インフィニット・ストラトス 迫害されし者達   作:NO!

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第7話

「フゥ……」

 

 マイクの疲れきったとも言え、マイク自身が疲れを吐き出す形で溜め息を吐き、そんなマイクを見て一夏は苦笑いする。あれから十数分後は経っていた。

 彼等は周りに居る女子生徒達と共に自己紹介を終え、軽い休憩を取っていた。と言っても、数分前には軽いハプニングが発生したがそれは感動的とも思え、周りには衝撃しか走らなかったのだろう。

 織斑一夏と、このクラスの担任であり、真耶の他のもう一人の教鞭者、千冬――否、織斑千冬――その二人は姉弟であり、三年間と言う長い時間逢えなかったのとそれが埋められる様に消えたのだ。

 一夏は元より、千冬は嬉しかったのだ――死んだと思った弟が、一夏が生きていた――これには姉でもある千冬は嬉しかった。否、嬉しいと言うよりも、それ以上の感情を吐き出す様にも思えるだろう。

 しかし、その後が大変だった――泣きじゃくる千冬を一夏と真耶は困りながらも宥めたのは言うまでもない――。

 

「ったく、お前は苦労する姉を持つな?」

 

 マイクは一夏に訊ねると、一夏は悲しそうに笑いながら俯く。

 

「別に良いだろ? あれでも、俺の、たった一人の家族だから……」

 

 一夏は寂しそうに呟いた。何故なら一夏と千冬はたった二人の家族だった。両親は謎の蒸発をし、そこから二人での生活が始まった。

 貧しくも楽しかった……しかし、今はそんな事は良いだろう。一夏は我に返り、辺りを見渡す。教室内には女子、廊下にも同級生か上級生で溢れ返っている。

 その十、否、数十の視線には好意、敵意、それぞれの感情が見て取れる。否、単に珍しいのと立場を脅かす存在としか見られていないだろう。

 一夏は高貴と敵意が混じった様な幾多の視線に戸惑ってはいないが何処か不思議に思い、マイクは何故かつまらなそうかつ呆れていた。

 ――あっ……――。しかし、一夏はある事を思ってしまう。彼女、否、あの人は居ないだろうか、と一夏は思った。

 出来る事なら逢いたい――彼、一夏は切に思った。そんな一夏をある女子は見ていた。さっきの、窓側にいた女子生徒だった。

 彼女は一夏に声を掛けようとした。

 

 

 ――一夏君!! ――。刹那、後ろから声が聴こえた。一夏とマイクは振り返り、女子達も振り返る。

 そこにいたのは……否、そこにいたのは一夏が逢いたかった者、刀奈であった。服は制服だがネクタイを着用しているがその色は黄色だった。

 それだけではない、一夏は彼女を見て驚いていたが立ち上がる。

 ――刀奈、さん! ――。一夏は驚きを隠せなかった。自分の切なる願いが叶ったと思っていた。一方で刀奈は一夏を見て驚いていた。

 彼女は、彼、一夏がこの学園に来た事は知らなかった。否、彼女自身が一夏が来る事を知らなかった――それに彼女が来たのは単にどんな人物なのかを気にしただけであった。

 彼等が、マイクは元より、もう一人が、自分が逢いたかった一夏である事までは判らなかった――否、今はそんな事は別に良いだろう。

 刀奈は、彼を見ながら歩み寄り、彼の前に立つと、彼の頬を触る。男性特有の固さがあるが彼女は一夏に訊ねる。

 

「一夏、君よね?」

 

 刀奈は一夏に訊ねる。他人の空似ではない事や彼が一夏であるかどうかを訊ねていた。が、その答えは直ぐに返ってきた。

 

「はい、一夏、俺は織斑一夏です……刀奈さん……」

 

 一夏は優しく答えた。刹那、刀奈は瞠目したが目に涙を浮かべ、そして泣きながら一夏に抱き着いた。

 一夏は戸惑い、マイクは何も言わず見つめ、周りや廊下にいた同級生や上級生は驚く。

 

「一夏君……一夏君ッ!」

 

 が、刀奈は顔を一夏の胸に埋めながら泣いた。逢いたかった人であり、死んでいたと思っていた人、一夏が生きていた事に喜びと、それを吐き出す形で彼に抱き着きながら泣いてしまったのだ。

 

「刀奈さん……ごめんね」

 

