ!!!」

ビッテンフェルト、お前とんでもないことを言ってくれるな!!とばかりに彼の口を押え「ん~~お~~~!!」とばたつく僚友を抑えながらルッツは促した。

「コイツの言うことは気にするな、で、どうなんだ?」

「ん?あ、あぁ・・・。それでな、息子が小学校に通っているんだが、そこで来週授業参観があるのだ。」

「良いではないか。たまにはそういったものに行って息子の頑張りぶりを見るのはいいことだぞ。」

と、未だ独身のケスラーが言う。お前が言うのか!!とようやくルッツの束縛から解かれたビッテンフェルトがまたもツッコミを入れたいそぶりを見せたが、アイゼナッハとメックリンガーが黙らせた。

「その中身が問題なのだ!息子が昨日の晩帰ってきてな、こういうのだ。『お父さんの趣味、なぁに?』と。」

とたんにシ~~~ンとゼー・アドラーが静まり返った。周りの提督だけでなく、他の客までもが一斉に黙り込んでしまったのである。そんな中ワーレンの虚ろな声だけが店内に溶けていく。

「『作文に書いてみんなの前で発表しなくちゃならないんだけれど。』と。」

「・・・・・・・・・。」

「『僕、お父さんの趣味って見たことないんだけれど、何をしているの?』と。」

「・・・・・・・・・。」

「あの時ほど恥ずかしかったことはない!!俺の趣味は何なんだ!?何もないではないか!!ミッターマイヤー提督のような愛妻家ではない。(それは趣味か?とミッターマイヤーが首を傾げた。)ロイエンタール提督のような漁色家でもない(おい!とロイエンタールがツッコミを入れた。)ルッツのような射撃もできん!メックリンガーのような芸術に凝っているわけでもない!ケスラーのようなロリ――。」

「誰がロリだ!!」

ケスラーが憤然と立ち上がったが「まぁまぁまぁ!!」と諸提督にたしなめられた。ケスラーが20も年下のマリーカと付き合っているのは公然の事実なのである。

「余暇があればこうしてここにきて皆と酒をたしなんでいるだけ!!『父さんの趣味は飲酒です。』などと発表させた日には息子は笑いものではないか?!いや、駄目だ!!恥ずかしくてそんなことはできん!!あぁ!!俺はどうすればいいのだ!!」

ワーレンは頭を抱えてしまった。

「むぅ、確かにワーレンには趣味らしい趣味はないか。」

ミッターマイヤーがメックリンガーに尋ねた。

「まぁ、そのようですな・・・。無趣味なのですかな、ケスラー提督。」

「わ、私に振るか!?そ、そ、そうだな・・・・あまり聞いたことはないな、ミュラー提督。」

「え!!あ、まぁ、そうですね、ええ。なんというか、その、ワーレン提督は軍務に精励していること自体が趣味というか・・・・ある意味ローエングラム公と相通じるところがあるというか・・・・。」

「それではダメなのだ!!」

ワーレンが頭を振りながらうめく。

「おい、だったらこうしたらどうだ?俺にいい考えがある。」

ビッテンフェルトが身を乗り出して提案した。

「なんだ?またロクでもないことを思いついたんだろう。まぁ、良いから言ってみろ。」

ケンプが促す。

「趣味がないならば、この中の人間の趣味を学べばよいではないか!趣味なんぞ構えていたってできんぞ。要はちょっとしたきっかけがあればいいのだ。そこで意気投合し、自分に合った趣味が見つかればものにしてしまえばよいのだ。」

「そううまくいくものかな。」

と、ミッターマイヤーがロイエンタールとアイゼナッハに尋ねたが、一方は口元をゆがめ、一方は肩をすくめるだけだった。

「なるほど!!」

急に顔を上げたワーレンが何度もうなずいている。

「そうだった!くよくよ悩むよりもまずは実践してみることが肝要だな。いや卿に学ぶ時が来るとは思わなかった。感謝するぞ、ビッテンフェルト。」

「そうだろう!よし、そうと決まれば善は急げだ。皆でワーレンの息子に恥をかかせないように尽力しようではないか!困ったときは村八分!!」

諸提督は今度こそ微妙な顔になり、ついで互いの顔を見た。「誰かこのイノシシ野郎に言ってやってくれ。」というメッセージがどの提督の顔にも出ている。

「それは違うのだ!!!」

堪り兼ねたルッツがついに叫んだ。

 

翌日――。

軍務を終えた一行はトップバッターであるメックリンガーの邸に行くことになった。

「なんといってもメックリンガーは芸術提督だからな。趣味の幅が広い。存外ここで決まるんじゃないか?絵画だろ?音楽だろ?後は何があったかな?」

急にビッテンフェルトから話を振られたミュラーが、

「え?それは・・・絵画ですよね、音楽もありましたし、絵画・・・音楽・・・音楽・・絵画・・。」

「卿は九九の暗記でもしているつもりか。」

僚友を窘めたロイエンタールが、

「他にも古代の英雄に関する蔵書の研究、ストラディバリウスの収集、帝国アカデミーの会員、前衛オペラの戯曲の作曲などを行っているそうだ。この間もウェストパーレ男爵夫人の支援で帝都のオペラハウスの一つで彼の戯曲が上演されたと聞いているぞ。」

と、フォローした。

『そうそうそれだ(です)!!』

と、さほど芸術に関心のなかった二人がハモったところで、メックリンガーの邸についた。2階建てであるが、左右に広い優雅な白を基調とした邸宅だ。

「ようこそ、我が邸に。ワーレン提督、どうぞこちらに。」

緊張したワーレンをメックリンガーが優雅に迎え入れる。ぞろぞろと一同もそれに続く。玄関を抜け、奥にはいると広いリビングのような物に出た。

「おぉ!!ピアノではないか!!」

物珍しそうに駆け寄ろうとするビッテンフェルトを、いち早くメックリンガーの合図を受けたルッツ、ケンプ、アイゼナッハらが取り押さえる。

「駄目だ。ビッテンフェルト、落ち着け。今日はワーレンの為にやってきたのだ。」

ミッターマイヤーに諭されたビッテンフェルトはおとなしく用意された椅子に座った。

「どうも皆の前で教わるというのはなぁ。」

と、ワーレンが言ったために、提督たちは別室で待つことになった。こういうこともあろうかと、メックリンガーは執事や従僕たちに言いつけて、簡単な軽食やワインなどを用意していたのである。ほどなくして優雅な旋律が聞こえ始めたのは、メックリンガーの手によるものだろう。

「バッハのメヌエットか、初めて習うのであれば無難なところではないか。」

ロイエンタールがワイングラスを傾けながら言う。それをきっかけに、諸提督たちはワイワイと話し始める。

「キラキラ星よりはましだろ。」

「あれは学芸会でよく弾くやつだからな。」

「しかし、弾けるのかね。我らが提督は。」

「卿もそう思うか、そもそもピアノをいじったことなさそうだからな。」

「大丈夫だろう。なんといってもワーレンは器用貧乏だからな。軍務においてはどの任務も堅実にこなしてきたことを卿等は知っているだろう?」

「う~む、軍務と趣味とは少し違うと思うのだが・・・・。」

「お、メックリンガーの演奏が終わったみたいだぞ。ワーレンの番か?」

ビッテンフェルトの声に一同はシ~ンと次の間に耳を澄ました。メックリンガーの低い声が聞こえるのは、楽譜と鍵盤の配置の説明でもしているのだろう。時折、ピン、という音が聞こえるのは試しに押しているのに違いない。それも聞こえなくなり、いよいよ演奏が始まるのだと、提督たちはかたずをのんで見守っていた。

 

 

ピン!!ダン!!ピ~ン!!ピ~~~~~~!!!

 

 

全く突然にそれはやってきた。まるでピアノを見たことのない人間が力いっぱい押し続けている・・・いや、叩きつづけているかのように、とんでもない不協和音が飛び込んできたのである。

 

 メックリンガーが何やら叫ぶ声が聞こえた。

 

「わぁ!!」

「これはたまらん!!」

「どこをどうすればこんな音が出るのだ!!??」

「やめろ、やめてくれぇ!!」

「耳が壊れる!!!」

「逃げろ!!」

誰かが叫んだ。提督たちは我先にと部屋を飛び出していった。疾風ヴォルフに負けないスピードで。

 