 一夏は戸惑いながらも申し訳なさそうに謝ると、左手を刀奈の後頭部に、右手を刀奈の背中に回しながら刀奈の後頭部と背中を撫でる。

 その仕草は慰めとあやすようにも思えたが一夏も刀奈に逢いたかったのだ。

 一夏から見れば刀奈がIS学園にいた事は想定外であり、一夏と刀奈から見れば毎日とは言えないが逢える事に喜びしかないだろう。

 そんな二人をマイクは軽く呆れ、周りの女子生徒、外にいる同級生達や上級生達は顔を真っ赤にしていた。

 マイクは兎も角として、彼女達は皆、一夏と刀奈が知り合いである事を知らないのと、二人が三年と言う長くも短くもない時間で逢えない中、連絡も取れない中、互いに寂しい思いをしていた。

 出来る事なら逢いたく、連絡もしたかっただろう。それが、その時が崩れ落ちるように無くなる。それは、二人に、これからの時を歩ませるようにも思えた。

 二人を引き合わせた物は何かは判らない……だがそれは運命と片付ければ良いのかも知れない。

 二人は逢えなかった時間を埋めるように抱き合う中、マイクは軽く「ゴホン」と咳をした。

 これに反応した者が一人いた、一夏である。一夏は我に返り、マイクを見ると、マイクは視線を他の方へと移動させるように辺りを窺わせている。

 一夏はマイクの視線に気付き、辺りを見る。辺りには自分達以外の女子生徒達や上級生達が見ている。

 彼女等は顔を赤くしているが何処か恥ずかしそうにも見える。無理も無いだろうが一夏は恥ずかしさのあまり、刀奈と離れたかったがそれは出来なかった。

 彼女を気遣うのと、無理に引き離す事が出来ない――彼、織斑一夏自身の優しさとも捉える事が出来た。一夏は刀奈を引きはがす事が出来ず困惑する中、ふと、ある少女と目が合う。

 その少女は窓側の席に座っていた少女だった。しかし、その少女は彼、一夏を見て表情を暗くし、悲しそうに目を逸らす。

 ――あっ……――。一夏は彼女を見て困惑する。刹那、チャイムが鳴った。無慈悲にも思え、警告している様にも思える。

 一夏はチャイムが鳴り困惑する中、彼女、刀奈を気遣う意味でも、外にいる上級生に訊ねた。

 

「すみません、刀奈さんと同じクラスの人は居ませんか?」

 

 一夏は彼女を気遣い、外に居る上級生に彼女を頼もうとした。それは酷いとしか言いようが無いが彼に出来る事はそれしかなかった。

 否、彼に出来る事はそれしか無かった――泣きじゃくる彼女を宥める事が出来るのは刀奈と同じクラスの同級生達しか居なかった。

 自分よりも一年も一緒に居たのが理由であり、今の自分にはそんな事は出来ないのも理由の一つだった。

 すると、一人の生徒が教室に足を踏み入れ、一夏と刀奈に歩み寄るが一夏はその女子生徒を見る。その女子生徒はスリムな体型で、眼鏡を掛けているが濃い青の瞳に薄茶色の少し長い髪をゴムでサイドテールで纏めている。

 そしてリボンの色は黄色だった――刀奈と同じ同級生なのだろうか? 一夏はそう考えているとその女子生徒は刀奈の肩を掴み、優しく訊ねた。

 ――もう鳴ったよ、たっちゃん?――。その女子生徒は刀奈に言った。そう、彼女は刀奈の同級生であり、刀奈の親友でもある。

 

「貴女は? 刀奈さんとこの同級生ですか?」

「ええそうよ? 私は……ごめん、今はたっちゃんを何とかするから、また後でね?」

 

 彼女はそう言うと、刀奈に訊ねた。

 

「たっちゃん、後でゆっくり話したら、彼に?」

 

 その女子生徒は刀奈に優しく訊ねた。彼女なりの気遣いとも思えたがそれが功を奏したのか、刀奈は泣きながら頷き、一夏から離れ、一夏を見る。

 刀奈は未だ泣いていたが何処か嬉しそうであった。そして、彼女は一夏に言った。

 ――また後でね、一夏、君! ――。と。

 そして、刀奈の言葉に瞠目したが直ぐに微笑みながら頷くと、刀奈に答える形で言った。

 

 

 

 

 

 ――うん、また後でね、刀奈さん! ――と。

 

 

 

 

 

 

 




 次回、日本、ドイツ、イギリスの三つ巴戦争。

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