数分後、戻ってきた提督たちの前に、憔悴しきったメックリンガーと、面目なさそうにしているワーレンの姿があった。

「義手を付けていらっしゃるワーレン提督にはピアノは難しいかと思います。」

というメックリンガーの言葉だけが空しく響いた。彼は何も言わなかったが、調律をめちゃくちゃにされてしまい、一部鍵盤も破損してしまったのである。

そして後日のこと「桁が一つ間違っているのではないか!?」と思っても不思議ではない請求書をメックリンガーは眼の色変えて受け取ったが、僚友には黙っておいた。

 

翌日――。

一同は今度はビッテンフェルトの家を訪れていた。「ぜひ俺の家に来て俺の趣味をやってみないか!?」と力強い彼の言葉がワーレンの足を向けさせたのである。

「おい、ミッターマイヤー。」

ビッテンフェルトの家に行く道すがら、ロイエンタールがミッターマイヤーに話しかけた。

「ビッテンフェルトの趣味とは何なのだ?ついぞ聞いたことがないのだが。」

「俺もないな。奴と来たら四六時中大声で話をしているイメージしかない。誰か知っているか?」

提督たちもビッテンフェルトの趣味となるとさっぱりわからないという顔をしている。憲兵総監として常に情報を握っているケスラーでさえも分からないという顔をしている。

「まぁいい。奴がそう言うからにはそれなりの自信があるのだろう。」

ロイエンタールがそう締めくくったところで、ビッテンフェルトの邸宅にたどり着いた。

「お、おい、なんだあれは!?」

ルッツが邸宅の敷地内からにょっきりと顔を出している巨大な建造物を指さして叫んだ。

「あ、あれは?!ガ〇ダムか!?」

その言葉が引き金となって、提督たちは一斉にしゃべりだした。それをぽかんとして見つめているのは若い提督たちである。

「ガ〇ダム!?なんですか、それは?」

一番若いバイエルラインが皆に聞いて回る。とたんに諸提督の顔つきが一変した。

「知らないのか!?西暦時代にはやった超人気アニメで――。」

「数々の続編も出ているという――。」

「赤い彗星くらいは知っているだろう!?何?それも知らないというのか!?」

心なしかケスラーの顔が憤然となっているように思えた。

「あきれたものだ!!」

「『殴ったね!親父にも殴られたことないのに!』というあの有名なセリフも?」

「申し訳ありません!!知りません!!」

皆の「ガ〇ダム攻勢」にたまりかねたバイエルラインが、まるで軍律を犯したがごとく全力で謝罪した。

「しかしあれは3メートル以上もあるではないか。どうやってあんなものを持ちこんだのだ!?」

ケスラーがあきれ顔をする。

「さぁ・・・・。」

一同が当惑して巨大な建造物を見上げているところを、目ざとく見つけたビッテンフェルトが大声で呼んだ。

「なんだ、もう来ていたのか!さぁ入ってくれ!遠慮なんかすることはないぞ!!」

「おい、ビッテンフェルト。これは一体どうやって持ち込んだんだ?」

ミッターマイヤーが尋ねる。

「持ち込む?」

「そうだ、このようなものはトレーラーなどでは積み込めないではないか。それともヘリか何かで空輸してここまで運んだのか?」

「いや、違うぞ。俺が作ったのだ。」

『作った!?』

一同が一瞬棒立ちになる。あの巨大なガ〇ダムはビッテンフェルトが作り上げたものだったのだ。

「驚いたな!アニメやアミューズメント施設にあるものとそっくりではないか!」

ケンプが感嘆の声を上げる。その横でレンネンカンプも、

「しかもあの汚し具合はまるで戦場から帰還してきたばかりのリアリティさではないか。」

と、目を丸くしている。それを見ながらビッテンフェルトが今にもふんぞり返りそうになるほど背をそらしたかと思うと、豪快に笑った。

「どうだ!ワーレン、趣味というモノはな『この人がこんなことをやっていたのか!』と、意外に思われるほどインパクトがあり、大うけするものなのだ。」

「ううむ・・・・。」

ワーレンがすっかり気圧された様に唸っていたが、不意にガ〇ダムの真下に駆け寄って、

「いや、これは参った!これは俺も卿を見習わなくてはならないな。おい、ビッテンフェルト!俺もこのようなものが作れるのか?」

「当り前だ!猪突猛進!不退転の決意で取り組めばできないものなどない!俺の邸の裏庭には既にパーツが用意してある。卿さえよければすぐにでも取り掛かれるぞ。」

おお、とワーレンは顔をほころばせた。普段ビッテンフェルトとよく口論する彼もこの時ばかりはビッテンフェルトにすっかり感じ入っている様子である。

「頼む!ビッテンフェルト!どうか俺に卿の技術を伝授してくれないだろうか!!この通りだ!!」

「はっはっは!!そうかしこまるな!!俺と卿の仲ではないか!!そうだ、まずは手始めにこの模型の中を案内してやろう。そうすればいかにして俺がこれを作り上げたのか、卿にもわかるだろう。」

すっかり得意満面の様子のビッテンフェルト。そしてしきりに感激してビッテンフェルトの手を押し頂かんばかりのワーレンを諸提督たちは半ばあきれ気味に見つめていた。

「あの~~・・・・。」

「よぉし!!行くぞ!!」

ミュラーが口を出す前に、ビッテンフェルトとワーレンはさっさとガ〇ダムの足の間にある脚立を、胴体部への入り口に向けて登って行き、さっさと入ってしまった。

 

駄目だこりゃ、というようにミュラーが肩をすくめた。

 

「完全に二人の世界に入ってしまったな。」

「大丈夫なのか?」

「あれでワーレンも熱いところがあるからな。」

「いったん火がつけば消火するのに苦労する。」

「その点ビッテンフェルトと似ている部分があるのかもしれないな。」

「しかしまぁ、よくあんな狭いところに入っていけるもんだ。」

と、一同がワイワイ騒いでいた時だ。不意にガ〇ダムが「ぐらり!」と揺れ動いたのが一同の視界の隅に移った。

「おい、どうしたんだ!?」

ミッターマイヤーが叫ぶ。それに応えてきたのは、胴体部の中から聞こえてきたくぐもった喚き声とそれに倍する狼狽の声であった。それに比例してますますガ〇ダムは揺れ動く。まるで地震にあったようだ。

「なんと言ってるのだ?」

ミッターマイヤーの言葉に一同が耳を澄ますと、

『・・・わるな!!』

『そっち・・・ない!!』

『出口・・・・っちだ!?』

『義手・・・せい・・・・危な・・・・!!』

などという切れ切れの声が飛んできた。

「おい、まさか・・・。」

ロイエンタールが眉を顰めるのと、ガ〇ダムが突然重心を失ってグラリと倒れ掛かるのが同時だった。

「危ない!!」

「こっちに倒れてくる!!」

「逃げろ逃げろ逃げろ!!」

「ぎゃあっ!!!」

「うあぁっ!!」

「退避!!総員退避!!」

等と喚きながら逃げ惑う提督たちの頭上に巨体が降ってきた。4秒後、帝都オーディンの住民の耳に――。

 

ドカ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ン!!!!!

 

という大音響が飛び込んできたのは言うまでもない。人々は大混乱に陥った。テロだと思い、逃げ惑う者、どこかで爆発が起こったのだと思い、慌てて110番する者。交通事故が起こったのだと勘違いし、現場に駆け付ける野次馬、騒ぎを聞きつけて憲兵隊まで出動する騒ぎとなったのである。

 駆けつけてきた憲兵隊司令のグスマン准将の眼に飛び込んできたのは、邸宅にうつぶせになってめり込んだ巨大な二足歩行ロボットの模型のなれの果てと、その前にへたり込んで呆然となっているオレンジ色の髪の将官と、それに負けず劣らず沈み込んでいる茶色の髪の将官、それを取り囲んでいる自分の上司以下十数人の将官たちであった。

グスマン准将は騒ぎの元凶がわかると、その謹厳な顔をどうしてよいかわからないというように百面相をしていたが、次の瞬間身をひるがえすと、片っ端から野次馬を追っ払った。帝国軍の中核をなす将官たちをひっとらえるわけにはいかなかったのである。しかも彼の上官がその中に入っているとあっては余計に。

 

 

*果たしてワーレンは趣味を見つけ、息子に自慢することができるのか?!(続く)

 


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